2020年03月29日

【翔んで埼玉】My Cinema File 2196

翔んで埼玉.jpg

2019年 日本
監督: 武内英樹
原作: 魔夜峰央
出演: 
二階堂ふみ: 壇ノ浦百美
GACKT: 麻実麗
伊勢谷友介: 阿久津翔
ブラザートム: 菅原好海
麻生久美子: 菅原真紀
島崎遥香: 菅原愛海
間宮祥太朗: 埼玉県人の青年
成田凌: 五十嵐春翔
加藤諒: 下川信男
益若つばさ: おかよ

<シネマトゥデイ>
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人気コミック「パタリロ!」の作者である魔夜峰央の人気漫画を実写映画化。埼玉県民が東京都民から虐げられている架空の世界を舞台に、東京都知事の息子と埼玉出身の転校生の県境を超えたラブストーリーが展開する。『ヒミズ』 『私の男』などの二階堂ふみと『カーラヌカン』で主要人物を演じたミュージシャンのGACKTが主演を務める。『テルマエ・ロマエ』シリーズなどの武内英樹がメガホンを取った。
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子どもの頃から埼玉から出て東京に住むことを夢見ていた菅原愛海は、恋人の五十嵐春翔との結納の日を迎える。両親と一緒に車で東京に向かう愛海。車中で流れるラジオ放送で、なにやら埼玉の都市伝説の話が始まる。思わず家族3人で聴き入る。こうして始まったのは、架空のお話。その昔、越後の国からまず東京が独立し、次に横浜が神奈川県として独立、最後に残り物が埼玉県として独立する。そのため、埼玉県民は東京都民からひどい迫害を受けていた。

あくまでも架空の話ではあるが、こうしてドラマはラジオから流れる架空の話と、東京に向かう愛海ら家族の話が並行して進む。その架空の世界では、埼玉県から東京に行くには通行手形がなくてはならない。そんな中、東京の白鵬堂学院は東京都知事になる人物を輩出するエリート養成学校。そこでは現都知事の息子檀ノ浦百美が生徒会長として君臨している。クラスは住んでいるエリアごとにAクラスからB、C、Dとランク付けされ、埼玉県人は底辺のZクラスに配属されている。当然、教室をはじめとして環境は劣悪である。

そんな白鵬堂学院にある日、アメリカ帰りの麻実麗という容姿端麗な転校生がやってくる。東京都港区出身いう都会指数の高さもあり、麻実麗はたちまち周囲の注目を集める。生徒会長の百美も麗を歓迎し、自ら学院内を案内する。その時、Zクラスの生徒が腹痛を訴えた女生徒を医務室に連れていこうとしているところに出くわす。ところがそれを見た百美は、「埼玉県民はそこの草でも食っておけ。」と言い放つ。かつてのアメリカの黒人差別の如くである。それに対する麗の態度は、なぜか埼玉県民に同情的であり、百美と対立してしまう。

百美は麗を学院から追放するよう都知事である父親に頼むが、多額の寄付をしていることを理由に拒否される。そこで百美は全学生を召集して麗にテストを課す。これがまたなんとも言えない。東京テイスティングというそれは『東京の空気』のテイスティングであり、それぞれの臭いの特色から地名を当てていく。これを主演のGACKTがワインの如く大真面目にやるものだから、バカバカしくて笑ってしまう。そして気を失った百美を介抱する麗は、なんと百美にキスをする。一応、互いに男であり、なんとボーイズラブの話なのかと思えてくる。

こうして埼玉を徹底的にコケにしたナンセンスストーリーが展開されていく。都知事には執事・阿久津がいて麗に疑いを持つ。一方、キスによって麗にメロメロになった百美は麗と遊園地に行くが、ここで何と埼玉狩りが行われる。そして、麗の家政婦・おかよとその子供が捕まり、疑いをかけられた麗は、埼玉県の鳥シラコバトの絵柄のついた草加せんべいを踏むことを強いられる。要は踏み絵であるが、これで隠れ埼玉県民をあぶり出そうというもの。そしてなんと麗はこれを踏むことができず、実は埼玉県民であることがバレてしまう。何ともここまでバカバカしいと、逆に面白みが増していく。

