2020年06月28日

【ザ・セイント】My Cinema File 2241

ザ・セイント.jpg

原題: The Saint
2017年 アメリカ
監督: アーニー・バーバラッシュ
出演: 
アダム・レイナー: サイモン・テンプラー
エリザ・ドゥシュク: パトリシア・ホルム
イアン・オギルビー: 黒幕
エンリケ・ムルシアーノ: ジョン・ヘンリー・ファーナック
ロジャー・ムーア: ジャスパー

<Netflix解説>
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世界を股にかける大泥棒サイモン・テンプラー、別名"セイント"が銀行家に雇われ、誘拐された娘を探すことに。だが、事件の裏には大きな陰謀が隠されていた。
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『ザ・セイント』と聞いて、ヴァル・キルマー主演の映画を思い出した。何か関連があるのかと思ったら、実はリメイクとのこと。ヴァル・キルマー版が面白かっただけに期待して観たのだが、結果は残念だった映画である。

場所はモスクワのとある怪しげなクラブ。いかにも犯罪組織風の男達が続々と中に入っていく。待っていたのは軍の兵士達。どうやら武器の密売(横流し)のようである。そしてそれをなぜかFBIが監視している。双方疑心暗鬼であるが、なんとか取引は成立。友好の証に酒を酌み交わす。すると、なぜか皆意識を失ってしまう。唯一人残った男が悠々と金塊を鞄の中に詰め込む。しかし、そこに仲間の兵士が新たに現れて事態は混乱となる。

激しい銃撃戦の中、取引の様子を盗聴していたFBIのクーパーも参入するが、謎の男はクーパーに助けられながらも金塊を持って姿を消してしまう。そして、あとには「THE SAINT」と書かれたカードだけが残っている。そのセイントは盗んだ金塊を、国境なき医師団や移民機関、子供飢餓飢饉へと送金するように手配する。いわゆる義賊というやつである。

我が国にも鼠小僧治郎吉がいるし、フランスにはアルセーヌ・ルパン等義賊はいる。このセイントもそうらしい。しかし、冒頭の取引も、その場の全員に睡眠薬入りの酒を飲ませてその間に金塊をいただくのであるが、実に安易であり、しかもいくつもの金塊を軽々とバッグに詰めて持ち去るというリアリティの欠如もあり、どうも軽い展開が気になる。これは最後まで変わらない。

その頃、ナイジェリアのエゼキエル・イバカ大統領は、国内の困窮対策資金として民間企業から25億ドルの寄付金を集める。イバカは汚職の一掃をスローガンに掲げている大統領である。ところが、その支援金25億ドルが消失してしまう。セイントは仲間のパトリシアから連絡をもらい、陰で暗躍している組織の情報を得る。実は25億ドルを闇の口座に移し替えたのはサンディエゴにいる銀行家のアーノルド・ヴァルクロス。アーノルドは娘を誘拐され、協力させられていたのである。

FBIのクーパーは、国際作戦課のジョン・ファーナック捜査官に協力を要請し、それを受けたファーナック捜査官はサンディエゴのホテルに向かう。一方、セイントもアーノルドに接触する。娘の救出の手助けをして欲しいと頼まれが、そこに組織の手が伸びる。ヘリコプターが現れ銃を乱射。アーノルドは撃たれ、瀕死の状態で資金を移した口座番号を記した指輪を渡す。それはセイントの父が持っていたテンプル騎士団の指輪。そこへファーナック捜査官が飛び込んできてセイントは脱出せざるを得なくなる・・・

泥棒が主人公と言っても、その行動は正義の味方風。あまり悪役風にも描けないのだろう。ヴァル・キルマー版はかなり面白かったと記憶しているが、リメイクとは言え、ストーリーはまるで異なる様子。セイントは陰謀に巻き込まれていくが、FBIとの滑稽な追い駆けっこがあったりして、なんだか「ルパン三世」におけるルパンと銭形の父つぁんの掛け合いのようである。ファーナック捜査官はセイントに手のひらでコロコロ転がされる引き立て役である。

