2020年02月29日

【日日是好日】My Cinema File 2186

日日是好日.jpg

2018年 日本
監督: 大森立嗣
出演: 
黒木華: 典子
樹木希林: 武田先生
多部未華子: 美智子
原田麻由: 田所
鶴田真由: 雪野
鶴見辰吾: 典子の父

<シネマトゥデイ>
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茶道教室に通った約25年について記した森下典子のエッセイを映画化した人間ドラマ。母親の勧めで茶道教室へ通うことになった大学生が、茶道の奥深さに触れ、成長していく姿を描く。メガホンを取るのは『ぼっちゃん』などの大森立嗣。主人公を『小さいおうち』『リップヴァンウィンクルの花嫁』などの黒木華、彼女と一緒に茶道を学ぶ従姉を『ピース オブ ケイク』などの多部未華子、茶道の先生を『わが母の記』などの樹木希林が演じる。
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主人公は20歳の女子大生の典子。ふとしたきっかけで従姉妹の美智子とともに茶道教室に通うことにする。茶道を習うということに典子はそれほど乗り気ではなかったが、美智子が思いもかけず積極的だったことからつられた格好である。通う先は典子の母がただものではないと見込んだ武田先生の教室。武田先生は大きな屋敷に一人で暮らしている。茶室には『日日是好日』と書かれた大きな掛け軸がかけられている。これがタイトルのゆえん。

そして稽古が始まる。武田先生は、初心者向けに細かい茶道の作法を教えていく。それに対して一つ一つに意味や理由を問いかける典子と美智子に、武田先生は「そういう風に決まっていることだからまず身につけよ」と諭す。「お茶はまず形から、そこでできた入れ物に心を後から入れるもの」だという教えは、なるほどと個人的には思う。個人的には形から入るのは苦手で、なぜそうなっているのか理屈を理解してから入るタイプであり、もしも自分だったら、やっぱり典子と同じように尋ねていたと思う。

月日が流れ、二人は大学を卒業する。美智子は商社に就職するが、典子は希望の出版業に正社員としての採用はかなわず、アルバイト採用となる。美智子は先にお茶をやめ、さっさと結婚して田舎に引っ込む。このあたり、典子と比べると美智子の方がうまく世の中を渡っていくタイプである。そんな美道子に羨ましさを感じつつ、どこか不器用な典子は、お茶の教室に通い続ける。なかなか中途採用もかなわず、やがて家を出て一人暮らしを始める。

気が付くと典子はお茶の教室では古株になっているが、進歩がないと先生から厳しい一言も受けてしまう。憧れの雪野には遠く及ばず、後輩である10代のひとみの持つ素質に驚かされてしまう。せっかく恋人ができて婚約までするが、相手の裏切りで結婚には至らない。そんな典子を遠くから見守っていた父親が病に倒れ、そのまま帰らぬ人となる。映画は静かに典子が過ごす年月を追っていく。

主人公の典子は大人しく、目立たないタイプの女性。美智子とは違って、不器用な生き方しかできないタイプ。それでも一旦始めたお茶をずっと続けていく。根気強いというよりも、むしろ積極的にやめられないだけかもしれない。美智子役の多部未華子は、キリっとした表情であるが、典子役の黒木華はほわッとした顔立ちであり、表情からも両者の違いが伝わってくる。

映画は特にドラマチックな出来事があるわけでもなく、静かに静かに進んでいく。今は亡き樹木希林も例によってちょっととぼけた様な味のある雰囲気を醸し出している。人生は良いことばかりではないし、うまくいかないことも多い。他人に引け目を感じたり羨ましく思ったりすることもある。そんな山あり谷ありもすべて人生。『日日是好日』というタイトルが何とも言えず味わい深い映画である・・・


評価:★★☆☆☆






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2020年02月24日

【ELI/イーライ】My Cinema File 2185

ELIイーライ.jpg


原題: Eli
2019年 アメリカ
監督: キアラン・フォイ
出演: 
チャーリー・ショットウェル: イーライ
マックス・マーティーニ: ポール
セイディ・シンク: ヘイリー
リリ・テイラー: イザベラ・ホーン医師
ケリー・ライリー: ローズ

<映画.com>
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自己免疫疾患を抱える少年が、治療のため訪れた不気味な病院で体験する恐怖を描いたNetflixオリジナルのホラー映画。4年前に重度の自己免疫疾患を発症した11歳の少年イーライは、自宅内の無菌室での不自由な生活を余儀なくされていた。両親は治療のため、ホーン医師が運営する医療施設に彼を入居させることに。不気味な雰囲気の施設内でイーライに施される治療は、苦痛を伴う恐ろしいものだった。その一方で、イーライは施設内のあちこちで心霊現象に遭遇する。そんな彼の前に、施設の近所に住む少女ヘイリーが現れる。主人公イーライ役に「はじまりへの旅」のチャーリー・ショットウェル。共演に『死霊館』のリリ・テイラー、テレビドラマ「ストレンジャー・シングス」のセイディ・シンク。Netflixで2019年10月18日から配信。
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 Netflixの独自配信映画は良質の面白い映画が多いが、これもその一つ。予想外の展開に次ぐ展開で圧倒された映画である。

イーライは免疫不全の病気を患っており外気に触れるだけで身体中がアレルギー反応を起こして火傷をしたように全身が赤くなってしまう。したがって移動中のホテルでは簡易ビニールハウスの中で大人しくしている。外を移動する際は、宇宙服のような防護服に身を包まないといけない。両親とともにすがるような気持ちで、最後の望みを託した最新の治療を受ける施設へと向かっている。

イーライと両親が着いたところは、洋館を改造した空調設備完備の施設。中に入るとイーライは防護服を脱ぎ、普通に生活ができる。何事も当たり前のようにあればありがたみを感じないもの。イーライの姿からは普通に生活ができることがいかにありがたいかが伝わってくる。そして治療が開始されるが、担当するのはいかにも怪しげな女性医師と看護師が2人。

イーライは個室を与えられ、1人で寝起きすることになる。最初の夜、不安を隠しきれぬまま窓から外を眺めていると、外から誰かが窓に息を吹きかける。その瞬間、これはホラー映画なのだなと理解できる。ジャブとしては、実に効果的である。さらに洋館の外に住む女の子がイーライに興味を示して寄ってくる。しかし、あくまでも厳重に封鎖された窓越しの対面である。

そして怪奇現象が本格化する。ちょっとした光の加減で女の子の霊が一瞬姿を現す。さらに怒涛の勢いの怪奇現象が続く。窓に吹きかけた息で曇ったところに自分の名前ELIと書くと、「LIE」(嘘)と霊が書いてくる。タンスに逃げ込めばそれをひっくり返され、ドアに「LIE」嘘の文字を書きなぐられる。挙句に足を引っ張られて建物外に通じるエアロックに押し込められて危険な外気にさらされようとされる。物理的な現象が伴うのはなかなかの迫力である。

ところが映画は終盤にかけてどんでん返しの連続となる。白と黒とが、つまり正義と悪とがコロコロと入れ替わり、目まぐるしく見方が変わる。一体何がどうなっているのか最後までわからない。このストーリー展開は凄い。当然、ラストの結末なんて予想できるわけがない。普通のホラー映画であれば、霊なり悪霊なりが退治されるまで一直線のストーリーであるが、曲がりくねって先が見通せないストーリーは気が抜けない。ホラー映画とは言え、怖いというより面白い。

大作ではなくても堪能できる。Netflix侮りがたしと思わせてくれる一作である・・・


評価:★★★☆☆







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2020年02月23日

【セールスマン】My Cinema File 2184

セールスマン.jpg

原題: Forushande
2016年 イラン・フランス
監督: アスガー・ファルハディ
出演: 
シャハブ・ホセイニ: エマッド・エテサミ
タラネ・アリドゥスティ: ラナ・エテサミ
ババク・カリミ: ババク
ファリド・サッジャディホセイニ: 男
ミナ・サダティ: サナム

