2021年01月31日

【サーミの血】My Cinema File 2354

サーミの血.jpg

原題: Sameblod
2016年 スウェーデン・デンマーク・ノルウェー
監督: アマンダ・ケンネル
出演: 
レーネ=セシリア・スパルロク:エレ・マリャ
ミーア=エリーカ・スパルロク:ニェンナ
マイ=ドリス・リンピ:クリスティーナ(エレ・マリャ)
ユリウス・フレイシャンデル:ニクラス
オッレ・サッリ:オッレ
ハンナ・アルストロム:教師

<映画.com>
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北欧の少数民族サーミ人の少女が、差別や困難に立ち向かいながら生きる姿を描いたドラマ。1930年代、スウェーデン北部の山間部に居住する少数民族サーミ族は、支配勢力のスウェーデン人によって劣等民族として差別を受けていた。サーミ語を禁じられた寄宿学校に通うエレ・マリャは、成績も良く進学を望んだが、教師からは「あなたたちの脳は文明に適応できない」と告げられてしまう。ある時、スウェーデン人のふりをして忍び込んだ夏祭りで、エレは都会的な少年ニクラスと出会い恋に落ちる。スウェーデン人から奇異の目で見られ、トナカイを飼育しテントで暮らす生活から抜け出したいと思っていたエレは、ニクラスを頼って街に出る。監督のアマンダ・シェーネルはサーミ人の血を引いており、自身のルーツをテーマにした短編映画を手がけた後、同じテーマを扱った本作で長編映画デビューを果たした。主演はノルウェーでトナカイを飼い暮らしているサーミ人のレーネ=セシリア・スパルロク。2016年・第29回東京国際映画祭で審査員特別賞および最優秀女優賞を受賞した。
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映画は、時として知らなかった世界を教えてくれる役割を果たすことがある。北欧に暮らす少数民族のことなど日本に住む我々が知る由もない。そこにもやはり差別はあって、人間というのはどこにあっても差別をするものなのだと思い知る。これはそんな世界の片隅の物語。

スウェーデンに暮す老婦人クリスティーナは、妹ニェンナの葬儀のため生まれ故郷のラップランドに向かう。と言ってもどうも本人は気乗りしないようで、息子になんども促されてしぶしぶ車に乗る有様。道中も不機嫌で、葬儀会場の教会に入っても妹の亡骸を見ようともしない。列席しているのは、何やら民族衣装を身にまとった人々。それが北欧のラップランド地方に暮らすサーミ人らしい。しかし、クリスティーナは、途中で式を抜け出してホテルに行ってしまう。

ホテルの宿泊客はみな白人。その口ぶりからはサーミ人をあまり快く思っていない様子。そんな宿泊客に話しかけられ、話を合わせていたクリスティーナだったが、トナカイの放牧にでかける身内の人々を窓から眺めながら、彼女は自分がサーミ人のエレ・マリャだった頃を思い返す。

サーミ人は、ラップランド地方で遊牧生活を送る。父を亡くしたエレは、テントで祖父母、母、妹の家族5人で暮していたが、妹ニェンナとともに故郷を離れ寄宿学校に行くことになる。学校ではサーミ語が禁じられていたが、聡明なエレはスウェーデン語も話せて成績もよく、教師のクリスティーナにも目をかけられている。

ある日、何やら外部から研究員が学校を訪れる。それはサーミ人を対象とした調査だが、エレたち数人が選ばれて検査を受ける。なんと全裸の写真を撮影されるという現代の感覚からすれば確実に人権問題になる行為を強いられる。また、近所の少年らからは差別的な言葉を投げつけられる。普段は無視するが、検査の屈辱からエレは歯向かうが、逆に押さえつけられトナカイのマーキングと同じように耳に傷をつけられてしまう。

サーミ人であることに嫌気がさしていたエレは、洗濯をして干してあったクリスティーナの服を着て、通りかかった青年らから誘われるまま学校を抜け出してパーティーに紛れ込む。そこでニクラスという青年と出会ったエレは、クリスティーナと名乗り、ダンスをしファースト・キスをし、夢のようなひと時を過ごす。しかし、職員に見つかったエレは連れ戻されて体罰を受ける。