美人のパートナーとともに陰謀の真相を暴いていく。昔何やらあったらしい、やはり美女に協力を求めるが、昔のいざこざの代償は重く、地下格闘技の試合に出場させられるが、スーパーヒーローのセイントはこれをこなす。難解な暗号文を解読し、黒幕に迫る。ありきたりの展開だが、あまりにも予定調和に都合よくストーリーが進み、正直言ってあまり面白くない。ヴァル・キルマー版とのストーリーの違いは歴然としており、リメイク失敗作品と言える。

こうなると、もう一度ヴァル・キルマー版を観てみたくなるというもの。お口直しではないが、何だか安易な作りにがっかり感が否めない。ちょっと残念な一作である・・・


評価:★★☆☆☆







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2020年06月21日

【ヘルボーイ】My Cinema File 2240

ヘルボーイ.jpg

原題: Hellboy
2004年 アメリカ
監督: ギレルモ・デル・トロ
出演: 
ロン・パールマン: ヘルボーイ
ジョン・ハート: トレヴァー・ブルーム・ブルッテンホルム教授
セルマ・ブレア: エリザベス・シャーマン
ジェフリー・タンバー: トム・マニング
カレル・ローデン: グリゴリ・エフェモビッチ・ラスプーチン
ルパート・エバンス: ジョン・マイヤーズ

<シネマトゥデイ>
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ゴシック・ホラーの鬼才、ギレルモ・デル・トロ監督がカリスマ的人気を誇るアメコミ『ヘルボーイ』を映画化。『ロストチルドレン』などで知られる名脇役ロン・パールマンを主役に迎えたことで、アクションシーンの迫力はもちろん、異形ゆえのヒーローの苦悩や恋愛までもがドラマチックに描かれ、従来のアメコミ・アクションとは一線を画す内容に仕上がっている。全米では初登場第1位を記録。早くも続編の製作が決まっている。
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時に1944年。第二次世界大戦の最中、ブルーム教授は極秘任務に参加し、スコットランド沖に向かう。敗戦色濃くなってきたナチスは、戦況逆転を狙いトランダム大修道院の跡地で冥界の扉を開き、七つの龍心であるオグドル・ヤハドを呼び出そうとしている。その中心を担うのはラスプーチン。ブルーム教授はアメリカ軍の協力を得て、ナチス軍に攻撃を加え冥界の扉を開けている装置を破壊する。そしてブルーム教授は、その場で全身赤色の猿のような生き物を見つける。

そして現代。ラスプーチンに仕えていたイルザとカルムは聖なる場所に生贄を捧げ、ラスプーチンを蘇らせる。一方、アカデミーを卒業したばかりのジョン・T・マイヤーズは、「FBI・超常現象調査局」に配属される。そこは世間には秘匿されている秘密の局。中に入れば水槽の中には半魚人が泳いでいる。半魚人の名はエイブ・セピアン。人間にはない特別な能力を持っている。そしてそこには保護された赤い猿のような生き物が成長した姿で暮らしている。それはヘルボーイと呼ばれ、世間でも噂になっていた存在である。

すると間もなくヘルボーイに出動命令が下る。マッケン資料館に魔物が現れたとの通報が寄せられたのである。何者かが魔除けの像を破壊し、中に封印されていた魔物を蘇らせていたのである。既に警備員は殺され、人間には対処できない。ヘルボーイも手こずり、魔物は外に出てしまう。大勢いの市民の目撃するところとなり、ヘルボーイもまたしかり。周囲は突然現れた異様なものに混乱状態となる。

最近はヒーローモノが盛んである。マーベルもDCも新たなヒーローが次々と映画化されている。この映画は、2004年製と少し前の作品であるが、個人的にはほとんど知識がない。一体どんな能力を秘めているのかと興味を持っていたが、ガタイがいいから力は強そうであり体も頑健である以外は武器も銃を使うし、特にスーパーパワーがあるというわけではなさそう。どちらかと言えば、超人ハルクに近いのかもしれない(体は赤である)。

なんとかこの魔物を退治したヘルボーイは姿を消す。といっても親代わりのブルーム教授は行く先を心得ている。それはベラミ精神病院。そこに入院しているエリザベス・シャーマンに会いに行ったのである。エリザベス(通称リズ)は目を見張るような美人だが実は、「念動発火」という力を持っている。しかし、幼少時よりその能力をうまくコントロールできずにいて、詳しくは説明されていないが、それも精神病院に入院している理由なのであろう。

