2021年05月29日

【エンド・オブ・ステイツ】My Cinema File 2411

エンド・オブ・ステイツ.jpeg

原題: Angel Has Fallen
2019年 アメリカ
監督: リック・ローマン・ウォー
出演: 
ジェラルド・バトラー:マイク・バニング
モーガン・フリーマン:アラン・トランブル大統領
ジェイダ・ピンケット・スミス:ヘレン・トンプソンFBI捜査官
ニック・ノルティ:クレイ・バニング
ランス・レディック:デビッド・ジェントリー
ティム・ブレイク・ネルソン:マーティン・カービー副大統領
パイパー・ペラーボ:リア・バニング
ダニー・ヒューストン:ウェイド・ジェニングス

<映画.com>
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『エンド・オブ・ホワイトハウス』『エンド・オブ・キングダム』に続き、ジェラルド・バトラーがアメリカ大統領専属シークレットサービスのマイク・バニングを演じる人気アクションシリーズ第3弾。世界を未曾有のテロ事件から救ったシークレットサービスのマイク・バニングは英雄として名を馳せ、副大統領から大統領となったトランブルからの信頼も絶大だった。しかし、歴戦の負傷によって肉体がむしばまれ、近頃は引退も考えるようになっていた。そんなある日、休暇中のトランブル大統領が大量のドローンによって襲撃される事件が発生。マイクが容疑者としてFBIに拘束されてしまう。隙をついて逃げ出したマイクは、何者かが仕組んだ陰謀を暴くため奔走するが……。主人公マイク役のバトラーのほか、トランブル大統領役もシリーズおなじみのモーガン・フリーマンが演じる。
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シリーズモノというのは、最初の作品で登場人物たちの紹介をしてしまえば、2作目以降は必要ないというメリットがある。本シリーズの主人公は、シークレットサービスのマイク・バニング。本シリーズでの実績を見れば誠に申し分のない捜査官。冒頭、古い友人のウェイドが経営する軍事会社の訓練施設で訓練を受け、相変わらずの優秀な成績を収めるが、本人は不満な表情。長年の蓄積疲労もあり、本来の調子ではなく、そろそろ引退を考えて始めている。

そんなある日、マイクはトランブル大統領の休暇に同行する。『エンド・オブ・ホワイトハウス』では国家3の実力者とされる下院議長だったトランブルは今や大統領になっている。その大統領からの信頼の厚いマイクは、大統領直々にシークレットサービス長官に任命される。引退を考えているマイクの気持ちは揺れ動くが、引退の考えを伝える。

湖の上のボートの上でそんな話をしていたその時、突然未確認のドローン部隊がトランブル大統領一行を襲撃する。周辺で待機していたシークレット・サービスの面々も次々に倒れ、とっさにドローンの襲撃を交わしたマイクは大統領とともに湖に飛び込む。ドローンには顔認証システムが搭載され、マイクの顔を認識すると「攻撃対象外」と判断する。訝しく思うも、この理由はすぐにわかる。

駆け付けた支援部隊によって救助された大統領とマイクだが、2人とも意識不明。ようやくマイクが目を覚ますものの、周囲に不穏な空気が流れている。それもそのはず、事件現場に放置された犯行に使われたとされる車からマイクのDNAが検出されており、マイクは一連の事件の容疑者にされていたのである。意識が戻るとともに逮捕され尋問されるマイク。もちろん、身に覚えはない。味方であるはずの大統領は意識不明。絶体絶命の状況である。

さらなる取り調べを受けるため、勾留施設に護送されるマイク。ところが謎の覆面集団が護送車を襲撃する。警護官達はなす術もなく殺害され、マイクも拘束される。ところがマイクも一筋縄ではいかない男。謎の集団の1人を倒してみれば、冒頭の軍事訓練施設で絡んできた軍事会社の社員。何か裏があるわけである。とりあえずその場を逃げ出すが、国家とウェイドの会社の両方に追われる事になる。窮地に陥ったマイクは、これまで疎遠になっていたベトナム帰りの元軍人の父親クレイを頼る・・・

主演は変わらずジェラルド・バトラー。ゴツゴツいかついイメージのアクションが真骨頂。この映画では、シークレット・サービスのエリートながら、大統領暗殺未遂事件の首謀者にされてしまうというもの。『エンド・オブ・ホワイトハウス』では、ホワイトハウス内で孤立無援状態に立たされたが、本作でも濡れ衣を着せられ、孤軍奮闘せざるを得なくなる。やはり、ヒーローは孤軍奮闘だろう。

