2021年08月31日

【THE GUILTY/ギルティ】My Cinema File 2451

THE GUILTY/ギルティ.jpeg

原題: Den skyldige
2018年 デンマーク
監督: グスタフ・モーラー
出演: 
ヤコブ・セーダーグレン:アスガー・ホルム
イェシカ・ディナウエ:イーベン
ヨハン・オルセン:ミカエル
オマール・シャガウィー:ラシッド

<映画.com>
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電話からの声と音だけで誘拐事件を解決するという、シンプルながらも予測不可能な展開で注目され、第34回サンダンス映画祭で観客賞を受賞するなど話題を呼んだデンマーク製の異色サスペンス。過去のある事件をきっかけに警察官として一線を退いたアスガーは、いまは緊急通報指令室のオペレーターとして、交通事故の搬送を遠隔手配するなど、電話越しに小さな事件に応対する日々を送っている。そんなある日、アスガーは、今まさに誘拐されているという女性からの通報を受ける。車の発進音や女性の声、そして犯人の息づかいなど、電話から聞こえるかすかな音だけを頼りに、アスガーは事件に対処しなければならず……。
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主人公は緊急通報指令室のオペレーターのアスガー・ホルム。日本でいう110番(この映画のデンマークでは112番のようである)に電話をすると、この緊急通報司令室にかかってくる。アスガーは電話を受け、それを元に司令室へ連絡したり、現場に急行させる警察車両や警官の配備を促す仕事を淡々とこなしている。

その夜、あと少しで交代という時間に、アスガーは一本の通報を受ける。声の主は怯えた様子の女性。最初はいたずら電話かと思うが、そこは警察官であり、おかしいと感じたアスガーは事件性を察して巧みにイエスかノーで答える質問を繰り返して状況を探る。発信者の情報はモニターに表示され、相手の女性の名前はイーベンだと分かる。そしてどうやら子供を自宅に残したまま白いバンで男に誘拐されたことを突き止める。しかし、そこで電話は切れてしまう。

アスガーはすぐさま通信司令室へ連絡し、電話基地局から割り出されたおおよその場所を頼りに近くにいたパトカーを向かわせるよう伝える。さらにアスガーはイーベンの自宅へ電話をかける。果たして電話に出たのはマチルドという6歳の女の子。マチルドをなだめて話を聞くと、パパがママの髪の毛を掴んでナイフを持ったまま出て行ったと言う。さらにオリバーという弟がいるが、パパから部屋に入ってはいけないと言われているとのこと。「ママを助けて」と泣くマチルドに対し、オリバーと一緒に待つよう伝え電話を切り、警官を向かわせる。

こうなると交代どころではない。アスガーはかつての相棒ラシッドに連絡を取り、どうやら別居しているらしいイーベンの夫の家に向かうよう依頼する。そのラシッドはどうやら酔っている。こうした事件の推移をストーリーは追うが、あちこちとの会話の中から、どうやらアスガーとラシッドは翌日裁判を控えているらしいとわかる。それも何やら偽証などという穏やかならざる話が出てきたりする。そしてそれによって現場復帰が実現するという。

そうこうするうちにイーベンの自宅に着いた警察官からの連絡があり、マチルドは無事保護することができたが、弟のオリバーは惨殺されているとの報告が入る。誘拐事件がさらに殺人事件へと発展する。イーベンを誘拐した夫ミケルが犯人と目される。アスガーは本人に電話して怒りに任せたまま怒鳴るが、電話では切られてしまうとそれまで。アスガーはイーベンへ連絡し、なんとか状況を探り、高速道路を走行しているとわかると車の特徴を聞き出しパトカーを向かわせる。

気がつけば、映画はほぼアスガーの一人芝居。司令室には同僚もいるが、アスガーが電話で相手とやりとりする形でストーリーは進んでいく。そう言えば『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』(My Cinema File 2080)も主人公の独演だったが、こういう映画も面白いと思う(さぞかし制作費も安かろう)。

