2020年10月30日

【手紙は憶えている】My Cinema File 2302

手紙は憶えている.jpg

原題: Remember
2015年 アメリカ
監督: アトム・エゴヤン
出演: 
クリストファー・プラマー:ゼブ・グットマン
マーティン・ランドー:マックス・ザッカー
ヘンリー・ツェーニー:チャールズ・グットマン
ディーン・ノリス:ジョン・コランダー
ブルーノ・ガンツ:ルディ・コランダー

<シネマトゥデイ>
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『スウィート ヒアアフター』などのアトム・エゴヤンが監督を務め、ナチスに家族を奪われた男の復讐劇に迫るサスペンス。戦時中、互いに収容所から何とか生き延びた友人との約束で、かつての虐殺者を捜して敵討ちの旅に出る老人の姿を描く。主人公を『人生はビギナーズ』などの名優クリストファー・プラマーが熱演。さまざまな試練に直面しながらも、懸命に家族の無念を晴らそうとする男の悲壮な姿に心打たれる。
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90歳になるゼブは、老人ホームで余生を過ごしている。しかし、最近認知症の症状が強くなっており、その日の朝も目覚めてから亡くなった妻ルースを探してしまう。同じ老人ホームに入居するマックスはそんなゼブの友人。ともに残された余生であるが、最後にやり残したことをなんとか成し遂げたいと考えている。それは復讐。

実は、ゼブもマックスもともにアウシュビッツ強制収容所からの生き残り。ともにそこで家族を殺されている。二人の家族を殺したのは収容所の管理者“オットー・ヴァリッシュ”。実はそのオットーが、現在でも“ルディ・コランダー”と名前を変えて生きていることがわかる。そこで復讐を考えたが、マックスは車椅子で、ゼブは認知症。ともに復讐は難しい。そこで動けないマックスがゼブの指南役となることにする。

マックスはゼブに手紙を渡す。そこには妻ルースが死んだことから始まり、アウシュビッツの復讐を計画してあることまで書かれている。ゼブは目が覚めるとみんな忘れて途方に暮れてしまうが、手紙を読めば思い出せる。『手紙は憶えている』という邦題は珍しく秀逸である。マックスはオットーの年齢などから4人の“ルディ・コランダー”を絞り込んでおり、住所まで調べ上げている。動けないマックスに代わり、ゼブがオットーへの復讐への旅に出る。

人知れず老人ホームを抜け出したゼブは、まず拳銃を入手する。アメリカは簡単に銃が手に入る。そしてゼブは、まず一人目のルディの元へ向かう。一人目のルディも高齢で、家ではテレビを観て暮らす日々。ルディは確かにドイツ軍に在籍していたが、北アフリカのロンメル軍団に所属していて、アウシュヴィッツとは無関係だと判明する。二人目のルディは、カナダの老人ホームに入居しているが、高齢老人は国境のチェックもあまく、銃の持ち込みもクリアしてそこに向かう。

そしてホームにルディを訪ね、アウシュビッツにいたことはわかるが、腕にはゼブと同じ数字の入れ墨がある。2人目も看守ではなく、囚人だと判明。三人目のルディは3ヶ月前に亡くなっていて、息子ジョンの話では、亡父はアウシュビッツには赴任しておらず軍のコックをしていただけだとわかる。しかし、この一家は生粋のナチ信者であり、ゼブの腕にユダヤ人の囚人番号が彫られているのを見ると、態度を一変させる。その勢いで事件となってしまう・・・

物語は、こうしてゼブが四人目のルディの元へ向かうところまで続く。最後に待っていたのは、意外な真実。認知症の主人公が、眠ると記憶がリセットされてしまうように忘れてしまうので、手紙を読んで復讐を思い出すというのがうまくストーリーに生かされている。単純な復讐物語だと思っていたら、最後に隠されていた真実はヒネリが効いていて、絶妙などんでん返しを提供してくれる。振り返ってみればゼブも哀れなのであるが、それも致し方ないと言えるのだろう。

ユダヤ民族の叡智なのだろうか。短い映画だが、小粒でもピリリと光る映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2020年10月25日