物語は、こうして麗と百美が埼玉に対する差別を解放すべく戦っていく様を描いていく。合間に東京へ向かう愛海と両親のエピソードが描かれる。実は両親は父親が埼玉出身であり母親が千葉出身でラジオ放送を聴きながら揉めたりする。埼玉をコケにするブームはかつてあったが、「なぜ今頃改めて」と思わなくもない。ただ、これはその頃流行った原作マンガの映画化とあれば、なるほどである。いずれにせよ、徹底したナンセンス・コメディは徹底的にバカバカしく、それゆえに思わず笑ってしまう。

現実の話と物語(都市伝説)とに区分したがゆえに、ナンセンスもそれなりに成立しているから、素直に物語の世界に入っていける。GACKTも徹底的にGACKTだし、二階堂ふみも男役だが、なり切っているし、京本政樹も伊勢谷友介も大真面目に活躍する。なるほど、なぜか大ヒットしたのもよくわかる。最後は大団円でラジオドラマは終わる。東京の結納場所に到着した愛海にもオチがあって最後まで楽しめる。ナンセンスもここまで極めれば大したものなのかもしれない。

肩ひじ張らずに素直に楽しみたい映画である・・・


評価:★★☆☆☆






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2020年03月28日

【シャザム!】My Cinema File 2195

シャザム!.jpg

原題: Shazam!
2019年 アメリカ
監督: デビッド・F・サンドバーグ
出演: 
ザカリー・リーバイ: シャザム
マーク・ストロング: ドクター・シヴァナ
アッシャー・エンジェル: ビリー・バットソン
ジャック・ディラン・グレイザー: フレディ・フリーマン
アダム・ブロディ: フレディ(スーパーヒーロー)
ジャイモン・フンスー: 魔術師
フェイス・ハーマン: ダーラ・ダドリー
ミーガン・グッド: ダーラ(スーパーヒーロー)

<映画.com>
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『スーパーマン』『バットマン』と同じDCコミックスのヒーロー「シャザム」を映画化。見た目は大人だが中身は子どもという異色のヒーローの活躍を、独特のユーモアを交えて描く。身寄りがなく里親のもとを転々としてきた少年ビリーはある日、謎の魔術師からスーパーパワーを与えられ、「S=ソロモンの知力」「H=ヘラクラスの強さ」「A=アトラスのスタミナ」「Z=ゼウスのパワー」「A=アキレスの勇気」「M=マーキューリーの飛行力」という6つの力をあわせもつヒーロー「シャザム(SHAZAM)」に変身できるようになる。筋骨隆々で稲妻を発することができるが、外見は中年のシャザムに変身したビリーは、ヒーローオタクの悪友フレディと一緒にスーパーマン顔負けの力をあちこちで試してまわり、悪ノリ全開で遊んでいた。しかし、そんなビリーの前に、魔法の力を狙う科学者Dr.シヴァナが現れ、フレディの身に危険が及んでしまう。遊んでいる場合ではないと気付いたビリーは、ヒーローらしく戦うことを決意するが……。シャザム役はTVシリーズ「CHUCK チャック」のザカリー・リーバイ、監督は『アナベル 死霊人形の誕生』のデビッド・F・サンドバーグ。
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1974年のクリスマス、兄とともに父が運転する車に乗っていたサデウス・シヴァナは、突如周りから誰もいなくなる。車のドアを開けるとそこは宮殿のような場所。そこにいたのは謎の老人シャザム。老人は寿命を迎えつつあり、悪を押さえる力が弱くなっている。サデウスが後継者としてふさわしいかを判断されるが、その資格なしと判断される。現実世界に引き戻された時には既に遅し。車中に戻ったサデウスと兄が言い争ったことで父が運転を誤り、交通事故に遭ってしまう。

そして現代。幼い頃に母親と離れ離れになり、孤児となったビリー・バットソンは、新たな里親バスケス夫妻が運営するグループホームに入居する。そこには足が不自由なフレディ、ダーラ、メアリー、ユージーン、ペドロらが暮らしている。ビリーは、ここでもまた馴染もうとはしない。一方、サデウスは父の経営する会社がスポンサーをしている研究所を使い、集団ヒステリー調査の名目でかつての自分のようにシャザムに召喚された人々について研究している。そしてとうとう再び謎の宮殿に行く方法を発見したサデウスは、今度は魔物たちの力の源である魔法の目を封印から解き放ち、魔物たちの力を得てしまう。

