
原題: The Perfection
2018年 アメリカ
監督: リチャード・シェパード
出演:
アリソン・ウィリアムズ:シャーロット・ウィルモア
ローガン・ブラウニング:リジー
スティーヴン・ウェバー:アントン
アライナ・ハフマン:パロマ
マーク・キャンドボーグ:シース
グレアム・ダフィー:ジェフリー
アイリーン・ティアン:ジャン・リー
モリー・グレース:子供時代のシャーロット
ミラ・トンプソン:子供時代のリジー
<映画.com>
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天才チェロ奏者を襲う悲劇を二転三転する展開で描いたNetflixオリジナル映画。チェロ奏者としての将来を嘱望されながらも、母の介護のため夢を諦めたシャーロット。母の死後、かつての恩師アントンを頼って上海を訪れた彼女は、アントンのもうひとりの愛弟子である人気チェロ奏者リジーを紹介される。すぐに意気投合した2人は、一緒に中国各地を巡る旅へ出かけることに。しかし出発の直後、バス車内でリジーが異常なほどの体調不良を訴え始める。言葉が通じない中、必死で周囲に助けを求めるシャーロットだったが……。シャーロット役に『ゲット・アウト』のアリソン・ウィリアムズ。『ハンティング・パーティ』のリチャード・シェパードが監督・脚本を手がけた。Netflixで2019年5月24日から配信。
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主人公のシャーロットは、長年母親の介護をしていたが、その必要がなくなり社会復帰することにする。シャーロットは、母親が病気になる前は、バッコフアカデミーでチェロ奏者のプロを目指していたこともあり、かつての師アントンに連絡を取る。そしてその招きを受け、エリザベスという売出中のチェロ演奏家の音楽会へ参加するために上海へとやってくる。
アントンと再会したシャーロットは、新進気鋭のエリザベスを紹介される。エリザベスは、もともとシャーロットに憧れてバッコフアカデミーに入学し、その入学の日に退学していくシャーロットと出会っていたこともあり、すぐにシャーロットと意気投合する。さらにアントンの口添えで、2人の共演も実現する。エリザベスのシャーロットに対する憧れは今も変わらず、2人は一夜をともにする。
エリザベスは、そのまま休暇に入る予定であったが、気ままな中国国内の旅にシャーロットを誘う。もともと予定のなかったシャーロットに異論はなく、2人で旅行に行くことになる。出発の朝、エリサベスは体調が思わしくなかったが、ようやく取れた休暇でもあり、旅行を強行する。そしてローカルバスの旅に出るが、エリザベスの体調はますます悪化する。
都心部ならともかく、バスは山の中を移動する。思わず嘔吐するエリザベス。それだけならまだしも、下痢となると車内というわけにはいかない。うまく伝わらぬ言葉の壁に難儀しながら、乗客の助けも借りてなんとかバスを止めてもらい、道端でしゃがみ込むエリザベス。こうなると、もう恥も外聞もない。しかし、エリザベスの体調悪化は止まらず、あろうことか嘔吐物の中には虫が大量に入っている。
この異常事態についにエリザベスとシャーロットは、パニックになったバスの運転手から無理やりバスを降ろされ、置き去りにされてしまう。さらにエリザベスは、自分の右腕の皮膚の下を虫が動き回っているのがわかる。腕の中を大量の虫が這いまわるのはなかなかグロテスクである。パニックに陥ったエリザベスに、なんとシャーロットは包丁を差し出す。半狂乱に陥ったエリザベスは、そのまま包丁で自分の右腕を切り落とす・・・
何の予備知識もなく観始めたNetflixの映画であるが、ストーリーがどこを目指しているのかまったくわからない。そしてどうやらこれはホラー映画ではなく、エリザベスが二日酔いの薬だとシャーロットに渡しされたのは、幻覚剤だと明らかにされる。右腕を切り落としてしまったエリザベスは、チェロ奏者としては再起不能である。チェロ奏者になれなかったシャーロットの嫉妬による行為かとこの時点では思う。
ようやく帰国したエリザベスは、バッコフアカデミーに戻ってくるが、もはや演奏ができないエリザベスにアントンは冷たく接する。エリザベスは、教師の仕事でもなんでもいいから学校に残りたいと懇願するが、アントンはこれを切って捨てる。絶望したエリザベスは、今度はシャーロットの家に忍び込み、シャーロットを殴り倒すとバッコフアカデミーへ連れ帰る。今度はエリザベスの復讐劇かと思いきや、ストーリーはまた違う方向へと向かっていく。
アントンとバッコフアカデミーに隠された秘密。それが明らかになるとともに、ストーリーは予想もしていなかった方向へと舵を切る。このストーリーの二転三転はなかなかである。先の見えない不気味な展開の映画という意味では、『ゲット・アウト』(My Cinema File 1984)と似たような映画である。そしてそれは、ラストのシャーロットとエリザベスのチェロの演奏と、それを聴くアントンの姿に凝縮される。
「なんて映画だ!」
思わずそう呟かずにはいられない映画である・・・
評価:★★☆☆☆