さて、アスガーは無事イーベンを救えるのだろうかと思っていたら、事件はとんでもない様相を露わにする。さすがにこの展開は予想できなかった。そしてアスガーが控えている裁判の様子も本人の思いもかけない告白で明らかになる。あと少しで交代というタイミングで取った一本の電話。この電話を取らなければアスガーの人生はまったく違ったものになっていたはずである。ストーリーの面白さとともに、そんな想像も映画の面白さを引き立たせてくれる。

思わず「技あり」と言いたくなるデンマーク映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2021年08月28日

【シカゴ7裁判】My Cinema File 2450

シカゴ7裁判.jpeg

原題: The Trial of the Chicago 7
2020年 アメリカ
監督: アーロン・ソーキン
出演: 
エディ・レッドメイン:トム・ヘイデン
アレックス・シャープ:レニー・デイヴィス
サシャ・バロン・コーエン:アビー・ホフマン
ジェレミー・ストロング:ジェリー・ルービン
ジョン・キャロル・リンチ:デヴィッド・デリンジャー
ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世:ボビー・シール
ジョセフ・ゴードン=レビット:リチャード・シュルツ
フランク・ランジェラ:ジュリアス・ホフマン判事
マイケル・キートン:ラムゼイ・クラーク

<シネマトゥデイ>
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ベトナム戦争の反対デモをめぐる裁判を実話に基づいて描いた人間ドラマ。1968年に行われた抗議デモで首謀者とされた7人の男たちが、陪審員の買収などの妨害にもめげず裁判で徹底的に戦う。メガホンを取ったのは『ソーシャル・ネットワーク』などの脚本を担当し、監督としては『モリーズ・ゲーム』を手掛けたアーロン・ソーキン。『ブルーノ』などのサシャ・バロン・コーエンや『博士と彼女のセオリー』などのエディ・レッドメイン、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、マイケル・キートン、マーク・ライランスなどが出演する。
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時はベトナム戦争が拡大していく最中のアメリカ。多くの若者が徴兵され戦火の中へと投入されていき、次第に反戦ムードが沸き起こっていく。そんな1968年8月28日にイリノイ州シカゴで開かれた民主党の全国大会には、ベトナム戦争に関してどんな判断が下されるのか注目が集まっている。多くの活動家がベトナム戦争反対のデモのために会場近くのグランド・パークに集結するが、集団の一部が暴徒化し数百人の負傷者が出てしまう。

この事態に逮捕され起訴されたのは、アメリカ全国の学生活動家組織や青年国際党(イッピー)、ヴェトナム戦争終結運動(MOBE)やブラックパンサー党のメンバー8人。政治に対する思考は同じという以外に互いに繋がりはなかったものの、共謀の被告として起訴される。(裁判の途中で1人審理無効となった)この7人こそが「シカゴ・セブン」であり、この裁判を巡る動きがこの映画のストーリーである。

当時、大統領の交代直後であり、それと共に司法長官も交代となる。新たに司法長官となったミッチェルは、政府の意向を示すためであろう、連邦検察官のリチャード・シュルツを呼び出し、直々に共同合議での起訴を指示する。その要請に一瞬顔を曇らせるシュルツ。その表情は、この起訴には無理があると雄弁に語るが、シュルツはそれを飲み込み準備に取り掛かる。そして裁判が始まる。

始まってみれば判事のホフマンは露骨に検察側寄りの態度を示す。映画でははっきりとは描かれていないが、被告に同調的と思われる陪審員が、家族宛に脅迫の手紙が届いたという理由で陪審員を外される。送り主とされたブラックパンサー党の者はだれ一人としてそれを出した記憶はなく、検察側のでっち上げであることが示唆される。そうした裁判の進行に被告人のルービンとホフマンは判事のコスプレをして判事を挑発したりする。ホフマン判事(同姓でややこしい)は法廷侮辱罪だと怒りを露わにし、弁護人クンスラーの異議申し立てをことごとく棄却する。

