2022年01月29日

【ドクター・スリープ】My Cinema File 2509

ドクター・スリープ.jpeg

原題: Doctor Sleep
2019年 アメリカ
監督: マイク・フラナガン
出演: 
ユアン・マクレガー:ダニー・トランス
レベッカ・ファーガソン:ローズ・ザ・ハット
カイリー・カラン:アブラ・ストーン
カール・ランブリー:ディック・ハロラン
ザーン・マクラーノン:クロウ・ダディ
クリフ・カーティス:ビリー・フリーマン

<映画.com>
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スタンリー・キューブリック監督がスティーブン・キングの小説を原作に描いた傑作ホラー『シャイニング』の40年後を描いた続編。雪山のホテルでの惨劇を生き残り大人へと成長したダニーを主人公に、新たな恐怖を描く。40年前、狂った父親に殺されかけるという壮絶な体験を生き延びたダニーは、トラウマを抱え、大人になったいまも人を避けるように孤独に生きていた。そんな彼の周囲で児童ばかりを狙った不可解な連続殺人事件が発生し、あわせて不思議な力をもった謎の少女アブラが現れる。その力で事件を目撃してしまったというアブラとともに、ダニーは事件を追うが、その中で40年前の惨劇が起きたホテルへとたどり着く。大人になったダニーを演じるのはユアン・マクレガー。監督・脚本は「オキュラス 怨霊鏡」「ソムニア 悪夢の少年」やキング原作のNetflix映画「ジェラルドのゲーム」といった作品を手がけてきたマイク・フラナガン。
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『シャイニング』の40年後を描いた続編ということで、興味を持って観た作品。事前に前作を観た上での鑑賞である。時に1980年のフロリダ州。湖畔のキャンプ場に遊びに来ている一家。その家の少女が1人でいるところにローズという女性が現れる。警戒感を持たない少女であるが、謎の集団が現れて少女を捕らえる。

同じころ。前作で母親と共に生き残ったダニー少年は、かつての悪夢のような体験の記憶に悩まされる日々を送っている。そんなダニーを導くのは、同じ能力“シャイニング”を持つディック・ハロラン。ディックはすでに前作の事件で殺されてしまったが、ダニーの前に姿を現している。ディックはダニーを怯えさせる悪霊対策として、頭の中に“箱”を置き、そこに悪霊を閉じ込めるのだと教える。ダニーはバスルームに出る老婆の幽霊で試して成功する。

そして40年。ダニーは成人し、ダンと名乗っている。アルコールに溺れ自堕落な生活を送っているが、そんなダニーの前にディックが現れ、正しい行いをするように諭す。一方、ロングアイランドの映画館では、他人を言葉で操る能力を持つ少女アンディが助平心を出していた親父を言葉で眠らせ財布をすり取る。それを見ていた謎の女ローズとその仲間クロウが近寄り、アンディを拉致する。そして自分たちの仲間になれば若さを保てると勧誘し、アンディは謎の儀式を受ける。

ダン(ダニー)は、バスで住み慣れた街を離れ、見知らぬ街に降り立つ。バス停近くの公園で偶然出会った男ビリーは親切な男で、住む家を紹介し、当座の家賃を立て替えてくれた上に仕事まで斡旋してくれる。その後ダンはグループカウンセリングで知り合った医師ダルトンに誘われてホスピスでも働くことになる。そこで“シャイニング”の能力を活かし、死を間近にした患者を心穏やかに息を引き取らせる。それが評判を呼び、いつの間にか“ドクター・スリープ”と呼ばれるようになる。

ある晩、自宅に戻ったダンは、黒板になっている壁に“HELLO”と書かれているのを見つけ、“Hi”と返事を書き込む。書き込んだのもダンの返事に答えたのも同じ“シャイニング”の力をもつ少女アブラ。そして不気味に活動するローズとその仲間たち。ローズたちは、少年少女たちをさらってきては、生気を吸い取っている。それでなんと不老不死を実現している。そして食事のために、ある野球少年を拉致し、ナイフで傷つけて口から出てくる生気を皆で吸い込む。そしてその様子を遠く離れた場所に住むアブラが感知し、少年とともに悲鳴を上げる。それはダンにも伝わり、ダンの部屋の黒板には“MURDER”の文字が浮かぶ・・・

