2020年07月31日

【妻への家路】My Cinema File 2255

妻への家路.jpg

原題: 帰来 Coming Home
2014年 中国
監督: チャン・イーモウ
出演: 
コン・リー: フォン・ワンイー
チェン・ダオミン: ルー・イエンシー
チャン・ホエウェン: タンタン
チェン・シャオイー: コン・スーチン
イエン・ニー: リ主任
リウ・ペイチー: リュウ同志
ズー・フォン: チョン指導員

<映画.com>
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「赤いコーリャン」「秋菊の物語」『活きる』(My Cinema File 274)といった名作を生み出してきた中国の巨匠チャン・イーモウと女優コン・リーが、「王妃の紋章」以来8年ぶりに再タッグを組んだヒューマンドラマ。記憶障害で夫を他人だと思い込む妻と、そんな妻に寄り添い続ける夫の愛情を描いた。1977年、文化大革命が終結し、収容所から解放されたルー・イエンチーは、妻のフォン・ワンイーと再会する。しかし、夫を待ちわびるあまり、その心労から記憶障害となっていたワンイーは、イエンチーを夫だと認識することができなかった。イエンチーは、いつか妻の記憶が戻ることを信じて、他人として向かいの家に住み始めるが……。
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時に文化大革命時代の中国。ワンイーと娘のタンタンは、右派分子として収容所に送られた父のイエンシーが逃亡したと聞かされる。母娘は共産党から絶対にイエンシーを匿わないよう忠告され、何か連絡があればすぐに通報するよう命令される。長年の父親不在からタンタンは父の顔を知らない。頭を占めるのは、間近に迫ったバレエの発表会。主役の座を狙うタンタンだが、右派分子の娘であるという理由だけでタンタンは主役から外されてしまう。

その夜。密かに舞い戻ったイエンシーは、妻子にひと目会うべく自宅のドアをノックする。ワンイーは夫が来たことを察するが、ドアを開けるのをためらう。折からちょうど帰宅したタンタンは父と出会う。イエンシーは「明日の朝8時に駅の陸橋で待つ」とワンイーへの伝言を頼み、ワンイーには手紙を差し込み、姿を消す。タンタンはすぐに見張りの党員に会いに行くと、バレエの主役に推薦するとの甘い言葉に父の伝言を喋ってしまう。

翌朝、ワンイーは夫に会いに行くも、現場に駆けつけた官憲によってイエンシーはワンイーの目の前で逮捕されてしまう。そして抵抗したワンイーも突き飛ばされて頭に怪我を負う。結局、タンタンは主役の座を逃し、母娘2人の生活は続く。そして3年の月日が流れる。吹き荒れた文化大革命の嵐は終結し、イエンシーも罪を解かれて自宅のある町へ帰ってくる。

駅に出迎えたのはタンタン。今はバレエをやめて紡績工場の寮で暮らしている。事情がよくわからないまま、イエンシーはワンイーのいる自宅へ帰る。今度は邪魔する者もなく、イエンシーは妻ワンイーと再会する。しかし、なぜか妻は感情を表に出さない。それどころか、寝室へ入ったイエンシーを見て形相を変え、別人の名を呼びイエンシーを追い出してしまう。

その後、周囲の人たちがイエンシーの罪が解かれたという通知を見せ、この人が夫のイエンシーだと説明するが、ワンイーにはどうしても伝わらない。あまり刺激するとワンイーが興奮するので、ひとまずイエンシーは自宅の向かいの建物で暮らすことにする。ワンイーがこうなってしまったのも、冒頭で頭を打ったせいかもしれないし、その後イエンシーの留守中に別の男から無理やり言い寄られたからなのかもしれない(よりにもよってイエンシーをその男と間違えているのが悲しい)。

父親を裏切った娘を許せなかったのか、絶縁こそしなくとも、働くようになるとすぐ家から追い出すかのように別居している。いつも家には鍵をかけずにしているのも、夫の帰りを待っているからなのだろう。にも関わらず、肝心の夫イエンシーが最愛の夫であることを思い出せない。それからイエンシーは、妻の家の目の前にボロ部屋を借りて一人暮らしをして妻の様子を見守るようになる。