合間合間に7人のメンバーのデモ前後の行動が描かれる。非暴力主義のトムは仲間を監視していた警察車両を見つけてパンクさせるが、運悪く見つかって逮捕される。デヴィッドは心配する家族に「平和的にやるから」と安心させて家を出る。ブラックパンサー党のボビーが唯一、風態も言動も過激であるが、武器を所持していたわけではない。政権側が彼らをなぜ強引に起訴したのか、もう少し説明が欲しかったと思うのは個人的見解である。強引な起訴である事は、シュルツが証人として出廷させたFBI捜査官や市の職員が、被告に不利にならない証言をしたことにも現れている。

そして不遜な態度をとり続けたボビーに対し、法廷侮辱罪の連発では効果がないと判断したホフマン判事は、ボビーに猿ぐつわをさせて法廷に座らせる。この判事の行為に弁護団は猛抗議する。明らかに常軌を逸した行動に、シュルツはボビーの審理無効を提案せざるを得なくなる。こういう裁判モノは、大概弱い立場の被告人が有利な検察側の主張を覆していくというのが醍醐味になっている。『レインメーカー』などもその典型である。

判事の偏った法廷運営にも関わらず、被告側は粘り強く行動する。諦めなければ道は開ける。そしてついに前司法長官のクラークを証人として出廷させることに成功し、そこで決定的な証言を引き出すが・・・途中の展開もなかなか見せ場を多く用意してくれる。そしてラストのトムの行動と敵対的立場であったはずのシュルツの行動には心が熱くなる。実話とは言え、エンターテイメントとして脚色はされているのだろうが、こういう展開は、法廷モノの常とは言え、心震わせてくれるものがある。

主演のエディ・レッドメインの他、著名な俳優が数多く出ていることも映画の世界に引き込んでくれる。個人的には、意に反した起訴を命じられ、職務としてそれに全力でまっとうするが、それでもラストで自らの心の内をさらけ出してくれる(それもごく自然な形で) ジョセフ・ゴードン=レビット演じる検察官のシュルツが強く印象に残ったのである。ベトナム戦争を強引に進めたアメリカのエゴ。独裁国家と違って自浄作用が働いている。それがよく現れた映画である・・・


評価:★★★☆☆








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2021年08月27日

【アトラクション 制圧】My Cinema File 2449

アトラクション 制圧.jpeg

原題: Attraction
2017年 ロシア
監督: フョードル・ボンダルチュク
出演: 
イリーナ・ストラシェンバウム:ユリア
アレクサンダー・ペトロフ:チョーマ
リナル・ムハメトフ:ヘイコン
オレグ・メンシコフ:レベデフ

<映画.com>
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巨大宇宙船が飛来したモスクワを舞台に描いたロシア製SFアクション大作。巨大な球体宇宙船がモスクワに飛来し、ビルをなぎ倒して多くの死傷者を出しながら着陸した。異星人との初めての遭遇に人々が戸惑う中、ロシア政府は即座に戒厳令を敷き事態の収拾を図ろうとする。一方、ロシア軍司令官の娘ユリアは異星人の科学技術者ヘイコンと出会い、ヘイコンが故郷の惑星へ帰るために必要なデバイス「シルク」探しを手伝うことに。異星人に対する排斥の気運が高まる中、ヘイコンと一緒に過ごすうちに自分が彼を愛し始めていることに気づくユリアだったが……。監督は『スターリングラード 史上最大の市街戦』のフョードル・ボンダルチュク。新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2017/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2017」(17年7月15日〜8月18日)上映作品。
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モスクワ。主人公のユリアは学生。その日は隕石雨が話題をさらっており、学校の先生の勧めもあって恋人のチョーマとともに親友のスヴェタの家に隕石雨を見に行く約束をする。しかし、ユリアの父レベデフは軍の司令官を務め、娘に対しては世の常として厳格であり、男と一緒であるとわかると外出を禁じられてしまう。それでおとなしくするわけでもなく、ユリアは父が外出するとチョーマの車でスヴェタの家に向かう。