続編と言っても、単に主人公が前作の生き残りの少年というだけで、ストーリーもまったくの別物。人間の生気を吸って不老不死を身を維持する謎の集団と、“シャイニング”の強力な能力のある少女アブラを巡っての戦いが描かれていき、続編であることは所々に出てくる前作のシーンで無理やりこじつけられている感がある。前作でラストに残された古い写真にジャックが写っていた理由が明らかになるわけではなく、実に続編とは名ばかりの作品である。

まぁ、それでもそこそこ楽しめるところはあるので良しとしたいところ。主演はユアン・マクレガーであり、それだけでも観る価値はある。おそらく、名作“シャイニング”の続編をつくろうと考えた人たちがいて、アイディアは良かったが、前作でほぼ完結しているストーリーに無理やり新たなストーリーをこじつけたからこうなったのであろうと背景を想像してしまう。前作から時間が経ち過ぎているし、私のように前作を鑑賞して「予習」しておかないと続編としての連続性すらわからないかもしれない。

物語は、ローズらの謎の不老不死集団とアブラを守るダンとの戦いとして進んでいく。懐かしのオーバールックホテルが無理矢理のこじつけで登場するが、そこまでして続編ぶらなくてもいいようにしか思えない。とりあえずストーリーは楽しめるが、バーカウンターで父親そっくりのバーテンダーを登場させたりという涙ぐましい努力は買ってもいいかもしれない。あまり続編ということを意識せずに楽しみたい映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2022年01月28日

【ザ・ファブル 殺さない殺し屋】My Cinema File 2508

ザ・ファブル 殺さない殺し屋.jpeg

2021年 日本
監督: 江口カン
原作: 南勝久
出演: 
岡田准一:ファブル/佐藤アキラ
木村文乃:佐藤ヨウコ
平手友梨奈:佐羽ヒナコ
安藤政信:鈴木
黒瀬純:井崎
好井まさお:貝沼
橋本マナミ:アイ
宮川大輔:ジャッカル富岡
山本美月:ミサキ
佐藤二朗:田高田
井之脇海:黒塩
安田顕:海老原
佐藤浩市:ボス
堤真一:宇津帆

<映画.com>
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南勝久の人気コミックを岡田准一主演で実写映画化した『ザ・ファブル』のシリーズ第2作。裏社会で誰もが恐れる伝説の殺し屋ファブル。1年間誰も殺さず普通に暮らすようボスから命じられた彼は、素性を隠して佐藤アキラという偽名を使い、相棒ヨウコと兄妹を装って一般人として暮らしている。一見平和に見えるこの街では、表向きはNPO団体「子供たちを危険から守る会」代表だが裏では緻密な計画で若者から金を巻き上げ殺害する危険な男・宇津帆が暗躍していた。かつてファブルに弟を殺された宇津帆は、凄腕の殺し屋・鈴木とともに、復讐を果たすべく動き出す。一方アキラは、過去にファブルが救えなかった車椅子の少女ヒナコと再会するが……。岡田准一、木村文乃、佐藤浩市ら前作からのキャストに加え、宇津帆役の堤真一、ヒナコ役の平手友梨奈、殺し屋・鈴木役の安藤政信が新たに参加。前作に続き江口カンが監督を務めた。
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冒頭、風態の良からぬ男たちが次々と殺されていく。殺されたのは、少女たちに売春をさせていた組織の者たち。最後は立体駐車場にいた金髪男。仲間たちの死を知り、慌てて車のエンジンをかける。車の中には佐羽ヒナコという少女が乗せられている。そこに現れたのは目出し帽を被った伝説の殺し屋“ファブル”。泣いているヒナコを一瞥すると、金髪男を一瞬で殺す。しかし、急発進した車は壁を突き破って地面へと落下する。ファブルはヒナコを救い出すとその場から姿を消す。相変わらずのスピーディな動きで掴みはバッチリである。

それから4年後。「子供達を危険から守るNPO団体」代表の宇津帆は、表向きは子供たちを守る活動を展開する一方、裏では凄腕の殺し屋鈴木と共に金持ちの親を持つすねかじりの若者から大金を巻き上げては殺害し、失踪したかのように見せかけている。そこになぜか4年前の事件で車椅子生活となったヒナコが宇津帆の表の顔の手伝いをしている。宇津帆は講演会で、ヒナコは5歳の時に遊具から転落して下半身不随になったと説明している。

一方、ファブルは前作の続きで、ボスから1年間誰も殺さず一般人として普通に暮らせと命じられて“佐藤アキラ”として相棒のヨウコと兄妹を装って暮らしている。デザイン会社「オクトパス」でアルバイトをしているのも前作同様である。その頃、宇津帆のNPO団体に元「真黒カンパニー」社員の井崎が加入する。ここで宇津帆は冒頭で4年前にファブルに仲間を殺された組織の生き残りであり、立体駐車場で殺された弟の仇を打つべくファブルの情報を得るために井崎を雇ったのである。

ある日、ヒナコは公園へ行き、鉄棒で立ち上がろうとする。詳しくは語られないが、リハビリのつもりなのだろう。そこにたまたま通りかかったのは佐藤アキラ。ヒナコがバランスを崩して倒れても手を貸そうとしない。普通は駆け寄って助け起こすところだうが、「自力で頑張っているのを手伝うのはいかがなものかと思った」と語る。それはその通りだろう。こういうところはその通り。さすが伝説の殺し屋は本質をついていると感心する。そして佐藤アキラは、ヒナコに「歩けるようになる」と告げて去っていく。

日常生活ではぼうっとしている佐藤アキラだが、ファブルは驚異的な戦闘能力がある。今回も団地を舞台にした襲いくる敵との戦闘が一つの目玉である。ボスの命令で殺しはできないので、絶体絶命のような状況でも冷静に敵を「殺さずに」倒していく。加えて今回はヨウコの能力も披露される。驚異的な記憶力に加え、ファブルを狙って家に押し入ってきた鈴木から一瞬にして銃を奪い取って手玉に取る。プライドをガタガタにされた鈴木がなんとも言えない。

オクトパスでの平和な日常と並行してミサキたちに忍び寄る宇津帆たち。あくまでもファブルを狙う宇津帆。そしてヒナコの存在。正直言って原作漫画を読んでいたのでストーリーの説明不足点を自分で補って観ることができた。ゆえにそれほど違和感はなかったが、そうでない人にはどう映ったのだろうかとふと思う。アクションシーン以外のドラマの部分もこの物語の魅力であると思う。

そうした部分を差し引いたとしても、このファブルの物語は面白いと思う。原作漫画ではさまざまなサイドストーリーもあって、その部分もまた面白い。映画では時間の制約があって描けなかったのだろうが、更なる続編を期待したくなる。超人的な戦闘アクションとともに、次もと期待したくなる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2022年01月22日

【恋の罪】My Cinema File 2507

恋の罪.jpeg
 
2011年 日本
監督: 園子温
出演: 
水野美紀:吉田和子
冨樫真:尾沢美津子
神楽坂恵:菊池いずみ
児嶋一哉:正二
二階堂智:吉田正男
小林竜樹:カオル
五辻真吾:木村一男
深水元基:マティーニ真木
内田慈:土居エリ
町田マリー:マリー
岩松了:スーパーの店長
大方斐紗子:尾沢志津
津田寛治:菊池由紀夫

<映画.com>
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『愛のむきだし』 『冷たい熱帯魚』の鬼才・園子温監督が、水野美紀、冨樫真、神楽坂恵を主演に迎え、実在の事件をもとに描く愛の物語。21世紀直前に起こった、東京・渋谷区円山町のラブホテル街で1人の女性が死亡した事件を軸に、過酷な仕事と日常の間でバランスを保つため愛人を作り葛藤する刑事、昼は大学で教え子に、夜は街で体を売る大学助教授、ささいなことから道を踏み外す平凡な主婦の3人の女の生きざまを描く。
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物語はラブホテルで始まる。シャワールームで絡みあう2人。そこにかかってきた電話に慌てて出る女。全裸のへアヌードにドキリとするが、それが水野美紀と知ってさらに驚く。なぜわざわざそんな時に電話を取るのかと訝しく思うが、それは水野美紀が刑事の吉田和子だから。殺人事件発生を知らせるその電話に彼女は雨の中、渋谷区円山町のラブホテル街に向かう。

事件現場は古びたアパートの一室。切断された死体は、二体のマネキンに接合されるという異常なもの。そして、アパートの壁には赤く「城」という文字が残されている。一方、小説家菊池由紀夫の妻であるいずみは神経質な夫の世話に明け暮れる専業主婦。玄関のスリッパの位置までうるさい様子は、どこか異常を感じる。

生活には困らないものの、いずみは時間を持て余し、外に働きに出ることにする。そして試食販売の仕事につくが、そこである女からモデルをやらないかと誘われる。怪しげな雰囲気に気がつかないのか、いずみは軽い気持ちからモデルを始めるが、やがてAVの世界に足を踏み入れる。そこで快楽を知り、解放的になった彼女は別人のようになっていく。

ある日、いずみは渋谷の街で若い男カオルと出会う。軽い気持ちでラブホテルに入ったいずみだが、カオルから拘束され屈辱的な行為を強いられる。ようやく解放されホテルを出たところで、いずみは尾沢美津子というミステリアスな雰囲気の女と出会い惹かれていく。円山町のアパートの殺人事件は、身元の特定が難航する。事件を追う和子は、温かい家族に囲まれながらも夫の後輩と不倫関係を続けている。和子もまた刺激的なSEXの快楽から抜け出せずにいる。

尾沢美津子は大学の助教授。しかし、夜は街に立って身体を売る破滅的な生活をしている。貞淑な主婦いずみも夜の世界へと足を踏み込む。刑事の和子も真面目な仕事振りの影で不倫相手との官能的な関係にのめり込んでいる。登場人物の女3人はいずれも愛のないセックスに溺れている。

美津子の実家は異常。母親は娘が売春をしていることを知っており、娘の美津子を下品で汚らわしいと本人に言い放つ。さらにそれは、死んだ父親から受け継いだものだと罵る。それを平然と聞き流す美津子。こうした異常さは園子音監督作品にすべて共通している。そして美津子の紹介で魔女っ子クラブというデリヘル事務所に所属することになったいずみは、カオルとともにラブホテルに向かうが、そこで先に入っていた美津子が相手をしていた客の男が自分の夫であることを知る。

倒錯した異常な世界。どこか壊れた世界観は園子音監督作品の特徴でもある。登場する女性たちはみな全裸を披露してくれるが、水野美紀以外はあまりありがたみを感じない。倒錯的ではあるものの、それは誰もが心の隅に隠し持っているものであるかもしれない。ゴミ収集車をどこまでも追い掛けていく主婦の話がどうも象徴的に心に残る。園子温監督作品は、どこか他の作品とは異なる独特の泥沼に落ちていくような感覚にさせられるところがある。この作品もまた然り。

表面的に事件は解決するが、映画はまたその続きの余韻を残す。人間にはわかっていても落ちていく沼がある。水野美紀の最後の表情がなんとも言えない映画である・・・


評価:★★★☆☆








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2022年01月21日

【るろうに剣心 最終章 The Beginning】My Cinema File 2506

るろうに剣心 最終章 The Beginning.jpeg
 
2021年 日本
監督: 大友啓史
原作:和月伸宏
出演: 
佐藤健:緋村剣心
有村架純:雪代巴
高橋一生:桂小五郎
村上虹郎:沖田総司
安藤政信:高杉晋作
北村一輝:辰巳
江口洋介:斎藤一

<シネマトゥデイ>
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和月伸宏の人気コミックを監督の大友啓史と主演の佐藤健で映画化したシリーズの最終章となる2部作の第2弾で、主人公・緋村剣心の原点を描いたアクション大作。幕末を舞台に倒幕派の影の暗殺者として名をはせた緋村抜刀斎こと剣心の左頬に刻まれた十字傷の謎、不殺の誓いを立てた理由などが明かされる。佐藤をはじめ、妻の雪代巴を有村架純、桂小五郎を高橋一生が演じるほか、村上虹郎、安藤政信、北村一輝、江口洋介などが出演する。
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『るろうに剣心 最終章The Finnal』(My Cinema File 2488)に続くシリーズ最後を飾る二部作の最終章である。

「The Finnal」の後になぜ「The Beginning」なのか。観る前に疑問に思っていたが、それはすぐに解消される。物語は、幕末の1864年に始まる。すなわち、『るろうに剣心』の前の時代である。世は幕府を擁護する佐幕派と、幕府を倒して新時代を築こうとする倒幕派に二分して激しい抗争を繰り広げている。そんなある日の京都。佐幕派である対馬藩邸に緋村剣心が捕らえられている。剣心は後ろ手に縛られているにもかかわらず、隙をついて藩士の1人を襲うと、刀を咥えて次々と藩士たちを斬り倒す。そして縄を切るとあっという間に藩士たちを皆殺しにしてしまう。

