2020年09月27日

【マンハント】My Cinema File 2288

マンハント.jpg

原題: 追捕 Manhunt
2018年 中国
監督: ジョン・ウー
出演: 
チャン・ハンユー:ドゥ・チウ
福山雅治:矢村聡
チー・ウェイ:遠波真由美
ハ・ジウォン:レイン
國村隼:酒井義廣
竹中直人:伊藤
倉田保昭:坂口秀夫
斎藤工:犯人A
アンジェルス・ウー:ドーン
桜庭ななみ:百田里香
池内博之:酒井宏
TAO:田中希子

<映画.com>
********************************************************************************************************
『レッドクリフ』「男たちの挽歌」シリーズの名匠ジョン・ウーが、『戦場のレクイエム』のチャン・ハンユーと『三度目の殺人』の福山雅治をダブル主演に迎えたサスペンスアクション。日本でオールロケを敢行し、1976年に高倉健主演で映画化された西村寿行の小説「君よ憤怒の河を渉れ」を再映画化した。製薬会社の顧問弁護士をつとめる男ドゥ・チウは、パーティの翌朝、社長秘書・希子の死体の横で目を覚ます。現場の状況証拠はドゥ・チウが犯人だと示しており、罠にはめられたと気付いた彼は逃亡を図る。独自の捜査でドゥ・チウを追う敏腕刑事・矢村は、ドゥ・チウに近づけば近づくほど事件に違和感を抱くように。やがてドゥ・チウを捕らえた矢村はドゥ・チウの無実を確信し、警察に引き渡さずともに事件の真相を追うことを決意する。共演にも「第7鉱区」のハ・ジウォン、『哭声 コクソン』の國村隼、「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」の桜庭ななみら日中韓の人気俳優がそろう。
********************************************************************************************************

ある小料理屋に1人の男がやって来る。しかし、残念ながらその夜は貸し切り。そこにやってきたヤクザの団体。迎えたのは美人ママとポッチャリタイプの仲居。興が乗ってきたところで、突然美人ママと仲居が隠し持っていた銃を乱射する。ヤクザの集団はなす術もなく射殺される。日本で場違いな乱射劇。どうやら美人ママと仲居に扮していたのは殺し屋のよう。

難を逃れた男は、実は巨大製薬会社・天神製薬の中国人国際弁護士ドゥ・チウ。そのドゥ・チウは、天神製薬社長の酒井義廣の息子で次期社長の宏が新薬開発の責任者に就任した記念のパーティーに出席する。同社の美人社長秘書・希子とはどうやら恋人関係のよう。そしてドゥ・チウは、どこか謎めいた美女、遠波真由美と知り合い自宅まで車で送ってもらう。自宅には一足先に希子が待っている。なかなか隅に置けない男である。しかし、帰宅した途端、何者かに殴られて気を失う。

翌朝、目覚めたドゥ・チウは、希子が何者かに殺害されていることに気付く。そしてタイミングよく大阪府警が駆け付ける。無実を主張しても聞き入れてもらえルわけもなく、現場からはドゥ・チウの指紋が付いたナイフが見つかり、雇ったはずのない家政婦が悲鳴を上げる。ドゥ・チウは殺人の容疑者として逮捕されるが、何者かにハメられたのは確か。ドゥ・チウはその場から逃走する。弁護士なのにか、弁護士だからかはわからない。

大阪府警刑事部捜査一課長の矢村聡刑事は、部下の百田里香と共に逃げたドゥ・チウを追う。矢村は建設現場で巧みに労働者に成りすましていたドゥ・チウを発見するが、彼は無実を訴えると隙を突いて再び逃亡する。ここから始まる追跡劇。さらに冒頭で登場した謎の美人殺し屋もドゥ・チウ殺害の指示を受けて動く。堂島川を舞台に銃撃戦があり、ドゥ・チウと矢村の水上バイクでのチェイスがある。このあたりはさすがジョン・ウーである。

