2019年11月23日

【アクアマン】My Cinema File 2145

アクアマン.jpg

原題: Aquaman
2018年 アメリカ
監督: ジェームズ・ワン
出演: 
ジェイソン・モモア:アーサー・カリー/アクアマン
アンバー・ハード:メラ
ウィレム・デフォー:バルコ
パトリック・ウィルソン:オーム
ニコール・キッドマン:アトランナ
ドルフ・ラングレン:ネレウス
ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世:ブラックマンタ
テムエラ・モリソン:トム・カリー

<映画.com>
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DCコミックス原作のヒーローで、『ジャスティス・リーグ』にも参戦したアクアマンを主役に描くアクション大作。海底に広がる巨大な帝国アトランティスを築いた海底人たちの王女を母に持ち、人間の血も引くアクアマンは、アーサー・カリーという名の人間として地上で育てられた。やがて、アトランティスが人類を征服しようと地上に攻め入り、アクアマンは、アトランティスとの戦いに身を投じていく。人気テレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」で知られるハワイ出身の俳優ジェイソン・モモアがタイトルロールのアクアマンを演じ、世界的大ヒットを記録した『ワイルド・スピード SKY MISSION』のジェームズ・ワン監督がメガホンをとった。共演にアンバー・ハード、ウィレム・デフォー、ニコール・キッドマンほか。
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ある嵐の日、灯台守のトムは、海辺で倒れている美しい女性を助けて家へ連れて帰る。実はその女性はアトランティス人の王女アトランナで、政略結婚を嫌って逃げてきたのである。アトランナは助けてくれたトムのやさしさに触れ、そのまま一緒に暮らすことになり、やがて息子アーサーが生まれる。だが幸せな毎日は続かず、ある日、突如海底から現れたアトランティスの兵士に襲われる。アトランナは何とかこれを撃退したものの、夫と息子を守るために故郷へ帰る決断をする。「その時が訪れたら日の出の時刻にまた戻る」と言い残して海へ帰っていく。

故郷へ戻ったアトランナ女王は、王家を守る忠臣バルコを陸へ送り、アーサー少年にアトランティス人としての教育を施すよう命じる。以来、アーサーはバルコを通じて海底人としての知識を学びとっていく。一方で魚たちとも意思の疎通ができる能力を身につける。大人になったアーサーは超人的能力を発揮し、人々からWアクアマンWと呼ばれるようになる。

アクアマンの能力は桁外れ。ある時、ロシアの潜水艦が謎の海賊に襲撃されるが、海底にある潜水艦を水上に持ち上げ、艦内を占拠していた海賊を次々となぎ倒す。そして海賊のボスを沈みゆく艦内に閉じ込める。ここでボスの息子デイビッドから逆恨みされ、デイビッドはアクアマンに復讐の念を向けることになる。一方、その頃、海底世界ではアトランティスのオーム王が、海底王国ゼベルのネレウス王へ、地上世界への攻撃を打ち明ける。オーム王の真の狙いは海の覇者WオーシャンマスターWとなること。当初消極的だったネレウス王も地上人の潜水艦による攻撃を受け、やむなく決意する。

地上と海の間で緊張が走る中、この戦いを止めたいと思うネレウス王の娘でオーム王の婚約者メラは密かに地上へ向かい、アクアマンを説得して仲間に引き入れる。メラとアクアマンに味方となるのが、かつてアーサーを鍛えたバルコ。バルコはオーム王の参謀となっているが、密かにアクアマンに対し、トライデントと呼ばれる伝説の三叉槍を見つけて王位に就くよう助言する。こうして、地上世界の制覇を目指すオーム王とオーム王の異父兄弟でもあるアクアマンの対決へと物語は進んでいく・・・

数多く制作されているスーパーヒーローものであるが、アクアマンはその名の通り「海の超人」。アベンジャーズ入りしないのは、DCコミックスグループであるから。その存在は一足先に『ジャスティス・リーグ』でお披露目済み。今回は堂々の主役としての登場である。伝説のアトランティスを舞台に地上をはるかに上回る高度なテクノロジーも登場する。『ブラックパンサー』の海版とも言える。

復讐の念に燃えるデイビッドはそのアトランティスのテクノロジーによってWブラックマンタWと化し、アクアマンの前に立ち塞がる。こうしてお約束の正義と悪の対決となっていく。何気なく豪華なのは出演陣。アトランナ女王はニコール・キッドマンだし、密かにそれを慕う忠臣バルコはウィレム・デフォー、地上制覇を目指すオーム王はパトリック・ウィルソン、そしてそれに従うネレウス王はドルフ・ラングレンという具合である。大物が脇を固めているだけで、ストーリーに厚みが加わるように感じられる。