ワンイーはなぜか字を読みにくくなっており、イエンシーが代読するようになる。自分が書いた手紙の束を大事そうに保管しているワンイーにイエンシーは代読を始める。そして一計を案じたイエンシーは、ワンイー宛に「5日に帰ります」という手紙を書く。もう一度駅から帰ってくるところから始めてみようという考えである。しかし、実際に駅で迎えるワンイーの前に立つも自分が夫であることはわかってもらえない。

健気にも最愛の夫を待ち続けるのに、その夫がわからないという悲哀。昔の記憶を呼び戻すかもしれないとアルバムを見ようとするが、アルバム内のイエンシーの顔は父を恨んでいたタンタンによって全て切り取られている。親の心子知らずとはいうが、文化大革命の意味も自分の父が捕らえられた意味もわからなかったタンタンの心境を思うとそれも物悲しい。イエンシーはこの母と娘の確執も、どうにかしようとワンイーへ手紙を書いて、タンタンを家に戻すようにと説く。

いまだ夫を待ち続ける記憶の中で生きているワンイー。記憶は戻らないが、妻と子の幸せな時間が蘇る。まだ経済躍進が始まる前の中国。文化大革命という暗い時代が明けだばかりの時代を背景とした物悲しい物語。今の米中対立を見ていると隔世の感がある。基本的にこのころの時代背景の中国の映画は悲劇と優しさが溢れている。『再会の食卓』(My Cinema File 907)しかり、『故郷の香り』(My Cinema File 293)しかり、同じ監督の『活きる』(My Cinema File 274)しかりである。

こういう中国映画はいいなと思わせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2020年07月30日

【恋妻家宮本】My Cinema File 2254

恋妻家宮本.jpg

2017年 日本
監督: 遊川和彦
原作: 重松清
出演: 
阿部寛: 宮本陽平
天海祐希: 宮本美代子
菅野美穂: 五十嵐真珠
相武紗季: 門倉すみれ
工藤阿須加: 大学生時代の陽平
早見あかり: 大学生時代の美代子
富司純子: 井上礼子
浦上晟周: 井上克也
紺野彩夏: 菊池原明美

<シネマトゥデイ>
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テレビドラマ「家政婦のミタ」「偽装の夫婦」など数々の話題作を送り出してきた人気脚本家・遊川和彦の初監督作。作家・重松清の小説「ファミレス」を脚色し、子供が独立して二人きりになった夫婦が、家族の在り方を模索していくさまがコミカルに展開する。熟年離婚の危機に瀕した主人公には阿部寛、その妻をテレビドラマ「女王の教室」など遊川脚本作品に出演経験のある天海祐希が演じる。さまざまな家族の姿を描き続けてきた遊川が、どんな家族像や夫婦像を示すのか注目。
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主人公は中学教師の宮本陽平50歳。性格は穏やかだが優柔不断。妻とデニーズに来ているが、いつもメニューを見ながら料理のオーダーがなかなか決められない。一方、妻の美代子はシッカリ者で決断や覚悟を決めるのがとても早い。そんな2人の出会いは大学時代。ファミレスでの合コンがきっかけであった。やがて2人は交際を始めるが、美代子が妊娠し、デキ婚をしたのである。

それから27年。一人息子の正は結婚して福島にある新聞社に就職して家を出ていく。陽平と美代子夫妻は結婚以来、初めて2人きりの生活となる。夫婦水入らずで暮らすことを記念してワインを開ける美代子。料理教室に通う陽平につまみを作るように頼む。酔いが回ったのか、これからはお互い名前で呼ぼうと提案する。こういう夫婦に私はなりたいと思わず呟いてしまう。

酔いつぶれた美代子を居間のソファに残し、寝室に戻った陽平は、何気なく本棚にあった本「暗夜行路」を懐かしそうに手に取るが、そこになんと美代子の署名入りの離婚届が挟んである。驚いた陽平は、美代子に問い正すこともできず、以来悶々として日々を過ごすことになる。

一方、陽平が担任するクラスには、“ドン”こと井上克也や“メイミー”こと菊地原明美という生徒がいる。ドンの母親は、不倫中に自動車事故に巻き込まれ入院している。それをネタして明るく振舞うドンだが、そんなドンを見守るメイミーは、何もしない担任の陽平に対して、「先生って教師に向いていないかも」とズバリと言ったりする。陽平も手をこまねいているわけではなく、ドンを自分が顧問を務める料理クラブに誘ったり、祖母に会ったりするが、祖母も難敵であったりして苦戦する。

