2020年12月31日

【キャッツ】My Cinema File 2334

キャッツ.jpg

原題: Cats
2019年 イギリス・アメリカ
監督: トム・フーパー
出演: 
フランチェスカ・ヘイワード:ヴィクトリア
ジェニファー・ハドソン:グリザベラ
ジュディ・デンチ:オールドデュトロノミー
ジェームズ・コーデン:バストファージョーンズ
スティーブン・マックレー:スキンブルシャンクス
ジェイソン・デルーロ:ラム・ラム・タガー
レベル・ウィルソン:ジェニエニドッツ
イアン・マッケラン:ガス
イドリス・エルバ:マキャヴィティ
テイラー・スウィフト:ボンバルリーナ

<映画.com>
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1981年にロンドンで初演されて以来、観客動員数は世界累計8100万人に達し、日本公演も通算1万回を記録するなど、世界中で愛され続けるミュージカルの金字塔「キャッツ」を映画化。『レ・ミゼラブル』 『英国王のスピーチ』のトム・フーパーが監督、スティーブン・スピルバーグが製作総指揮を務め、英国ロイヤルバレエ団プリンシパルのフランチェスカ・ヘイワードのほか、ジェームズ・コーデン、ジェニファー・ハドソン、テイラー・スウィフト、ジュディ・デンチ、イアン・マッケランら豪華キャストが共演した。人間に飼いならされることを拒み、逆境の中でもしたたかに生きる個性豊かな「ジェリクルキャッツ」と呼ばれる猫たち。満月が輝くある夜、年に一度開かれる「ジェリクル舞踏会」に参加するため、街の片隅のゴミ捨て場にジェリクルキャッツたちが集まってくる。その日は、新しい人生を生きることを許される、たった一匹の猫が選ばれる特別な夜であり、猫たちは夜を徹して歌い踊るが……。
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「キャッツ」と言えば、国内でも劇団四季が上演した世界的に有名なミュージカル。かねてから映画とミュージカルの相性は良くないと思っていて、ミュージカルの映画版には疑問に思うところも少なくないが、この映画の印象はまずまずと言える。

物語の舞台はある街。満月の夜、一台の車がゴミ捨て場で止まると、降りてきた人間が一つの袋を捨てて行く。人間が立ち去ると、そのあたりに住む猫たちが興味深げに寄ってくる。そして袋の中から白く美しい猫が姿を現す。捨て猫の名前はヴィクトリア。ヴィクトリアを取り囲んだ猫たちは、自らをジェリクルキャッツと称している。要は野良猫であるが、人間に飼い慣らされていないという誇りをもっているようである。

その夜はジェリクルキャッツにとって特別な日。舞踏会が開かれ、歌と踊りを競い合う猫たちの中から、たった1匹の猫が選ばれる事になっている。選ばれた猫は、天上の世界で新しい生活を始める権利を得られる。選ぶのは長老猫オールドデュトロノミー。どの猫も権利を得ようと歌と踊りに磨きをかける。もともと飼い猫だったヴィクトリアは、戸惑いながらもそんな様子を眺めている。

そして登場するジェリクルキャッツたち。怪しい猫マキャヴィティ、おばさん猫のジェニエニドッツ、イケメン猫のラム・タグ・タガー、リッチ猫のバストファージョーンズ。ミュージカルだけあって、それぞれの猫たちの様子が歌と踊りで紹介されていく。猫たちを演じるのはみんな人間であるが、ふと気がつくとサイズは通常の猫のサイズ。そのあたりの視覚効果は映画ならではである。

ミュージカルらしく猫たちの歌と踊りが続いていく。そして舞踏会の刻限が近づき、長老猫のオールドデュトロノミーがやって来る。この長老猫には誰もが敬意を表するが、この様子を遠くから伺うのはグリザベラ。もとは美しい猫だったが、娼婦に身を落とし、仲間の猫たちからは蔑まれている。そしてこのグリザベラが名曲「メモリー」を歌う。これは何と言ってもこのミュージカルの最大の見せ場であるが、ここはまずジャブといったところ。

この「メモリー」はのちにもう一度歌われる。長老猫が決断する前、グリザベラの歌声が本物だと思ったヴィクトリアが長老猫の前にグリザベラを連れてくる。他の猫たちは嫌悪感を示したりするが、さすが長老猫は歌うよう促す。そしてみんなの視線を浴びながらグリザベラは「メモリー」を熱唱する。ここはなかなか心震わされるシーンである。