サーミの社会から外に出て、進学したいという思いが強くなったエレはクリスティーナに推薦状を頼むが、にべもなく断られてしまう。その理由が「あなたたちの脳は文明に適応できない」とこれまた現代の感覚では大問題発言が返ってくる。思い余ったエレは、学校を飛び出し、列車に乗り込み、乗客から服を盗み街に向かう。そして唯一の知り合いであるニクラスの家を訪ね、半ば強引に泊まる。その夜エレは初体験を済ます・・・

冒頭の気難しい老女こそがサーミ人のエレであり、サーミの社会を拒絶してスウェーデン人として生きてきたのだとストーリーを追うごとにわかってくる。そしてなぜ実の妹に対しても冷たい態度をとっていたのかも。映画は家族と決別してスウェーデン社会に飛び出すまでのエレを追う。女の子でありながら大胆な行動を取るものである。よほどサーミ人であることが嫌だったのだろう。それは妹のニェンナとは対照的である。

映画の背景は1930年代のラップランド。トナカイを放牧し、テントで暮らすサーミ人。白人から軽蔑、差別され、寄宿学校ではサーミ語で話すことを禁じられている。さすがに現代ではそういう差別行為はないのであろうが映画の主人公エレの気持ちもわからなくない。果たして、本国スウェーデンではどんな感想をもってこの映画が観られたのか興味深いところである。

正直言ってあまり面白くない映画ではあるが、日本とは遠く離れた国の少数民族の差別の歴史を知る機会になったという意味では、意味のある映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2021年01月30日

【七番房の奇跡】My Cinema File 2353

七番房の奇跡.jpg

原題: 7번방의 선물
2013年 韓国
監督: イ・ファンギョン
出演: 
リュ・スンリョン:イ・ヨング
パク・シネ:大人になったイェスン
カル・ソウォン:少女イェスン
チョン・ジニョン:イェスンの義父
オ・ダルス:ヤンホ
パク・ウォンサン:チュノ
キム・ジョンテ:マンボム
チョン・マンシク:ボンシク
キム・ギチョン:ソじいさん

<映画.com>
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無実の罪で投獄された知的年齢6歳の父親と幼い娘に起きる奇跡のような物語を描き、韓国で大ヒットを記録したドラマ。もうすぐ小学校に入学する少女イェスンは、子どものように無邪気な父ヨングと2人で、貧しくも幸せな毎日を送っていた。ところがある日、ヨングが女児を誘拐・殺害したとして逮捕されてしまう。ヨングが収監された7番房の仲間たちは、彼とイェスンを会わせるためにある計画を思いつくが……。『王になった男』のリュ・スンリョンが、娘を愛する父親役を熱演。
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ヨングとイェスンは仲の良い親娘。父親のヨングは知的障害を持っている。今度小学校に上がるイェスンがプリキュアのランドセルを欲しがっている。ヨングはイェスンと毎日鞄店に行ってはそのランドセルを眺めている。今度の給料日に買いに行こうと話しているが、その最後の一つが目の前で売られてしまう。買ったのは警察庁長の娘であるジヨン。スーパーの駐車場で働いていたヨングは、偶然ジヨンに出会う。そして同じランドセルをほしがっていたヨングを覚えていたジヨンは、同じバッグを売っている店が見つかったと話してヨングを連れていく。

その日は寒い日で、先に歩いていたジヨンが、道が凍っているところで足を滑らせて転んでしまう。運悪くはずみでシートを抑えていたレンガがジヨンの頭に落ちてきて、ジヨンは帰らぬ人となる。倒れたジヨンを助けるため、ヨングが警備係として習得していた救命処置を取るが、人工呼吸や血液循環をよくさせるためにジヨンのパンツのファスナーをはずそうとした行為を見かけた女性が、それを見て勘違いし警察に通報してしまう。ヨングは知的障害もあって状況をうまく説明できない。そのまま警察に逮捕されてしまう。