陽平の趣味で唯一心を落ち着かせられる料理教室では、毒舌を吐く主婦五十嵐真珠や婚約中で花嫁修業中の門倉すみれと同じグループで作業する。そこで五十嵐が旦那と離婚を考えていると話したことから、陽平も妻美代子の書いた離婚届について相談を持ちかける。妻の不倫もありえないことで、これといった答えは浮かばない。一方で祖母と喧嘩してからご飯を食べていないドンに陽平は簡単な卵かけご飯のレシピを教える。しかし、それは本当の問題を先送りにしているだけだと、メイミーに厳しく指摘される陽平。

妻の離婚届をきっかけに、平穏だった生活が乱されていく陽平。家庭でも職場の学校でも問題は山積。陽平は生真面目で人が良い。それが様々な問題の中で翻弄されていく様は一見滑稽。料理教室の仲間の五十嵐は、夫の不満はセックスが問題なのかどうかを確かめたいと、なんと陽平をラブホテルに誘う。ここでも優柔不断さを発揮して陽平は部屋を選べない。なんとも羨ましい展開だが、これは五十嵐の夫が倒れたと連絡が入ったことで流れてしまう。

戸惑う人物たちを巡るさまざまなエピソードを踏まえてストーリーは進んでいく。合間、合間に付き合い始めた頃の陽平と美代子のエピソードが加わる。背景に流れるのは、美代子がお気に入りの吉田拓郎の「今日までそして明日から」。本に挟んであった離婚届の理由は何なのか。美代子に「あなたは結婚に向いてない」と言われた陽平は、勢いで離婚届に署名してしまう。

知り合ってお互いに好意を持って付き合い始め、熱い恋愛時代を経て結婚し家族になる。「恋人」と「家族」には大きな違いがあるのを実感するのが陽平と美代子のような円熟夫婦だろう。後半、福島の息子宅を訪ねた陽平と美代子が恋妻駅のホームで線路を挟んで向き合う。実際の駅ではないようであるが、さり気ない演出が面白かったりする。いつまでも恋人気分の夫婦も理想的だが、陽平と美代子のような円熟夫婦もいいものだと思う。

同じ夫婦でも時間の経過とともにいろいろな関係に変化するのだろうが、この夫婦の老後も見てみたい気がする。若い人が観ても面白くはないかもしれないが、円熟世代なら感じるところは多いかもしれない映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2020年07月25日

【RED】My Cinema File 2253

RED.jpg
 
2020年 日本
監督: 三島有紀子
原作: 島本理生
出演: 
夏帆: 村主塔子
妻夫木聡: 鞍田秋彦
柄本佑: 小鷹淳
間宮祥太朗: 村主真
片岡礼子: ふみよ

<映画.com>
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直木賞作家の島本理生による、センセーショナルな内容が話題を呼んだ小説『Red』を、夏帆と妻夫木聡の共演、「幼な子われらに生まれ」『繕い裁つ人』の三島有紀子監督のメガホンで映画化。誰もがうらやむ夫とかわいい娘を持ち、恵まれた日々を送っているはずの村主塔子だったが、どこか行き場のない思いも抱えていた。そんなある日、塔子は10年ぶりにかつて愛した男・鞍田秋彦と再会。塔子の気持ちを少しずつほどいていく鞍田だったが、彼にはある秘密があった。主人公の塔子を夏帆、塔子がかつて愛した男・鞍田を妻夫木が演じるほか、塔子に好意を抱く職場の同僚・小鷹淳役で柄本佑、塔子の夫・村主真役で間宮祥太朗が共演する。
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原作を読んだ時、女流作家による割には官能的な内容に驚きつつ楽しんだものであるが、それが映画化されたとあっては観ないわけにはいかない。物語は大雪の夜、道端の公衆電話で主人公の村主塔子が誰かと話しているところから始まる。原作を読んで日が浅いので、後半のある場面から始まったのだとわかる。少し離れたところに停めた車の外では、鞍田秋彦がタバコを吸っている。まだタバコが似合う時代である。

塔子は夫の真と幼稚園に通う娘の翠、そして義母麻子、出張で不在がちの義父宏と暮らしている。表面上、義母は協力的であるが、やはり塔子は嫁姑の窮屈さを感じている。真はそんな妻の気持ちに全く気づくことはないが、エリート商社マンであり、立派な一軒家に家族で暮らしていて、端から見れば羨ましい限りの生活。おそらく塔子の結婚生活は多くの女性の理想であろう。