逃走するドゥ・チウは真由美と再会し、行動を共にする。そして真由美の経営する牧場に身を隠す。真由美にはかつて天神製薬の研究員だった婚約者の北川正樹がいたが、3年前に謎の死を遂げていた。北川は、天神製薬の企業秘密を盗んだとされ、裁判を起こされている最中であったが、その裁判の弁護士を務めたのがドゥ・チウであった。ここに至り、天神製薬の裏側が見えてくる。そして美人殺し屋を雇った勢力も・・・

逃走するドゥ・チウとそれを追う刑事の矢村と美人殺し屋。追跡と銃撃。矢村はドゥ・チウに手錠をかけるも、殺し屋は容赦しない。敵の敵は友で、ドゥ・チウと矢村は手を組むことになる。アクションを絡めたスリリングな展開はさすがジョン・ウーである。ただ、面白いかどうかと問われると、答えに窮する。この違和感の正体は何だろうかと考えてみる。

おそらくその違和感の正体は舞台設定ではないかと思う。主人公を演じるチェン・ハンユーも日本代表の福山雅治も役者としては問題ない。しかし、設定は普通の刑事と弁護士である。それがドンパチを普通に繰り返し、殺し屋軍団と銃撃戦を繰り返す。銃撃戦は街の中でも牧場でも普通に行われる。さらに牧場に雇われている従業員もライフルを手にして応戦する。この日本で。これが仮面ライダーの番組であれば別に構わないのであるが、大人の映画ではちょっと厳しい。そしてそれはラストの研究所でのバトルで一気に表面化する。

 ラストのバトルはもう観ていられない。福山雅治の熱演もドゥ・チウの熱演も違和感の大きさに耐えられない中、薄れていく。ここに至りストーリーも陳腐になる。何とかアクションだけは観られるレベルにはあったが、全体の印象は限りなくトーンダウン。頼まれても二度は観たくない内容である。
 
 誰のせいだろう。責任を追及したくなる映画である・・・


評価:★☆☆☆☆







posted by HH at 00:00| 東京 ☁| Comment(0) | 中国/香港/台湾映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月26日

【インサイダーズ/内部者たち】My Cinema File 2287

インサイダーズ/内部者たち.jpg

原題: Inside Men/내부자들
2015年 韓国
監督: ウ・ミンホ
出演: 
イ・ビョンホン:アン・サング
チョ・スンウ:ウ・ジャンフン
ペク・ユンシク:イ・ガンヒ
イ・ギョンヨン:チャン・ピル
キム・ホンパ:オ・ヒョンス
チョ・ジェユン:パン捜査官
ペ・ソンウ:パク・ジョンパル
キム・デミョン:コ・サンチョル

<映画.com>
********************************************************************************************************
イ・ビョンホン主演で、財閥と政治家の癒着によって腐敗した巨大権力をめぐり3人の男たちが騙しあいを仕掛けあう様を描いたサスペンスアクション。策士であるガンヒに雇われ、裏で悪事を代行するアン・サングは、財閥企業であるミライ自動車が大統領候補へ裏金を送っていた証拠を手に入れ、ミライ自動車をゆすることを企てる。裏金ファイルがアン・サングの手に渡ったことで、裏金事件の捜査が打ち切りとなってしまった検事ウ・ジャンフンは、一切の責任を取らされて左遷となってしまう。諦めきれないウ・ジャンフンは、ミライ自動車の一件が失敗し、失墜したアン・サングに接触。一発逆転の秘策を持ちかけるが……。アン・サング役をイ・ビョンホン、検事ウ・ジャンフン役をチョ・スンウ、策士ガンヒ役をペク・ユンシクがそれぞれ演じる。
********************************************************************************************************