金のないヨングにはやる気のない国選弁護人しかつかず、ヨングも自分の状況を理解できないまま刑務所に入ることになる。収監されたのは7番房。これがタイトルの由来。同室の囚人たちはヨングの罪名を知ると手荒い歓迎をする。幼児殺害は卑劣な犯罪であり、同じ犯罪者でも刑務所内では見下されるのだろう。そんなヨングだが、ある日同じ7番房の囚人を助け身代わりになって刺されたことから仲間として認められるようになる。

韓国の裁判制度はよくわからないが、日本では裁判で有罪を宣告されると刑務所に収監されるが、この映画ではまだ最終的な判決が決まっていない様子。それになぜヨングの知的障害が考慮されないのかもよくわからない。ともかく、この刑務所に入りながら裁判は続いている。そして日々を過ごすうちに、同室の囚人たちもヨングは無罪ではないかと考えるようになる。当のヨングは、とにかく最愛のイェスンに会えないのが辛い。同室の囚人を束ねるヤンホは、助けてくれたお礼にイェスンに会わせる手筈を整える・・・

こうしてヨングとイェスンを中心に物語は進んでいく。刑務所内では刑務所長もヨングの罪を疑うが娘を殺されたと考える警察庁長は極刑を望む。随所でコメディタッチの展開もあり、あまり深く考えずに観たいところ。結局、どうして知的障害を持つヨングが子供を持てたのかという最大の謎は明かされぬまま。個人的にはあれこれと想像をしてしまう。それに邦題の意味も正直よくわからない。

最近は韓国映画に光る作品を多く観るが、もちろん韓国映画のすべてが光っているわけではない。タイトルからはなにか感動系ストーリーを期待してしまったが、それほどでもなかった。イェスンは成人して弁護士になるが、並行して描かれる成長したイェスンの行動もよくわからないまま。どうもなにか無理筋が目立つストーリー展開であった。

韓国ではヒットしたという事であったが、個人的にはあまり心に響かなかった映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2021年01月25日

【レプリカズ】My Cinema File 2352

レプリカズ.jpg

原題: Replicas
2019年 アメリカ
監督: ジェフリー・ナックマノフ
出演: 
キアヌ・リーブス:ウィリアム・フォスター
アリス・イブ:モナ・フォスター
トーマス・ミドルディッチ:エド
ジョン・オーティス:ジョーンズ

<映画.com>
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キアヌ・リーブスが愛する家族のために倫理に反した暴走を加速させる科学者を演じるSFアクション。人間の意識をコンピュータに移す実験成功を目前にした神経科学者ウィリアム・フォスターは、突然の事故により最愛の家族4人を一度に亡くしてしまう。失意の中でフォスターはタブーを犯し、家族の身体をクローン化させ、意識を移し変えることで完璧なレプリカとしてよみがえらせることに成功する。家族との幸せな日々を再開しようとするウィリアムの前に、研究サンプルとして家族を奪おうとする政府組織が襲い掛かる。リーブスが主人公フォスターを演じるほか、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」のアリス・イブ、 『キングコング 髑髏島の巨神』のジョン・オーティスらが脇を固める。監督は「デイ・アフター・トゥモロー」で脚本を担当したジェフリー・ナックマノフ。
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キアヌ・リーブスと言えば、デビュー作以来アクションスターというイメージがあるが、実はSF作品にもかなり出演している。シリアスなドラマも恋愛ドラマもそつなくこなし、幅の広い役者さんだと改めて思う。今回はSF作品である。

キアヌ・リーブスが演じるのは、科学者のウィリアム・フォスター。行なっているのは、意識の移植。研究施設に死亡した米兵の遺体が運び込まれると、その意識をデータ化して取りこむ。そして取りこんだデータをロボットに転送する。しかし、米兵の意識はたちまちパニックに陥り、自分の体を壊し始めてしまう。慌てて配線を切り、事なきを得るが、実験は失敗。既に膨大な資金をつぎ込んでおり、研究の継続が危ぶまれる状況である。

ウィリアムにはプレッシャーがかかっているが、そんなことは妻のモナも息子のマットも娘のソフィとゾーイも知るよしもない。疲れて家に帰ると、そこには約束していた家族旅行に行く準備を済ませて待ち構えている家族。ぐっと抑えてウィリアムはハンドルを握る。ところが、穏やかならぬ精神状況が災いしたのか、夜の道路で事故を起こしてしまい、ウィリアムが意識を取り戻すと、すでに家族全員が帰らぬ人となっていた。