そして塔子は、真の仕事関係のパーティに参加し、そこでかつて愛人関係にあった鞍田と再会する。久しぶりの再会にもかかわらず、会っていきなり人気のない廊下でキスをするのは原作にもないし、映画向けと言える。普通は「久しぶり!」くらいの会話を交わすだろう。そして塔子には、鞍田から今現在鞍田が勤めている建築事務所で働かないかと誘われる。それに対し塔子は真に働きたい旨を話す。お金のためなら塔子が働く必要はないが、働きたいとなれば別。渋る真を説き伏せて塔子は働き始める。

新しい職場で働き始めた塔子にさっそく声を掛けてきたのは、女癖が悪いと評判の小鷹。妙に勘のいい小鷹は、職場の飲み会のあと無理矢理塔子を連れ出し、塔子と鞍田の仲を詮索する。職場では小鷹のペースに翻弄される塔子。そんな塔子を自分のサポートにつけて連れ出した鞍田は、自分の部屋に塔子を連れ込むと、そのまま身体を重ね、求め合う。いくらかつて関係があったとしても、今や人もうらやむような家庭に収まっていて、こんなに簡単にリスクを冒すものだろうかとふと思う。

一緒に働くようになると、塔子には鞍田の姿が否応なく目に入る。人気のない早朝から事務所に来て本当に自分が作りたい家の模型を作っている。それはあくまでも趣味であり、それによって自分を保つのだという。やがて塔子は仕事ぶりを評価され正社員になるが、そうすると家庭のことは二の次となる。よりにもよってそんな時に娘の翠がケガをする。そのことで真に責められ、罪悪感と絶望感から塔子の気持ちはますます夫から離れていく。

恋愛結婚だからと言って必ずしも幸せになるとは限らない。特に塔子の場合、傍からは幸せに見えても実父のことを夫の実家に隠すように夫に言われていたり、外見を取り繕っている部分が多かったりすると猶更なのかもしれない。そんな時に再会したかつての男に再び惹かれていくというのもまた人の性なのだろう。体調を崩して入院した鞍田の仕事を引き継ぐため新潟へ出張に出かける塔子。ところが大雪で交通機関が麻痺して帰れなくなるも、真は無情にも娘のために帰ってこいと告げる。

観る人にとっては、特に幸せな家庭生活に浸っている人には理解しにくいストーリーなのかもしれない。しかし、少しでも塔子と似たような経験、生活にあったりすると共感度は高まるのかもしれない。冒頭のシーンは東京に帰る雪道で夫に電話をする塔子の姿。電話を切ってから指輪をはずして公衆電話の上に置く塔子の気持ちは、男の身でもよく理解できたりする。ラストのシーンは原作とはちょっと異なっている。

原作と比較すると、やはり深みという点では劣るところがある。小説の方がじっくり描けるのは仕方のないところ。小説の方は流石に不自然な流れはない。不自然なところがあってもスムーズに物語の世界に入れたのは、原作を読んでいたためであるのは事実である。それにしても、この物語に共感できてしまうのは、それだけ現実の幸せとは離れているからのような気がしてならない。そんな我が身を恨めしく感じる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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【ブラッド・ファーザー】My Cinema File 2252

ブラッド・ファーザー.jpg

原題: Blood Father
2016年 アメリカ
監督: ジャン=フランソワ・リシェ
出演: 
メル・ギブソン: ジョン・リンク
エリン・モリアーティ: リディア
ディエゴ・ルナ: ジョナー
ウィリアム・H・メイシー: カービーウィ
マイケル・パークス: 