アン・サングは、裏の世界で生きる男。兄貴分と慕う大手新聞社の論説主幹イ・ガンヒの指示を受けては、有力政治家の裏の会合に女たちを手配するといった汚れ仕事をこなしている。ガンヒは政界と財界、マスコミを巧みに操る策士である。ある時、サングは韓国を代表する大財閥・ミライ自動車のオ・ジョンス会長が、次期大統領候補と目される有力政治家のチャン・ピル議員に裏金を送っていた証拠のリストを手に入れ、調子に乗ってミライ自動車を脅そうと企みる・・・

一方、ウ・ジャンフン検事は元々警察官だったが、学歴がなく昇進が望めなかったことから、猛勉強で検事となったという変わり種。だが、検察でもモノを言うのはコネと後ろ盾。その現実に絶望的な気分になる。実際の韓国社会もそうなのだろうかと脳裏をよぎる。それでも地道な努力を続け、手柄となるべき裏金のリストに迫るも、先にサングに横取りされてしまう。そのサングは、裏金リストをガンヒに渡すが、突然ヤクザに捕らえられ、右手首をノコギリで切断されてしまう。

以来、義手を着け、監視下でもあり表面上は大人しく振舞うサング。それでも内心は虎視眈々と復讐の機会を伺っている。そんなサングに左遷の憂き目にあっていたジャンフンが接触を図る。ジャンフンは返り咲きを狙い、サングは復讐心に燃え、ともに「敵の敵は友」の理屈で手を組むことにする。ガンヒに渡したリストはコピーであり、本物はサングが持っていたことから、二人はガンヒらの告発に動き、サングは大勢のマスコミの前で記者会見を開いて全ての悪事を暴露する。

この記者会見が映画の冒頭で行われる。記者団に義手を外してみせるサング。そして時間を遡り、飛ぶ鳥を落とす勢いのサングが登場するが、まだ義手ではない。どういう経緯があるのだろうかとその展開に期待が持たされる。それはともかく、サングが右手を切り落とされるシーンは、わざわざ普通のノコギリを使う。なかなか残忍な手口である。それを知っているので、サングの部下が捕まると、「ここを切ろう」と言われただけで震え上がって自白してしまう。

実際の韓国社会の腐敗度の程は知らないが、この映画での有力者たちはえげつない。秘密の会合では裸の女たちを侍らせ、みずからもスッポンポンで乱痴気騒ぎ。とてもお子様には見せられない。そしてその実力も高い。せっかくサングが記者会見を開き、一旦はガンヒも逮捕されるが、翌日の新聞にはこれまでのサングの悪行が暴露されており、サングの告発も嘘まみれの印象操作をされてしまう。自らも罪を被る覚悟で告発したが、ふたを開けてみればサングだけが逮捕される始末。

ガンヒは釈放され、ジャンフンも検察上層部の信頼を完全に失う。もともとコネも後ろ盾もないジャンフンは、検察組織の中で隅に追いやられてしまう。一発逆転の技を放ったが、それが何と返されてしまうと、次の打つ手に困る。相手は権力を握っており、ちょっとマスコミをにぎわす程度ではダメということ。どうしても決定的な「証拠」が必要。サングは手下を通じて脱獄を図る。その足でガンヒに接触。そこで殺すと見せかけすべてを自白させる。その録音データを持って「証拠」としようとしたが、それは違法収集証拠であり、法的な効果はない。サングの浅知恵と思ってしまうが・・・

絶対的に不利な立場に立たされたジャンフンは驚きの行動に出る。コネや後ろ盾がないジャンフンが取った行動はなかなかの驚きのもの。二転三転するストーリー展開は、韓国映画ならではの面白さがある。韓国内で大ヒットを飛ばしたというが、それも頷ける。メジャー級のイ・ビョンホンと並び、チョ・スンウもなかなかいい役である。検察とチンピラの友情物語も心地良い。すっきり後味の良い勧善懲悪の映画である・・・


評価:★★★☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☁| Comment(0) | 韓国映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月25日