【マイル22】My Cinema File 2301

マイル22.jpg

原題: Mile 22
2018年 アメリカ
監督: ピーター・バーグ
出演: 
マーク・ウォールバーグ:ジェームズ・シルバ
ローレン・コーハン:アリス・カー
イコ・ウワイス:リー・ノアー
ロンダ・ラウジー:サム・ショウ
ジョン・マルコビッチ:ビショップ
CL:クイーン

<映画.com>
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『ローン・サバイバー』 『バーニング・オーシャン』 『パトリオット・デイ』に続き、マーク・ウォールバーグとピーター・バーグ監督が4度目のタッグを組んだアクションサスペンス。何者かに国家レベルの危険物質が盗まれた。その行方を知るリー・ノアーは重要参考人として政府の保護下にあったが、そんなノアーを抹殺するため武装勢力が送り込まれる。ジェームズ・シルバ率いるCIAの機密特殊部隊はノアーを国外脱出させるため、インドネシアのアメリカ大使館から空港までの22マイル(約35.4キロ)を、武装勢力の攻撃を浴びながら、ノアーを護送するミッションに挑む。ウォールバーグがシルバを演じるほか、『ザ・レイド』シリーズ、『スター・ウォーズ フォースの覚醒』のイコ・ウワイス、ドラマ「ウォーキング・デッド」のローレン・コーハン、初代UFC世界女子バンタム級王者のロンダ・ラウジー、『RED レッド』シリーズのジョン・マルコビッチらが顔をそろえる。
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ジェームズ・シルバ率いるCIAの機密特殊部隊が、ある一軒の家を急襲する。離れた作戦本部で指揮を執るのはビショップ。現場ではシルバの指示の下、アリス、サム、ダグといったメンバーが任務に就く。そこはKGBのアメリカ国内のアジト。当初は諜報員の確保を目的としていたが、予期せぬ事態が発生し殺害へと作戦変更せざるを得なくなる。その奇襲によりロシア諜報部は全滅。その中には18才の少年も含まれており、これが後々の伏線となっていく。

16ヶ月後、シルバ達は東南アジアのインドカー・シティーのアメリカ大使館にいる。その任務は、何者かに盗まれた4キロもの放射性物質セシウムを見つけ出すこと。下手すれば大都市が危険になりかねない事態。そんな中、大使館にリー・ノアと名のる男がセシウムのありかを知っていると名乗り出てくる。要求は自身の亡命。データはハードディスク端末に入っているが、端末のデータは8時間を過ぎたら自然消滅するように仕組んでいるという。さらにほどなくして、ノアの身柄引き渡しを求めて、インドカー政府の人間がやってくる。

大使館内では、ノアの扱いと事実関係の確認とにてんやわんやとなるも、その間にノアは大使館内で医師に扮した男たちに襲われる。これを巧みに返り討ちにするノア。さすが『ザ・レイド』シリーズで見事な格闘アクションを見せてくれたイコ・ウワイスである。この事態にアメリカ政府も情報チームよる作戦を決定する。それは、ビショップ指揮の下、シルバ達がノアをアメリカ大使館から米軍輸送機が待機する空港までの22マイルを護送するというもの。これがタイトルのゆえん。

空港では、ノアをアメリカまで運ぶ輸送機が待機する予定だが、それは滞在時間わずか10分間というもの。ドローンや街中の監視カメラをハッキングしての総力を挙げての輸送作戦である。しかし、その護送ルートは、ロシア偵察機の援護を受けたインドカー政府の特殊部隊もキャッチしていて、次々に襲い来る。ただの22マイルではない。そう言えば、やはり16ブロック先の裁判所に証人を護送するという『16ブロック』という映画があったな、と関係ないことを考えたりする。

インドカーの特殊部隊による攻撃も執拗で、シルバは仲間を次々と失っていく。街中での激しい銃撃戦。部下のサムも自らを犠牲にして敵を阻止する。協力者がいるカフェに退避するが、そこもあっという間に爆破され、移動しながら銃撃戦が展開される。このあたりのアクションの迫力はなかなかのもの。さすがマーク・ウォールバーグ主演作品である。

