
2021年 日本
監督: 佐藤東弥
出演:
綾瀬はるか:伊佐山菜美
西島秀俊:伊佐山勇輝
鈴木浩介:矢部真二
岡田健史:岩尾珠里
前田敦子:三枝礼子
<シネマトゥデイ>
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特殊工作員だった専業主婦が、トラブルを解決していくドラマ「奥様は、取り扱い注意」を映画化。ドラマ最終回のその後が描かれる。正義感の強い妻と実は公安のエリートの夫を、ドラマ版に続き綾瀬はるかと西島秀俊が演じる。ドラマ「家政婦のミタ」などの演出を担当した佐藤東弥がメガホンを取り、『オオカミ少女と黒王子』などのまなべゆきこが脚本を手掛けた。
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常々批判している「安易なドラマの劇場版」の一作であるが、綾瀬はるか主演となると、とりあえず観なければならないという思いにかられる。冒頭、某国の特殊工作員・伊佐山菜美は、中央アジアのとあるアジトに潜入、敵と激しい銃撃戦を繰り広げる。美しい格闘戦で敵を一掃する。影で糸を引いていたのは、菜美を兄の仇と付け狙うロシアの諜報員ドラグノフ。最後に相対峙したドラグノフの左目に傷を負わせると、菜美はヘリコプターで現場を離脱する。
しかし、実はこれは桜井久美が見ていた夢。久美は高校教師の夫・裕司とささやかながらも幸せに暮らす主婦だったが、唯一の問題は過去の記憶を失っているということ。久美の夢はテレビゲームの影響もあるようであり、定期的にカウンセリングに通っている精神科医・三枝礼子からはゲームを止めるよう助言されている。その頃、久美が暮らす珠海市の沖合の海底にはメタンハイドレートが大量に眠っており、街は市長の坂上洋子が主導する採掘賛成派と「珠海の自然を守る会」が主導する反対派に二分されている。近々行われる市長選の争点もこの採掘の賛否を問うものである。
この採掘を巡る動きにはきな臭いものが漂う。メタンハイドレートの研究に携わっていた北原教授は数日前から謎の失踪を遂げ、坂上市長を支援する調査会社社長の横尾義文は、裕司の勤める高校の改修費を寄付するなどして周辺に便宜を図っている。これ対し、裕司の同僚で坂上市長の元夫である矢部真二は反対派に回っているが、「珠海の自然を守る会」の事務所に何者かが侵入し、データを狙って室内が荒らされるという事件が起こっている。こうして物語は背景説明をこなしながら進んでいく。
劇場版の本作は、どうやらテレビドラマの最終回のラストシーンから続いているよう。しかしながら観ていない者にはわからない。ただし、テレビドラマを観ていなくともそれなりに違和感なく観られる。そのラストシーンでどうやら菜美は負傷し、それが元で記憶喪失になっている。安易、と言えば安易な展開であるが、もともと綾瀬はるかの出演作品はコメディ展開のものが多く、安易な展開でも普通に観られてしまう。
菜美の夫である勇輝は上司の池辺章から珠海市沖のメタンハイドレートの調査を行うグローバルマネーホールディングス社の不自然な金の流れを調査するよう命じられ、高校教師の“桜井裕司”に扮して珠海市で潜入調査をしている。それに伴い、菜美も“桜井久美”として同行している(もちろん、記憶を失った菜美は自分を高校教師を夫に持つ久美という名の主婦だと思っている)。池辺は勇輝に対し、菜美の記憶が戻っても公安の協力者にならなければ自らの手で始末するよう命じている。どういう組織なんだと劇場版しか観ていない者としては思ってしまう。
そしてグローバルマネー社の社長・浅沼信雄は、公安の読み通りロシアにメタンハイドレートの調査費を横流ししており、その陰にはロシアの諜報員ドラグノフがいる。採掘賛成派はそんな裏の意図を隠し、反対派をチンピラたちを使ってあの手この手で嫌がらせを行なっている。そんな嫌がらせの手は、久美(菜美)にも及び、トラックに轢かれそうになったりする。そして久美(菜美)は、チンピラに襲われている知人を助けようとして、殴られた際に記憶を取り戻す・・・
世界的には、女優のアクション映画が幅広く作られている。邦画でも篠原涼子が頑張ってみたりしているが(『アンフェア』My Cinema File 357)、遠く及ばない。ついに綾瀬はるかの出番となったようであるが、あまり女性アクション映画という感じではない。まぁ、それなりに格闘アクションがあって観られるレベルではあるが、綾瀬はるかも守備範囲が広いなと改めて思う。
あまり肩肘張って観る映画ではないが、リラックスして綾瀬はるかを目当てに観るならいいかもしれない。テレビドラマ版も観てみたいと改めて思う。西島秀俊もいい味を出しているし、安易なテレビドラマの劇場版ではあるが、個人的には好感を持って観られた映画である・・・
評価:★★☆☆☆