さらに意識不明の重体に陥ったトランプ大統領に代わり、カービー副大統領が職務を代行する。そして事件の黒幕はロシア政府だと発表する。一方、ウェイドは軍事会社の部隊をマイクが潜むクレイの住む山小屋に送り込む。この山の中での戦闘は一つの見どころ。なにせ老いたりとは言え、クレイはベトナム帰りの元軍人である。日頃から仕込んでいた爆弾の類をフル活用し、これを迎え撃つ。

やがて事件の背後に潜む陰謀が明らかになる。襲い来るウェイド率いる軍事会社。この軍事会社というのも便利なもの。実戦では表立って派遣しにくい米正規軍に成り代わる存在であるが、映画においても悪役としてはもってこい。正規軍は悪役にし難いが、軍事会社はここでも便利にそれを代行する。正体を現し、トランブル大統領を暗殺するべく襲い来る軍事会社。大統領を守るべく、マイクは多勢に無勢の中、奮闘する。

やはりこのシリーズは戦闘アクションが大きな見どころだろう。迫力ある銃撃戦が展開される。激しい戦闘アクションが見たいのであれば、このシリーズは最適かもしれない。このあとも続くのだろうか。さらなる続編を期待したい一作である・・・


評価:★★☆☆☆









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2021年05月23日

【ザ・ハッスル】My Cinema File 2410

ハッスル.jpeg

原題: The Hustle
2019年 アメリカ
監督: クリス・アディソン
出演: 
アン・ハサウェイ:ジョセフィーヌ・チェスターフィールド
レベル・ウィルソン:ペニー・ラスト
アレックス・シャープ:トーマス・ウェスターバーグ
ディーン・ノリス:ハワード・ベーコン

<映画.com>
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『オーシャンズ8』のアン・ハサウェイと「ピッチ・パーフェクト」のレベル・ウィルソン共演によるクライムコメディ。1988年の映画「ペテン師とサギ師 だまされてリビエラ」でマイケル・ケインとスティーブ・マーティンが演じた主人公の性別を変えてリメイクした。南フランスの海辺の街。男を騙して小金を稼ぐペニーは凄腕の詐欺師ジョセフィーヌと出会い、彼女に師事するかたちで一緒に詐欺を働くように。男たちから次々と金を巻き上げていく2人だったが、いつまでたっても分け前をもらえないことに業を煮やしたペニーはジョセフィーヌと決別。多額の財産を持つ純朴そうな青年トーマスをターゲットに、詐欺の腕前を競い合うことになるが……。トーマス役に「パーティで女の子に話しかけるには」のアレックス・シャープ。
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ところはバー。待ち合わせをしていると思しき男がキョロキョロしている。そこに現れたのは、放漫な巨体の女性ペニー。ペニーは男の待ち合わせの相手マディソンの代理だと伝える。男が相手にふさわしいかどうかを確認に来たと話すと男は身を乗り出す。ペニーは弁舌巧みにマディソンの豊胸手術を口実に500ドルを男にオンラインで送金させようとする。その時、「あの女が豊胸詐欺の女だ」と警官をともなった男が現れる。一目散に巨体を揺らしながら逃げるペニー。

所変わってカジノ。掛け金が無くなって肩を落とした男が、バーカウンターで酒を注文する。隣でカジノは不慣れな様子の美女を見つけ声を掛ける。女はジャネットと名乗り、男は母の形見というブレスレットを売却するつもりだと言いながら、女の腕にはめる。するとそこに警察官が現れ、女を詐欺の容疑で連行する。男の手にブレスレットを戻すが、ジャネットは巧みにそれをすり替える。ジャネットと名乗った女はジョセフィーヌ。すり替えたブレスレットは戦利品。仲間に金を分配すると、ジョセフィーヌはブレスレットを売るためチューリッヒへと旅立つ。

ペニーはとある列車に乗り込むと、食堂車に移動する。カモになりそうな男を見つけると相席し、さらわれた妹を探す貧乏旅行だと偽り、同情した男に食事を奢らせる。そして客室に向かったペニーはジョセフィーヌと同室になる。一部始終を見ていたジョセフィーヌはペニーに話しかける。相手もそうだとは知らずに自分が詐欺師であることをあっさり告白するペニー。おしゃべりなペニーは、伝説の元祖女詐欺師メデューサの話をする。ジョセフィーヌはペニーとは列車を降りて別れる。