そうして苦労して仲間を失って移動した22マイルの果てに待っていた顛末は、意外なもの。この手の映画にありがちなハッピーエンド、ヒーローは常に歓喜の中で結末を迎えるというものではない。4回転半ジャンプ並みのヒネリの効いた予想外の結末であった。マーク・ウォルバーグとイコ・ウワイスの激しいバトル・アクションとヒネリの効いたストーリー展開。最後に唸らされてしまった映画である・・・


評価:★★★☆☆








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2020年10月24日

【女神の見えざる手】My Cinema File 2300

女神の見えざる手.jpg

原題: Miss Sloane
2016年 アメリカ
監督: ジョン・マッデン
出演: 
ジェシカ・チャステイン:エリザベス・スローン
マーク・ストロング:ロドルフォ・シュミット
ググ・バサ=ロー:エズメ・マヌチャリアン
アリソン・ピル:ジェーン・モロイ
マイケル・スタールバーグ:パット・コナーズ
サム・ウォーターストン:ジョージ・デュポン
ジョン・リスゴー:スパーリング上院議員

<映画.com>
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「恋におちたシェイクスピア」「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」のジョン・マッデン監督が『ゼロ・ダーク・サーティ』のジェシカ・チャスティンを主演に迎え、天才的な戦略を駆使して政治を影で動かすロビイストの知られざる実態に迫った社会派サスペンス。大手ロビー会社の花形ロビイストとして活躍してきたエリザベス・スローンは、銃の所持を支持する仕事を断り、銃規制派の小さな会社に移籍する。卓越したアイデアと大胆な決断力で難局を乗り越え、勝利を目前にした矢先、彼女の赤裸々なプライベートが露呈してしまう。さらに、予想外の事件によって事態はますます悪化していく。共演に『キングスマン』のマーク・ストロング、『インターステラー』のジョン・リスゴー。
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冒頭、ワシントンD.C.の連邦議事堂にて、聴聞会が開かれている。証人席に座るのは、ロビイストのエリザベス・スローン。彼女は、大手ロビー会社、コール=クラヴィッツ&ウォーターマンに在籍していた際に手掛けた仕事で、不正を犯したのではないかという嫌疑をかけられている。意味ありげなスタートである。そして物語は、聴聞会から遡ること3ヶ月と1週間前に戻る。

コール=クラヴィッツ&ウォーターマンに所属し、敏腕ロビイストとしてならすエリザベスのもとに、銃擁護派団体の代表者であるサンドフォードが仕事を依頼してくる。ところがエリザベスはこの依頼を断る。これに対し、上司のデュポンは烈火のごとく怒り、受託するか会社を去るかの選択を通告する。そんなエリザベスに接近してきたのは、小さなロビー会社ピーターソン=ワイアットを率いるシュミット。

ピーターソン=ワイアットは、銃規制法案賛成工作に携わっていて、エリザベスの腕を見込んで白羽の矢を立てた次第。移籍を決意したエリザベスは、チームのメンバー全員で移籍しようとするが、ついてきたのは半分の4人だけであった。中でもエリザベス子飼いの部下のジェーンが、意外にも移籍を拒否する。当然付いて来ると考えていたエリザベスはショックを受ける。このあたり、日本的な一宿一飯感覚はないのだろう。ドラスティックなアメリカ的である。

ジェーンはエリザベスの後任のコナーズのチームに加わり、銃規制法案廃止の仕事に従事し、エリザベスとは対立する立場となる。銃の乱射事件が起こり、何人もの犠牲者が出るたびに銃規制法案が叫ばれるが、銃器メーカーを中心とした規制反対派がそれを阻止しようとする。賛成派は良心が武器だが、反対派はその何十倍もの資金力を有している。アメリカで銃規制が進まないのもこうした反対派のロビー活動の成果なのだろう。ストーリーとは別に興味深いところである。

ロビー活動は、議員を対象とする。銃規制に対し、賛成・反対の明らかな議員は別として、態度を決めかねている議員22名の奪い合いが行われる。エリザベスは女ながら激しい闘争心を秘めている。弱点の資金についてもフェミニスト団体などの女性団体から1,500万ドルの寄付金を集める。さらには自費で盗聴チームを雇っており、目的のためには手段を選ばないやり方は、主人公とはいえ顔をしかめたくなる。