海の中で魚のように変幻自在に動ける超人的な能力がどのようにして可能なのかというツッコミは置いておいて、単純に楽しめるスーパーヒーローモノである。今後、DCメンバーズとどう絡み合うのか、あるいは単独でシリーズ化するのかはわからないが、これはこれで楽しめると思う。アクションもストーリーも言うことない一作である・・・


評価:★★★☆☆










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2019年11月22日

【長い裏切りの短い物語】My Cinema File 2144

長い裏切りの短い物語.jpg

原題: Breve storia di lunghi tradimenti
2012年 イタリア
監督: ダビデ・マレンゴ
出演: 
グイド・カプリーノ
カロリーナ・クレシェンティーニ
マヤ・サンサ
フローラ・マルティネス
マリーナ・ロッコ
エンニオ・ファンタスティキーニ
フィリップ・ルロワ

<amazon prime解説>
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緊急の業務処理を依頼してきた老舗銀行が大手銀行に吸収合併され経営者が自殺。動揺する弁護士ジュリオに、新しい経営責任者セシリアは出張の同行を命じ、向かった先は南米のケマダだった。突然の銀行買収劇は世界のリチウム埋蔵量の半分を占めるケマダの塩湖をめぐる陰謀なのか...。
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主人公の弁護士ジュリオは、某老舗銀行の顧問弁護士。仕事は問題ないが、私生活では妻から離婚をつきつけられている。ある日、銀行に出勤すると、降りた車の上に突然人が落ちてくる。それはつい先ほどまで経営会議を行っていた頭取。実はその直前、銀行が大手銀行に買収され、突然乗り込んできた買収元から派遣された経営責任者セシリアに首を宣告されたゆえの事であった。

動揺がおさまらないジュリオに、セシリアはただちに出張の同行を命じる。否応なしに連れて行かれた先は南米のケマダ。現地では軍の関係者が実権を握っており、セシリアはすぐにトップ商談に入る。突然の銀行買収劇は、実は世界のリチウム埋蔵量の半分を占めるというケマダの塩湖をめぐり、老舗銀行に保管してあるというある文書を巡ってのもの。それは99年間の採掘権を取り交わしたもの。ジュリオは訳がわからないまま騒動に巻き込まれていく。

ジュリオは単なる企業の雇われ弁護士であるのだが、何の因果かこの騒動に巻き込まれていく。バックにある組織の意図と、そして狙われている「文書」。いつしか少しずつ事態の全容がわかっていく。映画は日本では珍しいイタリア映画。出張先で家に電話をしたいが、自分の携帯が使えないジュリオはセシリアの部屋を訪ねていく。セシリアはジュリオがまるで同性であるかのように平気でシャワーを浴び、裸でパーティーに来ていく服を選ぶ。このあたりはイタリア映画だなぁと思わせてくれる。

セシリアは事件の黒幕と意外な関係があり、イタリア美女らしくジュリオとも平気で寝てしまったりする。一方、ジュリオはイタリア人らしからぬ真面目さがあり、妻に離婚を迫られているとはいえ、家族思いである。陰謀とは無縁のジュリオだが、いつしか文書を探し求める。そして黒幕も殺し屋を送り込んできて、あろうことかジュリオの妻も巻き込まれてしまう。

双子の殺し屋にはちょっと笑ってしまったが、とりあえずアクションシーンもあったりする。面白い映画か否かについては微妙なところではあるが、「時間の無駄」としか評価しようがない映画もある中では、まぁまぁ時間を潰せる映画ではある。珍しいイタリア映画という意味で捉えてもいいと思う一作である・・・


評価:★★☆☆☆









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2019年11月16日

【殺人者の記憶法 新しい記憶】My Cinema File 2143

殺人者の記憶法 新しい記憶.jpg

原題: Memoir of a Murderer
2017年 韓国
監督: ウォン・シニョン
出演: 
ソル・ギョング:キム・ビョンス
キム・ナムギル:ミン・テジュ
キム・ソリョン:キム・ウンヒ
オ・ダルス:アン・ビョンマン署長