ストーリーはあってなきが如し。ミュージカルとはそういうものである。町の裏寂れた一角で、こんな猫の世界があるとしたらちょっと楽しいかもしれない。歌と踊りに加え、独自の猫の扮装もなかなかと言える。気がつけばジュディ・デンチやイアン・マッケラン、イドリス・エルバといったメジャーな俳優さんが出演している。それぞれ「見分ける」のも一興である。

劇団四季のミュージカルは鑑賞したが、舞台と映画のどちらがいいかは微妙なところ。それぞれの良さはあるかもしれない。心震える「メモリー」を聞きながらの年越し。2020年最後の映画としては満足いく映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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【ANON アノン】My Cinema File 2333

ANON アノン.jpg

原題: Anon
2018年 ドイツ
監督: アンドリュー・ニコル
出演: 
クライブ・オーウェン:サル・フリーラン
アマンダ・セイフライド:匿名の女(ANON)
コルム・フィオール:チャールズ・ガッティス
マーク・オブライエン:サイラス
ソーニャ・バルゲル:クリステン
ジョー・ピング:レスター・ハーゲン
イド・ゴールドバーグ:ジョセフ・ケニック

<映画.com>
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「ガタカ」『TIME タイム』のアンドリュー・ニコル監督が描いた近未来SFサスペンス。出演は『トゥモロー・ワールド』のクライブ・オーウェンと、「TIME タイム」でもニコル監督とタッグを組んだアマンダ・セイフライド。地球上の全ての人間の記憶が記録・検閲されるようになった近未来。犯罪が不可能になった代わりに個人のプライバシーも匿名性も失われたこの世界で、起こるはずのない殺人事件が発生する。やがて捜査線上に、個人を特定されずにいる「記録のない女」の存在が浮上。しかし事件は何かの始まりを示唆するかのように繰り返されていく。ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2019」上映作品。
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世の中どんどん便利になっていくが、この映画の舞台となるのは人の記憶が記録され権限を持った人物によって閲覧が可能となった近未来。事件や事故があってもその時の映像を当事者の視覚データより可視化することにより事後にすべて確認できてしまう。ちょうど現代のドライブレコーダーのようであるが、これによって言い訳ができなくなる。実現したら便利であるが、逆にプライバシーは失われてしまう。ベッドの中の様子もすべて見られてしまうのはどうもいただけない。

主人公は一級刑事のサル。あらゆる人の視覚データの閲覧を許される立場であり、それを事件解決に役立てている。街の中でも人を見ればその人物が何者かたちまちデータを得られる。これならいい女を見かけた時に勇気を出して連絡先を聞く必要はない。そんな妄想をしながら観ていく。ある時、いつものように次々と行きかう人のデータが目に飛び込んで来るが、ある女を目にした時に違和感を覚える。その女にはデータがなかったのである。そして後から記憶データを振り返った時、不思議なことにその女のデータは消失していたのである。

一方、近年不思議な殺人事件が発生する。被害者の視覚データを見直すと、そこには殺した犯人は写ってはおらず、代わりに自分が殺害されるところが写っている。つまり犯人の視覚データである。それは犯人が自分と被害者の視点の同化を行ったもので、高度なハッキングが行われたことを意味している。調べれば類似事件があったことから、犯人は同一犯と思われる。

そこでサルは、同僚のチャールズとともに調査に乗り出す。すると、被害者の記憶が1週間前の記憶を操作されていること判明が判明する。犯人が巧妙に記憶を編集し、何らかの行為の隠蔽を図ったと思われる。サルは、事件には偶然見かけたデータのない女が関与しているのではないかと睨む。そんなところに新たな殺人が発生したと知らせが入り、直ちに現場へ急行するサル。そして事件現場で犯人と銃撃となる。サルは犯人を地下鉄の駅に追い詰めるが、視覚を操られ犯人を逃がしてしまう・・・

視覚を乗っ取られると、自分が見ている現実が現実ではなくなってしまう。車を運転しているサルが、安全を確認して交差点に進入したところ、たちまち衝突事故を起こしてしまう。実は視覚を乗っ取られ、行き交う車を認識できなかったのである。こんなことをされると何もできなくなる。犯人だと思って撃ったら無関係な隣人だったりすればお手上げである。