その頃、地球の上空で未確認飛行物体が隕石雨にさらされる。大気圏内に突入したところをロシアの空軍機によって攻撃される。なんであれ領空侵犯したものは危険視するという人間の悪しき性であろう。こういう時、科学技術が人類より進化した宇宙人は、人類の攻撃を難なくはねのけるものであるが、この宇宙人は平和的なのか、攻撃を受けてあっけなく墜落する。墜落したのは運悪く市街地。スヴェタの住むマンションも被害を受け、屋上にいたスヴェタは犠牲になり、部屋でイチャイチャしていたユリアは怪我をしてチョーマによって病院に運ばれる。

レベデフは軍人として、宇宙人とのコンタクトを試みようとする下院議員のミハイルに同行する。墜落した宇宙船に恐る恐る近づく2人。中から出てきたのは、白い巨体の宇宙人。それが地なのか宇宙服に身を包んでいるのかは一見してわからない。なんとか会話を試みるミハイルであるが、突然苦しみ出してこの接近遭遇は終わりを告げる。レベデフは軍に攻撃を控えさせ、宇宙人の様子を伺う。このあたりは攻撃的な軍人の中にあって冷静な司令官らしい冷静さである。そしてレベデフは宇宙人からメッセージを受け取る。

ロシア連邦・安全保障会議が開催され、レベデフは宇宙人から受け取ったメッセージを報告する。それは、宇宙船は修理が終わり次第旅立つので近づかないようにという警告。ミハイルが苦しんだのは、宇宙船に近づいた影響で、ペースメーカーが故障したものであった。上層部はレベデフの話を聞き、攻撃せずに修理を待つことにする。これがアメリカだったら大人しく待つことはないように思う。

一方、病院に運び込まれたユリアは、4日後に目を覚ます。そして、スヴェタが亡くなったことを知るとショックを受ける。父レベデフが迎えに来て家に帰るが、宇宙船の墜落による死者は200人以上に及び、モスクワの町は夜9時以降、外出禁止になる。レベデフは学校終了後、家にいるようユリアに命令し、祖母をお目付役として呼び寄せる。ユリアは大人しくそれに従いがい学校に行くが、親友のスヴェタの写真を見ると宇宙人に対して激しい憎しみが湧き上がる。

若者ゆえの無謀さからユリアは宇宙人に復讐するため父親の拳銃を持ち出すと、チョーマや彼の友人と共に宇宙船に向かう。周囲を警戒する軍の監視を避け一行は宇宙船の墜落現場付近にある建物に入る。チョーマから待機していろと告げられたユリアであるが、1人でいるところへ宇宙人が現れる。ユリアは驚き、咄嗟に銃を撃つが、慣れない素人ゆえに反動で崩れかけた建物から落ちそうになるが、なんとそこで宇宙人に助けられる。ユリアの悲鳴を聞いたチョーマは友人と共に彼女の元に駆けつけ、宇宙人を殴りつけるが、建物から落下した宇宙人は宇宙服を残して姿を消す。

宇宙人が出てくる映画では、どんな宇宙人かという興味がまず先立つ。ユリアは、怪我を負ったであろう宇宙人のことが気になり、1人で様子を見に戻る。するとそこで見つけた宇宙人は、なんと人間そのもの。外見上で人間と見分けがつかない。おまけに治療で人間の血液を輸血までしてしまう。なんだその安易な発想は、と個人的にはトーンダウンしてしまう。平和的な宇宙人の正体は、実は人類と瓜二つ。静かに修理を終わらせて立ち去りたいと願う平和な宇宙人に対し、邪魔をするのは人間。

主人公のユリアの宇宙人に対する憎悪は消え、今度は無事立ち去ることに協力しようとする。それを妨害するのもまた人間。善人の主人公が、平和的な宇宙人を守って宇宙へ変える手助けをするという内容は、形は違えど『E.T』と同様である。すると大体その後の展開は同じようなものになる。宇宙人は人間だし、ストーリーは『E.T』だし、すると最初の期待値からトーンダウンしてしまうのも私のせいではない。

驚くことにこの映画、なんと続編が制作されている。ロシアではきっとヒットしたのだろう。続編を観たいかと問われると、ちょっと返答に困ってしまう。それはまたその時考えるとして、迷うほどあまり面白くなかった(というより期待を裏切られた)と言える。評価の難しいロシア映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2021年08月21日

【アンノウン・ソルジャー】My Cinema File 2448

アンノウン・ソルジャー.jpeg
原題: Tuntematon sotilas
2017年 フィンランド
監督: アク・ロウヒミエス
出演: 
エーロ・アホ:ロッカ
ヨハンネス・ホロパイネン:カリルオト
アク・ヒルビニスミ:ヒエタネン
ハンネス・スオミ:ヴァンハラ
ユッシ・バタネン:コスケラ
パウロ・ベサラ:リューティ

<映画.com>
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これまでにも何度も映画化や映像化がされているフィンランドの古典的名作小説「無名戦士」を映画化し、同国史上最大のヒット作となった戦争映画。第2次世界大戦時、祖国防衛のためソ連軍を相手に戦ったフィンランド兵士たちの姿をリアルに描いた。1939年から40年にかけて行われたソ連との「冬戦争」で、独立は維持したものの、カレリア地方を含む広大な土地を占領されたフィンランドは、翌41年、なおも侵略を計画するソ連に対し、ドイツの力を借りて立ち上がる。これにより冬戦争に続く「継続戦争」が始まり、フィランド軍兵士たちは果敢にソ連軍へ立ち向かっていく。年齢や立場、支える家族など、それぞれ異なる背景を抱えた4人の兵士たちを中心に、戦場で壮絶な任務にあたる兵士目線に徹して戦争を描いた。
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フィンランドはちょっと変わった歴史を持っている。それは第二次世界大戦前後の経緯。1939年のソ連との「冬戦争」で領土を占領されてしまい、その流れもあってナチスドイツと同盟を交わしてソ連に戦争を仕掛ける。つまり第二次世界大戦では枢軸国側であったということ。「敵の敵は友」の理屈であろう。そしてそういう自国の歴史は国民の心に残る。これはそういうフィンランドの歴史物語。

1941年、ソ連との戦争が再び始まり、農業を営むロッカの元に召集令状が届く。冬戦争でソ連に住んでいた土地を奪わたロッカは、家族を残して応召する。ソ連によって設けられた「国境」を越え、かつての故郷に侵攻する。部隊はソ連の防御陣を果敢に破って川を超えて進撃する。ロッカは勇敢に戦うも「死にたくないから、敵を殺しているだけ」という愛国心というより冷めた感情を抱いている。

別の場所ではソ連の戦車隊に対し、歩兵隊員のヒエタネンが奮戦する。匍匐前進で戦車に近寄るとキャタピラーの下に地雷を放り投げてこれを破壊する。上官は彼の勇気を労う。最初の攻勢は有利に進み、1941年10月、フィンランド軍はソ連領ペトロザヴォーツクを制圧する。その町で部隊は束の間の休息を取るが、ロッカはヒエタネンを連れて、現地の女性宅を訪問。ヒエタネンはそのうちの1人と懇意になり、夜中に兵舎を抜け出すと彼女と一夜を過ごす。