さらに老いたシャザムは、力を委ねるべき者としてついにビリーを呼び寄せる。そして「力」を与えられたビリーはひ弱な少年の姿から筋骨隆々の若者へと変身する。現実世界へ戻ったビリーは、その力を把握できず、ヒーローオタクのフレディに助力を求める。2人で超能力をいろいろと試す。空を飛べるのか、目から熱線を放出できるのか、このあたりはコメディタッチで物語は進む。そして「シャザム!」と唱えることで自在に変身できることがわかる。

日本のヒーローモノでは「変身」は珍しくないが、呪文を唱えて変身するというのはアメリカンヒーローでは珍しい気がする。対する悪は、魔物の力を得たサデウス。折り合いの悪かった父と兄、そして父の会社の役員たちを虐殺する。そして「新たな勇者が生まれた」という魔物の進言を聞き、その力を得るためシャザムを探し始める。こうして正義のヒーローと対する悪とが自己紹介的を終えると、いよいよと対立の構造へと移る。それにしても変身すると子供から大人へと代わるのが面白い。ちょっと珍しいスタイルのヒーローである。

クライマックスは遊園地でのシャザムとサデウスとの戦い。自らの力を掌握したシャザムだが、フレディたちを人質に取られると手が出せなくなる。しかし、そこで老人シャザムの言葉を思い出したビリー=シャザムは、機転を利かせた奇策に出る。新たな見方を得るシャザム。物語は、単純な勧善懲悪ものだが、なかなか他にはないユニークなヒーローである。ミッドクレジットとエンドクレジットとにそれぞれ次回予告的なショートストーリーが流れる。興行成績次第で、シリーズ化するハラなのだろう。

こちらはマーベルではなく、DCコミック。今後、スーパーマンやバットマンとのコラボレーションはあるのだろうか。アベンジャーズが一段落したところであるし、今後の展開を楽しみにしたいと思う一作である・・・


評価:★★☆☆☆






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2020年03月27日

【殺人の追憶】My Cinema File 2194

殺人の追憶.jpg

原題: Memories of Murder/살인의 추억
2003年 韓国
監督: ポン・ジュノ
出演: 
ソン・ガンホ: パク刑事
キム・サンギョン: ソ刑事
パク・ヘイル: パク・ヒョンギュ
キム・レハ: チョ・ヨング
ソン・ジェホ: シン課長
ピョン・ヒボン: ク・ヒボン課長
パク・ノシク: グァンホ
チョン・ミソン: カク・ソリョン

<映画.com>
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実際に起きた未解決連続殺人事件をテーマにした衝撃サスペンス。韓国で560万人を越える動員数を記録。事実を基に綿密に構成された脚本と緊迫感あふれる映像で、犯人を追う刑事たちの焦燥感が身近に迫る。東京国際映画祭アジア映画賞受賞。主役は『シュリ』『JSA』で知られる、韓国の名優、ソン・ガンホ。田舎町の少々、愚鈍な刑事を演じるため、体重を10kg増やし役作りした。監督・脚本は『ほえる犬はかまない』のポン・ジュノ。
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時に1986年10月、所はのどかな田園風景が広がる韓国の田舎町、華城市。そこで農業用水路に捨てられた女性の死体が発見される。暴行され、縛られたままという状態。さらに2ヵ月後の12月にも、やはり女性の死体が発見される。暴行された手口から同一犯による犯行と見られ、連続殺人事件として地元警察の刑事パクとヨングが捜査を担当することになる。

当時の韓国の捜査現場の状況はよくわからないが、事件現場には子供たちが走り回り、せっかくの犯人のものと思われる足跡もトラクターが通って踏みつぶされてしまう状況。現場保存もままならないいい加減なもの。そして捜査陣に、ソウルから来たソ・テユン刑事が加わる。さすがに首都から来ただけあって、ソ刑事の捜査は合理的かつ科学的。一方、地元の田舎刑事パクは昔ながらのいい加減な捜査であり、事件に対する捜査方法は対照的。