【ボーダー・ラン】My Cinema File 2286

ボーダー・ラン.jpg

原題: The Mule
2012年 アメリカ
監督: ガブリエラ・タリグアビーニ
出演: 
シャロン・ストーン:ソフィ
ビリー・ゼイン:アーロン
ミゲル・ロダルテ
マノロ・カルドナ

<映画.com>
********************************************************************************************************
シャロン・ストーンが主演と製作総指揮を務め、アメリカとメキシコの国境問題を題材に描いたクライムサスペンス。アメリカ人の女性記者ソフィーは、メキシコで失踪した弟アーロンを探すため現地へと向かう。弟の同僚ロベルトと一緒に行動することになった彼女は、ある町で弟と共に越境請負人に客を回していたハビエルと出会う。弟が越境請負人と接触した直後に姿を消したと聞いたソフィーは、そのアジトに潜入するが……。
********************************************************************************************************

観ようかどうしようかと迷ったが、最終的に「観よう」と決断した唯一の理由は「シャロン・ストーン主演」というただ一つ。しかし、それが裏目に出た一作である。

どうやらメキシコとアメリカの国境で、不法入国をしようとしているグループがいる。リーダーらしき男が率いるが、後を追いかけてくる一団がいる。必死に国境へ向かうも、アメリカ側から威嚇射撃を受ける。そんな緊迫した中、リーダーの携帯が鳴る。かけてきたのは女性。そしてとある小屋にたどり着くと、リーダーらしき人物は仲間をその中に入らせ、そして自身は捕まってしまう・・・

電話をかけてきたのはリーダーの姉ソフィー。記者をしているソフィーがメキシコにいる弟アーロンへ電話をかけたのは、まさに冒頭の瞬間。電話の向こうから銃声が聴こえ、アーロンの返事はない。それから何度も掛けなおすがつながらない。心配になったソフィーは、現地に向かう。そして警察に相談するも、失踪事件が日常茶飯事なメキシコではまともに取り合ってくれない。そしてアーロンの職場の同僚を訪ねる。

同僚の案内で、ソフィーは心当たりを探すが、アーロンの行方は知れない。やがて、アーロンが “コヨーテ”と呼ばれる越境請負グループと関わっていたらしいとわかってくる。メキシコとアメリカの国境での不法越境については、『ボーダーライン』(My Cinema File 1957)という迫力ある映画があったが、これも同じテーマ。だが、その内容には雲泥の差がある。

それにしてもうっかり「シャロン・ストーン主演」ということを忘れてしまっていたが、その理由は主演のソフィーの容貌。どう見ても無理して厚化粧を重ねて若ぶっている痛々しさが伝わってくるもの。これがどうやらシャロン・ストーンらしいとわかって愕然とする。あの『氷の微笑』のシャロン・ストーンと同一人物とはとても思えない。人間年をとるのは仕方がないが、『氷の微笑2』(My Cinema File 163)ではまだ維持できていた容貌も、それから6年で一気に劣化が進んでしまったようである。

肝心のシャロン・ストーンの魅力が劣化しても、ストーリーがしっかりしていればまだ救いはあるが、それも崩壊。ただでさえ治安の悪いメキシコに行き、ヤバいと言われる店に行くも、弟の同僚の男とのんびりテキーラを飲み交わし、ダンスなんかを躍ったりする。そして不法移民を手掛ける悪徳の越境請負人“コヨーテ”と接触し不法に国境越えを体験することになる。その流れもわざとらしさがプンプン臭う。

不法入国しようとするメキシコ人と一緒に改造したタンクローリーに乗り込むソフィーだが、“コヨーテ”に正体がバレてしまう。シャロン・ストーンもレイプされたり(これは意識混濁下の妄想?)と、体を張った演技を見せてくれるが、いかんせんストーリーには迫力のかけらもない。せめてシャロン・ストーンの妖艶な美貌があればまだしも、それがなくてこのストーリーではどうにも苦しい。