<映画.com>
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『別離』「ある過去の行方」などで知られるイランの名匠アスガー・ファルハディ監督が手がけ、2016年・第69回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で男優賞と脚本賞を受賞、第89回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞したサスペンスドラマ。小さな劇団に所属し、作家アーサー・ミラーの戯曲「セールスマンの死」の舞台に出演している役者の夫婦。ある日、引っ越したばかりの自宅で夫が不在中に、妻が何者かに襲われる。事件が表ざたになることを嫌がり、警察へ通報しようとしない妻に業を煮やした夫は、独自に犯人を探し始めるが……。劇中で描かれる演劇と夫による犯人探し、そして夫婦の感情のズレを絡めながら、思いがけない方向へと転がっていく物語を描く。
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冒頭、「逃げろ!」という声がアパートに響き渡り、住人たちが慌ただしく避難する。爆撃か地震かと思うが、主人公のエマッド・エテサミも観ている我々も何があったのかよくわからない。窓からは、建物の隣の土地をショベルカーが掘り続けている。どうやらそれが原因らしい。いつ倒壊してもおかしくないことから、エマッドとラナ夫婦は、あるアパートに引っ越す。

お国柄なのだろうか、引越先の部屋を訪ねると一室に鍵がかかっており、聞けば前の住人(女性)の荷物がまだ残っているとのこと。引越し先がいまだ見つからず、見つかり次第取りに行くと言っているとのこと。つまり家賃滞納なのだろう。これも日本ではあり得ないことであるが、なんと家主のババクは、おかまいなしに前の住人の荷物を全て外に出してしまう。その夜は雨で、エマッドはその荷物を屋根のあるところに移動させ、ビニールをかぶせる。さすがに気になるのだろう。ちなみにこの前の住人は最後まで登場しない。

エマッドとラナは小さな劇団に所属していて、今はアーサー・ミラーの『セールスマンの死』の公演を控えている。これが下手な邦題のゆえんだろう。連日の稽古にも力が入っている。稽古を終えて先に家に戻ったラナは、夫と電話したあとシャワーを浴びようとする。その時、家のベルがなる。夫が帰ってきたと思ったラナは、玄関の鍵を外し、家の扉を開けるとそのままシャワーに向かう。不用心だが、人間の思い込みとはそんなものだろう。そして事件は起こる・・・

エマッドは買い物をして帰ってくる。ベルを押しても返事がないので、階下の住人に頼んで扉を開けてもらう。階段を上がっていくと、なにやら血液らしきものが点々とついている。心配になって家にとびこむと、洗面所が血で染まっている。ラナの姿はない。そこに同じアパートの住人からラナが病院に担ぎ込まれたと知らされる。慌てて病院に駆け付けると、ラナが救急治療を受けている。何者かに暴行され、倒れているところを隣人が発見して、病院へ運んでくれたのであった。

ふだん、見慣れている西洋世界の常識からすると、ラナは不用心にも鍵を開けっぱなしにしてしまい、侵入してきた者にレイプされたのだろうと思ってしまう。だが、そこは戒律の厳しいイラン映画ということもあるのだろう、結果的にはただの暴行である。犯人は前の住人を訪ねて来た人物だろうという話。前の住人が「いかがわしい商売」をしていたからという「イラン的説明」もかえって新鮮味がある。

妻が暴行を受けたというのに夫妻は警察への届出を躊躇する。ラナは退院したものの、ショックを受けて家に引きこもる。エマッドは侵入者のものと思われる携帯と車のキーを見つける。表に出てそのキーを頼りに探すと一台の軽トラックを発見する。ここまで遺留品があれば、普通あっという間に犯人逮捕であるが、警察に届けないエマッドは車を自分たちのマンションの駐車場に停めて隠す。

物語はエマッドとラナを中心に描かれていく。やがて明らかになる暴行犯。それは我々の映画の世界(欧米日韓中香港)の常識からするとありえない犯人。邦題をつけた人が重視した『セールスマンの死』の舞台はあまりストーリーとは関係ない。興味深いのはやはりイランのイスラム文化の香りだろうか。文化が変われば人々の感情も認識も変わる。我々の文化が良いというわけではなく、ただ敬虔なイスラム文化とは映画でもこれだけ違いがわかるということ。

ストーリーとは関係ないと言いつつも、劇中では女性が裸で男を誘いかけるシーンが出てくる。イスラム文化では当然女性は服をまとっているわけであり、演じる者もそこに強い矛盾を感じている。そんなとところもまた興味を惹かれる。ふだんなじみの薄いイラン映画に触れられるいい機会となる一作である・・・