そんな中、聞き込みをしていたパク刑事は、村人からクァンホという軽度の知的障害を持つ男が被害者の1人に付きまとっていたという証言を得る。さっそく相棒のヨングとともにクァンホを締め上げるパク。拷問に近いそのやり方は、現代はもちろん、当時であっても問題だろう。挙句の果てには履いていた靴を使って証拠を捏造する始末。さらに山の中に連れ込んで自白を迫ると、クァンホは犯行の様子を詳しく語り始める。クァンホが犯人だと確信したパクとヨングだが、逮捕状は棄却されてしまう。一方、独自に捜査を進めていたソ刑事は、被害者がもう一人いると言い出す。

そして大掛かりな捜索が行われ、ソ刑事の言う通りもう1人の女性の死体が発見される。前時代的な捜査を行うパク刑事と被害者の共通点を浮かび上がらせて推理を働かせるソ刑事とは何とも対照的である。そしてソ刑事は、被害者に「失踪当時赤い服を着ていた」「当日に雨が降っていた」という共通点を割り出し、婦警のギオクに赤い服を着せ、おとり捜査を行う。しかし、犯人はそれをあざ笑うかのように引っ掛かるひとはなく、逆に第四の犯行が行われる。

前半は、主演の2人の刑事のそれぞれ対照的な捜査に対するスタンスと捜査が行われる様子が描かれる。「赤い服」「雨の日」に加え、あらたにラジオ番組に「憂鬱な手紙」という曲のリクエストが犯行の都度寄せられるという共通点が浮かび上がり、やがてリクエストの葉書をきっかけにして1人の男が捜査線上に浮かんでくる。こうした過程は推理モノの趣があって、事件にどんどん引きつけられていく。惜しいところで手掛かりを逃したり、犯人だと思っていたら、決定的な証拠がでなかったり・・・コメディ風の部分とシリアスな部分が融合し、ストーリーに味わいを持たせていく。

 そしてラスト。時を経て2003年。今はもう刑事を辞め、土地で暮らしていたパクは、仕事で久々に華城市を訪問。最初の死体が発見された用水路をのぞき込む。このシーンもなかなかのもの。インパクトのあるラストである。韓国は嫌いだが、映画は残念ながら面白い。ハリウッドの映画とは異なる独特の雰囲気を擁するものも多く、この映画も実に見事である。韓国で大ヒットしたというのも頷ける。今まで観なかったのが残念としか言いようがない。

 一見の価値ある映画である・・・


評価:★★★☆☆







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2020年03月21日

【ザ・ファブル】My Cinema File 2193

ザ・ファブル.jpg


2019年 日本
監督: 江口カン
原作: 南勝久
出演: 
岡田准一: ファブル/佐藤アキラ
木村文乃: 佐藤ヨウコ
山本美月: 清水ミサキ
福士蒼汰: フード
柳楽優弥: 小島
向井理: 砂川
木村了: コード
井之脇海: 黒塩(クロ)
藤森慎吾: 河合ユウキ
佐藤二朗: 田高田
安田顕: 海老原
佐藤浩市: ボス

<シネマトゥデイ>
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週刊ヤングマガジン連載の南勝久の漫画を、『永遠の0』などの岡田准一を主演に迎えて実写映画化。天才的な殺し屋が休業し、一般人として生活するさまを描く。共演には木村文乃、山本美月、福士蒼汰、柳楽優弥、向井理、安田顕、佐藤浩市らが集結。脚本は『20世紀少年』『GANTZ』シリーズなどの渡辺雄介、CMディレクター出身の江口カンがメガホンを取った。
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日本映画では、テレビドラマやマンガ、小説原作の映画が多い。ちょっと人気が出るとすぐ映画化というイージーな流れはいかがかという気もするが、まぁ面白ければいいのだろう。この映画もご多分にもれず、マンガの映画化作品である。

主人公は、「ファブル」というニックネームで呼ばれる凄腕の殺し屋。凄腕の殺し屋と言えば、ゴルゴ13を思い浮かべるが、主人公のファブルはデューク東郷とはまったくタイプが異なる。徹底的にハードボイルドのゴルゴ13に対し、こちらはどこか飄々としているタイプ。だが、腕は確かである。冒頭、料亭で外国人マフィアと日本ヤクザが宴会をしている。そこに、ファブルが現れ、次々にその場にいる者たちを射殺していく。あっという間に死体の山となる。

