
2018年 日本
監督: 大森立嗣
出演:
黒木華: 典子
樹木希林: 武田先生
多部未華子: 美智子
原田麻由: 田所
鶴田真由: 雪野
鶴見辰吾: 典子の父
<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
茶道教室に通った約25年について記した森下典子のエッセイを映画化した人間ドラマ。母親の勧めで茶道教室へ通うことになった大学生が、茶道の奥深さに触れ、成長していく姿を描く。メガホンを取るのは『ぼっちゃん』などの大森立嗣。主人公を『小さいおうち』『リップヴァンウィンクルの花嫁』などの黒木華、彼女と一緒に茶道を学ぶ従姉を『ピース オブ ケイク』などの多部未華子、茶道の先生を『わが母の記』などの樹木希林が演じる。
********************************************************************************************************
主人公は20歳の女子大生の典子。ふとしたきっかけで従姉妹の美智子とともに茶道教室に通うことにする。茶道を習うということに典子はそれほど乗り気ではなかったが、美智子が思いもかけず積極的だったことからつられた格好である。通う先は典子の母がただものではないと見込んだ武田先生の教室。武田先生は大きな屋敷に一人で暮らしている。茶室には『日日是好日』と書かれた大きな掛け軸がかけられている。これがタイトルのゆえん。
そして稽古が始まる。武田先生は、初心者向けに細かい茶道の作法を教えていく。それに対して一つ一つに意味や理由を問いかける典子と美智子に、武田先生は「そういう風に決まっていることだからまず身につけよ」と諭す。「お茶はまず形から、そこでできた入れ物に心を後から入れるもの」だという教えは、なるほどと個人的には思う。個人的には形から入るのは苦手で、なぜそうなっているのか理屈を理解してから入るタイプであり、もしも自分だったら、やっぱり典子と同じように尋ねていたと思う。
月日が流れ、二人は大学を卒業する。美智子は商社に就職するが、典子は希望の出版業に正社員としての採用はかなわず、アルバイト採用となる。美智子は先にお茶をやめ、さっさと結婚して田舎に引っ込む。このあたり、典子と比べると美智子の方がうまく世の中を渡っていくタイプである。そんな美道子に羨ましさを感じつつ、どこか不器用な典子は、お茶の教室に通い続ける。なかなか中途採用もかなわず、やがて家を出て一人暮らしを始める。
気が付くと典子はお茶の教室では古株になっているが、進歩がないと先生から厳しい一言も受けてしまう。憧れの雪野には遠く及ばず、後輩である10代のひとみの持つ素質に驚かされてしまう。せっかく恋人ができて婚約までするが、相手の裏切りで結婚には至らない。そんな典子を遠くから見守っていた父親が病に倒れ、そのまま帰らぬ人となる。映画は静かに典子が過ごす年月を追っていく。
主人公の典子は大人しく、目立たないタイプの女性。美智子とは違って、不器用な生き方しかできないタイプ。それでも一旦始めたお茶をずっと続けていく。根気強いというよりも、むしろ積極的にやめられないだけかもしれない。美智子役の多部未華子は、キリっとした表情であるが、典子役の黒木華はほわッとした顔立ちであり、表情からも両者の違いが伝わってくる。
映画は特にドラマチックな出来事があるわけでもなく、静かに静かに進んでいく。今は亡き樹木希林も例によってちょっととぼけた様な味のある雰囲気を醸し出している。人生は良いことばかりではないし、うまくいかないことも多い。他人に引け目を感じたり羨ましく思ったりすることもある。そんな山あり谷ありもすべて人生。『日日是好日』というタイトルが何とも言えず味わい深い映画である・・・
評価:★★☆☆☆