その直後、藩邸に新選組が駆け付ける。その中には、のちに再三遭遇する斎藤一もいる。のちの展開を知っているとこういうシーン一つにも面白みを感じる。そして新選組は、この犯行は“人斬り抜刀斎”によるものだと確信する。まだ、剣心が「不殺の誓い」を立てる前のことである。その剣心は、次に幕府側の要人の暗殺を請け負う。剣心からすれば容易に目標とその従者を斬り倒すが、ただ1人の従者・清里明良だけが何度も斬られながらも立ち向かってくる。そしてとうとう剣心の頬に一太刀傷をつけると息絶える。

剣心はその1年前、長州藩の高杉晋作が結成した「奇兵隊」の入隊志願者募集に応じ、その腕を認められて入隊を許されている。以来、剣心は桂小五郎の下で影の暗殺者として活動している。その日、剣心は起居している小萩屋近くの居酒屋で独りの女と背中合わせの席に座る。場違いな美女に店内にいた二人組の男が女に絡み始めるが、剣心が助ける。女の名は雪代巴。こうして剣心と巴は運命の出会いを果たす。観る者はもちろん、その後の展開を知っている。

時は激動の渦の中で進んでいく。長州藩の不穏な動きを察知した新選組が池田屋を襲撃する池田屋事件が起こる。知らせを受けて駆けつける途中、剣心は沖田総司と遭遇し刀を抜き合う。さすがに剣の達人同士の激しい剣劇。ほぼ互角の戦いであるが、沖田が途中で吐血して中断する。そこへ駆けつけたのは新選組隊士の斎藤一らだが、長州勢の加勢もあってその場は終わる。なかなか魅せてくれる展開である。

池田屋事件で大きな打撃を受けた長州藩は、禁門の変を引き起こすも敗れてしまい、京の町は新選組の影響力がより一層強くなっていく。桂は時が来るまでは身を隠すことにし、剣心に町の外れの山里の農村に身を潜めるよう命じる。そして桂は巴に剣心の妻として帯同してくれるよう頼む。こうして剣心と巴は京を出て農家での2人だけの暮らしに入る。剣心は畑で鍬を振るい、野菜を育て、巴と共に静かで穏やかな日々を過ごす。これを機に剣心は巴に心を許すようになる・・・

幸せというものが何かわかりかけてきた剣心だが、実は密かに剣心の命を狙う計画が着々と進んでいる。シリーズを通して見せる剣心の剣劇は健在。前作で強敵となって立ちはだかる巴の弟・縁もここではまだ巴を慕うだけの弟。前作でも描かれた巴の悲劇へと物語は向かう。結末がわかっている物語であるが、どうしてそうなったのか、そこにはどんな物語があったのか。その結末に向けて静かに物語は進む。そしてその時がくる・・・

なぜ、最後の最後に物語の前日譚とも言うべきこの「Beginning」が来たのか。観終わってみれば、その絶妙な構成に唸らされるばかりである。「スター・ウォーズ」シリーズもそうであったが、このシリーズも一作一作で良い悪いを評価するものではなく、シリーズを通して評価すべきものだとわかる。そしてこのシリーズはなかなかのものである。なぜ剣心は不殺(殺さず)の誓いなどを立てたのか、逆刃刀のエピソードは出てこなかったが、単なる博愛主義ではないのだとわかる。

巴とのこの関係を改めて見せられると、これに続くシリーズ前半での薫との関係も違う色が見えてくる。激しい剣劇があって、心を揺さぶられるドラマがある。観終わって深く唸らされるシリーズ最終作品である・・・


評価:★★★★☆


『るろうに剣心』(My Cinema File 1179)
『るろうに剣心/京都大火編』(My Cinema File 1401)
『るろうに剣心/伝説の最後編』(My Cinema File 1414)
『るろうに剣心 最終章The Finnal』(My Cinema File 2488)






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2022年01月16日

【東京公園】My Cinema File 2505

東京公園.jpeg


2011年 日本
監督: 青山真治
原作
小路幸也
出演: 
三浦春馬志田光司三浦春馬
榮倉奈々富永美優榮倉奈々
小西真奈美志田美咲小西真奈美
井川遥初島百合香/志田杏子井川遥
高橋洋初島隆史高橋洋
染谷将太高井ヒロ染谷将太
長野里美志田裕子長野里美
小林隆志田実小林隆
宇梶剛士原木健一宇梶剛士