さらに犯人が視覚データの改ざんを行っていることがわかり、自らが囮となって犯人と思われる人物と接触することにする。株式ブローカーとなったサルは、1か月をかけて偽りの記憶を作る。そして高級コールガールとの一夜を過ごしたあと、婚約者にバレないよう視覚データの偽造をするべく、闇掲示板に依頼を出す。そうして、何人かとの接触を経て、目指す人物とのコンタクトに成功する。その人物は自ら「アノン」と名乗る。

こうして物語は謎のハッカーを追うサルを追っていく。それにしても視覚データを自在に操るという近未来は、果たして好ましい未来なのかという気がする。相手の視覚データに接することで、プライバシーも何もすべて丸わかりになる。犯罪も当然減るだろうが、人にすべて見られてしまうというのはいただけない。家でコッソリ18禁のサイトを見ていてもバレてしまうわけである。そんな社会には住みたくない。

主演はクライブ・オーウェンと大きな目が印象的な美人女優アマンダ・セイフライド。短いながらも出演者とストーリーとで程よく楽しめる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2020年12月30日

【愛なき森で叫べ】My Cinema File 2332

愛なき森で叫べ.jpg

2019年 日本
監督: 園子温
出演: 
椎名桔平:村田丈
満島真之介:シン
日南響子:水島妙子
鎌滝えり:尾沢美津子
YOUNG DAIS:ジェイ
真飛聖:尾沢アズミ
でんでん:尾沢茂

<映画.com>
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『愛のむきだし』の鬼才・園子温によるNeflixオリジナル映画。実在の猟奇殺人事件にインスパイアされて描いたサスペンススリラー。1995年、東京。愛知県から上京してきた家出少年シンは、若者たちによる自主映画の撮影に参加することになり、知人の妙子と美津子に出演を依頼する。彼女たちは高校時代、憧れのクラスメイトが交通事故死した事件からいまだに逃れられずにいた。世間が銃による連続殺人事件に震撼する中、引きこもりとなっていた美津子のもとに、村田という男から電話がかかってくる。「10年前に借りた50円を返したい」という村田に不審感を抱く美津子だったが、紳士的な彼に次第にひかれていく。しかし村田の正体は、冷酷な詐欺師だった。妙子の姉も村田にだまされていたことから彼の本性を知ったシンたちは、村田を主人公にした映画を撮り始めるが……。作中には過去の園監督作を彷彿させるシチュエーションや同じ名前の人物が次々と登場。巧みな話術で人の心を操る詐欺師・村田を「新宿スワンII」の椎名桔平、家出少年シンを「キングダム」の満島真之介、美津子の父を「冷たい熱帯魚」のでんでん、母を元宝塚歌劇団の真飛聖がそれぞれ演じる。Netflixで2019年10月11日から配信。
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なんとも言えない映画を観てしまった感がある。
始まりは普通。路上で名古屋から出てきたシンが歌っている。そこに通りかかったジェイとフカミが声を掛ける。一緒に映画を撮ろうと自分たちの住む倉庫に連れていく。意気投合した3人。シンを気に入ったジェイは、シンに童貞を卒業させようと妙子の家に連れて行く。

妙子は脚が悪く、パンクスタイルの奇抜な女。シンの童貞卒業の相手をするかと思いきや、いい娘がいると言って高校時代の同級生美津子の家に3人を連れて行く。妙子と美津子は女子高時代、演劇部に所属していた仲。ある時、舞台でロミオとジュリエットを演じることになったが、ロミオ役のエイコが交通事故で死んでしまい、その日以来、美津子は引きこもり状態で、エイコの思影を追う日々を送っている。

そんな美津子の下に、村田丈という男から電話がかかって来る。昔借りた50円を返したいと言う。そんないかにも怪しげな言葉にも関わらず出かけていく美津子。真っ赤な高級外車に乗り、白いスーツ姿でやって来た村田は、指輪ケースに入れた50円硬貨を差し出す。その言動に魅了される美津子。この様子を撮影するジェイたち。そしてその動画を見た妙子は驚愕する。実は、村田はかつて妙子の姉の婚約者だった男。それにも関わらず、妙子だけでなく母にまで手を出すとんでもない男だったのである。