物語は、現代に蘇ったラスプーチンが再び冥界の門を開こうとするのをジョンとリズとヘルボーイとが阻止するべく奮闘する形で進んでいく。ラスプーチンには機械人間のようなカールとイルザが仕える。イルザはなぜか戦時中から年を取っていない。このあたりは説明不足感が漂う。そして舞台はラスプーチンの墓があるモスクワへと移る。怪僧ラスプーチンは確かに怪しげな雰囲気はいいと思うが、なぜラスプーチンなのかはもう少し説明して欲しかった気がする。そんな説明不足感満載である。

映画は2004年作で、続編も製作されており、さらにメンバーを変えて第3作まで製作されているが、まったく知らなかった。かと言ってつまらないというわけでもなく、個人的にはなんでアンテナに引っ掛からなかったのかちょっと不思議である。まぁ、かなり面白かったのは事実であり、間違いなく続編も鑑賞しようと思わせてくれた一作である・・・


評価:★★☆☆☆









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2020年06月19日

【コーヒーが冷めないうちに】My Cinema File 2239

コーヒーが冷めないうちに.jpg
 
2018年 日本
監督: 塚原あゆ子
原作: 川口俊和『コーヒーが冷めないうちに』 『この嘘がばれないうちに』
出演: 
有村架純: 時田数
伊藤健太郎: 新谷亮介
波瑠: 清川二美子
林遣都: 賀田多五郎
深水元基: 時田流
松本若菜: 平井久美
薬師丸ひろ子: 高竹佳代
吉田羊: 平井八絵子
松重豊: 房木康徳
石田ゆり子: 夏服の女

<シネマトゥデイ>
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「1110プロヂュース」主宰の川口俊和の小説を映画化。過去に戻れる席がある喫茶店を舞台に、来店する人々が体験する出来事が描かれる。主演の有村架純が喫茶店の店員を演じるほか、伊藤健太郎、波瑠、薬師丸ひろ子、吉田羊、松重豊、石田ゆり子らが出演。ドラマ「重版出来!」「アンナチュラル」などの演出を担当した塚原あゆ子が監督を務める。
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主人公の時田数が働く喫茶店フニクリフニクラが物語の舞台。その喫茶店のとある席に座ると、望み通りの時間に戻れるという。いわゆるタイムトラベルであるが、といっても極めて限定的なタイムトラベルで、時間もコーヒーを入れてから冷めるまで。喫茶店の外には行けず、喫茶店に来たこともない人には会えない。そして何よりも、起こった出来事は変えられない。こんな限定条件付きでもドラマは生まれる。

季節は夏、キャリアウーマンの清川二美子は、一週間前に幼馴染と来た時間に戻ることを希望する。その時、清川は幼馴染にニューヨーク勤務を打ち明けられる。2人は互いに惹かれ合っているが、いつもどこかですれ違っており、この時も気持ちを打ち明けられず、気まずいまま別れていた。そして、不思議なことに本当にその時の場面に戻った清川は、もう一度その場をやり直す。結局、幼馴染はニューヨークへと旅立つが、清川は勇気を出して自分もニューヨークへ行くと幼馴染に連絡する。

そして季節は秋に変わる。いつも同じ席で過去に戻れる席の順番を待っているのは、若年性の認知症を患う高竹佳代。夫に渡したいものがあると、大事そうに封筒を持っている。実はその席には常に先客がいる。一応、幽霊ということになっているが、いつも席に座っていて、無理にどかせようとしてもダメ。トイレに立つタイミングで席に座らないといけないが、いつトイレに行くかわからない。これもなかなか厄介である。

佳代はいつも夫が迎えにやって来て一緒に帰って行く。ある晩、佳代が寝た後、夫は喫茶店に忘れていたお代を払いに来る。すると、タイミングよく幽霊がトイレに行く。そこで夫は、妻と待ち合わせした過去に戻る。その時、佳代は自分の病気を夫にどう打ち明けるか迷っていたが、未来から戻ってきた夫房木はもうその事実を知っている。席の噂を知っている妻佳代はそれに気付くと、夫が戻ってきた未来の自分の様子を悟る。