<映画.com>
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メル・ギブソンが元犯罪者のアウトローを演じるサバイバルアクション。かつて犯罪の世界に身を置き、現在はアルコール中毒のリハビリをしながら、トレーラーハウスで細々と暮らすジョン・リンク。彼のもとに数年前から行方不明となっていた一人娘のリディアがやってきた。ギャングと起こしたトラブルにより、警察、殺し屋から追われているリディアを守ることを決意したジョンは、かつて身に着けたサバイバル術を駆使し、敵を迎え撃つ。ギブソンが主人公ジョン役を演じるほか、『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』のディエゴ・ルナ、「ファーゴ」のウィリアム・H・メイシーが脇を固める。監督は『アサルト13 要塞警察』のジャン=フランソワ・リシェ。
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冒頭、何やら人相のよろしくない男たちが一軒の家に行く。その中にたった1人女リディアがいて、途中で銃弾を購入する。どうやら男たちの1人ジョナー・ピンサーナが恋人である様子。武装した一行はそのままある家に入っていく。ジョナーは家の主人を射殺し、その妻に金のありかを訪ねるが要領を得ない。腹を立てたジョナーは、リディアに妻を殺すよう命じるが、ためらったリディアは誤ってジョナーの首を撃ってしまう。咄嗟に逃げ出すが、金も伝手もない。そこで長年音信不通だった父・ジョンに電話をする。

ジョンもかつては犯罪の世界に身を置いており、仮釈放で出所した今はアルコール中毒のリハビリをしながらトレーラーハウスで刺青師として生計を立てている。そこへかかってきたリディアからの電話。取るものもとりあえず迎えに行く。リディアから事のあらましを聞いたジョン。リディアはジョンの別れた妻と暮らしていたが、数年前に家出しており、よくない連中と付き合っていたのである。久しぶりに会った娘だが、バッグの中から出てきたのは、酒と拳銃、そしてドラッグ。元犯罪者でも親としては心が痛む。

数日後、どこで調べたのかジョナーの仲間のギャングたちがジョンのトレーラーハウスに押しかけてくる。所構わず発砲するギャングたち。仮釈放中のジョンは冷静に反撃の体を取るが、荒っぽいギャングたちはジョンたちの立てこもるトレーラーハウスを転覆させる。その場は近くに住む友人カービーが自警団を引き連れて助けに来る。ギャングたちはスゴスゴと引き下がるが、やって来る警察を前にジョンはリディアを連れて逃げ出す。

リディアが撃ったジョナーは実は生きていて、それどころから策略を巡らせ、強盗殺人事件の濡れ衣をジョンとリディアに着せてしまう。こうしてジョンとリディアは、ギャングと警察の双方から追われることとなる。対するジョンは昔の伝手を辿り、服役中の囚人仲間アルトゥーロから、ジョナーがメキシコの麻薬密売組織と繋がりがある危険人物だと知る。そして自らはやはり昔の貸しがある“牧師”に助けを求めに行く。しかし、リディアにかかっている懸賞金の金額を知るや牧師は態度を一転させる。

何とか活路を探るべく、逃走する2人。娘のことを気にしていたジョンだが、思わぬところで親子2人きりの時間を過ごすことになる。これも人生の皮肉かもしれない。そして追って来るのが警察ならまだしも、危険なメキシコギャングとなると血なまぐさい争いになる。しかし、この元犯罪者のパパは並みのパパではない。武器を手配し襲撃に備える。演じるのがメル・ギブソンとくれば、アクションも保証付き。バイクでのアクションは、『マッドマックス2』を彷彿とさせる。

そしてジョナーの計略でリディアが拉致されてしまう。窮地に陥ったジョンだが、アルトゥーロから聞き付けた組織の秘密情報をネタにジョナーに取引を持ちかけ、とある砂漠を取引場所に指定する。ジョンが元犯罪者ゆえの手段であるが、そんなことがこんな場面で役に立つのも人生の皮肉である。父親としては、命の危険を冒してでも助けなければいけない。牧師から地雷と手榴弾を奪い、取引場所に向かうジョンは、すっかりマッドマックスである。

シュワルツェネッガーもスタローンも幾つになってもアクション健在。実際の年齢を知れば驚いてしまうが、メル・ギブソンもまた負けてはいない。衰えのないメル・ギブソンの健在ぶりを堪能できる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2020年07月24日

【劇場】My Cinema File 2251

劇場.jpg

2020年 日本
監督: 行定勲
原作: 又吉直樹
出演: 
山崎賢人: 永田
松岡茉優: 沙希
寛一郎: 野原
伊藤沙莉: 青山
井口理: 小峰
浅香航大: 田所

