
原題: The Saint
2017年 アメリカ
監督: アーニー・バーバラッシュ
出演:
アダム・レイナー: サイモン・テンプラー
エリザ・ドゥシュク: パトリシア・ホルム
イアン・オギルビー: 黒幕
エンリケ・ムルシアーノ: ジョン・ヘンリー・ファーナック
ロジャー・ムーア: ジャスパー
<Netflix解説>
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世界を股にかける大泥棒サイモン・テンプラー、別名"セイント"が銀行家に雇われ、誘拐された娘を探すことに。だが、事件の裏には大きな陰謀が隠されていた。
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『ザ・セイント』と聞いて、ヴァル・キルマー主演の映画を思い出した。何か関連があるのかと思ったら、実はリメイクとのこと。ヴァル・キルマー版が面白かっただけに期待して観たのだが、結果は残念だった映画である。
場所はモスクワのとある怪しげなクラブ。いかにも犯罪組織風の男達が続々と中に入っていく。待っていたのは軍の兵士達。どうやら武器の密売(横流し)のようである。そしてそれをなぜかFBIが監視している。双方疑心暗鬼であるが、なんとか取引は成立。友好の証に酒を酌み交わす。すると、なぜか皆意識を失ってしまう。唯一人残った男が悠々と金塊を鞄の中に詰め込む。しかし、そこに仲間の兵士が新たに現れて事態は混乱となる。
激しい銃撃戦の中、取引の様子を盗聴していたFBIのクーパーも参入するが、謎の男はクーパーに助けられながらも金塊を持って姿を消してしまう。そして、あとには「THE SAINT」と書かれたカードだけが残っている。そのセイントは盗んだ金塊を、国境なき医師団や移民機関、子供飢餓飢饉へと送金するように手配する。いわゆる義賊というやつである。
我が国にも鼠小僧治郎吉がいるし、フランスにはアルセーヌ・ルパン等義賊はいる。このセイントもそうらしい。しかし、冒頭の取引も、その場の全員に睡眠薬入りの酒を飲ませてその間に金塊をいただくのであるが、実に安易であり、しかもいくつもの金塊を軽々とバッグに詰めて持ち去るというリアリティの欠如もあり、どうも軽い展開が気になる。これは最後まで変わらない。
その頃、ナイジェリアのエゼキエル・イバカ大統領は、国内の困窮対策資金として民間企業から25億ドルの寄付金を集める。イバカは汚職の一掃をスローガンに掲げている大統領である。ところが、その支援金25億ドルが消失してしまう。セイントは仲間のパトリシアから連絡をもらい、陰で暗躍している組織の情報を得る。実は25億ドルを闇の口座に移し替えたのはサンディエゴにいる銀行家のアーノルド・ヴァルクロス。アーノルドは娘を誘拐され、協力させられていたのである。
FBIのクーパーは、国際作戦課のジョン・ファーナック捜査官に協力を要請し、それを受けたファーナック捜査官はサンディエゴのホテルに向かう。一方、セイントもアーノルドに接触する。娘の救出の手助けをして欲しいと頼まれが、そこに組織の手が伸びる。ヘリコプターが現れ銃を乱射。アーノルドは撃たれ、瀕死の状態で資金を移した口座番号を記した指輪を渡す。それはセイントの父が持っていたテンプル騎士団の指輪。そこへファーナック捜査官が飛び込んできてセイントは脱出せざるを得なくなる・・・
泥棒が主人公と言っても、その行動は正義の味方風。あまり悪役風にも描けないのだろう。ヴァル・キルマー版はかなり面白かったと記憶しているが、リメイクとは言え、ストーリーはまるで異なる様子。セイントは陰謀に巻き込まれていくが、FBIとの滑稽な追い駆けっこがあったりして、なんだか「ルパン三世」におけるルパンと銭形の父つぁんの掛け合いのようである。ファーナック捜査官はセイントに手のひらでコロコロ転がされる引き立て役である。
美人のパートナーとともに陰謀の真相を暴いていく。昔何やらあったらしい、やはり美女に協力を求めるが、昔のいざこざの代償は重く、地下格闘技の試合に出場させられるが、スーパーヒーローのセイントはこれをこなす。難解な暗号文を解読し、黒幕に迫る。ありきたりの展開だが、あまりにも予定調和に都合よくストーリーが進み、正直言ってあまり面白くない。ヴァル・キルマー版とのストーリーの違いは歴然としており、リメイク失敗作品と言える。
こうなると、もう一度ヴァル・キルマー版を観てみたくなるというもの。お口直しではないが、何だか安易な作りにがっかり感が否めない。ちょっと残念な一作である・・・
評価:★★☆☆☆