また妙子の足が悪いのは、エイコの事故死でロミオとジュリエットの公演が中止となり、演劇部の皆で自殺しようとしたことが原因。理科室で薬物を飲み、屋上へ上がり、意識朦朧の状態で飛び降りるが、妙子は車の屋根に落ちて命は助かったが、脚に障害を負ったのである。そしてその時、飛び降りなかったのが美津子。そんなわけでは2人の間に微妙な空気が流れているのかもしれない。

村田が登場したところからドラマは異様な世界に陥っていく。村田にプロポーズされた美津子は、村田に惹かれていく。そして村田は美津子の家族に手を伸ばしていく。妹のアミにも手を出し、両親をも弄ぶように籠絡していく。また、自分が虜にしてきた女たちを集めてコンサートを開く。さらにジェイたちの映画作りにも参加し、いつの間にか自分が仕切ってしまう。

ここらから映画はとんでもない方向へと進んでいく。信用金庫で支店長を殴ったくらいはまだいいが、やがて殺人へと発展する。村田は傍若無人状態となり、それに心酔するシンを手足に、面白半分に人を殺し、死体を解体させて処理させる。一見荒唐無稽なストーリー展開は、なんとなく既視感があると思っていたが、その正体は『愛のむきだし』と同じ匂いがするというところである。同じ監督なので当然と言えば当然であろう。

なんでも実際にあった事件にインスパイアされた映画だということであるが、内容的には気分が悪くなるものである(と言っても映画を批判しているものではない)。世の中には村田のような男がいるのだということであるが、自分の身の回りには現れて欲しくないし、特に完全に取り込まれてしまった美津子の家族は悲惨である。徹底的に村田に振り回されていく人々。後に残るのは胸糞の悪さ。

映画によってコメディからハードボイルドの殺し屋まで幅広く演じる椎名桔平が村田を演じる。これが実にまたいい味を出していて、さすがだと思わされる。破茶滅茶に思えるストーリーは最後まで破茶滅茶。シンにも意外な裏の顔があって、映画には悪臭が満ち溢れる。それは最後まで消えることがない。観終わってお口直しに純愛映画が観たくなった。恋人とは一緒に観たくない映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2020年12月29日

【セブン・シスターズ】My Cinema File 2331

セブン・シスターズ.jpg

原題: What Happened to Monday
2016年 アメリカ
監督: トミー・ウィルコラ
出演: 
ノオミ・ラパス:カレン・セットマン
グレン・クローズ:ニコレット・ケイマン
ウィレム・デフォー:テレンス・セットマン
マーワン・ケンザリ:エイドリアン・ノレス
クリスティアン・ルーベク:ジョー
ポール・スベーレ・ハーゲン:ジェリー

<映画.com>
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『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』 『プロメテウス』のノオミ・ラパスが、7つ子の姉妹を1人7役で演じたSFスリラー。2073年、繰り返される戦争や難民問題で主要国は滅び、「ヨーロッパ連邦」が新たな超大国として君臨していた。人口過多と食糧不足から政府は厳格な一人っ子政策を発令し、2人目以降の子どもは親元から引きはがされ冷凍保存されてしまう。そんな世界で偶然生まれた7つ子は、週に1日ずつ外出し、共通の人格を演じることで監視の目をくらませてきたが、ある日、7人のうちの1人、マンデー(月曜日)が帰宅しなかったことから、姉妹の日常が次第に狂い始めていく。優等生、ヒッピー、反逆者、天才エンジニア、パーティガールなどバラバラな個性をもちあわせながらも、家の外では1人の銀行員を演じている7人姉妹を、ラパスが1人7役で体現した。「処刑山 デッド卍スノウ」で注目され、『ヘンゼル&グレーテル』でハリウッドデビューを果たしたノルウェー出身のトニー・ウィルコラ監督がメガホンをとった。
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近未来、地球は人口爆発による食料不足、資源の枯渇、異常気象、戦争や難民問題など様々な危機に見舞われる。遺伝子組み換え作物の副作用により多生児の出産が相次ぎ、人口爆発に拍車がかかる。かかる状況下、ヨーロッパ連邦は「児童分配法」という名の“一人っ子政策”を施行する。これに違反して二人目をもうけると政府が強制的に生まれた子供を人口冬眠させるというもの。将来、地球の資源が回復すればそこで目覚めさせようというものである。