評価:★★☆☆☆







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2020年02月22日

【グリーンブック】My Cinema File 2183

グリーンブック.jpg

原題: Green Book
2018年 アメリカ
監督: ピーター・ファレリー
出演: 
ビゴ・モーテンセン: トニー・“リップ”・バレロンガ
マハーシャラ・アリ: ドクター・ドナルド・シャーリー
リンダ・カーデリニ: ドロレス
ディミテル・D・マリノフ: オレグ
マイク・ハットン: ジョージ
セバスティアン・マニスカルコ: ジョニー・ヴェネス
P・J・バーン: プロデューサー

<映画.com>
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人種差別が色濃く残る1960年代のアメリカ南部を舞台に、黒人ジャズピアニストとイタリア系白人運転手の2人が旅を続けるなかで友情を深めていく姿を、実話をもとに描き、第91回アカデミー作品賞を受賞したドラマ。1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒として働くトニー・リップは、粗野で無教養だが口が達者で、何かと周囲から頼りにされていた。クラブが改装のため閉鎖になり、しばらくの間、無職になってしまったトニーは、南部でコンサートツアーを計画する黒人ジャズピアニストのドクター・シャーリーに運転手として雇われる。黒人差別が色濃い南部へ、あえてツアーにでかけようとするドクター・シャーリーと、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに、その旅に同行することになったトニー。出自も性格も全く異なる2人は、当初は衝突を繰り返すものの、次第に友情を築いていく。トニー役に『イースタン・プロミス』のビゴ・モーテンセン、ドクター・シャーリー役に『ムーンライト』のマハーシャラ・アリ。トニー・リップ(本名トニー・バレロンガ)の実の息子であるニック・バレロンガが製作・脚本を手がけ、父とドクター・シャーリーの友情の物語を映画化した。監督は、「メリーに首ったけ」などコメディ映画を得意としてきたファレリー兄弟の兄ピーター・ファレリー。アカデミー賞では全5部門でノミネートされ、作品賞のほか脚本賞、助演男優賞を受賞した。
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アカデミー賞の作品賞に輝いた作品となれば、観ないことはあり得ない。期待を込めて鑑賞に至った映画。実話に基づく物語は、1962年ニューヨークから始まる。主人公のトニー・バレロンガは、高級クラブ“カパカバーナ”で用心棒として働いている。バレロンガという発音し難い名字と口達者なことから、トニー・“リップ”と呼ばれているが、クラブが改装のため数ヶ月間閉鎖すると知らされる。たった数ヶ月ではあるが、生活のためにトニーは短期の仕事を探す。

そうしたところ、友人からあるドクターがドライバーを探していると仕事を紹介される。さっそく面接に行くと、雇主は黒人のピアニストであるドクター・シャーリー。実は自身イタリア系白人であるトニーは、黒人に対して差別意識を持っている。冒頭で家に修理に来た黒人が飲み物を飲むのに使ったコップをゴミ箱に捨てるシーンが出てくる。奥様はそんな意識などなく、さり気なく捨てられていたコップを戻したりする。そんなシーンを頭に入れて観るとトニーの心理状態もわかる。

ドクター・シャーリーは、クリスマス前までの2ヶ月間のツアーに同行するドライバー兼ボディガードを探している。しかも行先は黒人差別が色濃く残る南部。それなりの思い入れがあるのだろう。一旦は断るトニーだが、ドクター・シャリ―は思うところもあって報酬をはずんだため、仕事を受けることにする。そしてコンサートツアーへ出発の日、トニーはレコード会社から「1つでもコンサートへの出演を逃したら給料は支払わない」とくぎを刺され、“グリーンブック”を渡される。これは当時黒人でも宿泊拒否にあわない宿をまとめたガイドブックである。

南北戦争の歴史を鑑みても南部は黒人差別が色濃く残る。白人の運転する車にスーツを着た黒人が主人よろしく座っているという図は、当時の南部では異例。しかも、ガサツな白人のトニーと立ち居振る舞いが優雅なドクター・シャーリーとは対照的。道中でケンタッキー・フライドチキンを見つけたトニーが、ドクター・シャーリーが1度もこの庶民的ファストフードを食べたことがない事を知ると、強制的に食べさせるシーンがそれを見事に現している。

旅行中、トニーは奥さんに手紙を書く。電話代は高いから手紙を書けと奥さんに言われたトニーは、柄にもなく素直に書くのであるが、何せ見てもわかる通りの無教養。内容は幼稚なものであるが、ドクター・シャーリーがアドバイスをしてロマンティックな手紙に変貌する。時代なのだろう、それをもらった奥さんは喜び、うっとりと読みふける。さらにそれを友人に見せたりする。自分の夫なのだから、(ゴーストライターがいると)わかりそうなものだろうと思うが、その答えは最後にわかる。

また、ドクター・シャーリーは旅行中にあろうことか1人でバーに行き、白人たちに暴行される。知らせを受けたトニーが彼を助け出すが、この時代の黒人差別は本当に見ていて酷い。しかし、一方でコンサートとなると、白人たちが正装でドクター・シャーリーの演奏を聴きに来る。白人たちも一枚岩ではないのだろうが、あるコンサート前の食事ではレストランへの入室を断られてしまう。

その他でもトイレを使おうとしたドクター・シャーリーは、主催者から外にある黒人のスタッフ用トイレを案内される(それはボロボロの汚いトイレだったりする)。また、道中では白人警察に止められ、職務質問を受ける。黒人は外出禁止だと言われ、一緒に侮辱されたトニーが頭にきてその警官を殴って拘留される。そんなこともあって、2人の絆が深まっていく様は心温まるものがある。

はっきり言って、「周りは差別しても俺はしない」というタイプの映画はよくあるものの、この映画には実話という強みがある。道中、エンコした車の修理を待つドクター・シャーリーを炎天下で畑作業をする貧しい黒人労働者たちが不思議そうに見つめるシーンがある。ドクター・シャーリーはスーツを着て、白人のトニーが汗を流して車の修理をしているのである。同じ黒人でも両者には歴然とした差があり、ドクター・シャーリーもまたその差を苦しく思っている。

黒人差別のシーンは見ていて快くないが、それでもラストで家族の下に帰ったトニーとドクター・シャーリーの姿には心打たれるものがある。トニーの奥さんもまた素敵な女性である。2人は2013年に数ヶ月違いで亡くなるまでずっと友達でいたそうである。今は果たして本当に差別はなくなったのであろうか。2人の友情とともに、いろいろなことを考えさせてくれる映画である・・・


評価:★★★☆☆







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2020年02月15日

【スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム】My Cinema File 2182

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム.jpg

原題: Spider-Man: Far From Home
2019年 アメリカ
監督: ジョン・ワッツ
出演: 
トム・ホランド: ピーター・パーカー/スパイダーマン
サミュエル・L・ジャクソン: ニック・フューリー
ゼンデイヤ: ミシェル・“MJ”・ジョーンズ
コビー・スマルダース: マリア・ヒル
ジョン・ファブロー: ハッピー・ホーガン
J・B・スムーブ: デル先生
ジェイコブ・バタロン: ネッド
マーティン・スター: ハリントン先生
マリサ・トメイ: メイおばさん
ジェイク・ギレンホール: クエンティン・ベック/ミステリオ
アンガーリー・ライス: ベティ
トニー・レボロリ: フラッシュ
レミー・ハイ: ブラッド
ヌーマン・アチャル: ディミトリ
J・K・シモンズ: J・ジョナ・ジェイムソン
ベン・メンデルソーン: タロス
シャロン・ブリン: ソレン

<映画.com>
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若手俳優のトム・ホランドが新たにスパイダーマン/ピーター・パーカーを演じ、「アベンジャーズ」を中心とした「マーベル・シネマティック・ユニバース」の世界に参戦した『スパイダーマン ホームカミング』の続編。『アベンジャーズ エンドゲーム』後の世界を舞台に、スパイダーマンこと高校生のピーター・パーカーの新たな戦いと成長を描く。夏休みに学校の研修旅行でヨーロッパへ行くことになったピーターは、旅行中に思いを寄せるMJに告白しようと計画していた。最初の目的地であるベネチアに着いたピーターたちは水の都を満喫するが、そこに水を操るモンスターが出現。街は大混乱に陥るが、突如現れた謎のヒーロー、ミステリオが人々の危機を救う。さらに、ピーターの前には元「S.H.I.E.L.D.」長官でアベンジャーズを影から支えてきたニック・フューリーが現れ、ピーターをミステリオことベックに引き合わせる。ベックは、自分の世界を滅ぼした「エレメンタルズ」と呼ばれる自然の力を操る存在が、ピーターたちの世界にも現れたことを告げる。監督は、前作に続いてジョン・ワッツが務めた。ベック/ミステリオ役に『ナイトクローラー』のジェイク・ギレンホール。
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アベンジャーズの世界の一員であるスパイダーマン。この映画は『アベンジャーズ エンドゲーム』のあとから始まる。日常生活に戻ったピーター・パーカーだが、トニー・スタークの死のショックからなかなか立ち直れない。世界にも日常が戻るが、サノスの力によって消されてその後復活した者と、残った者とで5年の年月の差が生じている。同級生ながら年齢差が出てしまっているというのが面白い。

ピーター達は夏休みに入り、科学史ツアーの一員としてヨーロッパに向かう予定。高校生のピーターは、密かに同級生のMJとこの旅行で仲良くなりたいと意気込んでいる。その間にもS.H.I.E.L.D.長官のニック・フューリーから再三電話がかかってくるが、スルーしている。そしてヴェネチアにやってくるが、なんと突然水中から怪物が現れて暴れ始める。スパイダーマンのスーツを置いてきたピーターは、スーツなし苦戦を強いられるが、そこにマスク姿のマントの男が現れ、怪物を倒して去っていく。

その夜、ピーターはとうとうニック・フューリーに捕まり、昼間現れたマントの男を紹介される。男の名はクエンティン・ベック。通称「ミステリオ」。パラレルワールドの世界で別次元の地球からこの地球にやってきたということ。また新たなヒーローかと思う。演じるのはジェイク・ギレンホール。この人はいろいろな役を演じる。ニックはピーターに対し、ミステリオと共に戦い地球を守るよう任務を与えるが、旅行を楽しみたいピーターは一旦はこれを断る。しかし、ニックから亡きトニー・スタークのサングラスを渡され、結局ミステリオと共に強敵エレメンタルズと戦う事になる。

このサングラスだが、イーディス(E.D.I.T.H.)と呼ばれる人工知能を搭載していて、人工衛星からの攻撃やドローンを意のままに操る事の出来る代物。これを託されたピーターは喜びもあるが責任の重さも感じてしまう。苦戦の末、エレメンタルズを倒したミステリオとピーター。ミステリオを信頼したピーターは、トニーから託されたイーディスをミステリオに託す。しかし、実はミステリオは、ピーターからこのイーディスを奪うために正義のヒーローを演じていたのである。ここに至り、真の敵が正体を現す・・・

スパイダーマンの特徴としては、何と言ってもピーター・パーカーが現役の高校生であるということにある。それゆえに、いたるところで若さが露呈する。今回は同級生のMJに何とか想いを伝えようと一生懸命になるし、トニー・スタークの死のショックから立ち直れず、ましてやその代わりを務めるなんて荷が重すぎると感じている。そんな気の迷いが今回のピンチを招いてしまう。そんなピーターをハッピー・ホーガンが励ましたりして敵に向かっていく勇気を与える。
 
 展開的には文句はないのであるが、エレメンタルズの正体については疑問が残ってしまった。イーディスを手に入れた後はわかるのだが、その前は何だったのかちょっとわからない。ドローンを手に入れた効果がよくわからないのである。あんまり深く考えるところではないのかもしれないが、もう少しわかりやすくしてくれてもいい気がする。そしてハッピーエンドのあとのエンドロール途中では、次回作への布石が打たれる。アベンジャーズは一息ついても個々のシリーズは続く様で、それもまた良しである。

 次はスパイダーマンなのか他のヒーローなのか。マーベルのシリーズは目が離せないと改めて思わされる一作である・・・


評価:★★☆☆☆







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