<シネマトゥデイ>
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お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹の恋愛小説を、『北の零年』などの行定勲監督が映画化。劇作家を目指す青年と、彼を支える恋人の日々を描く。青年と恋人を、『キングダム』などの山崎賢人と『勝手にふるえてろ』などの松岡茉優が演じる。脚本を『ピンクとグレー』でも行定監督と組んだ蓬莱竜太、音楽をシンガー・ソングライターの曽我部恵一が担当した。
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主人公の永田は、中学時代からの友人野原と立ち上げた劇団『おろか』を主催している。永田は演出と脚本を担当しているが、その独自の世界観は世間に受け入れられず、劇団の運営は苦しい状況が続いている。それゆえに永田も日々の暮らしはアルバイトでなんとか食いつないでいる状況。そんな永田だが、街で偶然見かけた女性に声をかける。「同じ靴を履いていますね」という陳腐な言葉。しかし、その女性沙希は、意外にも永田と喫茶店に行く。

沙希は、女優を夢見て上京して来ていた専門学生。永田のどこが良かったのか沙希は、永田と付き合い始め、やがて一緒に暮らすようになる。と言っても、それは永田の経済事情ゆえであり、はっきり言って永田は「ヒモ」状態。しかも沙希は献身的。何よりも永田に尽くし、劇団で女優がいなくなった時には代わりに出演するほど。そんな沙希の演技は、意外にも好評で人も入り始める。しかし、これに永田が嫉妬して沙希を使わなくなるとまた元の木阿弥に戻ってしまう。

沙希に声を掛けた時の様子からして、永田は女性との付き合い方が下手。2回目のデートに誘う時もどうしたらいいのか野原に聞く始末。今時らしくメールで言われた通りに誘うが、「全然暇だよ」という答えに断られたと勘違いするほど疎い。それに対して、沙希は徹底的に献身的。永田の存在すべてを肯定的に受け入れる。こういう女性がいたらこちらからお願いして付き合ってもらいたいと羨ましく思うほど。されど女性経験のない永田はこれでいい気になってしまう。

脚本を執筆し、稽古が続くとバイトはできなくなり稼ぎはなくなる。公演を重ねるほどに借金は重なり、不安と慢性的な苛立ちに襲われ、収まらない気持ちは沙希に遠慮なくぶつける。ある日沙希が原付バイクに乗って現れ、学校の男にもらったと告げる。永田は、原付に乗ると沙希を無視して走り続ける。そうしてなんと永田は原付を蹴って壊してしまう。譲ってくれたのが男友だちということで、嫉妬したのであろう。あるいは不甲斐ない自分から沙希が離れていくのではという疑念も混じっていたかもしれない。

やがて沙希は学校を卒業し、洋服屋で働きながら夜は居酒屋でアルバイトする生活をはじめる。永田は相変わらず芝居優先で自分が働こうとはしない。元の劇団仲間青山から執筆の依頼をもらい、それで少し稼ぐ程度。されど時間の経過は女に不利に働く。さすがの沙希も年齢を気にし始める。地元の友人たちは続々と結婚して子供を持ち始める。おそらく、親からのプレッシャーもあっただろう。「私もう27だよ」という沙希の言葉が切ない。それでも永田はどうすることもできない。

永田の気持ちもなんとなくわかる。芝居は好きでずっと続けていきたいが、食ってはいけない。周りの友人たちにもアドバイスされるが、自分もよくわかっている。しかも今更芝居をやめて何をしていくのかというあてもない。結局、わかってはいてもしがみつくしかないのかもしれない。そんな苛立ちは結局沙希に向かう。帰りが遅いとバイト先の居酒屋店長との中を疑い、執筆の邪魔になるからと部屋を出てしまい、時折気ままにぶらっと沙希の部屋に戻る。

自分を変えられない永田と常識人の沙希との関係は、当然の帰結点へと向かう。それは誰が見ても仕方のない結果なのであるが、どうにかならなかったのかと思わずにはいられない。沙希が献身的ないい女性であればあるほど、幸せになって欲しいと思うし、沙希にとってはその相手が永田であって欲しかったのだろう。されど人の世はうまくいかない。映画はそんな世の中を反映するかのような結末を迎える。

舞台の上で猿の面をつけた永田が、「ばあああああ」とおどける。何度もなんども。それを見つめる泣き笑いの混じった沙希の表情がなんとも言えない。又吉の作品はなんとなく抵抗があって読んでいないが、そのうち原作も読んでみたいと思わされた。自分もどこかで感じてきたようなほろ苦い後味の映画である・・・


評価:★★★☆☆








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