1942年1月。歩兵隊は順調に雪原を進む。ロッカはここでもソ連兵の小隊を待ち伏せして全滅させる。その褒美として特別休暇が与えられ、ロッカは自宅へ帰宅し、薪を割り、子どもと遊び、妻と愛し合い、平凡であるが幸せな日を過ごして再び戦地に戻る。当初は、枢軸国側に有利に進む戦況。フィンランドの兵士たちには同盟国のヒトラーから酒が振る舞われる。ただ、戦争に伴う無情もある。ロッカが受け入れた19歳の新兵は、塹壕の監視所で頭を出すなという忠告にも関わらず、頭を出して狙撃されて死んでしまう。

ロッカは、無骨だが兵士としては優秀。しかし、それゆえに年下の士官を軽く見る嫌いがある。規律を重視する軍隊ではご法度である。何度も注意されるが従わず、罰を与えられる。腹立ち紛れに命令を無視して発砲し、ソ連兵と交戦になるが、敵の大尉を捕虜にするという殊勲を挙げる。命令無視はあったものの、この大金星で、再び休暇を与えられる。このロッカの姿がフィンランド男の姿なのだろうかと思ってみる。

しかし、そうした日々も戦況の悪化によって変わっていく。映画の中でもフィンランド軍は歩兵中心の構成だが、ソ連は戦車に戦闘機にと装備ははるかに上回る。歩兵部隊が主役だからというわけでもなく、軍備の差はかなりあったと思う。その差はじわじわと現れ、フィンランド軍は後退を余儀なくされる。将校のカリルオトは、わずかな休暇で故郷に戻って結婚式を挙げるとすぐに前線に戻る。しかし、奮闘むなしく戦死する。

中隊長のコスケラも防戦一方の戦線で、これ以上の戦いは無駄だと感じている。ヒエタネンは少年兵を守ろうとして敵の爆撃で失明し、乗せられた救護車もソ連の攻撃を受けて戦死する。ソ連の反撃にフインランド軍は後退に次ぐ後退となる。やがてかつて意気揚々と越えた国境を逆戻りする。静かに描かれる退却シーン。退却する部隊に激怒する中佐が怒り狂って留まるように命ずるが、ソ連の戦車隊の前に虚しく轢死する。

そのままいけば、フィンランドはソ連に負けて占領され、16番目の共和国になっていたのかもしれない。それを免れたのは、おそらくソ連の主目標はドイツ攻略だったからであろう。9月4日に休戦協定が結ばれる。勝った戦争なら華々しくもなるだろうが、これは負けた戦争。兵士によっては悲喜こもごも。個人的には、淡々と戦い生き残ったロッカの姿が強く印象に残った。

描かれ尽くされた感のある第二次世界大戦であるが、見方によってはいろいろな側面がある。フィンランドという極めて稀な視線に新鮮味を感じさせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2021年08月20日

【ピッチ・ブラック】My Cinema File 2447

ピッチ・ブラック.jpeg

原題: Pitch Black
2000年 アメリカ
監督: デビッド・トゥーヒー
出演: 
ビン・ディーゼル:リディック
ラダ・ミッチェル:キャロリン・フライ
コール・ハウザー:ジョンズ
キース・デビッド:イマム
ルイス・フィッツジェラルド:パリス

<映画.com>
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未知の惑星を舞台に、闇の恐怖を克明に描くSFアクションスリラー。監督・脚本は「アライバル/侵略者」のデヴィッド・トゥーヒー。製作は「スノーホワイト」のトム・エンゲルマン。共同脚本は「新・鳥」のジム&ケン・ウィート兄弟。撮影は「ヴァイラス」のデヴィッド・エグビー。音楽は「タイタンA.E.」のグレーム・レヴェール。美術は「D.N.A.」のグラハム・“グレース”・ウォーカー。クリーチャー・デザインは「バトルフィールド・アース」のパトリック・タトポロス。出演は「プライベート・ライアン」のヴィン・ディーゼル、「ハイ・アート」のラダ・ミッチェル、「ハイロー・カントリー」のコール・ハウザー、「アルマゲドン」のキース・デイヴィッドほか。
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未来の宇宙空間。一隻の宇宙船がいずこかへと向かい航行している。すると突然の流星群なのか小さな岩石が宇宙船を襲う。船内に警報が響き渡る。乗組員と乗客は人口睡眠中であったが、飛び込んできた破片で船長は亡くなってしまう。飛行士のフライと乗組員のオーウェンズが対処するが、宇宙船は未知の惑星の大気圏に突入してコントロール不能となる。フライはなんとか地上に激突するのを回避しようとする。

