
2019年 日本
監督: 武内英樹
原作: 魔夜峰央
出演:
二階堂ふみ: 壇ノ浦百美
GACKT: 麻実麗
伊勢谷友介: 阿久津翔
ブラザートム: 菅原好海
麻生久美子: 菅原真紀
島崎遥香: 菅原愛海
間宮祥太朗: 埼玉県人の青年
成田凌: 五十嵐春翔
加藤諒: 下川信男
益若つばさ: おかよ
<シネマトゥデイ>
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人気コミック「パタリロ!」の作者である魔夜峰央の人気漫画を実写映画化。埼玉県民が東京都民から虐げられている架空の世界を舞台に、東京都知事の息子と埼玉出身の転校生の県境を超えたラブストーリーが展開する。『ヒミズ』 『私の男』などの二階堂ふみと『カーラヌカン』で主要人物を演じたミュージシャンのGACKTが主演を務める。『テルマエ・ロマエ』シリーズなどの武内英樹がメガホンを取った。
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子どもの頃から埼玉から出て東京に住むことを夢見ていた菅原愛海は、恋人の五十嵐春翔との結納の日を迎える。両親と一緒に車で東京に向かう愛海。車中で流れるラジオ放送で、なにやら埼玉の都市伝説の話が始まる。思わず家族3人で聴き入る。こうして始まったのは、架空のお話。その昔、越後の国からまず東京が独立し、次に横浜が神奈川県として独立、最後に残り物が埼玉県として独立する。そのため、埼玉県民は東京都民からひどい迫害を受けていた。
あくまでも架空の話ではあるが、こうしてドラマはラジオから流れる架空の話と、東京に向かう愛海ら家族の話が並行して進む。その架空の世界では、埼玉県から東京に行くには通行手形がなくてはならない。そんな中、東京の白鵬堂学院は東京都知事になる人物を輩出するエリート養成学校。そこでは現都知事の息子檀ノ浦百美が生徒会長として君臨している。クラスは住んでいるエリアごとにAクラスからB、C、Dとランク付けされ、埼玉県人は底辺のZクラスに配属されている。当然、教室をはじめとして環境は劣悪である。
そんな白鵬堂学院にある日、アメリカ帰りの麻実麗という容姿端麗な転校生がやってくる。東京都港区出身いう都会指数の高さもあり、麻実麗はたちまち周囲の注目を集める。生徒会長の百美も麗を歓迎し、自ら学院内を案内する。その時、Zクラスの生徒が腹痛を訴えた女生徒を医務室に連れていこうとしているところに出くわす。ところがそれを見た百美は、「埼玉県民はそこの草でも食っておけ。」と言い放つ。かつてのアメリカの黒人差別の如くである。それに対する麗の態度は、なぜか埼玉県民に同情的であり、百美と対立してしまう。
百美は麗を学院から追放するよう都知事である父親に頼むが、多額の寄付をしていることを理由に拒否される。そこで百美は全学生を召集して麗にテストを課す。これがまたなんとも言えない。東京テイスティングというそれは『東京の空気』のテイスティングであり、それぞれの臭いの特色から地名を当てていく。これを主演のGACKTがワインの如く大真面目にやるものだから、バカバカしくて笑ってしまう。そして気を失った百美を介抱する麗は、なんと百美にキスをする。一応、互いに男であり、なんとボーイズラブの話なのかと思えてくる。
こうして埼玉を徹底的にコケにしたナンセンスストーリーが展開されていく。都知事には執事・阿久津がいて麗に疑いを持つ。一方、キスによって麗にメロメロになった百美は麗と遊園地に行くが、ここで何と埼玉狩りが行われる。そして、麗の家政婦・おかよとその子供が捕まり、疑いをかけられた麗は、埼玉県の鳥シラコバトの絵柄のついた草加せんべいを踏むことを強いられる。要は踏み絵であるが、これで隠れ埼玉県民をあぶり出そうというもの。そしてなんと麗はこれを踏むことができず、実は埼玉県民であることがバレてしまう。何ともここまでバカバカしいと、逆に面白みが増していく。
物語は、こうして麗と百美が埼玉に対する差別を解放すべく戦っていく様を描いていく。合間に東京へ向かう愛海と両親のエピソードが描かれる。実は両親は父親が埼玉出身であり母親が千葉出身でラジオ放送を聴きながら揉めたりする。埼玉をコケにするブームはかつてあったが、「なぜ今頃改めて」と思わなくもない。ただ、これはその頃流行った原作マンガの映画化とあれば、なるほどである。いずれにせよ、徹底したナンセンス・コメディは徹底的にバカバカしく、それゆえに思わず笑ってしまう。
現実の話と物語(都市伝説)とに区分したがゆえに、ナンセンスもそれなりに成立しているから、素直に物語の世界に入っていける。GACKTも徹底的にGACKTだし、二階堂ふみも男役だが、なり切っているし、京本政樹も伊勢谷友介も大真面目に活躍する。なるほど、なぜか大ヒットしたのもよくわかる。最後は大団円でラジオドラマは終わる。東京の結納場所に到着した愛海にもオチがあって最後まで楽しめる。ナンセンスもここまで極めれば大したものなのかもしれない。
肩ひじ張らずに素直に楽しみたい映画である・・・
評価:★★☆☆☆