そんな中、テレンス・セットマンになんと7つ子の孫が産まれる。娘である母親はそのまま命を落としてしまうが、テレンスは娘の代わりに7人の孫娘を秘かに育てることにする。テレンスは7人にそれぞれマンデー、チューズデー、ウェンズデー、サースデー、フライデー、サタデー、サンデーと名付ける。実に安易な命名であるが、7人もいれば仕方ないかもしれない。

7人は見つかれば人口冬眠が待っている。したがってうかつに外出はできない。そこで許された1名が「カレン・セットマン」として生きることになる。面白いのはそのカレンを7人で演じ分けること。7人はそれぞれ自分の名と同じ曜日だけ外出を許され、その日にあった出来事を全員で共有しあう。ある時、このルールを破ったマンデーが勝手に外出し、左手の人差し指を切断する怪我を負う。するとテレンスは心を鬼にし、全員の指を切断する。全員を守るためとは言え、徹底している。

それから30年。7人の“カレン”は同じウィッグを被り、同じ化粧を施し、銀行員として働いている。ある月曜日、いつものようにマンデーが出勤していくが、夜になっても帰ってこない。初めての出来事に6人に動揺が走る。GPSも切られていて行方が追えない。何が起こったのかわからないまま翌日チューズデーはいつものように出勤し、マンデーの行方を追う。しかし、そこに児童分配局の人間が現れ、チューズデーは捕らえられてしまう。

マンデーに続き、今度はチューズデーが夜になっても帰ってこない。何が起こったのかまったくわからない。ストーリー的にも面白い展開である。そこへ児童分配局の男たちがやってくる。リーダーと思しき男は、虹彩認証システムになんと眼球をかざしてドアを開ける。つまり行方不明の2人の姉妹の1人の眼球ということである。男たちは容赦なく銃撃を加える。たちまち乱戦となり、姉妹たちはなんとか男たちを仕留めるが、サンデーが流れ弾にあたって死んでしまう。そして、男たちが持っていた眼球はチューズデーのものであることが判明する。

翌日、今度はウェンズデーが出勤する。襲ってきた男たちの正体も不明、2姉妹の行方も分からない中ではやむを得ないがリスクの高い方法である。寄ってきたのは同僚のジェリー。“カレン”と上司のケイマンが裏取引していたことをネタに昇進を譲るよう迫ってくる。その時、またもや児童分配局の男たちが襲撃してくる。ジェリーは何者かに狙撃され、ウェンズデーはからくも逃げ出すが、逃げきれずに射殺されてしまう。

一体何が起こっているのか。1人1人と死んでいく姉妹。突然現れた警察官エイドリアン。エンドリアンは7姉妹のうちの誰かと交際しているらしい。そして謎めいた動きをする児童分配局。背後に蠢いている陰謀。そしてなぜ、30年間発覚することのなかった7姉妹の秘密が漏れてしまったのか。そして物語の行方は・・・

なかなか観入ってしまう映画であるが、ナオミ・ラパスが7変化で現れるのが1つの見どころかもしれない。部屋の中では性格を現わしてバラバラであるが、外出する時にはスーツでビシッと決まっている。女優だからと言ってしまえばそれまでだが、出演作品での役柄も多岐にわたっていて、観て損のない女優さんだと思う。

それにしても中国では破綻した一人っ子政策だが、ここで描かれる未来の一人っ子政策は恐ろしいもの。この映画でもやっぱり限界を露呈するが、映画のような未来は迎えたくないものである。本筋とは離れるが、“What Happened to Monday”という原題は秀逸だなと思わず唸ってしまう一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2020年12月28日

【ジョー・パターノ 堕ちた名将】My Cinema File 2330

ジョー・パターノ 堕ちた名将.jpg

原題: Paterno
2018年 アメリカ
監督: バリー・レビンソン
出演: 
アル・パチーノ:
ライリー・キーオ:
キャシー・ベイカー:
グレッグ・グランバーグ:
アニー・パリッセ:
ラリー・ミッチェル:

<映画.com>
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名優アル・パチーノが主演を務め、大学アメフト界の伝説的名将がある事件によって失墜するまでを、実話をもとに描いたドラマ。全米ベストセラーとなったノンフィクション小説を、「レインマン」のバリー・レビンソン監督が映画化した。名門ペンシルバニア州立大学フットボール部で46年にわたってヘッドコーチを務めてきたジョー・パターノは、歴代最高勝利数を誇る名将としてチーム関係者や学生、地元住民から絶大な支持を集めていた。しかし2011年、地元紙のスクープで、同アメフト部の元アシスタントコーチによる少年への性的虐待事件が発覚。ジョーは事件の隠蔽に関与したとして、監督を解任されてしまう。共演に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のライリー・キーオ、「シザーハンズ」のキャシー・ベイカー。
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時に2011年、舞台となるのは、「ペン・ステイト」の愛称で知られる学生アメリカン・フットボールの名門ペンシルベニア州立大学。ヘッドコーチのジョー・パターノが率いる同大学は冒頭で勝利を挙げ、ジョー・パターノはヘッドコーチとして通算409勝目を記録する。押しも押されもしない名ヘッドコーチである。

そんなジョー・パターノは、1966年に「ペン・ステイト」のヘッドコーチに就任し、以降文武両道を学生に教え、図書館建設のために資金を集め、84歳の現在まで現役を貫く地元の名士。学校にはその銅像まで立っている。そんな名門大学のアメリカン・フットボール部でなんと小児性愛スキャンダルが明るみに出る。コーチの1人が地元クラブの小学生をクラブハウスに連れ込みいたずらをしたというもの。

事件は地方新聞の新人記者サラの取材によって浮かび上がる。当然ながら世間は騒然となる。怒りの矛先は犯人であるアシスタントコーチのジェリー・サンダスキーに向かうが、やがて大学側の隠ぺい工作の疑いが出てくる。この手の報道によくあるパターンであるが、そうすると隠ぺい工作に関わった者は誰か、さらにはヘッドコーチのパターノは事件を知っていたのかというところに関心は移ってくる。

騒然となる世間をよそに、パターノの関心はと言えば次の試合。次の対戦相手の分析、作戦の立案にしか関心が向かない。このあたりパターノという人物は「フットボール・バカ」という感じがする。通常のリスク感覚をもったビジネスマンからすると、この感覚は信じ難いものがある。パターノの家の前には学生やファンが大挙して結集し、「ジョー・パターノ」コールが起こる。これは名士に対する支援なのか非難なのか観ている者にはよくわからない。

物語は、事件の被害者である少年とその母親の信頼を得たサラが取材を進め、また今は成長して大学生(どうやらペン・ステイト大学生か)となった少年の現在の苦悩を描き、そして事件にどう対応しようかという関係者らの動きを追っていく。そして犯人のサンダスキーは90年代から何度も事件を起こしていたことが明らかになり、さらにパターノ自身もそれを確認していたことが明らかになる。

ただ、パターノは問題を無視したのではなく、報告して対応を任せているだけである。もともと怪しいリスク感覚であり、「そんなつまらないこと」という意識があったのかもしれない。さらに本人は家族会議の中で、「男色(ソドミー)とは何だ?」という頓珍漢な質問を浴びせる。この一点をもってもフットボール・バカには問題意識がなかったことがわかる。パターノ家でも危機管理はまったくの無策で、事件が公になってマスコミが押しかけるに至り危機管理の必要性を理解し、慌てて対応できるプロを「グーグル検索」して探す始末である。

そんなフットボールひとすじのパターノだが、表情から伺えるのは「早く次の試合に集中したい」という思い。しかし、やってきた危機管理コンサルタントはそんなパターノに引退を勧める。このままでは解任不可避と見て、不名誉な解任よりも名誉ある引退を進言したのである。ここに至り、パターノもようやく事の重大性を認識したようなところがある。そしてコーチを辞任する決意を固めそれを表明するが、大学側もパターノ解任を発表する。

日本ではアメフトはメジャースポーツではなく、本件の騒動の重みもあまり伝わってこないが、本場アメリカでは大スキャンダルなのだろう。映画化されるくらいの出来事であったということである。それにしても映画『スポットライト 世紀のスクープ』(My Cinema File 2256)でも神父が子供にいたずらをしたというスクープが描かれていたが、アメリカではこの手の犯罪が多いのだろうかと思わされる。

主演は名優アル・パチーノ。その他に有名俳優は登場しないが、新聞記者サラを演じたのはエルヴィス・プレスリーの孫だというライリー・キーオ。この映画ではえらく美人な女優さんであるが、『アースクエイクバード』(My Cinema File 2289)とはまったく違う印象で同じ女優さんだとはわからなかったほどである。

もともとテレビドラマだからだろうか、地味な印象の実話ドラマである・・・


評価:★★☆☆☆








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