そんなエリザベスは、新たな部下エズメ・マヌチャリアンがかつて銃乱射事件の起こった高校の生存者であることを知ると、目立ちたくないというエズメを説得してメディア戦略に出る。ここから賛成派と反対派のつば競り合いが展開される。ロビー活動の実態がよくわかって興味深い。特にエズメが襲われた時、銃を携帯していた民間人が男を射殺し、一躍時の人となる。襲ったのも守ったのも銃であり、どちらの立場に立つかで賛否が変わる。日本人的には議論にならないが、アメリカでは銃の必要性を訴える意見もよくわかるところである。

ストーリーは、銃規制を巡る争いかと思いきや、意外な方向へと進んでいく。もちろん、現在のアメリカでは銃規制法案は成立していないようであり、そんな事情も加味した展開となっているのもよくわかる。ビジネスに徹する冷たい女というイメージのエリザベスだが、ラストの聴聞会では見事な対応をしてのける。まさに「肉を切らせて骨を断つ」展開は、まったく予想外の展開で、これはなかなかやられた感が強いものである。

主演のジェシカ・チャステインは、『ゼロ・ダーク・サーティ』でもそうであったが、強い女のイメージがよく合う。強い女と言ってもアクション的なものではなく、行動的なものである。男勝りのその行動は、少なくとも彼女にはしたくないなと個人的には思ってしまう。現実の銃規制もこんなロビイストがいたら、進むのかもしれないと思えてくる。

強い主人公とヒネリの効いたストーリー展開が実に見事な映画である・・・


評価:★★★☆☆








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2020年10月23日

【ザ・フォージャー 天才贋作作家 最後のミッション】My Cinema File 2299

ザ・フォージャー 天才贋作作家 最後のミッション.jpg

原題: The Forger
2014年 アメリカ
監督: フィリップ・マーティン
出演: 
ジョン・トラボルタ:レイ・カッター
クリストファー・プラマー:ジョセフ
タイ・シェリダン:ウィル
アビゲイル・スペンサー:ペイズリー捜査官
マーカス・トーマス:カール
アンソン・マウント:キーガン

<映画.com>
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ジョン・トラボルタ演じる贋作画家が、ボストン美術館を舞台に名画の贋作すり替えミッションを遂行する犯罪ドラマ。仮出所まで9カ月となった贋作画家のレイ・カッターは、ガンを患った息子のウィルと少しでも一緒の時間を過ごすために、暗黒街を牛耳るキーガンに頼み込み、晴れて自由の身となった。しかし、出所の条件として、キーガンがレイに命じたのは、ボストン美術館に展示されるモネの贋作を作り、本物とすり替える計画だった。レイは、詐欺師としてならした父親のジョセフ、息子のウィルも巻き込み、大胆なモネ強奪計画を実行に移す。レイ役をトラボルタが演じ、父親ジョセフを「人生はビギナーズ」でアカデミー助演男優賞を受賞したクリストファー・プラマー、息子のウィルを『ツリー・オブ・ライフ』「MUD マッド」のタイ・シェリダンが演じる。
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刑務所に服役中のレイ・カッターは、贋作を制作した罪で5年の刑に服している。出所まであと10か月を残すのみとなっているが、仮出所を早めるための裏工作を犯罪組織のボスであるキーガンに依頼する。そんな依頼を犯罪組織の人間にすれば大きな借りを作ることになる。あと10か月であれば、普通は我慢するのが道理。しかし、レイには時間がない。というのも、唯一の息子ウィルがガンで余命わずかとなっているからである。背に腹は代えられない。

キーガンは判事を買収し、レイは出所する。自分の父親ジョセフと暮らしているウィルのもとへと帰るが、ジョセフもウィルもよそよそしい。よほど迷惑を蒙ったことが伺える。そしてレイはさっそくキーガンから呼び出される。キーガンはレイにモネの絵画「散歩、日傘をさす女」の贋作を描き、3週間後に美術館で展示される本物とすり替えろと要求する。無理な要求であるが、断る余地はない。