半狂乱になりつつも、ウィリアムは助手のエドを呼び出すと、脳のデータを読み取る装置を持ってこさせる。現場を見たエドはすぐにウィリアムの意図を理解するが、心境は複雑。さらにデータを抜き取ったものの、DNAから体を蘇生させるポットが3つしかない。父親としては苦渋の決断の末、ウィリアムは末っ子のゾーイをあきらめ、モナ、マット、ソフィの3人をクローンとして蘇生させる。

体はクローンとして培養し、記憶は死体から移植する。これが実現すれば、人間は長年の夢である不老不死を手に入れることになる。クローンの再生に必要な時間は17日間。その間、各人にはそれぞれ友人たちから連絡が来たりする。各人の生存確認をこなしながら、なんとか意識の転送を終える。実験では失敗の連続であったが、土壇場の一発勝負でウィリアムは研究を完成させる。

これでメデタシメデタシとなるのであれば、映画にはならない。映画になるということは、波乱があるということ。まずは家族が失われた時間とゾーイの「痕跡」に気がつく。記憶は消せても、生活していた痕跡をすべて消し去ることはできない。さらに実験が成功したことを知ったウィリアムの上司は、実験結果であるウィリアムの家族を奪おうとする・・・

死んだ家族を蘇らせるという実験に成功したウィリアム。しかし、そこには冷徹な企業が実験結果と家族を奪おうとする。果たしていかにしてこのピンチを脱するかが、ラストに向けてのクライマックスとなる。そして予想外の意外な結末。これは、もしも実現したらいろいろな可能性に溢れる夢の技術。もしも実現したならと夢想しながら観るのも楽しい。

似たようなアイディアはあるのだろうが、『フリー・ジャック』や『セルフレス/覚醒した記憶』(My Cinema File 2298)のように若い他人の身体を奪うのではなく、自分自身の体を培養するのだから問題はない。場合によってはイケメン芸能人の体をもらってもいいかもしれない。また1つキアヌ・リーブスの魅力を堪能できるSF映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2021年01月24日

【ザ・フォーリナー/復讐者】My Cinema File 2351

ザ・フォーリナー/復讐者.jpg
原題: The Foreigner
中国語題:英伦对決
2017年 イギリス・中国・アメリカ
監督: マーティン・キャンベル
出演: 
ジャッキー・チェン:クァン・ノク・ミン
ピアース・ブロスナン:リーアム・ヘネシー
オーラ・ブラディ:ヘアリー・ヘネシー
レイ・フィアロン:リチャード・ブロムリー
チャーリー・マーフィ:マギー
スティーブン・ホーガン:クリスティ・マーフィー

<シネマトゥデイ>
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アジアのアクションスター、ジャッキー・チェンが製作と主演を兼任したサスペンスアクション。元特殊部隊員の男が、テロで亡くなった娘の復讐を果たそうと、事件の裏に隠された真相に近づく。メガホンを取るのは『007』シリーズなどのマーティン・キャンベル。『マンマ・ミーア!』シリーズや、キャンベル監督と組んだ『007/ゴールデンアイ』のピアース・ブロスナンらが共演する。脚本は『エネミー・オブ・アメリカ』などのデヴィッド・マルコーニ。
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ロンドンでレストランを経営している中国人のクァン・ノク・ミンは、妻に先立たれて以降、娘のファンを男手ひとつで育てていた。ある日、学校帰りのファンを車で迎えたクァンは、娘に請われるまま卒業式で着る服を買いに行く。ところが、クァンが駐車に手間取る間、ファンが先に入ったブティックの前で突然爆発が起こり、多数の被害者が出る。運の悪いことにファンもそのひとりになってしまう。事件直後、ロンドン警視庁にアイルランド独立を求める武装組織「UDI」から犯行声明が届く。