結局のところ、陳腐なストーリー展開に終始し、観るも無残な結果となる。こうなると、もはや「シャロン・ストーン主演」は観る理由にはならなくなる。一つの時代の終わりを痛感させる映画である・・・


評価:★☆☆☆☆









posted by HH at 00:00| 東京 ☁| Comment(0) | スリリング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月23日

【SUNNY 強い気持ち・強い愛】My Cinema File 2285

SUNNY 強い気持ち・強い愛.jpg
 
2018年 日本
監督: 大根仁
出演: 
篠原涼子:奈美
広瀬すず:奈美(高校生時代)
小池栄子:裕子
ともさかりえ:心
渡辺直美:梅
池田エライザ:奈々
山本舞香:芹香(高校生時代)
野田美桜:裕子(高校生時代)
田辺桃子:心(高校生時代)
富田望生:梅(高校生時代)
三浦春馬:藤井渉
リリー・フランキー:中川
板谷由夏:芹香

<映画.com>
********************************************************************************************************
2011年に製作され、日本でもヒットした韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』を篠原涼子、広瀬すずの主演、「モテキ」「バクマン。」の大根仁監督でリメイクした青春音楽映画。90年代、青春の真っ只中にあった女子高生グループ「サニー」。楽しかったあの頃から、20年以上という歳月を経て、メンバーの6人はそれぞれが問題を抱える大人の女性になっていた。「サニー」の元メンバーで専業主婦の奈美は、かつての親友・芹香と久しぶりに再会する。しかし、芹香の体はすでに末期がんに冒されていた。「死ぬ前にもう一度だけみんなに会いたい」という芹香の願いを実現するため、彼女たちの時間がふたたび動き出す。現在の奈美役を篠原、高校時代の奈美役を広瀬が演じるほか、板谷由夏、小池栄子、ともさかりえ、渡辺直美らが顔をそろえる。90年代の音楽シーンを牽引した大ヒットメーカー、小室哲哉が音楽を担当。
********************************************************************************************************

いい映画というのは、国境を越えてリメイクされるもの。それはどの国でも行われている。韓国映画のリメイク作品と言えば、『あやしい彼女』が思い浮かぶが、この映画も元ネタは韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』である。

主人公の奈美は、サラリーマンの夫と高校生の娘を持つ専業主婦。母が入院して病院通いをしているが、ある時の帰り際、たまたま他の病室の前を通りかかると、若い女性の泣き叫ぶ声が響いてきて、びっくりする。何気なく部屋のネームプレートを見ると、そこには高校時代の懐かしい同級生の名前がある。気になって翌日、母の見舞いの帰りに覗いてみると、はたしてそこは20年ぶりに会う友人芹香の部屋であった。

懐かしい再会を喜ぶ2人。しかし、そこは病室。結婚もせず、夫も恋人も子どももいない芹香は、主治医に余命一ヶ月を宣告されたと言う。そんな芹香は、奈美との再会を喜ぶ一方で、高校時代に「サニー」と称していた6人のメンバーに最期に会いたいと語る。仲が良かったのに、卒業以来誰にも会っていないという芹香は、サニーのメンバー探しを奈美に頼む。友人の最後の頼みに奈美は頷く。

奈美はまずは高校に行くことにする。そこで物語は、奈美の高校時代へと遡る。奈美は、転校生であったが周りはルーズソックスを履いたキャピキャピの女子高生。田舎者の奈美は1人浮いている。そんな奈美を気にかけたのは、姉御肌の芹香。何くれとなく面倒を見て、さらに自分たち5人のグループに入れる。それからは毎日ずっと6人で一緒に過ごすようになる。

基本的にリメイクであり、韓国版とストーリーは同じであるが、「サニー」のメンバーが韓国版では7人だったが、この映画では6人になっている。日本版ならではのところは、女子高生のファッションだろう。ルーズソックスにカーディガンは、一時期大ブームとなったので、それを知る世代にとっては懐かしい。奈美の家は貧しく、ルーズソックスもカーディガンも買ってもらえず、普通のソックスを伸ばし、祖母のカーディガンを拝借しという努力は涙ものである。