そんなレイを連邦警察もマークしている。女性刑事ペイズリーがさり気なく接近する。キーガンから難題を押し付けられたレイだが、一番の心配は息子のウィル。病院へ送り迎えし、ドクターと話をする。いい話は聞けない。何か欲しいものはあるかと問われたウィルは、母親に会いたいとレイに言う。レイは、大昔に妻キムと別れていたが家を探し当てて訪ねていく。しかし、そこにいたのは、麻薬中毒で荒れた暮しのキム。なんとかそれらしく装うと、親子3人で食事に行く。傍から見れば普通の親子である。

一方、キーガンの仕事も待ったなし。レイは友人のカールが用意してくれた広いアトリエに腰を据え、贋作の制作を開始する。息子との最後の時間を過ごしたいのは父親として当然だろう。だが、キーガンはそんなことなどお構いなし。レイは早くから警察のマークを察知する。下手をすれば堀の中へと逆戻りで、息子との最後の時間もなくなる。まさに絶体絶命の状況である。

自ら死期が近いとわかっているウィルも切ない。しかし、父親の気持ちを察すると、2つ目の願いごとを打ち明ける。それは初経験がしたいというもの。これが母子関係だったら難しいが、父子であれば気持ちは通じる。レイは息子をコールガールの下へと連れていく。しかし、これは直後にレイを尾行していたペイズリーに追いかけられて未遂に終わる。こんなこともあり、ウィルも次第に父親に心を開いていく。

こうして物語は、レイの犯罪計画の進行とレイとウィル親子の物語とが並行して描かれていく。そしてウィルが次に父親に頼んだ3つ目の願いは、自分も犯罪計画を手伝いたいというもの。父親としてはとんでもないことであるが、それが人生も残り少ない息子の最後の願いとなると無碍にはできない。キーガンとFBIと息子と間で悩むレイ。そしてレイが下した決断は、これ以上はないだろうというもの。犯罪をうまくやってのけてメデタシメデタシという犯罪ドラマではなく、これは心温まる親子の物語。

主演のレイを演じるのはジョン・トラボルタ。すっかり貫禄たっぷりであるが、我が子を思う贋作画家を好演。タイトルにある「最後のミッション」を見事にやってのける。ラストの展開も見事な切れ味であり、小気味よい内容の映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2020年10月18日

【セルフレス/覚醒した記憶】My Cinema File 2298

セルフレス/覚醒した記憶.jpg

原題: Self/Less
2015年 アメリカ
監督: ターセム・シン
出演: 
ライアン・レイノルズ:若いダミアン/マーク
ベン・キングズレー:ダミアン
マシュー・グード:オルブライト
ナタリー・マルティネス:マデリーン
ミシェル・ドッカリー:クレア
ビクター・ガーバー:マーティン
デレク・ルーク:アントン

<映画.com>
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『デッドプール』のライアン・レイノルズ主演によるSFアクション。余命半年と宣告された大富豪の建築家ダミアン・ヘイルは、父を嫌う一人娘のクレアとの仲を修復することなく死を迎えることに絶望していた。失意の中にあったダミアンに天才科学者のオルブライトがもちかけたのは、遺伝子操作で作った肉体へダミアンの頭脳を転送することだった。莫大な料金と引き換えに新しい肉体を手に入れたダミアンだったが、その肉体は遺伝子操作で作られたものではなく、妻子ある特殊部隊の軍人マークの肉体だった。真実を知ったダミアンとマークの妻は、オルブライト率いる秘密組織に命を狙われることとなる。新たな肉体のダミアン=軍人マーク役をレイノルズ、68歳のダミアン役をベン・キングズレー、科学者オルブライト役をマシュー・グードがそれぞれ演じる。監督は「ザ・セル」『インモータルズ 神々の戦い』のターセム・シン。
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「ニューヨークを創った男」との異名を持つ建築家で大富豪の老人ダミアンは、癌で余命宣言を受けている。そしてそれを親友のマーティンだけに打ち明ける。ダミアンには一人娘のクレアがいるが、折り合いが悪く、自らの余命についても話せないでいる。そんなダミアンは、知り合いから「フェニックス」なる謎の医療機関を紹介してもらう。そこはクローン技術で生み出した新たな肉体に自分の意識を移す極秘プログラムを提供している。ダミアンはこれに申し込み、そして新たに若い肉体を手に入れる。