さらに季節は冬になると、常連客の平井にスポットがあたり、そして最後は数自身が過去に戻ることになる。過去に戻るためのコーヒーを淹れられるのは時田の血を引く女だけ。そしていまはその役目を果たせるのは数しかいない。そこでタイムトラベルモノならではの方法を使う。全部で4つの話が展開されるのは、原作と同じだが、最後の時田数のエピソードは原作とは異なる。もしかしたら、まだ読んでいない『この嘘がばれないうちに』のエピソードなのかもしれない。

 こうした物語が生まれるのも人は誰しも「あの時こうしていれば」という思いを抱いているからだろう。数多あるタイムトラベルモノと差別化するには、特定の喫茶店の特定の席の特定の時間という限定をもうけたのは面白いと思う。ただ、あまりにも限定的過ぎるのもストーリーの幅を狭めてしまうかもしれない。それぞれいい話だとは思うが、「4回泣ける」というのは、ちょっと大げさなコピーだし、幽霊という説明もなかなか苦しい。まぁそれ以外はほどほどに楽しめる内容である。

 原作とは異なる部分もあるし、原作は原作、映画は映画として楽しめる一作である・・・


評価:★★☆☆☆









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2020年06月14日

【殺し屋】My Cinema File 2238

殺し屋.jpg

原題: Asher
2018年 アメリカ
監督: マイケル・ケイトン=ジョーンズ
出演: 
ロン・パールマン: アッシャー
ファムケ・ヤンセン: ソフィー
ジャクリーン・ビセット: ドラ
マルタ・ミランス: マリーナ
ピーター・ファシネリ: ウジエル
リチャード・ドレイファス: アヴィ

<シネマトゥデイ>
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『ルワンダの涙』などのマイケル・ケイトン=ジョーンズ監督と、『ヘルボーイ』シリーズなどのロン・パールマンが組んだアクションスリラー。愛する女性との平穏な暮らしに憧れる殺し屋の運命を描く。『X-MEN』シリーズなどのファムケ・ヤンセン、『グッバイガール』などのリチャード・ドレイファスらが共演。
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 主人公は初老の殺し屋アッシャー。冒頭、じっくりと靴を磨き、コンビニでパーラメントと傘を購入し、とあるマンションへと向かう。部屋の前でパーラメントに火をつけると、ゆっくりと大きく煙を吐き出す。3度ほど繰り返すと、消火栓が作動し水が噴き出る。傘をさして部屋の前で待つ。するとその騒ぎに驚いた部屋の住人がドアを開ける。おもむろにサイレンサー付きの銃を取り出したアッシャーは、有無を言わせず部屋の男を射殺する。任務完了である。静かにその場を離れる。外へ出ると傘を捨てて立ち去る。ベテランらしい振る舞いである。

 アッシャーは組織に雇われた殺し屋である。ボスのアヴィからの指令はあるクリーニング屋を通してアッシャーに伝えられる。しかし、直接アヴィに呼ばれたアッシャーは、そこで同じ組織のメンバーが家族もろとも殺害されたと聞かされる。報復のために3人の男を殺すように指示を受ける。いつものように入念に靴を磨き、パーラメントと傘を買ってターゲットの部屋へと向かう。しかし、ターゲットの部屋を前にして、突然の胸の痛みから倒れてしまう。それを助けたのは、隣の部屋に住むソフィー。

 ソフィーはバレエ教室で教える独身女性。毎日認知症の母親を訪ねている。アヴィに恋愛しろと言われていたこともあり、アッシャーはソフィーが気になるようになる。倒れて迷惑をかけたお詫びに花を持って訪ねたアッシャーは、思い切ってソフィーを食事に誘う。その一方で、仕事もこなす。2人目の男は注射器を使って毒殺する。その時もふとすれ違った女性がソフィーに似ていて思わず足を止めたりする。3人目の時は、火災報知器が反応せず、気を取られたところで相手に気付かれ格闘となる。何とか目的を達するが、衰えは確実である。

 アッシャーにはかつて殺しの手ほどきをしたウジエルという仲間がいる。常に単独行動をモットーとするアッシャーだが、そのウジエルからチームでの仕事を依頼される。役割は暗殺チームのバックアップ。かつての教え子からの頼みであり、やむなく引き受けるアッシャー。郊外の隠れ家でそっと射撃訓練をする。しかし、長年の仕事の蓄積は体を蝕んでいる。バックアップの狙撃もタイミングが遅れる始末。脳裏には当然、「引退」の文字が浮かぶだろうし、そこにはソフィーの姿もあるだろう。