奈美のメンバー探しは、まず梅に行き当たる。高校時代から太っていた梅は変わらず太っており、結婚したが夫はギャンブル依存症で働かざるをえず、不動産営業の仕事は成果が上がらず苦労が絶えない。高校時代はみんな同じ制服に身を包んだ学生だが、社会人になれば皆それぞれに変わって行く。興信所に頼んで探し当てた裕子は、美容整形外科医のセレブ妻になっていて、マイナスカップと揶揄された貧乳もいつの間にか巨乳になっている。しかし、夫の浮気が発覚する。

さらに心は、元夫のDVに苦しみ、アルコール依存症で離婚し、今は借金まみれで5歳の子どもを実家に預けたまま、スナックの雇われママに落ちぶれている。最後の1人の奈々がなかなか見つからないが、6人の現在の姿はきっと高校時代には誰も想像できなかったのではないかと思う。物語は、奈美の片思いの恋のエピソードも含めて進んでいく。高校時代の奈美を演じるのは広瀬すずで、現在の奈美を演じるのは篠原涼子。それぞれよく雰囲気が出ていて、物語の世界に引き込まれていく。

韓国版もそうであったが、誰にでも懐かしい時代はあるわけであり、とりわけ高校時代というのはそれが強かったりする。また、誰もが高校時代に想像していた未来の自分になれているわけではない。疲れたサラリーマンだったり、家事に追われる主婦だったりすると、「輝いていた頃の自分」をこの映画を観て思い出したりするかもしれない。そんなノスタルジーを刺激してくれるところが、この映画(元ネタの韓国版)の良さでもあった。だからこそ、ヒットしたのであり、日本版のリメイクが創られたのであろう。

そんな心が温かくなるストーリーだが、最後の演出でトーンダウンしてしまったのは誠に残念。せっかくのストーリーが陳腐なものになってしまい、緩みかけた涙腺が固く閉ざされてしまった。これは役者の問題というより脚本の問題である。元ネタが良かっただけに、残念なリメイク版である・・・


評価:★★☆☆☆









posted by HH at 00:00| 東京 ☔| Comment(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月22日

【ローマンという名の男-信念の行方-】My Cinema File 2284

ローマンという名の男.jpg

原題: Roman J. Israel, Esq.
2017年 アメリカ
監督: ダン・ギルロイ
出演: 
デンゼル・ワシントン:ローマン・J・イズラエル
コリン・ファレル:ジョージ・ピアス
カルメン・イジョゴ:マヤ・オルストン
リンダ・グラバット:ヴァニータ・ウェルズ
アマンダ・ウォーレン:リン・ジャクソン

<映画.com>
********************************************************************************************************
デンゼル・ワシントンが約18キロ増量するなど、徹底的な役作りで主人公を熱演し、第90回アカデミー賞で主演男優賞にノミネートされたサスペンスドラマ。有能だが見た目の冴えない人権弁護士ローマン・J・イズラエルは、法のもとに正義を実現するべく長年にわたって奔走してきた。ある日、一緒に法律事務所を構えるウィリアムが倒れたことをきっかけに帳簿を調べはじめた彼は、事務所の資金調達に不正があったことに気づき、信念を大きく揺さぶられる。そんな中、敏腕弁護士ピアスからの依頼で殺人事件を担当することになったローマンは、その裁判で不正が行われていることを知り……。監督は『ナイトクローラー』のダン・ギルロイ。共演に『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』のコリン・ファレル、『グローリー 明日への行進』のカルメン・イジョゴ。
********************************************************************************************************

弁護士のローマン・J・イズラエルは、弁護士ながら他人とのコミュニケーションに難がある。そのため友人のウィリアムの経営する弁護士事務所で働いているが、表立って裁判所に顔を出すのはウィリアムで、ローマンは裏方の弁護アドバイザーである。若い時より司法制度に疑問を持ち、法律の間違いを正そうとする活動なども行っている。