しかし、ジョセフィーヌは次の獲物を探す中、再びペニーの姿を見かける。金持ちの男を相手に詐欺を働こうとするところで、鬱陶しいと思ったのだろう、ジョセフィーヌは巧みに動いてペニー留置所に入れてしまう。そしてペニーを騙し、保釈金として8,000ドルを巻き上げるとペニーを飛行場へと送る。かろうじて状況がわかったペニーは、自分より上手だと思ったのだろう、ジョセフィーヌに会いに行き弟子入りを志願する。

日本の無詐欺映画である『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(My Cinema File 2394)でもベテラン詐欺師が若手にノウハウを仕込むというストーリーがあったが、ここではジョセフィーヌがペニーを鍛える。ペニーの手口は言ってみれば「寸借詐欺」的なところがあり、仲間とチームを組んで大胆に仕掛けるジョセフィーヌのそれとは雲泥の差がある。弟子入りは謙虚な考えだと言える。ジョセフィーヌの教えは心得から始まり、運動にダンス、礼儀作法にまで至る。

こうしてジョセフィーヌの指導の下、ある程度の技能を習得したペニー。2人はコンビを組んで結婚詐欺を繰り返す。金持ちの男から高価な婚約指輪を差し出させ、そして男の方から婚約を破棄させる。騙されたはずの男も被害を認識できないだろう。しかし、蜜月も長くは続かず、ジョセフィーヌとペニーは袂を分かち、それどころか互いに負けた者が街を去るという取り決めで賭けをすることになる。それは男を選んで決めた額を騙し取った方が勝ちというもの。詐欺勝負である。

詐欺の映画というと、古き名画『スティング』しかり、最近の映画『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(My Cinema File 2394)しかり、観ている者をいかに騙すかというところが面白さの成否を分けると思う。その点ではまずまずの出来。コメディタッチが心地よく、深く考えずに楽しむことができる。

主演はアン・ハサウェイ。細身の美女に肉感たっぷりのレベル・ウィルソンとはなかなかの凸凹コンビと言える。この手の映画はじっくりと鑑賞する大作とは異なり、気軽に楽しむのが一番。何より観ているだけでいい美人のアン・ハサウェイ主演であるし、ほどよく心地よい映画である・・・


評価:★★☆☆☆









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2021年05月22日

【アップグレード】My Cinema File 2409

アップグレード.jpeg

原題: Upgrade
2018年 アメリカ
監督: リー・ワネル
出演: 
ローガン・マーシャル=グリーン:グレイ・トレイス
メラニー・バレイヨ:アシャ・トレイス
ベッティ・ガブリエル:ジェーン・コルテス
ハリソン・ギルバートソン:エロン・キーン
ベネディクト・ハーディ:フィスク
サイモン・メイデン:ステム(声)

<映画.com>
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『パラノーマル・アクティビティ』のジェイソン・ブラムが製作、『インシディアス』シリーズで脚本や監督を務めたリー・ワネルがメガホンを取ったSFアクション。近未来、妻と平和な日々を送っていたグレイは、突如現れた謎の組織によって妻を殺され、自身も全身麻痺となってしまうが、巨大企業の科学者によって実験的に埋め込まれたAIチップ「STEM」の力によって麻痺を克服し、人間を超越した身体能力を手に入れる。グレイは脳内で会話する相棒的存在である「STEM」と協力し、最愛の妻を殺害した謎の組織への復讐を誓う。主人公グレイ役を『プロメテウス』『スパイダーマン ホームカミング』のローガン・マーシャル=グリーンが演じる。
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主人公はメカニックのグレイ・トレース。
時は近未来。グレイの妻・アシャは、自動運転車で帰宅する。音声で指示を出し、快適なソファで寛いでいるうちに自宅に着く。もうすぐそこに見えている未来である。そんな近未来でありながら、グレイが手掛けているのは、「骨董品」のガソリン自動車。いつの時代も昔のものを欲する人はいる。グレイのその顧客は天才発明家エロン・キーン。

グレイは仕上げた車をエロンに届ける。帰りの足としてアシャに同行してもらう。地下に建造されたエロンの自宅で、エロンは自分が作ったステムと呼ばれるコンピューター・チップを2人に見せ、全てを可能にする最先端の脳だと説明する。そしてその帰り道、自動運転のアシャの車が、いつの間にかルートを外れて走っており、しかもAIも機能不全に陥り事故を引き起こしてしまう。さらにそこへ謎の男達が現れ、アシャを射殺しグレイも背中を撃たれてしまう。

突然の不幸に襲われたグレイは、何とか命を取り留めるも四肢麻痺となってしまう。現場の状況は警察のドローンが撮影していたが、その映像からは犯人の特定が出来ないと担当のコルテス刑事から聞かされ、グレイはやり切れない思いに陥る。グレイは自宅のAIに薬剤の過剰摂取をさせ自殺を図る。病院へ搬送され何とかまた命を取り留める。絶望するグレイを見舞いに訪れたのはエロン。エロンは、グレイにステムを埋め込めばまた歩けるようになると話す。

自分だったらどうするだろうと考えるも、それは考えるまでもない。それはグレイも同様で、グレイはステムを受け入れる手術をする。どういう仕組みかはわからないが、おそらく切断されてしまった神経系統をステムが代替するのだろうか、グレイはすぐに元のように体を動かせるようになる。夢の技術であるが、まだ対外秘でもあり、エロンはグレイに機密保持契約への署名を求め、対外的にはこれまで通り車椅子の生活をするよう伝える。

変化があったのはこれ以降。自宅へ戻り、コルテス刑事から届いた事件資料を見ていたグレイに突然頭の中で声が聞こえる。それはグレイに埋め込まれたステムの声。ステムは録画映像を解析し、アシャを射殺した男は腕の中に埋め込んだ銃を使用し、別の男の手首には刺青がしてあることを指摘する。そしてぼやけた刺青の画像を復元し、グレイの手を操って刺青の絵を描く。それは軍人が入れる刺青であり、そこからサークという名の元海兵隊員であるという身元まで割り出す。

ステムの能力はこれにとどまらない。グレイは車椅子でサークの家へ行き、カギをこじ開けて侵入、手掛かりを探す。しかし、そこへサークが戻ってきてしまう。グレイは殺されそうになるが、ステムに体を動かす許可を与えると、グレイの体は驚異的な身体能力を発揮し、サークがナイフを使って襲ってきたのにもかかわらず、そのナイフを奪ってサークを刺殺してしまう・・・

サークの体にはコンピューターや銃が埋め込まれており、近未来社会はなかなか便利なのか危ないのかよくわからない。やがてステムは独自の思考を有するようになり、これは開発者のエロンでさえ予測しえなかったこと。エロンはそれでもステムを強制停止させることができるが、これを察知したステムはハッカーに依頼して強制停止のプログラムコードを変えてしまう。グレイとしてもステムが止まれば身動きがとれなくなるわけで、協力せざるをえない。

実はアシャが殺され、自分が動けない体にされた事件には驚くべき裏がある。事件の裏にうごめく陰謀、そして驚異的な戦闘能力を持った殺し屋。次第にステムの言いなりになっていくグレイ。物語は予想外の展開を見せていく。東野圭吾原作の『変身』は、他人の脳の一部を移植された青年が、次第に移植された脳(=他人)の影響を受けて性格が変わっていくドラマであったが、この映画ではチップ(=AI)の支配を受けていくというもの。

主人公のグレイは、ステムのおかげで動かない体が動くようになったばかりか、人間離れした驚異的な身体能力まで身につけて「アップグレード」するが、その行き着く結末には驚くべき真相が待っている。病院のベッドで目を覚ましたグレイ。そばには死んだはずの愛妻アシャが微笑んでいる。妻を抱きしめたグレイは安堵する。思わず『マトリックス』を思い浮かべてしまったが、背筋が凍るラストシーンである。

意外性に富んだストーリー。技術の進歩がちょっと怖くなる映画である・・・


評価:★★★☆☆









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2021年05月21日

【ホース・ガール】My Cinema File 2408

ホース・ガール.jpeg

原題: Horse Girl
2020年 アメリカ
監督: ジェフ・バエナ
出演: 
アリソン・ブリー:サラ
ヴィクトリア・クレア:若い頃のサラ
デビー・ライアン:ニッキー
ジョン・レイノルズ:ダレン
モリー・シャノン:ジョーン
ジョン・オーティス:ロン

<映画.com>
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テレビドラマ「GLOW ゴージャス・レディ・オブ・レスリング」のアリソン・ブリーが主演・共同脚本を手がけたNetflixオリジナル映画の異色ドラマ。手芸店で働く若い女性サラ。仕事のない時には、かつて乗っていた愛馬に会いに行ったり、大好きな超常現象ドラマを見たりして過ごしている。そんなある日、彼女はルームメイトに紹介された青年ダレンと親しくなり、デートの約束をする。しかしサラは不思議な夢を見たことをきっかけに、現実と妄想の区別がつかなくなっていく。共演に「グリンチ」のモリー・シャノン。「ライフ・アフター・ベス」のジェフ・バエナが監督・共同脚本を務めた。Netflixで2020年2月7日から配信。
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主人公は手芸店で働くサラ。接客は丁寧で、同僚のジョーンとも打ち解けている。2人の何気ない会話から物語は始まる。自分のルーツが知りたくて、DNA検査をしたというジョーン。その結果は、96%がアイルランドかウェールズで、3%が北欧か北西ロシア、1%は西アフリカだというもの。面白いものだと個人的に思う。仕事が終わるとサラは牧場へ行き、 “ウィロー”に会うのを楽しみにしている。どうやらウィローはサラの愛馬だったらしく、今の馬主にもその世話の方法を事細かく伝える。

家に帰ると好きな超常現象ドラマを見ながら、アンクレットを編んだりして過ごす。ニッキーという女性とルームシェアをしていて、ニッキーは恋人のブライアンを連れてきたりするが、サラには恋人がいない様子。そんなサラにニッキーはボーイフレンドを紹介しようとするが、サラはなかなかその気にならない。このあたりまででサラはかなり内気だとわかってくる。その晩、ブライアンが夜中に目を覚ますと、壁に向かって立ち尽くすサラを見て驚く。

翌日、サラは誰かの墓参りに行ってから、職場へ向かう。同僚のジョーンからバースデーカードとDNA鑑定キットをプレゼントとしてもらう。そしてサラは仕事帰りに“ウィロー”に会いに行き、同じ誕生日のウィローに手作りのストラップをたて髪に着ける。馬主の夫婦は、そんなサラの行動を黙認するが、明らかに迷惑そうな表情。その夜、サラはズンバ教室で汗を流したあと、帰宅して1人で食事をする。

このあたりになると、サラの少し変わった性格が見えてくる。ルームメイトのニッキーが誕生日に1人でいるサラのためにブライアンのルームメイト“ダレン”を呼ぶが、それがサラの好きなドラマの主人公と同じ名前だったことからサラのテンションが上がる。近くにいたらちょっと引いてしまうタイプである。そんなサラは、興奮したのか鼻血を出すが、このあとサラはしばしば鼻血を出す。

一体、この物語はどういう方向に行くのだろうと訝しく思うが、この夜、酒を飲み過ぎたのか悪酔いをし、サラはそのまま寝てしまう。その晩サラは真っ白い部屋に寝ていて、見知らぬ男と若い女が、横たわっている夢を見る。翌朝、ニッキーとブライアンが起きてくると、廊下の壁に深くひっかいた傷がついている。リビングで寝ていたサラには身に覚えがない。その後も鼻血を出し、店の前を夢で見た男が通るのを見て追いかける。サラの行動は次第におかしなものになっていく。

不思議な現象なのか、それともサラが異常をきたしていくのか、気がつけば知らない場所にいたり、シャワーを浴びていて、シャワールームから出るとそこは職場で、サラは素っ裸で立ちすくみ、盗まれたと思った車が実はサラがキーをつけたまま置いてきてしまったり、誰もいないのに隣の部屋から会話が聞こえてきたりする。こうなるとホラー映画というより、サラの精神に何かが起こっているのだとわかってくる。実際、精神異常者の心中ってこんな感じなのかもしれないと思えてくる。

やがてサラの言動は加速度的におかしなものになっていく。外から見れば異常行動。それがだんだんとエスカレートし、そしてサラは常人にはわからない世界に行く。観終わって何かが残るかと問われると難しい。ただ、わからないのが、サラがどうして自分の世界に奥深く入ってしまったのか。何か原因があったのか。そのあたりがどうにも引っ掛かりとして残ってしまった。

現実と妄想の中をさまよい始めたらもうどうにもならない。認知症も似たようなものかもしれないが、身内にこういう人が出ないことを願いたくなる映画である・・・


評価:★★☆☆☆









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2021年05月15日

【さよならくちびる】My Cinema File 2407

さよならくちびる.jpeg
 
2019年 日本
監督: 塩田明彦
出演: 
小松菜奈:西野玲緒(レオ)
門脇麦:久澄春子(ハル)
成田凌:志摩一郎(シマ)

<映画.com>
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「黄泉がえり」「どろろ」の塩田明彦監督が、小松菜奈と門脇麦をダブル主演に迎え、居場所を求める若者たちの恋と青春をオリジナル脚本で描いた音楽ロードムービー。インディーズ音楽シーンでにわかに話題を集めただけの2人組女性ユニット「ハルレオ」のハルとレオは、それぞれの道へ進むため解散を決める。2人はサポート役であるローディの青年シマとともに日本縦断の解散ツアーに出るが、レオはシマに、シマはハルに思いを寄せており、ハルもまたレオに友情を越えた感情を抱いていた。複雑な思いを胸に秘めながら、各地でステージを重ねていくハルレオだったが……。レオを小松、ハルを門脇、シマを「愛がなんだ」「ビブリア古書堂の事件手帖」の成田凌が演じる。「ハルレオ」が歌う主題歌プロデュースを秦基博、挿入歌の作詞・作曲をあいみょんと、それぞれ人気ミュージシャンが楽曲を手がけた。
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男が女を迎えに行く。女は楽器を持って車に乗り込む。車には既にもう一人の女が乗っている。
「2人の気持ちは変わらないんだな?」と男が問う。
2人の女は同意するが、どうにも仲は険悪。女は“ハルレオ”の名前で活動をしているアーティスト。その名の通りハルとレオである。男はローディのシマ。そこから3人は全国7都市のライブハウスツアーに出発する。

物語はハルレオの出会いへと時をさかのぼる。ハルはバイト先で偶然出会ったレオに『一緒に音楽をやってみない』と声をかける。レオは音楽経験が全くなかったが、ハルに何かを感じたのか、レオは誘いに乗る。ハルから手ほどきを受けたレオは、めきめきと上達し、2人は路上で歌い始めるようになる。2人は“ハルレオ”として本格的に活動し始めるためにローディを探し始める。そこで出会ったのが元売れっ子ホストのシマ。やがて自主製作ではあるもののCDを製作し、ライブハウスにもお客が集まるようになる。

“ハルレオ”にファンもできるようになるが、2人の関係がギクシャクしはじめたのは、三角関係。元々男に惚れっぽいところのあるレオがシマに惹かれ始め、そのシマがハルに惹かれ始めたのである。そしてとうとう仕事以外でろくに口もきかないようになってしまう。更に関係を複雑にしているのが、ハルが同性愛者という事実。そして、ハルはレオに強く惹かれている。完璧なトライアングルである。

ついに“ハルレオ”の関係は修復不能となり、2人は解散を決意する。全国ツアーはその最後の集大成。冒頭でシマが訪ねた「2人の気持ち」とは解散の決意のこと。初めは解散のことは伏せてはいたものの、どこかで情報が漏れてしまう。すると各地のスポンサーたちは、「解散ツアー」とした方が客の入りがよくなるとの思惑からこれを前面に出してしまう。その結果は大盛況。満員が続き、シマは喜ぶが、淡々と最後のツアーをこなす予定だった二人のイライラはさらに増していく・・・

“ハルレオ”は架空のグループであるが、こうしたアーティストを主人公にした映画の場合、どうしても演奏が重要な要素となる。この映画の場合、主として披露されるのはタイトルにもなっている「さよならくちびる」という歌。これがなかなかのもの。実際、CDを出したらかなり売れるのではないかと思えてしまう。それもそのはずで、プロデュースを秦基博、作詞・作曲をあいみょんということらしいのでなるほどである。

ステージ上では見事に息の合ったパフォーマンスを見せるが、舞台裏ではバラバラ。そんな物語はとうとうラストステージを終えるが、そのあとには意外な結末を迎える。男1人に女2人。完璧なる三角関係。耳障りの良い楽曲。実在のアーティストを扱うものもいいが、こうした架空のグループでもいいものだと思う。映画と音楽は親和性が強いと改めて思う。

観終わって主題歌が耳に残る一作である・・・


評価:★★☆☆☆









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