<映画.com>
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韓国を代表する演技派俳優ソル・ギョングの主演で、アルツハイマーにおかされた元殺人犯が、新たに出現した殺人鬼と対峙する姿を描いたサスペンスミステリー『殺人者の記憶法』のストーリーが異なる別バージョン。主人公のアルツハイマーの元連続殺人鬼ビョンスと、新しい殺人鬼テジュの激しい攻防をさらに詳しく描き、周囲を欺き一般社会に溶け込んでいる様子のテジュや、ビョンスから鋭い殺意を感じて疑惑の目を向ける警察官ビョンマン、そして事件の顛末を明らかにしようとする検事といった新しい場面が多数追加されている。
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韓国映画は、変わった試みをすることがあり、1つのストーリーを確度を変えて見せたり(『インファナル・アフェア』)、別バージョン(『デイジー』『デイジーアナザーバージョン』)としてみたり。この映画も『殺人者の記憶法』のもう一つのストーリーとでも言うべきものである。

基本的なストーリーは、『殺人者の記憶法』と同じ。冒頭で雪に覆われたトンネルの中から、白い運動靴を履き、髪を短く刈り上げた男が歩いてくる。何やら意味ありげであるが、男は頬を痙攣させ、運動靴を左右逆に履き間違えている事に気づき履き替える。これが実に意味深いシーンだと後で気付く。

そしてキム・ミンジェ検事が、医療刑務所に入院しているキム・ビョンスの事情聴取にやってくる。既に前作での死闘を終えたあとであり、スムーズにストーリーに入っていける。彼はビョンスのパソコンにあった彼の日記などの分厚い資料を机に投げ出し、あらためて話を聞く形で物語は始まる。キム・ビョンスは、認知症の症状から、旧知の所長アン・ビョンマンも分らない状態で派出所に保護される。そこに娘ウンヒが引き取りに来て、左右履き間違えていた靴を履き直させる。

ビョンスは、3ヶ月前に事故の後遺症によるアルツハイマーと診断されている。一人娘との二人暮らしであるが、近ごろ若い女性を狙った連続殺人事件が発生し、ビョンスもウンヒを心配する。しかし、ビョンスの心配はウンヒのことだけにとどまらず、連続殺人の犯人は自分かもしれないという心配もある。考えてみれば、自分のしたことを覚えていないということでは、やっぱり認知症は恐ろしい病気だと思う。自分が自分でなくなるかもしれないのである。

ビョンスが初めて人を殺したのは自分の父親。しかしその父親は、酔っては家族に暴行を加え、あろうことかビョンスに性的虐待をしようとするケダモノのような男。ある時、ビョンスが帰宅した時、そこで見たのはひと暴れして酔い潰れた父親とぐったりした母と姉、そしてキムチの汁まみれになったビョンスの白い運動靴。さらに目覚めた父親が今度はビョンスを殴り、性的虐待を加えようとしたため、ビョンスは反撃して父親を殺害する。そしてその遺体を人知れず近くの山林に埋める。考えてみればビョンスも気の毒である。

事件から数日、ビョンスは警察に怯えて過ごすが、事件は発覚せず、家族は平穏に暮らせるようになる。これで「世の中には正当な殺人がある」と気づいたビョンスは、以来家族を殴る料理屋の店主、指輪を飲んだ犬を撲殺し腹を裂いて取り出せと言った飼い主の女、浮浪児を奴隷扱いしていたホームレス、一家を壊滅させた借金取りなど「死んで当然のクズどもを掃除する」という大義名分で殺人を繰り返すことになる。殺した遺体は自らが所有している竹林に埋めていく・・・

こうしたストーリーはすべて前作と同じ。何が違うのかと思っていると肩透かしを食う。しかし、ラストの顛末が大きく異なる。ウンヒが囚われている林中の一軒家にやってきたビョンス。そこにはミン・テジュがいるが、ビョンマン所長が絞殺される状況が異なり、そしてその後の展開も異なる。前作は事件が解決して明るいムードのラストとなるが、本作は暗い影に覆われて終わる。両作品を観比べるとなかなか面白い。

どっちのラストが好ましいかと問われれば、前作と答えるが、映画として面白いのは本作のラストだろう。ただ、現在の女性を狙った連続殺人について、その動機が本作の方があやふやになってしまうところがある。事実、警察の新人相手にビョンスが現在の連続殺人犯の特徴と過去の連続殺人事件の違いをもっともらしく説明するシーンがあるが、実際それはかなり説得力があるのである。ただ、それも重箱の隅を気にするか否かの違いとも言える。

