2019年09月21日

【アメリカン・ヒストリーX】My Cinema File 2132

アメリカン・ヒストリーX.jpg


原題: American History X
1998年 アメリカ
監督: トニー・ケイ
出演: 
エドワード・ノートン:デレク・ヴィンヤード
エドワード・ファーロング:ダニー・ヴィンヤード
ビヴァリー・ダンジェロ:ドリス・ヴィンヤード
ジェニファー・リーン:ダヴィナ・ヴィンヤード
ウィリアム・ラス:デニス・ヴィンヤード
イーサン・サプリー:セス・ライアン

<シネマトゥデイ>
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 「ファイト・クラブ」のエドワード・ノートン主演の衝撃作。白人至上主義の極右組織“ネオナチ”のメンバーとなったある兄弟の悲劇を通し、現代アメリカの暗部を衝いてゆく。共演にエドワード・ファーロング。父を黒人に殺された恨みから、白人至上主義グループのメンバーとなったデレク。やがて殺人事件で刑務所送りになった彼が出所してきた時、デレクは自分を崇拝する弟がメンバーとなっている事実を知る。
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カリフォルニア州ベニス・ビーチ。主人公のデレク・ヴィンヤードは、ネオナチのメンバー。坊主頭に左胸のハーケンクロイツの刺青といったいでたちで、頼まれても近づきたくはない雰囲気。ある夜、デレクの家に黒人3人組が車上荒らしに来る。それに気付いた高校生の弟ダニーがデレクに伝えると、デレクは銃を手にして玄関を開ける。1人は逃げていくも、1人を射殺し、残る1人を蹴り殺す。情状酌量の余地もあってか、デレクは故殺罪で逮捕されるも、3年間の刑を受ける。

それから3年。弟のダニーは、ヒトラーの著書「我が闘争」について書いたレポートが学校で問題視される。黒人の校長ボブ・スウィーニーは、ダニーが白人至上主義の兄デレクの影響を受けていると懸念し、一日一回個人的に授業をおこなうことにする。その授業名を「アメリカン・ヒストリーX」とし、「兄弟」というテーマで兄デレクについてレポートにまとめるよう指示する。明日までに提出しなければ退学にすると告げられたダニーは、渋々了承する。

ダニーは、兄デレクを崇拝し、頭は坊主頭、部屋にはハーケンクロイツを誇らしげに飾っている。さらにデレクが所属していたDOC(ネオナチのグループ)の会合にも顔を出している。当然の行動として、学校では黒人の生徒を露骨に蔑視している。トイレで白人の男子生徒をいじめていた黒人生徒に1人立ち向かっていくところはなかなか度胸もある。しかし、これがラストの悲劇につながるとは、ダニーも観る者もわからない。そしてデレクが出所してくる。

デレクも初めからネオナチだったわけではない。もともとは中流家庭で育ち、家族と仲のいい普通の青年だったが、消防士の父親が黒人のドラッグディーラーに射殺されたことをきっかけに、有色人種を憎むようになっていったという経緯がある。しかし、出所したデレクは、髪を伸ばして別人のように穏やかになっている。かつての自分に憧れるダニーの振る舞いを注意し、かつての仲間のセスを遠ざける。ダニーのレポートの件を聞かされると、そのあと押しをする。そんなデレクの変化にダニーは戸惑う・・・

物語は、過去の出来事をモノクロ映像で、そして現在の出来事をカラー映像で表現する形で進む。刑務所に入る前のデレク。そして刑務所内で酷い体験をするデレク。そこで気付きを得たデレクは別人となって出所する。刑務所内で嫌悪していた黒人と仲良くなったのである。その時々でデレクは自分自身に取って強烈な体験をするのであるが、考えようによっては、デレクは物事に影響されやすい人間と言えるのかもしれない。

しかしながら、刑務所に入る前はネオナチに属しており、出所を祝う仲間も以前のまま。いきなりの宗旨替えは仲間も受け入れがたいものがある。さらにはかつてのデレクに心酔していた弟ダニーはネオナチ思想にすっかり染まっている。弟と共にうまく足抜けしなければならないわけであるが、ネオナチグループだけに限らず敵対していた黒人ギャンググループの存在もあり、すんなりとはいかない。クライマックスに向かって物語は進む。

主演はエドワード・ノートン。 本作は、『真実の行方』でデビューして間もない1998年の作品であるが、既に癖のある演技に磨きがかかっている。すっかりネオナチのアブナイ奴から、目が覚めた後半では好青年へと変化していく。それでも胸に残るハーケンクロイツの入れ墨が、消せない何かを暗示する。エドワード・ノートンの演技がストーリーに彩を添える。ラストは何とも言えない無情さを残す映画である・・・


評価:★★☆☆☆










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2019年09月20日

【さざなみ】My Cinema File 2131

さざなみ.jpg

原題: 45 Years
2015年 アメリカ
監督: アンドリュー・ヘイ
出演: 
シャーロット・ランプリング:ケイト・マーサー
ジェフ・マーサー:トム・コートネイ
ジェラルディン・ジェームズ:リナ
ドリー・ウェルズ:サリー

<映画.com>
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長年連れ添った夫婦の関係が1通の手紙によって揺らいでいく様子を通し、男女の結婚観や恋愛観の決定的な違いを浮かび上がらせていく人間ドラマ。結婚45周年を祝うパーティを土曜日に控え、準備に追われていた熟年夫婦ジェフとケイト。ところがその週の月曜日、彼らのもとに1通の手紙が届く。それは、50年前に氷山で行方不明になったジェフの元恋人の遺体が発見されたというものだった。その時からジェフは過去の恋愛の記憶を反芻するようになり、妻は存在しない女への嫉妬心や夫への不信感を募らせていく。「スイミング・プール」のシャーロット・ランプリングと「カルテット!人生のオペラハウス」のトム・コートネイが夫婦の心の機微を繊細に演じ、第65回ベルリン国際映画祭で主演男優賞と主演女優賞をそろって受賞した。
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 主人公は、イギリスの郊外の地方都市に暮らす元教師のケイト。子どもはいないものの、結婚45年を迎える夫のジェフと愛犬マックスと暮らしている。マックスの散歩に出れば、かつての教え子に会うなど小さな町であることが伺われる。週末の土曜日には、友人知人を招いて結婚45周年の祝賀パーティを控えている。そんな月曜日、夫ジェフのもとに一通の手紙が届く。それはスイス警察からの手紙で、50年ほど前に雪山で遭難した女性の遺体確認に来て欲しいという内容。

 氷の中からマンモスのほぼ完全な死体が発見されたと話題になったこともあるが、それは人間でも同じこと。その女性はジェフの元恋人であり、2人で登山旅行に行った際に行方不明となっていたのである。地球温暖化の影響であろう、付近の雪が溶けて当時の姿のまま元恋人のカチャは発見されたらしい。突然消えてしまった恋人が遺体とはいえ発見されたとあれば、ジェフの気持ちは当然過ぎし日のカチャへと向かう。そしてそれに対し何かを感じるケイト。

 過去の恋人について、男は「名前をつけて保存」、女は「上書き保存」ということを聞いたことがある。言いえて妙だと思うが、男にとって過去とはいえ恋人は忘れがたいもの。たとえ現在幸せな夫婦関係を築いていたとしても、「それはそれ」。しかし、女にはこの感覚はわからないのかもしれない。週末のパーティに備え、会場使用の打ち合わせや料理選び、ジェフとの思い出の曲選びなど、やらなくてはいけないことは山ほどあるケイトは不安を募らせていく。

