
原題: American History X
1998年 アメリカ
監督: トニー・ケイ
出演:
エドワード・ノートン:デレク・ヴィンヤード
エドワード・ファーロング:ダニー・ヴィンヤード
ビヴァリー・ダンジェロ:ドリス・ヴィンヤード
ジェニファー・リーン:ダヴィナ・ヴィンヤード
ウィリアム・ラス:デニス・ヴィンヤード
イーサン・サプリー:セス・ライアン
<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
「ファイト・クラブ」のエドワード・ノートン主演の衝撃作。白人至上主義の極右組織“ネオナチ”のメンバーとなったある兄弟の悲劇を通し、現代アメリカの暗部を衝いてゆく。共演にエドワード・ファーロング。父を黒人に殺された恨みから、白人至上主義グループのメンバーとなったデレク。やがて殺人事件で刑務所送りになった彼が出所してきた時、デレクは自分を崇拝する弟がメンバーとなっている事実を知る。
********************************************************************************************************
カリフォルニア州ベニス・ビーチ。主人公のデレク・ヴィンヤードは、ネオナチのメンバー。坊主頭に左胸のハーケンクロイツの刺青といったいでたちで、頼まれても近づきたくはない雰囲気。ある夜、デレクの家に黒人3人組が車上荒らしに来る。それに気付いた高校生の弟ダニーがデレクに伝えると、デレクは銃を手にして玄関を開ける。1人は逃げていくも、1人を射殺し、残る1人を蹴り殺す。情状酌量の余地もあってか、デレクは故殺罪で逮捕されるも、3年間の刑を受ける。
それから3年。弟のダニーは、ヒトラーの著書「我が闘争」について書いたレポートが学校で問題視される。黒人の校長ボブ・スウィーニーは、ダニーが白人至上主義の兄デレクの影響を受けていると懸念し、一日一回個人的に授業をおこなうことにする。その授業名を「アメリカン・ヒストリーX」とし、「兄弟」というテーマで兄デレクについてレポートにまとめるよう指示する。明日までに提出しなければ退学にすると告げられたダニーは、渋々了承する。
ダニーは、兄デレクを崇拝し、頭は坊主頭、部屋にはハーケンクロイツを誇らしげに飾っている。さらにデレクが所属していたDOC(ネオナチのグループ)の会合にも顔を出している。当然の行動として、学校では黒人の生徒を露骨に蔑視している。トイレで白人の男子生徒をいじめていた黒人生徒に1人立ち向かっていくところはなかなか度胸もある。しかし、これがラストの悲劇につながるとは、ダニーも観る者もわからない。そしてデレクが出所してくる。
デレクも初めからネオナチだったわけではない。もともとは中流家庭で育ち、家族と仲のいい普通の青年だったが、消防士の父親が黒人のドラッグディーラーに射殺されたことをきっかけに、有色人種を憎むようになっていったという経緯がある。しかし、出所したデレクは、髪を伸ばして別人のように穏やかになっている。かつての自分に憧れるダニーの振る舞いを注意し、かつての仲間のセスを遠ざける。ダニーのレポートの件を聞かされると、そのあと押しをする。そんなデレクの変化にダニーは戸惑う・・・
物語は、過去の出来事をモノクロ映像で、そして現在の出来事をカラー映像で表現する形で進む。刑務所に入る前のデレク。そして刑務所内で酷い体験をするデレク。そこで気付きを得たデレクは別人となって出所する。刑務所内で嫌悪していた黒人と仲良くなったのである。その時々でデレクは自分自身に取って強烈な体験をするのであるが、考えようによっては、デレクは物事に影響されやすい人間と言えるのかもしれない。
しかしながら、刑務所に入る前はネオナチに属しており、出所を祝う仲間も以前のまま。いきなりの宗旨替えは仲間も受け入れがたいものがある。さらにはかつてのデレクに心酔していた弟ダニーはネオナチ思想にすっかり染まっている。弟と共にうまく足抜けしなければならないわけであるが、ネオナチグループだけに限らず敵対していた黒人ギャンググループの存在もあり、すんなりとはいかない。クライマックスに向かって物語は進む。
主演はエドワード・ノートン。 本作は、『真実の行方』でデビューして間もない1998年の作品であるが、既に癖のある演技に磨きがかかっている。すっかりネオナチのアブナイ奴から、目が覚めた後半では好青年へと変化していく。それでも胸に残るハーケンクロイツの入れ墨が、消せない何かを暗示する。エドワード・ノートンの演技がストーリーに彩を添える。ラストは何とも言えない無情さを残す映画である・・・
評価:★★☆☆☆