 ソフィーを食事に誘ったレストラン。いい感じの会話。トイレに立ったアッシャーだが、そのアッシャーを背後から男が襲う。かろうじて隠し持ったナイフで男を始末する。トイレから戻ると、アッシャーは出ようとソフィーに告げる。まだ食事はこれからである。理由を聞かれて「トイレで男を殺してきた」と告げるアッシャー。ソフィーは冗談だと思って受け入れる。そしてアッシャーはソフィーの部屋で一夜を明かす。災い転じて福となすである。

 ところが、これで終わらない。連絡用のクリーニング屋が爆破され、ウジエルも身重の妻とともに自宅で殺害される。その手はアッシャーにも及び、あろうことかソフィーにも及ぶ・・・ここに至りアッシャーは望まぬ対決へと流されていく。ソフィーと穏やかに引退生活を送るプランがあっただろう。しかし、長年人を殺めてきた身には安息などこないのかもしれない。自らとソフィーを守るためにアッシャーは行動に出る。郊外の隠れ家にソフィーを連れて行くが、組織の手はここにも及ぶ。アッシャーは禍根を断ち切るため、黒幕の下へと向かう。

 組織に雇われた殺し屋が、逆に組織に狙われるというパターンは、『ある殺し屋 KILLER FRANK』と似たような展開。まぁ、これだけ映画も創られていれば、似たようなものも出てくるだろう。主人公の殺し屋がイケメンではないというところも共通している。それにしても主演のロン・パールマンは顔がデカくて迫力があり、悪役にはうってつけである。ソフィーに対する態度のギャップもまた良しである。

 寝ていても、ちょっとした物音に目が覚めてしまうアッシャー。たとえ引退しても殺し屋に安息の日々は訪れないことを象徴するシーン。それもそうだろうと納得の映画である・・・


評価:★★☆☆☆









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【デトロイト】My Cinema File 2237

デトロイト.jpg

原題: Detroit
2017年 アメリカ
監督: キャスリン・ビグロー
出演: 
ジョン・ボイエガ: ディスミュークス
ウィル・ポールター: クラウス
アルジー・スミス: ラリー
ジェイコブ・ラティモア: フレッド
ジェイソン・ミッチェル: カール
ハンナ・マリー: ジュリー
ケイトリン・デバー: カレン
ジャック・レイナー: デメンズ
ベン・オトゥール: フリン
ネイサン・デイビス・Jr. : オーブリー

<映画.com>
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『ハート・ロッカー』 『ゼロ・ダーク・サーティ』のキャスリン・ビグロー監督が、黒人たちの不満が爆発して起こった1967年のデトロイト暴動と、その暴動の最中に殺人にまで発展した白人警官による黒人たちへの不当な尋問の様子をリアリティを追求して描いた社会派実録ドラマ。67年、夏のミシガン州デトロイト。権力や社会に対する黒人たちの不満が噴出し、暴動が発生。3日目の夜、若い黒人客たちでにぎわうアルジェ・モーテルの一室から銃声が響く。デトロイト市警やミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元の警備隊たちが、ピストルの捜索、押収のためモーテルに押しかけ、数人の白人警官が捜査手順を無視し、宿泊客たちを脅迫。誰彼構わずに自白を強要する不当な強制尋問を展開していく。出演は『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』のジョン・ボイエガ、『レヴェナント 蘇えりし者』のウィル・ポールター、『トランスフォーマー ロストエイジ』のジャック・レイナー、『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』のアンソニー・マッキーら。脚本は『ハート・ロッカー』 『ゼロ・ダーク・サーティ』も手がけたマーク・ボール。
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1920年代のデトロイト。自動車産業の繁栄とともに栄える町であるが、黒人差別が色濃く残る時代の象徴でもある。そんなデトロイトも、1967年になるとベトナム戦争と黒人の権利拡大を目指した公民権運動が激しくなる。ある晩、バーで黒人ベトナム帰還兵の歓迎会が開かれていたが、その場にデトロイト警察がなだれ込むとバーの黒人経営者を無許可営業の容疑で逮捕する。さらには、黒人の参加者までもが逮捕されると、それを機に黒人たちの暴動へと発展する。