 一方、ジェフも足が悪くて1人で街に出かけなくなっていたのに、ケイトに内緒で旅行代理店に行ったりしている。明らかにスイスに行きたいと考えているわけで、それがケイトにとっては気に食わない。相手は死者であり、しかも50年も前の「良い思い出」であるのに、ケイトはまるで現在夫が別の女性に心を奪われているかのよう。男目線でいけば、これはかなりうっとうしいことである。それでも老年にしてなお夫婦生活は健在だし、奥さんに嫉妬されるのは悪くないと個人的には思う。

 物語は静かに土曜日に向けて進んでいく。ジェフは、コソコソと屋根裏で何かを探しており、気になったケイトはあくる日、ジェフの留守中に屋根裏に上がる。そこにはカチャとの思い出を綴った日記があり、さらにスライド映写機を見つける。なんとかこれを投写すると、そこに映し出されたのは若い女性カチャの姿。幸せそうなカチャのある姿に気付いてケイトは愕然とする・・・

 その真実は、さすがに死者に嫉妬するなと言い難いもの。起伏のほとんどない静かなストーリーなのになかなかインパクトがある。ラストのパーティーではそんなケイトの心情に気付かないジェフの言葉が虚しく響く。「名前をつけて保存」と「上書き保存」の違いもあるが、実に心理描写の巧みな映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2019年09月15日

【ブリムストーン】My Cinema File 2130

ブリムストーン.jpg

原題: Brimstone
2016年 オランダ・フランス・ドイツ・ベルギー・スウェーデン・イギリス・アメリカ
監督: マルティン・コールホーベン
出演: 
ガイ・ピアース:牧師
ダコタ・ファニング:リズ
エミリア・ジョーンズ:ジョアンナ
カリス・ファン・ハウテン:アナ
キット・ハリントン:サミュエル

<映画.com>
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「メメント」のガイ・ピアースと『17歳のエンディング・ノート』のダコタ・ファニングが共演し、時代と信仰に翻弄されたひとりの女性の生きざまを描いた西部劇スリラー。小さな村で助産師として働く女性リズ。年の離れた夫や2人の子どもたちと幸せに暮らしていたが、ある事情から言葉を発することができずにいた。そんなある日、鋼のような肉体と信仰心を持つ牧師の男が村にやって来る。牧師から「汝の罪を罰しなければならない」と告げられたリズは、脳裏に壮絶な過去をよみがえらせ、家族に危険が迫っていることを伝えるが……。共演に「海賊じいちゃんの贈りもの」のエミリア・ジョーンズ、『ブラックブック』のカリス・ファン・ハウテン、テレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」のキット・ハリントン。オランダの名匠マルティン・コールホーベンが監督・脚本を手がけた。
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タイトルの『プリムストーン(brimstone)』とは、「1.〈古〉硫黄 2.地獄の業火 3.激しい情熱 4.〈古〉口やかましい女」と言うような意味があるらしい。この映画では「2」の意味だろうと思う。物語は4部形式になっていて、それぞれ「第1章 啓示 APOCALYPSE」「第2章 脱出 EXODUS」「第3章 起源 GENESIS」「第4章 報復 RETRIBUTION」となっている。キリスト教がベースになっていて、それぞれの内容をよく表している。

各章それぞれのタイトルが内容を表しているのだが、時間軸は前後している。主人公のリズは助産婦であり、夫・エリと2人の子供(夫と前妻の息子であるマシュー、自分の娘サム)と暮らしている。言葉を発することができず、家族とは手話でコミュニケーションをとっている。ある日、リズの暮らす村の教会に新しい牧師がやってくる。リズは、どういうわけか牧師のことを警戒する。

ある時、リズはお産に立ち会うが、非常に難産であり、母体を救うため子供を犠牲にする。やむなき判断であるが、相手の夫ネイサンはリズを逆恨みし、リズの家に押しかけてくる。いつの間にか現れた牧師がネイサンを宥め、事なきを得る。しかし、何かを察したリズが夜中に牧師のベッドに行くと、娘の人形がベッドにある。慌ててリズは家に戻るが、既に牧師が夫を殺害したあと。リズは子供たちを連れて逃げだす。一体この牧師は何なんだろうと興味深い第1章である。

続く第2章。場面はまったく変わり、ジョアンナという若い女性が砂漠でさまよい、中国人の家族に保護されるところから始まる。しかし、中国人の男は保護したジョアンナをフランクという男が仕切る娼館へと売り飛ばす。やがてジョアンナは成長し、客を取るようになる。フランクは金儲け第一の男で、ジョアンナと親しくしていた娼婦仲間のエリザベスが客の舌に噛みついたことに腹を立て、なんと罰としてエリザベスの舌を切ってしまう。この結果、エリザベスは喋れなくなってしまう。これがラストで大きな意味をもってくる。

物語は進むにつれて時間を遡る。牧師とリズの因縁は深く、そして長い。第2章の「脱出」(EXODUSは、聖書では出エジプト記である)は、章の冒頭での脱出とラストの脱出の意味がある。いずれも逃げ出したのはリズ本人であり、第3章の「起源」(GENESISは、聖書では創世記である)では2人の因縁が明らかになる。そして第4章での結末へと向かう。舞台は西部劇の時代であり、まだ人の命も軽い時代。そんな中で展開される一風変わった西部劇である。しかしながら、聖書を意識した物語ゆえにそれと相反する過酷なストーリーが印象深い。

主演はダコタ・ファニング。かわいらしい子役だったのが、『17歳のエンディング・ノート』では高校生の女性になり、本作品ではもう立派な大人の女性。スクリーンでその成長を見られるというのもなかなかである。物語はハリウッド映画にしては珍しく「メデタシメデタシ」で終わらない。最初から最後まで黒い影に付きまとわれた主人公の人生。それを思うと心が重くなる。

濃厚な人間ドラマが味わい深い西部劇である・・・


評価:★★★☆☆







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2019年09月14日

【アリー/スター誕生】My Cinema File 2129

スター誕生.jpg

原題: A Star Is Born
2018年 アメリカ
監督: ブラッドリー・クーパー
出演: 
ブラッドリー・クーパー:ジャクソン・“ジャック”・メイン
レディー・ガガ:アリー
サム・エリオット:ボビー
アンドリュー・ダイス・クレイ:ロレンツォ
デイヴ・シャペル:ジョージ・"ヌードルス"・ストーン
ラフィ・ガヴロン:レズ・ガヴロン

<映画.com>
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歌の才能を見いだされた主人公がスターダムを駆け上がっていく姿を描き、1937年の「スタア誕生」を皮切りに、これまでも何度か映画化されてきた物語を、新たにブラッドリー・クーパー監督&レディー・ガガ主演で描く。音楽業界でスターになることを夢見ながらも、自分に自信がなく、周囲からは容姿も否定されるアリーは、小さなバーで細々と歌いながら日々を過ごしていた。そんな彼女はある日、世界的ロックスターのジャクソンに見いだされ、等身大の自分のままでショービジネスの世界に飛び込んでいくが……。世界的歌姫のガガが映画初主演でアリー役を熱演。もともとはクリント・イーストウッドが映画化する予定で進められていた企画で、『アメリカン・スナイパー』でイーストウッドとタッグを組んだクーパーが初監督作としてメガホンをとり、ジャクソン役でガガとともに主演も果たした。第91回アカデミー賞で作品賞を含む8部門でノミネートされ、主題歌賞を受賞した。約12分間のシーンが追加された「アンコールバージョン」も一部限定上映。
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映画『スター誕生』と言えば、我々50代世代には、バーブラ・ストライサンドが主演した映画が脳裏に浮かぶ。しかし、それ以前にも1937年版というのがあって、この作品が3度目のリメイクだという。そもそもの物語にそれだけのものがあるという証拠であろう。と言っても、観るのはこれが初めて。バーブラ・ストライザンド版は実は観ていなくて、その代り第49回アカデミー賞歌曲賞に輝いた「スター誕生の愛のテーマ」は何度も聴いて知っている。バーブラ・ストライサンドの歌声が何とも言えない名曲である。