そんなある日、ウィリアムが心臓発作で倒れたという知らせが入る。ウィリアムが手掛けていた案件については延期とすることになったが、ローマンはなぜかこれを無視し、急遽法廷に出廷する。ローマンは有能だが、コミュニケーションに問題を抱えている。その法廷でも裁判官を怒らせて法廷侮辱罪を適用されてしまう。

翌日。出社したローマンを待っていたのは、ウィリアムの親族のリン。リンは、知人のジョージ・ピアス弁護士を連れてきており、ウィリアムが担当していた案件はジョージに引き継いでもらうと告げる。さらに事務所も閉鎖すると言う。ローマンは驚き、事務所の継続を訴えるが、コミュ障のローマンに経営を任せてもらえるはずもなく、ローマンは失業の危機に陥いる。

ジョージはウィリアムとは師弟の間柄。弁護士事務所を運営し、高級車に乗り高価なスーツを着こなすやり手の弁護士。ジョージはローマンの有能さに気がつき、自分の事務所へと誘うが、ローマンは拒否する。そして自ら売り込みに回るが、なかなかうまくいかない。そんな中、“公民権を守る会”に売り込みに行ったローマンは、会の代表であるマヤと出会う。

思うように仕事を得られないローマンは、やむなくジョージの事務所で働くことを決める。最初の案件は、デレルという名の黒人の弁護事件。デレルは仲間のカーターとともにコンビニに強盗に入り、店員を銃殺。デレルは捕まり、カーターは逃走。殺された店員はアルメニア人で、アルメニア人の仲間はカーターに10万ドルの懸賞金をかけて捜している。これが後々の問題につながる。

アメリカの弁護士は、映画『レインメーカー』でも描かれていたが、救急車のあとを追いかけ被害者に一早く名刺を渡すような者がいる。ローマンはそんな金と名声のことしか考えていない弁護士を軽蔑し、高い理想を持っている。ジョージはそんな弁護士とは違うようだと思い、自分が思い描く司法取引に改革を起こす裁判の話をするが、ジョージはその話をまともに取り合おうとはしなかった。

ローマンは理想を心に描く男。純粋と言えば純粋であるが、世の中は濁水。ローマンにとっては生きにくい世の中。デレルの事件ではローマンは検察と司法取引の相談をするが、検察を怒らせ司法取引は泡と消えてしまう。強すぎる正義感と、信念を曲げない勇気は一方で他人との衝突を招く。そんなローマンにマヤは少しずつ惹かれていく。しかし、ローマンが勝手に司法取引を持ちかけたため、デレルは目をつけられ刺殺されてしまう。この失態に激怒したジョージはローマンに解雇すると厳しく言い放つ。

世の中は思うようにはいかないもの。ローマンは悪事も不正もせず、儲け主義の弁護士とは一線を画し、真面目に生きてきたのにそれが報われない。そんな思いからか、ついにローマンは、依頼人との守秘義務を破りアルメニア人の懸賞金を手にする。その日から変わるローマン。確かに道を踏み外したが、その姿は他の金権弁護士と変わらない。一方、次第にローマンに感化されたジョージもまた変わっていく。

ローマンを演じるのはデンゼル・ワシントン。何とでっぷり太った姿。役に合わせて増量したそうであるが、体型まで変えたり、コミュ障の様子がよく伝わってくるところなど、さすが大物役者という感がある。また、相方となるジョージを演じるのはコリン・ファレル。ローマンに感化されていく弁護士役だが、金に溺れることもなく、この映画では地味にいい人間であり好感が持てる役柄。このジョージの存在もストーリーに彩りを添えている。

結局、ローマンはマヤとジョージを変えていく。ローマン自身は幸せな結末を迎えられないが、ローマンの残したものは心温まるものがある。さすがデンゼル・ワシントンというべき一作である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☁| Comment(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする