
原題: Hodejegerne
2012年 ノルウェー・ドイツ
監督: モルテン・ティルドゥム
出演:
アクセル・ヘニー:
ニコライ・コスター=ワルドー:
ユリエ・R・オルゴー:
シヌーヴ・マコディ・ルンド:ダイアナ・ブラウン
ユーリー・ウルゴード:ロッテ
アイヴィン・サンデル:オーヴェ
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予測不能な展開やユーモラスなバイオレンス描写が話題を呼び、本国公開前にハリウッドでリメイク権も獲得されたノルウェー発のサスペンススリラー。有能なヘッドハンターとして成功を収め、最高の美女や豪邸など、すべてを手にしたロジャー・ブラウン。しかし、ロジャーには芸術品を盗んで売りさばく美術品怪盗という裏の顔があった。ある日、高価な絵画を所有する元エリート軍人のクラス・グレブに出会ったロジャーは、これが最後の裏稼業と心に決めてクラスの邸宅に忍び込むが、そこで思いもよらぬ危機に陥ってしまう。
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主人公ロジャー・ブラウンは、身長168センチと白人にしては小さいが、その分お金でカバーしている。家はデザイン性豊かな高級住宅。高級車を乗り回し、そのせいか金髪美人の妻ダイアナがいる。ダイアナは画廊を経営しており、男を惹きつける魅力にあふれている。何もかも手に入れているダイアナだが、一番欲しいのは子供。しかし、子供ができたらダイアナの愛情が子供に移ったしまうことをロジャーは恐れている。
そのロジャーは、職業はヘッドハンターであるが、その稼ぎがすべてではない。家は相続したと周囲には公言しているが、実は裏家業として美術品の泥棒をやっている。ヘッドハンティングする顧客から財産の情報を仕入れ、セキュリティ会社で働くオーヴェの協力を得て盗み出す。そしてそれを換金するのだが、最近はロジャーの手取りが少なくなっているのが頭痛の種である。
ロジャーには、美人の妻を持ちながらもロッテという愛人もいる。金にゆとりがあれば男はそういうものだろう。ただし、深入りは好まない。ロッテからカップルとして夕食会に出席したいと言われたロジャーは、その場でロッテに別れを告げる。非情な男でもあるようである。
そんなロジャーだが、ダイアナの画廊の披露パーティでクラス・グリーヴという男を紹介される。クラスはGPSを開発した会社の役員だったが、退社して相続した祖母の家があるこの地へ越してきたという。そしてダイアナから、クラスがルーベンスの“カリュドンの猪狩り”という絵を持っているということを聞く。1941年にドイツに略奪され行方不明となっていたいわくつきの作品だが、クラスの祖母が戦時中交際していたドイツ軍将校からもらったものだという。
数千万から数億の価値があると聞き、資金繰りが苦しくなってきていたロジャーの食指が動く。ロジャーはさっそくクラスをランチに誘い、ヘッドハンティングの振りをして情報を聞き出す。クラスは18歳で軍に入り、その後エリート部隊に異動して追跡の任務に就き、超小型発信機のアイデアを提供して商品化したという。これが物語の伏線となっていく。クラスが家を空けることを聞きだしたロジャーは、オーヴェと連携してクラスの自宅に侵入し、ルーベンスの絵を首尾よく偽物の絵と入れ替える。
ふと窓の外を見ると、子供たちが無邪気に遊ぶ声。子供を欲しがっていたダイアナを思い出すと、その場でダイアナに電話をする。普通、盗みに入ったらさっさとずらかるだろう。留守だという安心感だろうか。すると家の中から携帯の呼び出し音が聞こえてくる。ロジャーが音の源をたどると、なんと寝室の乱れたベッドの下にダイアナの携帯が転がっているのを発見する。これは面白い展開である。
翌朝、いつものように車に乗りこもうとしたロジャーは、ガレージの車の中でオーヴェが倒れているのを発見する。さらに座席には特殊な針が置かれている。それは明らかにロジャーを狙ったものであ。オーヴェが死んでいると早とちりしたロジャーは、湖にオーヴェを運び投げ込んだが、直後に息を吹き返したためオーヴェの家に運び込む。苦しむオーヴェは病院へ運んでくれというが、事を表ざたにしたくないロジャーはそれを拒む。するとガンマニアのオーヴェが銃を乱射したため、ロジャーは手にした銃でオーヴェを射殺してしまう。
そこになぜかクラスがやってくる。どうやらGPSでロジャーを追跡して来たようである。自分を殺そうとしたのがクラスだとわかったロジャーは逃げ出す。必死に逃げ出したロジャーだが、クラスは超小型GPS開発のプロであり、ロジャーを追いかけてくる。ここからクラスとロジャーの追跡合戦が始まる。そしてここからが予想外の面白さ。なんとすでにハリウッドでリメイク権が所得されたらしいが、それも納得である。
背の低いロジャーは、悪知恵こそ回るものの、格闘技術はない。かたやクラスは、元軍人で追跡のプロ。時に便所の汚物の中に頭まで浸かって隠れ、あの手この手で逃げ回る。無情にも振った愛人ロッテの部屋にまで転がり込むが、実はロッテもグルで、それがバレると、鬼の形相で襲い来る。クラスの正体もわかるが、だからと言って安全になったわけではない。
「ヘッドハンター」というタイトルからは想像もできない展開。ノルウェー映画ではあるが、ハリウッドリメイクも納得の面白さは得した気分。伏線をすべて回収してのラストもなかなかである。それにしてもこのロジャーという男、この後どうしたのだろう。心を入れ替えて犯罪からは足を洗ったのだろうか。
それがちょっと気になった映画である・・・
評価:★★★☆☆