
原題: Remember
2015年 アメリカ
監督: アトム・エゴヤン
出演:
クリストファー・プラマー:ゼブ・グットマン
マーティン・ランドー:マックス・ザッカー
ヘンリー・ツェーニー:チャールズ・グットマン
ディーン・ノリス:ジョン・コランダー
ブルーノ・ガンツ:ルディ・コランダー
<シネマトゥデイ>
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『スウィート ヒアアフター』などのアトム・エゴヤンが監督を務め、ナチスに家族を奪われた男の復讐劇に迫るサスペンス。戦時中、互いに収容所から何とか生き延びた友人との約束で、かつての虐殺者を捜して敵討ちの旅に出る老人の姿を描く。主人公を『人生はビギナーズ』などの名優クリストファー・プラマーが熱演。さまざまな試練に直面しながらも、懸命に家族の無念を晴らそうとする男の悲壮な姿に心打たれる。
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90歳になるゼブは、老人ホームで余生を過ごしている。しかし、最近認知症の症状が強くなっており、その日の朝も目覚めてから亡くなった妻ルースを探してしまう。同じ老人ホームに入居するマックスはそんなゼブの友人。ともに残された余生であるが、最後にやり残したことをなんとか成し遂げたいと考えている。それは復讐。
実は、ゼブもマックスもともにアウシュビッツ強制収容所からの生き残り。ともにそこで家族を殺されている。二人の家族を殺したのは収容所の管理者“オットー・ヴァリッシュ”。実はそのオットーが、現在でも“ルディ・コランダー”と名前を変えて生きていることがわかる。そこで復讐を考えたが、マックスは車椅子で、ゼブは認知症。ともに復讐は難しい。そこで動けないマックスがゼブの指南役となることにする。
マックスはゼブに手紙を渡す。そこには妻ルースが死んだことから始まり、アウシュビッツの復讐を計画してあることまで書かれている。ゼブは目が覚めるとみんな忘れて途方に暮れてしまうが、手紙を読めば思い出せる。『手紙は憶えている』という邦題は珍しく秀逸である。マックスはオットーの年齢などから4人の“ルディ・コランダー”を絞り込んでおり、住所まで調べ上げている。動けないマックスに代わり、ゼブがオットーへの復讐への旅に出る。
人知れず老人ホームを抜け出したゼブは、まず拳銃を入手する。アメリカは簡単に銃が手に入る。そしてゼブは、まず一人目のルディの元へ向かう。一人目のルディも高齢で、家ではテレビを観て暮らす日々。ルディは確かにドイツ軍に在籍していたが、北アフリカのロンメル軍団に所属していて、アウシュヴィッツとは無関係だと判明する。二人目のルディは、カナダの老人ホームに入居しているが、高齢老人は国境のチェックもあまく、銃の持ち込みもクリアしてそこに向かう。
そしてホームにルディを訪ね、アウシュビッツにいたことはわかるが、腕にはゼブと同じ数字の入れ墨がある。2人目も看守ではなく、囚人だと判明。三人目のルディは3ヶ月前に亡くなっていて、息子ジョンの話では、亡父はアウシュビッツには赴任しておらず軍のコックをしていただけだとわかる。しかし、この一家は生粋のナチ信者であり、ゼブの腕にユダヤ人の囚人番号が彫られているのを見ると、態度を一変させる。その勢いで事件となってしまう・・・
物語は、こうしてゼブが四人目のルディの元へ向かうところまで続く。最後に待っていたのは、意外な真実。認知症の主人公が、眠ると記憶がリセットされてしまうように忘れてしまうので、手紙を読んで復讐を思い出すというのがうまくストーリーに生かされている。単純な復讐物語だと思っていたら、最後に隠されていた真実はヒネリが効いていて、絶妙などんでん返しを提供してくれる。振り返ってみればゼブも哀れなのであるが、それも致し方ないと言えるのだろう。
ユダヤ民族の叡智なのだろうか。短い映画だが、小粒でもピリリと光る映画である・・・
評価:★★☆☆☆