この日本の映画が、興業的に「一粒で二度おいしい」となったのかどうかはわからないが、こういう別バージョンも面白いと思う。両方を観比べて楽しみたい一作である・・・


評価:★★★☆☆







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2019年11月15日

【フェイク・クライム】My Cinema File 2142

フェイク・クライム.jpg

原題: Henry's Crime
2011年 アメリカ
監督: マルコム・ベンビル
出演: 
キアヌ・リーブス:ヘンリー
ベラ・ファーミガ:ジュリー
ジェームズ・カーン:マックス
ピーター・ストーメア:ダレク
ジュディ・グリア:デビー
ダニー・ホック:ジョー
フィッシャー・スティーブンス:エディ

<シネマトゥデイ>
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『マトリックス』シリーズなどで絶大な人気を誇るキアヌ・リーヴスが主演・製作を務めたサスペンスムービー。友人にだまされ自分だけ投獄された主人公が、偶然知った地下トンネルを利用して銀行強盗を計画する過程をスリリングに描く。『ターミナル』の脚本家で、『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』の監督を務めたサーシャ・ガヴァシが脚本を担当。共演には『マイレージ、マイライフ』のヴェラ・ファーミガ、『ゴッドファーザー』シリーズのジェームズ・カーンら実力派がそろう。
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「キアヌ・リーブス主演」となると、それだけで観てもいいかなと思う。これはあまり深く考えず、「キアヌ・リーブス主演」という理由だけで観ることにした映画。そのキアヌ・リーブス演じるのは、高速道路の料金所で働くヘンリー・トーン。深夜の勤務を終えて自宅に戻ると、妻のデビーが迎える。そろそろ子どもが欲しいと話すデビーにヘンリーは静かに同意する。ヘンリーはいい夫ではあるが、平凡であまり自己主張をしないタイプのようである。

するとその場に突然、高校時代からの友人エディが訪ねてくる。野球をやりに行く途中だったが、メンバーのジョーの体調が悪くなったとのことで、代役を頼まれる。嫌とも言えずに付き合うヘンリー。一行は街中の銀行へ行くと、車にヘンリーを残して銀行に入っていく。どうも様子がおかしいと思うと、実はエディたちはそこで強盗を働き、あろうことか逃げてしまう。それとは知らずに車に乗って待っていたヘンリーは逮捕されてしまう。

なぜかヘンリーは言い訳をすることもなく、エディたちのことは黙っていて懲役3年の実刑判決を受けてしまう。このあたり、強く自己主張をしないばかりか、流れに流されるまま良しとするところがヘンリーにはあるようである。そして刑務所に服役したヘンリーは、詐欺師のマックスと同室になる。服役から1年後、ヘンリーは仮釈放が許されるが、妻のデビーは好きな相手ができたとヘンリーの下を離れるも、相手はあろうことかジョーであり、さらに子供を身籠っている。ヘンリーはわずかな荷物を持って家を出る。

こんな理不尽にも関わらず、ヘンリーは逮捕された現場の銀行に行くが、なんと不注意運転の車にはねられてしまう。運転していたのはあまり売れていない女優のジュリー。幸なことにヘンリーに怪我はなく、近くのカフェに連れて行かれたヘンリーは、トイレに貼ってあった80年前の新聞の記事を目にする。そこには銀行と道向かいの劇場が地下で繋がっていることが書いてある。その時、ヘンリーの脳裏にあるアイディアがひらめく・・・

ヘンリーは一見、変わった男である。銀行強盗の片棒を担いだとして逮捕されるが、きちんと事情を話せば十分無罪になったと思うが、黙って服役してしまう。刑務所で知り合ったマックスに「服役したんだからその分罪を犯してもいいだろう」というようなことを言われるが、まさにそれを実行に移す。その様子は流れに流されてきたそれまでの人生とはちょっと異なる。さすがにお人好しにもほどがあるのだろう。

こうしてヘンリーは自らのアイディアを実行に移すべく動いていくが、思いがけずに協力者も現れ、そしてなぜかジュリーとの関係も深まり、あろうことか劇場で上演される予定のチェーホフ作「桜の園」にジュリーとともに出演することになる。銀行強盗の計画と「桜の園」の舞台とがクライマックスにかけて進んでいく。地味な作品であるが、単なる犯罪映画ではなく、ヘンリー自身の変化も交えて味わいのあるドラマとなっている。