ジャクソン・メインはコンサートを終えると、熱気に包まれた会場を後にする。運転手に頼み、途中で車を降りると小さなバーへと入っていく。そこはおかま系の歌手が歌を歌う店。そこで浴びるように酒を飲むジャック。その時、ひとりの本物の女性の歌声が耳に入ってくる。歌うはフランス語の『ラ・ヴィ・アン・ローズ』。ジャックでなくても思わず聞き惚れてしまう。歌う女性は主人公となるアリー。昼間はウェイトレスとして働き、夜は小さなライブをこなし、いつか歌手になることを夢見ている。

彼女の天性の才能に惚れたジャックは、ライブ後にアリーを外に連れ出す。しかし、ジャックは世界的人気を誇るミュージシャン。どこに行ってもミーハーな人々が寄ってきては勝手に写真を撮り、時に度を越してしまう。我慢ならなくなったアリーは思わずグーパンチ。これで右手を怪我したアリーのために立ち寄ったマーケットのパーキングで、ジャックとアリーは話をする。アリーは曲も書いていて、即興で一曲披露する。その美しい歌声はパーキングに響き渡る。

後日、自身のコンサートにアリーを半ば強引に招待したジャックは、無謀にもステージにアリーを呼び込む。そして歌い始めたのは、アリーがパーキングで披露したあの曲。一度聴いただけできちんとモノにしてしまうあたり、さすが一流アーティスト。アリーも自分の曲であり、必死に大観衆の前で歌う。その歌唱力は圧巻。すぐにYouTubeにアップされ、瞬く間に有名となる。アリーの父と友人たちも大喜びである。

そして自然なながれで、ジャックとアリーは互いに恋に落ちていく。共にライブの舞台に上がり、アリーの曲をデュエットする。やがてこれが音楽プロデューサー、レズ・ガヴロンの目に止まり、アリーはインタースコープ・レーベルと契約することになる。こうしてソロとして少しずつ軌道に乗り始めていくアリーとは反対に、ジャックは幼少期のトラウマによる難聴とアルコール依存症に襲われていく。兄でマネージャーを務めるボビーの忠告も聞かず、常にギリギリの精神状況でステージに立つ日々が続く。

上り坂と下り坂が交差する。そんな中、ツアーで訪れたジャックの故郷メンフィスでジャックとアリーはほとんど勢いで結婚する。アリーは変わらずジャックを愛するが、今やアリーはアーティストとしても成功し、グラミー賞にノミネートされるようになると、ジャックの精神状態は悪化していく。絵に描いたような転落ストーリー。禍福は糾える縄の如しなのであろう。栄光の中で新人賞に輝くアリー。しかしその受賞のステージで泥酔したジャックが醜態をさらしてしまう・・・

ストーリーもさることながら、こういう映画は何と言っても音楽の魅力も必要である。その点、アリーを演じるのはレディー・ガガであり、歌唱力は問題ない。実はこれまであまりレディー・ガガの曲は聴いたことがなかったのであるが、それは随分損だったと判明。レディー・ガガ演じるアリーの歌はどれも素晴らしい。特に何度も流れる『シャロウ』は圧巻である(ブラッドリー・クーパーも負けてはいない)。ストーリープラスαの楽しみがこの映画にはある。

そして訪れる物語の結末。アリーと出会うまでにジャックにはどんな人生があったのであろうか。アルコール依存症になるのは避けられなかったのだろうか。思わずそんなことを考えてしまうが、アリーに対する愛情は本物である。落ちぶれてもそんなジャックを愛し続けるアリーの愛もまた物語に深みを与える。最後のステージでアリーの歌う"I’ll Never Love Again"が心に深く浸みこんでくる。
ストーリーとアリーの歌声が心に響く映画である・・・