古い体は、死亡したと公表され、ダミアンは新しい体で、エドワードという名前と経歴をもらい、別人として新たな人生を送ることになる。そのエドワードは、新たな肉体に慣れるためのリハビリを開始する。フェニックスのエージェントであるオルブライトからは、副作用を予防するためと称し、薬を処方される。しかしある日、つい薬を飲み忘れてしまったエドワードは幻覚に襲われる。それはあまりにもリアルな内容。

気になったエドワードは、覚えている内容を検索する。今は画像検索もできる便利な時代。すぐにそれらしき場所を特定すると、さっそく一人で訪ねて行く。そこにある一軒家に入っていくと、そこには自分と瓜二つの男の写真がある。そしてそこにその家に住む女性が帰って来る。それは幻覚で見た女性マデリーン。その時、エドワードらは何者かに襲われる。間一髪でマデリーンと逃げ出したエドワード。そしてエドワードは、マデリーンから思いもかけなかった話を聞く。

マデリーンは、マークが死んだものと思い込んでいたが、実はマークは重い病気に苦しむ一人娘のアナの医療費を稼ぐために自らの身体を実験に差し出しており、ダミアンの意識が移されたのはクローン体ではなくマークの肉体そのものだったことがわかる。そして副作用を抑える薬というのが、元の体の記憶を抑える薬そのものであり、薬を飲み続ければやがて元の記憶は失われ、飲まなければ移植した記憶が消えてしまうということが判明する。

年を取った金持ちが若い肉体を手に入れるという発想は、そう言えばその昔『フリージャック』という映画があったと思い出す。『フリージャック』は、金持ちがそれと知っていて若い肉体を奪うというストーリーだったが、こちらは「クローン培養した体」と騙されて応じるという内容。永遠の命は誰しもが憧れるところであり、その一つの方法として意識だけ永らえるというものがある。その都度若返れればそれにこしたことはない。だが、他人の体を奪うのなら良心の呵責というものがある。

この映画は、うまくそれを説明する。クローン培養された体と聞けば罪悪感もない。ところが実はそれは金で買った体というのがこの映画のミソ。この映画では、一人娘のために自らの体を提供した男の体を主人公が買ってしまうという悩ましい問題を含んでいる。自分自身は生き残りたい。されどそのためには愛する娘のために犠牲になろうとした気の毒な男とその家族を犠牲にしなければならない。その葛藤をどう克服するのか。

この画期的な技術を開発したフランシス・ジェンセン博士も実はその体は死んで意識を移してある。その移した男こそがフェニックスを取り仕切るオルブライトだとわかる。眼鏡をはじく癖が同じであることをエドワードが見抜くのである。そして事実をすべて知ったエドワードはマーティンに協力を求めるが、なんとマーティンもまたフェニックスで亡き息子の意識を別人に移植していたことがわかる。

金を払ったから関係ないと自分を優先に考える男であれば問題はなかったのだろうが、良心を持つエドワードは、マデリーンとアナを逃がそうとする。秘密を守ろうとするオルブライトは、口封じのため2人を次の金持ちに提供する体にしようとする。迫りくるフェニックスの追手。そして物語は緊迫のクライマックスを迎える。自分がダミアンだったらどんな行動を取るだろうか、取れるだろうか。しばし考えてみると面白い。

永遠の命を買ったダミアン。しかし、それが他人の犠牲の上に成り立っているものであったら・・・最後にダミアンの取った行動は心温まるもの。『フリージャック』の金持ちの姿とは一味違う。いつかクローン技術がきちんと確立されて、何の問題もなく意識を移植できるようになったらと思う。だが、それを庶民が利用できるようになるかどうかはまた別の問題かもしれない。そんな夢想をしてみた映画である・・・


評価:★★★☆☆








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