その後、ヘンリーとジュリー、そしてマックスとジョーたちはどうなったのだろうか。ちょっと想像してみたくなる映画である・・・


評価:★★☆☆☆











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2019年11月09日

【ファースト・マン】My Cinema File 2141

ファースト・マン.jpg

原題: First Man
2018年 アメリカ
監督: デイミアン・チャゼル
出演: 
ライアン・ゴズリング:ニール・アームストロング
クレア・フォイ:ジャネット・アームストロング
ジェイソン・クラーク:エド・ホワイト
カイル・チャンドラー:ディーク・スレイトン
コリー・ストール:バズ・オルドリン
キアラン・ハインズ:ボブ・ギルルース
パトリック・フュジット:エリオット・シー

<シネマトゥデイ>
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『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督とライアン・ゴズリングが再び組んだ伝記ドラマ。人類初の月面着陸に成功したアポロ11号の船長ニール・アームストロングの人生を描く。ジェイムズ・R・ハンセンの著書を『スポットライト 世紀のスクープ』などのジョシュ・シンガーが脚色した。共演は『蜘蛛の巣を払う女』などのクレア・フォイ、『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェイソン・クラークとカイル・チャンドラーら。
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 人類初の月面着陸と言えば、アポロ11号の船長ニール・アームストロングと「これは小さな一歩だが, 人類にとっては大きな飛躍である」という言葉と共にあまりにも有名である。そんなニール・アームストロング船長の月面着陸に至る過程を描いた作品。

 ニール・アームストロングは、もともとテストパイロット。冒頭では大気圏外の高高度飛行に臨む。一瞬、目の前に広がる宇宙空間と大気との境目。見とれるニールだが、大気圏再突入に際して大気に弾かれるアクシデント。一歩間違えれば死をまぬかれない危険が伴う。それがこの映画のストーリーを暗示させる。私生活では、ニールの幼い娘カレンが重い病気に侵されており、辛い闘病生活を送った末、夫婦の願い虚しくカレンは命を落とす。1人泣き崩れるニール。そしてニールは、この悲しみから逃げるようにNASAのジェミニ計画の宇宙飛行士に応募する。

 ニールは、NASAの宇宙飛行士として選ばれ、妻と息子を共にヒューストンへ移り住む。面接では同じく志願したエドと知り合い、エドはニールの近所に住み、互いに家族ぐるみの付き合いが始まる。時に時代は、宇宙開発についてソ連が先行。これに対し、ケネディ大統領は「10年以内に月に人類を送る」と宣言。だが、この時点では雲をもつかむような話。さらにソ連はそんなアメリカをあざ笑うかの如く、人類初の宇宙での船外活動を成功させ、アメリカに差をつける。

 過酷な訓練がスタートするが、アメリカはまだ母船と月着陸用の小型船のドッキングを実証するジェミニ計画の途中で、月面着陸のアポロ計画へと移行するのはまだ先。しかも、訓練機の墜落事故で1人が命を落とし、ニール自身もドッキングに成功はしたものの、ジェミニの回転が止まらずあわや意識喪失という寸前で最悪の事態を免れる。メディアからは莫大な費用をかけ人命を危険にさらしているとNASAへの批判の声が高まる。「俺たちが貧困に苦しんでいるのに、白人は莫大な金を使って月へ行く(Whitey on the Moon)」と黒人も格調高く批判する。

 あとから月面着陸の成功シーンだけを見ていると、すべてが順風満帆だったように思えるが、実は批判の声も結構あったんだなと思わされる。こうした世の中の動きは興味深い。そして衝撃的なのは、アポロ計画への移行を受けパイロットに選ばれたエドら3人が、アポロ内部での火災により全員死亡するという事故が起こること。妻のジャネットはエドの奥さんとも仲良しであり、脳裏を過るのは「明日は我が身」の思い。それをわかっていて訓練を続けたニールの心中はいかばかりだっただろうと思う。

 そしてついに出発前夜。ジャネットは、父親が帰って来られないかもしれないという覚悟を息子たちに話せとニールに思いをぶちまける。長男がポツリと「戻って来られるの?」と尋ねるシーンは胸に迫るものがある。表に見えていた成功譚の陰にこうしたドラマがあったとはと、改めて思う。今の映像技術だから月面着陸の臨場感は圧巻。いろいろな困難を乗り越えて実現した瞬間は、なんとも言えない感慨である。

 単なる歴史的偉業を大げさに表現したという映画ではなく、その陰にあった様々なドラマを包含した深い物語となっている。ニール・アームストロングの自伝的内容の映画であるが、歴史的な出来事を裏側から楽しめる映画である・・・


評価:★★★☆☆







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