壮絶な現場に現れたのは別の殺し屋フードとその相棒コード。フードはそこでファブルの殺し方を見てファブルの存在が噂だけではないことを確信し、ライバル心を燃え上がらせる。一方、そのファブルは、ボスに呼びだされ、1年間人殺しをせずに普通の生活をするよう命じられる。背けばボス自らファブルを殺すという脅し付き。ファブルは「佐藤あきら」という名を与えられ、相棒も「佐藤ヨウコ」という名で兄妹として大阪へと向かう。

その間、ファブルの人となりが描かれていく。子供の頃からサバイバル訓練を受け、眉をトントンと叩いてスイッチを切り替えれば大阪弁も扱える。お笑いタレントのジャッカル富岡が大好きで、あまり面白くもないお笑いに大笑いする。同行する相棒は、女性ながらも酒豪であり、言い寄ってくる男をおだてあげては飲ませて潰している。大阪ではボスの伝手で組織が部屋を用意する。用心深いファブルはベッドでは寝ず、全裸で浴槽内で寝る。なぜか部屋の中では全裸で過ごす。

ファブルの正体を知るのは、受け入れた組の組長と若頭の海老原のみ。ファブルに興味を持った海老原は、密かにチンピラを雇ってファブルを襲わせる。ファブルはわざとチンピラに殴られ情けない男を演じるが、相手の実力を瞬時に見抜く様子は観ていて心地よい。鼻血を出して倒れてたところに通りかかったのは近所に住むミサキ。そしてこのミサキに仕事を紹介してもらう。ミサキのいるデザイン会社で、時給800円でファブルは働くことになる。「普通」の味を味わうファブル。ファブルにとっては、「普通に暮らす」こともプロとしてのミッションである。

こうして一通りのイントロが終われば、当然、アクション絡みの展開となっていく。実社会の常識とどこかずれているファブル。しかし、随所で普通でない能力を発揮する。職場の同僚がミサキを盗撮しているのに気がついて、密かに盗撮を阻止するのである。組の方も小島が出所してくると、ミサキに目をつけ近づいていく。そんな小島を煩わしく思う砂川はフードを雇う・・・大方原作と同じような展開だが、原作の方が描写が細かい。そしてファブルはその本領を発揮する。

最近では、『ジョン・ウィック』シリーズが銃撃戦とカンフーを混ぜ合わせたアクションが目新しくて度肝を抜かれる想いであったが、ファブルのスピーディーな銃撃+格闘アクションもまた観ていて鮮やかで刺激的である。清掃工場というシチュエーションを活かしたアクションは、新しいタイプのアクションかもしれない。原作マンガは連載が続いているようだし、個人的にはシリーズ化しても面白いのではないかと思う。

殺しを禁止された殺し屋が、普通の生活に戸惑いながら殺さないように生きるというシチュエーションがなによりも面白い。これで終わって欲しくない一作である・・・


評価:★★☆☆☆







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2020年03月20日

【ドローン・オブ・ウォー】My Cinema File 2192

ドローン・オブ・ウォー.jpg


原題: Good Kill
2014年 アメリカ
監督: アンドリュー・ニコル
出演: 
イーサン・ホーク: トミー・イーガン
ブルース・グリーンウッド: ジョンズ
ゾーイ・クラビッツ: スアレス
ジェイク・アベル: ジマー
ジャニュアリー・ジョーンズ: モリー

<シネマトゥデイ>
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アメリカ軍の対テロ戦争で使用されている無人戦闘機ドローンの実態を、『ガタカ』などの監督アンドリュー・ニコルと主演イーサン・ホークのタッグで描く戦争ドラマ。ラスベガスの基地で無人機ドローンを遠隔操作し、クリック一つでターゲットを爆撃する男の姿を通し、現代の戦争の知られざる真相を映す。共演は、『スター・トレック』シリーズなどのブルース・グリーンウッドや『マッドマックス 怒りのデス・ロード』などのゾーイ・クラヴィッツ。ゲームのように攻撃を実行する現代の戦争の異常性にがく然とする。
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映画も世相を反映するが、戦争映画もまた現代の戦争を描くものが登場する。最近の傾向はイラク戦争であるが、戦術面ではドローン(無人攻撃機)だろう。ベトナム戦争も戦死者の増加から世論の反発を招いて撤退せざるを得なかったが、戦死者が増えればいかに世界最強の米軍と言えども沸き起こる世論の反発には抗えない。この映画はそんな風潮を反映したドローンによる攻撃を担う兵士を扱った映画である。