北アイルランド副首相リーアム・ヘネシーは愛人マギーとベッドで一緒に過ごしている時、爆破のニュースを妻メアリーからの電話で知る。リーアムは、今でこそイギリス政府のもとで北アイルランドの平和維持に勤しんでいるが、かつてはUDIに属し、過激なテロ行為を行っていた過去がある。リーアムは、イギリス政府の閣僚キャサリンに対し、テロ犯人の情報を得るために恩赦を与える用にと交渉する。

その頃、娘を亡くしたクァンはロンドン警視庁に足繁く通い、テロ対策部本部長のブロムリーとの面会を希望している。渋々面会に応じたブロムリーに、クァンは容疑者の情報を教えてほしいと、2万ドルの札束を差し出すが、本部長が応じるはずもない。警察に任せるようにと説かれるだけ。ならばとクァンは、今度はリーアムに情報提供を求める。元UDIメンバーという線で知りうると判断したのであろう。当然ながらリーアムにも断られる。

その後クァンは、亡き妻や娘の写真を焼き捨てると、従業員の女性ラムに店の権利書を渡し、制止を振り切って、ベルファストにやってくる。今度はリーアムのオフィスを直接訪れ、改めて情報の提供を求める。リーアムが協力できないと断るのもある意味道理であるが、クァンは納得しない。諦めたと見せかけてトイレに行くと、なんと手製の簡易爆弾を作ってトイレを爆破する。こうなると、クァンも犯罪者。直ちに捜索が行われ、宿泊先を突き止めて逮捕に向かわせるも、警官隊を返り討ちにし、逃げ延びてしまう。

クァンが只の老人ではないことはすぐにわかる。リーアムは、万が一に備えて妻のメアリーと共に郊外に所有する農場に避難する。また、ロイヤル・アイリッシュ連隊員だった甥のショーンをニューヨークから呼び寄せ、テロ実行犯が誰か突き止めるよう命じる。逃げたクァンは、執念深くリーアムを追う。別荘を突き止めると厩舎を爆破し、リーアムと愛人マギーとの密会現場を撮るなどの恐喝はエスカレートする。

開き直ったリーアムは、部下を集め万全の体制を敷いた上で逆に森の中に潜んでいると思われるクァンを追い詰めるように命じる。ところが、ゲリラ戦ではクァンの方が何枚も上手。森中に仕掛けられた罠により、一人、また一人と撃退させられてしまう。ベトナム戦争を彷彿させる戦いである。業を煮やしたリーアムは、ショーンに戻ってくるよう要請し、ショーンにクァンを捕まえさせようとする。

ただの還暦老人だと舐めていたリーアムだが、キャサリンからクァンの極秘資料を受け取る。そこにはクァンが元ベトコンの優秀なゲリラ兵であり、かつ海賊に襲われ娘2人が殺されたという過去があることを知る。どうりでゲリラ戦が得意なわけである。一方で、テロ実行犯の動きと、イギリスに対する行動を画策するグループの動きが並行して描かれて行く・・・

主演がジャッキー・チェンとなれば否が応でもアクションに期待が集まるが、年齢を感じさせないアクションは健在。しかし、前半でジャッキー・チェン演じるクァンが追い詰めるのは、今はかたぎになっているリーアム。それゆえにじわりじわりと追い詰める程度にとどめる。そして狙うはテロの実行犯。これに対しても見事に娘の仇を取って行く。クァンに追い詰められるのは、元ジェームズ・ボンドのピアース・ブロスナン。今はアクションから身を引き、いいおじさんになっている。普通はこうなのだろう。

それにしてももはや過去のものになったと思っていたアイルランド紛争だが、こういう映画が製作されるということは、まだくすぶっているのだろうかと思わされる。リーアムは、リーアムでテログループに引っ張り込まれようとしていたのであるが、真相がわかって複雑な心境だろう。ストーリーもなかなか凝った伏線が張られていて、アクションプラスαが楽しめる内容である。

観終わってみれば、元アクションスターと今もまだ現役アクションスターの共演。アイルランド紛争にも思いを寄せられる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2021年01月23日

【ガルヴェストン】My Cinema File 2350

ガルヴェストン.jpg

原題: Galveston
2018年 アメリカ
監督: メラニー・ロラン
出演: 
ベン・フォスター:ロイ
エル・ファニング:ロッキー
リリ・ラインハート: ティファニー
アデペロ・オデュイエ:ロレイン
ロバート・アラマヨ:トレイ
マリア・バルベルデ:カルメン
ボー・ブリッジス:スタン