地元選出の黒人政治家が事態の沈静化を呼びかけるが、暴動は拡大していく。商店の略奪も起こり、州知事は州兵の動員を図る。窓から様子を伺っていた黒人の少女に対し、狙撃兵と間違えた兵が装甲車から攻撃する。なんとも言えない恐ろしい事態。そんな混乱の中、白人警官のクラウスとフリンは、パトロール中に黒人の窃盗犯を目撃し追いかける。逃げる黒人の男をクラウスは背中から銃撃する。撃たれた男はなんとか逃げのびるが、傷は深く死亡する。上司はクラウスを激しく非難するが、クラウスは銃撃を正当化する。

一方、黒人警備員のディスミュークスは、夜勤明けで帰宅したところを再び呼び戻される。また、ラリーは、地元の人気黒人歌手グループ「ザ・ドラマティックス」のボーカルであるが、せっかくのライブコンサートがこの騒動で中止になる。ここから飛躍を夢見ていたラリーは諦めきれない。やむなく友人フレドと帰路につくが、暴動で動きが取れなくなり、近くにあったアルジェ・モーテルに避難する。そこで同じ宿泊客の白人女性ジュリーとカレン、黒人男性カール、リー、オーブリーに出会う。

そして事件は起こる。もともと日頃から警官に虐げられていたカールは、陸上競技のスタートに使う銃を窓から乱射する。これがただでさえ神経をとがらせていた警官隊を刺激する。本物の狙撃と勘違いしたデトロイト市警のフリンとクラウスをはじめとした警官や州兵がモーテルに殺到する。警備にあたっていたディスミュークスもモーテルへと向かう。この様子に慌てたカールは逃げ出そうとするが、運悪くクラウスの目に止まり、クラウスは躊躇なくカールを射殺してしまう。さらに宿泊客に対する尋問を開始する。

もともと人種差別傾向の激しいクラウスだから、尋問も容赦しない。拷問一歩手前までエスカレートする。ディスミュークスらが銃を探すものの見つからない。クラウスの尋問をマズいと感じた州兵は触らぬ神にたたりなしで現場から引き揚げていく。そしてコミュニケーションのミスもあり、クラウスの同僚の警官が無抵抗のオーブリーを射殺してしまう。さすがにクラウスも焦り、隠ぺい工作に取り掛かる。口裏合わせをするものの、事態はクラウスらの逮捕に発展する・・・

アメリカは人種差別の国。有色人種(特に黒人)に対する差別は根強いものがあり、現代でも警官が無慈悲に黒人を取り押さえて死なせてしまうという事件を起こしていて、これも全米規模の暴動に発展している。人種差別が根底にあることは間違いない。現代であってもそうなのだから、この時代にはもっとそれが強いわけである。映画は実在の事件を追ったもの。銃撃戦になったのなら仕方ないが、単なる窃盗犯を後ろから銃撃するのは明らかにやり過ぎである。しかもそれが大した咎めにもならない。

この事件も背景に暴動があり、競技用の銃とは言え、紛らわしい行為をしたのは確かに悪いと言える。しかし、そのあとで無抵抗の宿泊客に暴行を加えて尋問するやり方は過剰防衛でしかない。結果、2人が死亡し、さすがに裁判となるが、結果は胸糞の悪くなるもの。黒人が暴動を起こす気持ちもよくわかる。しかし、それがまた対立をエスカレートさせるものだとなると、なんともやり切れぬものがある。それは現代の例を見ても、決して過去の一時期の不幸ではないのだとわかる。

リンカーンがゲティスバーグで演説しても、憲法で平等が謳われても、公民権運動を経ても、黒人の大統領が誕生してもなお黒人差別はなくならない。相当根が深いのであろう。友人を殺害されたラリーは「ドラマティックス」を辞め、教会の聖歌隊に加わる。生き残った方も心に大きな傷を負っただろうし、なんともやりきれなさが漂う。これがもはや過去のものとなってしまった問題ではないというところが大きなところである。

現代にもなお大きな問いを残していると思える一作である・・・


評価:★★☆☆☆






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