主人公のトーマス・イーガン少佐(通称トミー)は、F-16に3000時間、実戦派遣6回、200回の実績を持つベテランパイロット。しかし、今は実機の配属から外れてラスベガスの基地でドローンの操縦についている。実機に乗っていた誇りを胸に抱き、いまなお実戦部隊への復帰を強く上司に訴えている。任務は1万2,000キロ離れたアフガニスタンの監視。今や現地にいなくても操縦はできてしまう。

トミーの監視地域では6名のタリバン兵士が集まっている。攻撃命令を受けると、レーザーで照準を合わせ、発射ボタンを押す。約10秒後に着弾し、タリバン兵は全員吹っ飛ぶ。戦果確認をして終わり。原題の“Good Kill”は攻撃がうまく行った時のセリフ。そのものズバリであり、日本ならマイルドな表現になっているだろう。任務が終わると「操縦ボックス」を出て家路に着く。家族は妻のモリーと2人の子供。戦闘行為に従事しながらも毎日家に帰って家族と食事をできるなんて、兵士としてはこれ以上ない「職場」だと思う。されどトミーは、戦闘機に乗りたいと不満を抱く。

映画は実機への復帰を希望し、不服ながら任務に従事するトミーの様子を描いていく。その過程で、いろいろな実態が明らかになる。トミーは実戦経験豊富なベテランパイロット。しかし、ドローンは遠隔操縦であり、Gもかからないし敵に撃墜されて死ぬ失敗もない。一見、ゲームと変わらない。必要な技能も戦闘機乗りとは比べ物にならず、新たに基地に配属される新兵は、セスナで40時間程度の訓練で配属される。そしてそれで充分に任務が果たせてしまう。

ある時、トミーたちはタリバンのNo.2の隠れ家を監視している。するとそこへ一人の男がやってくる。あろうことか、男は隠れ家で働いていた女性を強姦すると去っていく。トミーと副操縦士のスアレスは見ているだけで何もできない。これが後々の伏線になっていく。次の任務では、ドローンのリンクが切れてしまう。遠隔操作ゆえのアクシデントであるが、リンクが切れると再取得するまでドローンを動かすことができなくなる。これも後のエピソードにつながる。

標的を見つけてミサイルを発射する。ところが時間差があるがゆえに予想外のアクシデントが発生する。この時も突然画面に子供2人が飛び込んでくる。見ている誰もが凍りつくが、どうにもならない。子供は爆撃に巻き込まれてしまう。さらにCIAの傘下に入ると軍とは異なる交戦規定にトミーたちは戸惑う。標的の近くに非戦闘員がいても構わず攻撃命令が出る。攻撃のあと、現場に市民が救助に入る。するとそこへもう一度攻撃命令が出る。トミーは命令に従い、もう一度攻撃する。CIAにも言い分はあるが、この映画のストーリーではどこか非情に写る。

ドローン映画としては、『アイ・イン・ザ・スカイ』があったが、この映画でも同じような問題とパイロットの苦悩が描かれていた。おそらく、ドローンを主体とした映画を創るとなると、似たようなストーリーになるのではないかと思う。考えてみれば、安全な任務で家族とも毎日一緒に過ごせるトミーは、現地派遣の陸軍兵士よりはるかに恵まれているのであるが、それでも苦悩をにじませる。

仲間も考え方はそれぞれで、「楽な職場」を満喫する者もいる。また、危険なテロリストを排除するためには犠牲は厭わないというやり方は、未成年者などの非戦闘員の犠牲者を生み、それが次のテロリストを生む。スアレスの言う通り、この攻撃自体が彼ら兵士の募集に加担する結果となる。なるほど、様々な問題をうまく描き出しているが、残念ながら、『アイ・イン・ザ・スカイ』と比較するとインパクトに欠けるものがある。

せっかくのイーサン・ホークの熱演ではあるが、主人公トミーの苦悩はいまいち共感しにくいものがある。現代の戦争の問題点はよくわかるが、比較論で弱さを感じる。そこそこ面白いがその域を出られない。そんな感じの映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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