<シネマトゥデイ>
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『マグニフィセント・セブン』などの脚本を担当したニック・ピゾラットの小説「逃亡のガルヴェストン」を、女優のメラニー・ロランが映画化。殺し屋と孤独な少女の逃避行を描く。『SUPER 8/スーパーエイト』などのエル・ファニングと『最後の追跡』などのベン・フォスターが主演を務めるほか、『アリーケの詩(うた)』などのアデペロ・オデュイエ、『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』などのボー・ブリッジスらが共演。
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1988年、ニュー・オーリンズ。主人公のロイは組織の殺し屋。最近咳がひどいことからボスのスタンに勧められ、医者に行く。すると肺の中が真っ白で余命宣告を受ける。その夜、ロイはスタンに仕事を言い渡される。銃は置いていけという言葉にちょっとひっかかるものがある。いつもの様にパートナーと仕事先の家に侵入すると、突然何者かに襲われる。真横でパートナーを射殺されるが、ロイはとっさに反撃し相手を殺して窮地を脱する。

明らかに待ち伏せされており、銃を持って行くなと言われていたことからも、ロイはスタンにハメられたと悟る。その場を立ち去ろうとしたロイは、そこで捕らわれていた若い女ロッキーを見つける。とりあえず女を一緒に車に乗せてそこから逃走する。ボスのスタンにハメられた以上、身を隠すことが第一である。ロッキーは売春婦をしていたが、なんで捕まっていたのかはわからない。2人は中古車屋で車を交換し、逃走を続ける。

道中でロッキーはある場所へ寄って欲しいとロイに頼む。2人は小さな家へ立ち寄り、ロイが車内でロッキーを待っていると、彼の目の前に小さな少女が現れる。するとその直後、家の中から銃声が鳴り、荷物を持ったロッキーが走って出てくる。事情を聞こうとするロイに、ロッキーは車を出すよう慌ただしく言い、少女は自分の妹ティファニーで、暴力的な父親から助け出したのだと説明する。

3人はガルヴェストンという町のモーテルに寄り、部屋を借りる。モーテルには怪しげな連中が宿泊しており、女店主も警察官たちとは仲がいい事を伝える。いかにもそんな連中の相手には慣れているという雰囲気を醸し出している。次の日、1度も海へ行ったことのないティファニーを海へ連れて行きたいと言うロッキーに促され、ロイは2人を海へ連れて行く。そんなロイにロッキーは感謝を伝え、ティファニーもだんだんロイに懐いていく。

この手の物語は、ロイたちが逃げ延びて一件落着とはいかない。家族など持たずに過ごしてきたロイが、19歳のロッキーと3歳のティファニーと知り合うことで、ほんの僅かに家族の温もりを知るが、そんな束の間の平和は長続きしない。ロッキーとティファニーには隠された悲しい事実がある。そしてティファニーを預けてロイとロッキーがデートをして楽しいひと時を過ごすが、直後に2人はスタンの手下に捕まってしまう・・・

よくありがちな展開で、隙をついて反撃に移ったロイが、スタン一派を叩きのめし、ロッキーとティファニーの3人で新しい生活を始めてメデタシメデタシというパターンかと思っていたら、なんと予想もしなかった方向へストーリーは進む。これはなかなか脚本の妙だったかもしれない。ロイは、殺し屋といっても凄腕というほどではなく、普通のレベルであったよう。おかげで悪玉のスタンも生きながらえる。

この映画の見所はと言えば、ちょっと予想とは異なるストーリー展開とエル・ファニングの存在だろうか。ダコタ・ファニングの妹であるが、美人姉妹であり、とりあえず見るだけでもいい感じだろうか。ラストで成長したティファニーがロイを訪ねてくる。ティファニーにしてみれば、3歳である日突然ロッキーもロイもいなくなってしまったのであり、辛い思いを抱えて成長したのである。年老いたロイとの会話もしみじみとした余韻を残してくれる。

ラストでのロイの後ろ姿が、なんとも言えない味わいを残してくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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