
原題: Den skyldige
2018年 デンマーク
監督: グスタフ・モーラー
出演:
ヤコブ・セーダーグレン:アスガー・ホルム
イェシカ・ディナウエ:イーベン
ヨハン・オルセン:ミカエル
オマール・シャガウィー:ラシッド
<映画.com>
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電話からの声と音だけで誘拐事件を解決するという、シンプルながらも予測不可能な展開で注目され、第34回サンダンス映画祭で観客賞を受賞するなど話題を呼んだデンマーク製の異色サスペンス。過去のある事件をきっかけに警察官として一線を退いたアスガーは、いまは緊急通報指令室のオペレーターとして、交通事故の搬送を遠隔手配するなど、電話越しに小さな事件に応対する日々を送っている。そんなある日、アスガーは、今まさに誘拐されているという女性からの通報を受ける。車の発進音や女性の声、そして犯人の息づかいなど、電話から聞こえるかすかな音だけを頼りに、アスガーは事件に対処しなければならず……。
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主人公は緊急通報指令室のオペレーターのアスガー・ホルム。日本でいう110番(この映画のデンマークでは112番のようである)に電話をすると、この緊急通報司令室にかかってくる。アスガーは電話を受け、それを元に司令室へ連絡したり、現場に急行させる警察車両や警官の配備を促す仕事を淡々とこなしている。
その夜、あと少しで交代という時間に、アスガーは一本の通報を受ける。声の主は怯えた様子の女性。最初はいたずら電話かと思うが、そこは警察官であり、おかしいと感じたアスガーは事件性を察して巧みにイエスかノーで答える質問を繰り返して状況を探る。発信者の情報はモニターに表示され、相手の女性の名前はイーベンだと分かる。そしてどうやら子供を自宅に残したまま白いバンで男に誘拐されたことを突き止める。しかし、そこで電話は切れてしまう。
アスガーはすぐさま通信司令室へ連絡し、電話基地局から割り出されたおおよその場所を頼りに近くにいたパトカーを向かわせるよう伝える。さらにアスガーはイーベンの自宅へ電話をかける。果たして電話に出たのはマチルドという6歳の女の子。マチルドをなだめて話を聞くと、パパがママの髪の毛を掴んでナイフを持ったまま出て行ったと言う。さらにオリバーという弟がいるが、パパから部屋に入ってはいけないと言われているとのこと。「ママを助けて」と泣くマチルドに対し、オリバーと一緒に待つよう伝え電話を切り、警官を向かわせる。
こうなると交代どころではない。アスガーはかつての相棒ラシッドに連絡を取り、どうやら別居しているらしいイーベンの夫の家に向かうよう依頼する。そのラシッドはどうやら酔っている。こうした事件の推移をストーリーは追うが、あちこちとの会話の中から、どうやらアスガーとラシッドは翌日裁判を控えているらしいとわかる。それも何やら偽証などという穏やかならざる話が出てきたりする。そしてそれによって現場復帰が実現するという。
そうこうするうちにイーベンの自宅に着いた警察官からの連絡があり、マチルドは無事保護することができたが、弟のオリバーは惨殺されているとの報告が入る。誘拐事件がさらに殺人事件へと発展する。イーベンを誘拐した夫ミケルが犯人と目される。アスガーは本人に電話して怒りに任せたまま怒鳴るが、電話では切られてしまうとそれまで。アスガーはイーベンへ連絡し、なんとか状況を探り、高速道路を走行しているとわかると車の特徴を聞き出しパトカーを向かわせる。
気がつけば、映画はほぼアスガーの一人芝居。司令室には同僚もいるが、アスガーが電話で相手とやりとりする形でストーリーは進んでいく。そう言えば『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』(My Cinema File 2080)も主人公の独演だったが、こういう映画も面白いと思う(さぞかし制作費も安かろう)。
さて、アスガーは無事イーベンを救えるのだろうかと思っていたら、事件はとんでもない様相を露わにする。さすがにこの展開は予想できなかった。そしてアスガーが控えている裁判の様子も本人の思いもかけない告白で明らかになる。あと少しで交代というタイミングで取った一本の電話。この電話を取らなければアスガーの人生はまったく違ったものになっていたはずである。ストーリーの面白さとともに、そんな想像も映画の面白さを引き立たせてくれる。
思わず「技あり」と言いたくなるデンマーク映画である・・・
評価:★★☆☆☆