
原題:마더/Mother
2009年 韓国
監督: ポン・ジュノ
出演:
キム・ヘジャ:母親
ウォンビン:トジュン
チン・グ:ジンテ
ユン・ジェムン:ジェムン刑事
チョン・ミソン:ミソン
ムン・ヒラ:アジョン
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『殺人の追憶』 『グエムル/漢江の怪物』のポン・ジュノ監督が手がけた3年ぶりの長編。国民的人気女優のキム・ヘジャ、5年ぶりの映画出演となるウォンビンが親子を熱演する。貧しいながらも幸せに暮らしていた親子であったが、ある日1人息子が警察に拘束されてしまう。殺人事件の容疑者にされてしまった息子の無実を信じ、孤立無援の母は悲しむ間もなく、たった1人で真相に迫ろうとするのだが……。
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漢方屋を営む母親は、一人息子のトジュンと二人暮らし。トジュンは、体は大人だが知的障害者である。トジュンには悪友のジンテがいる。バカにしているようでいて、トジュンが高級車に轢かれそうになると、追いかけて行って報復しようとする。友達思いのように見えるが、壊したミラーの請求をされると罪をトジュンになすりつけるズルさもある。修理代は貧しい暮らしの母親には負担になるが、母親は内緒で針治療の施術をして稼いで返済するのである。
ある夜、ジンテと飲む約束をしていたトジュンだが、すっぽかされてしまう。人通りのない帰り道で、トジュンは女子高生のアジョンを見つけ声を掛けるが、相手にされない。トジュンはそのまま帰宅し、いつものように母の寝床に潜り込み眠りにつく。ところが翌朝、アジョンが遺体となって発見される。運の悪いことに、それはトジュンが話しかけた直後のことであり、その目撃証言や物証によりトジュンは逮捕されてしまう。
驚いたのはトジュンの母親。当の本人は、事態の深刻さがわかっておらず、面会に来た母親にもやっていないと呑気に語る。母親は高い費用を払って弁護士を雇うが、どこまで真剣にやってくれるのかは、弁護士の態度を見ていると判断がつかない。警察はもうトジュンが犯人と決めつけており、じれったくなった母親は独自に真犯人を探し始める。まず怪しむのはトジュンをすっぽかしたジンテ。
母の愛というのは盲目的なものである。母親はなんとジンテの家に忍び込む。そして赤い染みのついたゴルフクラブを見つけ、これぞ犯行の証拠と警察に持ち込む。しかしそれは密かに付き合っている女の口紅。疑われたジンテは、激怒して母親に慰謝料を要求し、母親は有り金全部を渡す。それでも今度は死んだ女子高生アジョンの周辺を調べ出す。すると、貧しさゆえにアジョンが金のために誰とでも寝ていたという事実が判明する。さらに寝た相手をすべて写メに収めていたと知ると、現場にはなかったアジョンの携帯を探し始める。
こうして息子の無実を信じて真犯人を探す母親。母親とは、愛情こそ誰よりも深いものの、思慮が足りないというイメージがあるが、トジュンの母親はまさにそんな典型。それでもトジュンに事件の晩の記憶を振り返るように言い聞かせ、そして実は現場の廃屋に人がいたことを思い出させる。そして執念で見つけたアジョンの携帯にその男が写っていることがわかる・・・
こうして母親の執念で見つけた疑わしい人物だが、物語はここから大きく予想もしなかった方向へと進んでいく。この展開はなかなか意外である。途中、針をやっている母親が、トジュンに悪い記憶を消すツボのことを語る。トジョンにも子供の頃に嫌な記憶がある。そんな何気ない伏線がきちんと最後に意味を持って生きてくる。母親の無償ゆえに恐ろしいまでの愛情。それもきっちりと示してくれる。
そしてとうとう「真犯人」がわかる。このラストは予想もしなかったし、「やられた感」が強い。ラストで母親は、自ら嫌な記憶を消すツボに針を打ち込む。何とも言えないこのラストは、韓国映画の真骨頂と言えるかもしれない。考えてみればこの映画、『パラサイト 半地下の家族』(My Cinema File2297)でオスカーを獲得したポン・ジュノ監督の作品。なるほどなぁと思わず唸ってしまった映画である・・・
評価:★★☆☆☆