
原題: 변호인、英題:The Attorney
2013年 韓国
監督: ヤン・ウソク
出演:
ソン・ガンホ:ソン・ウンソク
イム・シワン:パク・ジヌ
キム・ヨンエ:パク・スネ
クァク・ドウォン:チャ・ドンヨン
ソン・ヨンチャン:裁判官
チョン・ウォンジュン:先輩弁護士
イ・ハンナ:ウソクの妻
シム・ヒソプ:ユン中尉
リュ・スヨン:イ・チャンジュン
イ・ソンミン:イ記者
<映画.com>
********************************************************************************************************
韓国の実力派俳優ソン・ガンホが主演し、韓国で観客動員1100万人を突破する大ヒットを記録した社会派ヒューマンドラマ。青年弁護士時代のノ・ムヒョン元大統領が弁護を担当した重大冤罪事件「プリム事件」をモチーフに、ある事件をきっかけに人権派弁護士へと転身を遂げる男の奮闘を描く。1980年代初頭、軍事政権下の韓国。税務弁護士として多忙な毎日を送っていたソン・ウソクは、若い頃に世話になったクッパ店の息子ジヌが国家保安法違反容疑で逮捕されたことを知る。拘置所へ面会に行ったウソクはジヌの信じられない姿に衝撃を受け、ジヌの弁護を引き受けることにするが……。アイドルグループ「ZE:A」のイム・シワンが、不当逮捕されたジヌ役を好演。
********************************************************************************************************
主人公は、弁護士事のウンソク。独立して小さな事務所を構える。事業を始めるにあたり、商売上手なのだろう不動産登記に目をつけ、専門の弁護士として売り出す。不動産登記は司法書士のマーケットだが、弁護士でもできる。周りの弁護士はそんな「下級の仕事」を引き受けるウンソクに冷ややかな視線を向ける。ところがこれが大当たり。大繁盛となり、司法書士には抗議をうけ、冷ややかな視線を送っていた周りの弁護士たちも追随する。
競争が激しくなると、今度は税務処理に目をつけ地道に稼ぎまくる。初めはネズミの出る家でスタートした妻と子供との生活も海の見える家に引っ越すまで余裕が出る。そこは土木現場で働きながら司法試験の勉強をしていたウンソクが建築に携わった現場。実は10階のその部屋の壁紙を剥がすと、かつて密かに掘った「絶対に諦めるな」と自分を鼓舞するメッセージが残されている。わざわざ相場以上のお金を出してその家を買ったのである。
次にウンソクが妻子を連れて行ったのは、貧乏生活の中で通っていた食堂。気のいい女将スネが経営し、つけのきく店であったが、いよいよ困窮したウンソクはそのつけを踏み倒していた。今や成功したウンソクは、かつてよくしてくれたスネに謝罪をする。涙の再会に観ている方もウルウルする。そしてウンソクは、以後部下のドンホとかつてのようにその店に通うようになる。しかし、そんなウンソクの成功の背後で、軍事政権下の世間ではデモが少しずつ起こり始め、不穏な空気が漂い始める。
そんなある日、釜山で大学に通うスネの息子ジヌが突然行方不明になる。実は、ジヌは公安によって逮捕拘留されていたのである。公安は北朝鮮を支援する共産主義者の取り締まりを強化しており、特に反政府デモの主導となる学生たちがそのターゲットとなっていたのである。仲間とともに読書会を開いていたジヌもその一環で逮捕されていた。スネから相談を受けたウンソクは、スネとともに何とか拘留所でジヌと接見する。ところが、久しぶりに再会したジヌはやせ細り、身体に無数の痣があり、何かに怯えたジヌが錯乱し面会は強制終了させられる。
ジヌが拷問を受けたのは明らかであり、容疑はと言えば理不尽な冤罪。世話になった人の息子というのもあるが、何かがウンソクの心の引き金を引く。それまでは商売第一であったのに、高額な報酬が約束される企業との取引を断り、一度は断ったウンソクの先輩で釜山弁護士組合会長であるキムに掛け合い、この国策裁判の弁護人となることを決意する。しかし、現実的にはこの裁判は、裁判長と検事が前もって話を済ませており、ウンソク以外の弁護士は端から無罪を諦め、刑期を短くすることに主眼を置いている。しかし、ウンソクはそんな弁護方針に反し、真っ向から立ち向かう・・・
映画は、実在の事件を基にしているという。さらに法廷ものとくれば、弱い立場の弁護士側が苦境を跳ね返していくというのが王道ストーリー。これもその王道ストーリーをなぞるが、実話という重みがある。それにしても第二次大戦後の韓国の歴史は波乱に富んでいる。朝鮮戦争後も軍事クーデターで民主主義が根付かない。対共産主義という名目であれば、何でも許される風潮があり、憲法で否定されているはずの拷問がまかり通る。恐ろしいのは、それが正義だと思い込んでいる公安の異常な体質。
せっかく手中にした大きな契約を破断にし、パートナーのドンホにも見切られ、法廷に着くと待ち構えていた群衆から生卵を投げつけられる。そんなウンソクに対し、高校時代の友人で記者をしているユンテクが、黙ってスーツを貸す。それは、一度は商売根性を非難したものの、今や正義のために孤軍奮闘するウンソクに対する支援。ユンテクもまた信念の記事を社内で握りつぶされている。ちょっと胸が熱くなるシーンである。
何事につけ、信念に基づいて行動する男の姿は心に響くものがある。何とモデルになっているのは、盧武鉉元韓国大統領だという。不利な裁判を最後まで戦ったウンソク。実際の盧武鉉は、大統領辞任後に不正献金疑惑で自殺するという最後を遂げるが、そんな事実からは想像もできない。それはともかくとして、ラストではそんなウンソクに賛同した総勢99名の弁護士による意思表明がなされる。実に胸が熱くなる映画である・・・
評価:★★★★☆