評価:★★★☆☆











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2019年09月13日

【クワイエット・プレイス】My Cinema File 2128

クワイエット・プレイス.jpg

原題: A Quiet Place
2018年 アメリカ
監督: ジョン・クラシンスキー
出演: 
ジョン・クラシンスキー:リー・アボット
エミリー・ブラント:イヴリン・アボット
ミリセント・シモンズ:リーガン・アボット
ノア・ジュープ:マーカス・アボット
ケイド・ウッドワード:ボー・アボット

<シネマトゥデイ>
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『ボーダーライン』『ガール・オン・ザ・トレイン』などのエミリー・ブラントらが出演したホラー。音に反応し人間を襲う何かが潜む世界で、音を立てずに生き延びようとする一家を映す。ドラマシリーズ「ザ・オフィス」などのジョン・クラシンスキーが監督と出演を兼ね、『ワンダーストラック』などのミリセント・シモンズ、『サバービコン 仮面を被った街』などのノア・ジュープらが共演する。生活音が未曽有の恐怖を生み出し、一家に次々と危機が訪れる。
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 近未来、地球外から飛来した謎の生命体により人類は壊滅状態になっている。そんな中、アボット家は逃避行を続けている。謎の生命体は音に反応して襲ってくることがわかっており、家族は手話でコミュニケーションを取り、裸足で移動している。しかし、大人は理解できるが子供は難しい。末っ子はついついおもちゃに手を伸ばし、スイッチを入れてしまう。それはスペースシャトルのおもちゃ。製造者は予想もしなかっただろうが、勇ましくもかわいらしい音が鳴り響く。気付いた父親が慌てて駆け寄るも、一瞬間に合わず末っ子は犠牲になってしまう・・・

 一年後、定住地となる農家を見つけひっそりと音を立てずに暮らし続けるアボット家。なんと妻のエブリンは身重である。こんな世の中なのに赤ん坊とは、映画でなければあり得ないだろう(もっとも荒廃した世界で避妊具が手に入らなかったのかもしれない)。もちろん、産声対策は取っている。食物を収穫にしに行くのは父親のリーと長男のマーカスの役割。一方、長女のリーガンは末っ子におもちゃをこっそり渡したことを悔やんでおり、そのため父親との関係はギクシャクしたまま。

 ある日、リーとマーカスが食糧を確保しに行き、リーガンはひっそりと家を抜け出し、末っ子が犠牲になった場所に向かう。家にはエブリンのみが残るが、なんとここで産気づく。声を上げることはもちろん許されない。しかも謎の生命体が家に侵入してくる。謎の生命体は目が見えず、したがって音さえ立てなければ問題ない。日頃から危機管理ができており、エブリンは照明を危険時の赤に切替え、外出している家族に知らせる。

 音を立ててはいけないという制約条件は、それだけでいろいろと盛り上げ場を用意してくれる。生んだ赤ん坊は元気な産声を上げるものだが、それをどう防ぐか。さらに木造建築ゆえに釘が飛び出してしまったのを踏み抜いてしまうもうめき声すら許されない。謎の生命体は自然の音には無反応で、ゆえにリーとマーカスは滝の裏側で大声をだして叫んだりする。知らないこととは言え、エブリンが必死に我が身と新たな命を守ろうとしているその時に・・・

 なんとなく既視感に囚われたが、そういえば『ザ・サイレンス 闇のハンター』もまったく同じようなシチュエーションであった。子どもが耳が聞こえない為、家族全員が手話ができたという前提条件も同じ。ただし、製作年はこちらの方が1年早いのであるから、真似ということもないだろう。まぁ1年の差なんてほとんど誤差の世界だから、たまたま同じ時期に似たような映画を創ってしまったのであろう。さらに音を立ててはいけないという点では、『ドント・ブリーズ』も同じであり、このシチュエーションは使いやすいのかもしれないと思ってみたりする。

 謎の生命体になす術もない人類であるが、耳の聞こえないリーガンのためにリーが一生懸命に作った補聴器が意外な好能を発揮する。娘を思う父親の愛情が最後に光を見せてくれる。そんなラストが心地良い映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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