<映画.com>
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青山真治監督の『サッドヴァケイション』以来4年ぶりとなる新作。「東京バンドワゴン」でブレイクした小路幸也の小説が原作で、主演の三浦春馬はカメラマン志望の大学生・光司を演じる。公園で家族写真を撮り続ける光司のもとへ、「彼女を尾行して写真を撮ってほしい」という依頼が舞い込んだことで、ゆるやかな距離でつながっていた女性たちとのあいまいな関係が微妙に変化していく。人間関係の間で揺れ動く繊細な役どころで新境地を開拓した三浦とともに物語を彩るのは、榮倉奈々、小西真奈美、井川遥。
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主人公の志田光司は、大学生。写真家になることを夢見て毎日公園へ通っては、そこに集う人々を写真に収めている。ある日、ベビーカーを押す美しい女性を撮影すると、光司は見知らぬ男・初島隆史に呼び止められる。怪しい人物に疑われた光司は、初島にこれまで撮りためた写真と名刺を見せ、誤解を解く。ところがその日の夜、光司は初島から連絡を受け、思わぬ依頼を受ける。それは、ベビーカーを押していた女性は彼の妻・百合香と娘であり、公園に遊びに行った時に密かに写真を撮って送ってほしいというもの。おかしな依頼に戸惑う光司だが、報酬ももらえることからこれを引き受ける。

撮影した写真をデータで送ってくれと頼まれたことから、光司は同居している幼馴染の高井ヒロにデジカメを借りる。夜、光司はバイト先のバーへ向かう。バーには9歳離れた姉の美咲がよく顔を出す。そこには小学校時代からの知り合いである富永美優もやってくる。毎晩のように光司がバイトしているバーにやって来る美優は、ヒロの元恋人である。そうして光司を取り巻く登場人物が紹介され、物語は進んでいく。

翌日、初島からメールが来て、百合香が散歩に出かける公園の名前を知らされる。海の見える公園(海浜公園か)についた光司は、初島から依頼された通りに百合香の写真をデジカメで撮影して初島にデータを送る。歯科医をしている初島には、妻百合香からその日はどこの公園に行くという連絡が入り、それを光司に伝えているのである。なぜ、初島が光司に撮影を依頼したのかはわからない。ただ、落ち着きのない初島の様子から、妻の浮気を疑っているのかという気もする。

一方、自宅で過ごす光司と奇妙な同居人ヒロであるが、その様子に何か違和感を感じる。話の途中で突然あらぬ方向から顔を出し、しかもなんとなく表情が青白い。ひょっとして、と思っていたら、案の定、ヒロは既に亡くなっていて、光司が話しているのはヒロの幽霊であるとわかる。ことあるごとに光司のところにやってくる美優は、付き合っている時にヒロが亡くなっており、意に反して別れたのだとわかる。美優には当然ながらヒロは見えない。なぜ光司にだけ見えて、しかも光司の家にヒロがいるのかはわからない。

光司は初島から連絡があると、指定された公園へと足を運び、百合香と娘の様子を写真に収める。そんな時、光司のもとに実家の母親が倒れたとの連絡が入る。光司はすぐに姉の美咲と共に見舞いに帰る。久しぶりに母親を見舞う光司と美咲。実は両親は子連れ同士の再婚で、光司と美咲は血が繋がっていない。そして美咲は密かに弟の光司に恋心を抱いており、それは光司も同じ。なんとも言えない2人の関係である。

そんな静かな日常を物語は描いていく。初島がなぜ妻の写真を撮らせているのか。そして百合香が毎日のように違う公園を訪れるのに何か理由があるように思えてくる。光司と美優の関係も微妙である。美咲と光司の関係にも変化が訪れる。登場人物たちを静かに描いていく物語は、静かな転換を迎え、そして静かに終わる。日本映画らしい味わいのある静かな映画。

主演は、若くして亡くなった三浦春馬。どんな事情があったのかは知らないが、亡くなったのは残念である。それぞれの登場人物たちが、少しずつ自分の気持ちに踏ん切りをつけ、再出発をしていく。しみじみとした余韻の残る映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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