コントロールできない船体。何とか船体を軽くしようと船尾を切り離すも効果はない。そのままでは大破してしまう。やむなく客室をも切り離そうとするが、オーウェンズが頑なに反対する。自らが生き残るために乗客を切り捨てるのか、あるいは自らの身をも顧みず客室を守るのか。非常に難しいところであるが、この時のやり取りがフライの心に残る。それは映画のラストでのフライの行動につながる。

オーウェンズの声を聞き、何とか客室を切り離さなかったフライ。船体はかろうじて不時着する。しかし、宇宙船はバラバラになり、オーウェンズは船体の一部が体に刺さって息絶える。人の世の無情である。ところで、この宇宙船には犯罪者のリディックが移送のために乗せられている。移送を担当していた賞金稼ぎのジョンズ見張っていたが、不時着の混乱の中でリディックに逃げられてしまう。

不時着はしたものの、そこは未知の惑星。フライの他、生き残った乗客達は次に生き残らなければならない。一行はとりあえず水を探しに行くことにする。この惑星には酸素はあるものの、植物のかけらもなく、あるのは生物の骨。乗客の1人ジークが穴を見つける。覗き込んだ瞬間、何者かに穴の中に引き込まれてしまう。一方、逃げたリディックをジョンズが捕らえる。ジークを殺したのはリディックだと思われるが、リディックはこれを否定し、穴を調べるように言う。

今やリーダー扱いされるフライが、果敢にも穴に入り探索に行く。そこにいたのは何やらどう猛なエイリアン。フライは危うく襲われるところをみんなに助けられる。生き残るには犯罪者の手も必要と、とりあえずリディックを交えて一行は、付近の探索に当たる。やがて宇宙船と施設を発見する。生存者はなく、調べれば22年前にこの惑星を調査していた人達が置いていったものだとわかる。

冒頭、宇宙空間を飛行する宇宙船が登場し、SFムード満載であったが、一行が不時着した惑星は荒涼たる砂漠。不時着後は砂漠の中の物語であり、SFムードはカケラもない。そして穴蔵にいたエイリアンは、夜行性だと判明する。どう猛な相手であるが、日の光の下であれば問題はない。そしてその惑星は日が沈むことはない。しかし、施設に残された装置から、実は日食が迫っていることがわかる。前回の日食は22年前。そして地球の日食と違い、その惑星の日食は果てし無く続く・・・

やがて暗闇に覆われた地上で、乗組員たちとエイリアンとの果てしない死闘が始まる。異彩を放つリディックは、特殊な目をしていて、どうやら夜目が効く様子。その代わり明かりが苦手でサングラスをしている。リディックという名と、この目で思い出したのは、ヴィン・ディーゼルが演じたリディック・シリーズ。『リディック/ギャラクシー・バトル』(My Cinema File 1429)を観たことを思い出したが、これはそのシリーズ第1作である。

何となく以前観た記憶があるような気がするが、定かではない。強烈なインパクトのある映画だと覚えているが、この内容だと何とも言えない。ともあれ、シリーズ第1作と言いながら、主人公はどう見てもフライである。最初の墜落時の行動を反省し、以後は乗客を徹底して守る立場に代わる。その姿勢は勇敢であり、ハラハラドキドキさせられるストーリーもまた良しである。

リディック・シリーズ第1作というよりも、ちょっとしたB級SF映画という趣の映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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