2022年02月26日

【ハリエット】My Cinema File 2519

ハリエット.jpeg

原題: Harriet
2019年 アメリカ
監督: ケイシー・レモンズ
出演: 
シンシア・エリボ:ハリエット・タブマン(ミンティ)
レスリー・オドム・Jr. :ウィリアム・スティル
ジョー・アルウィン:ギデオン・ブローダス
ジャネール・モネイ:マリー・ブチャノン
ボンディ・カーティス=ホール
マイケル・マランド:エドワード・ブローダス
ザカリー・モモー:ジョン・タブマン

<映画.com>
********************************************************************************************************
アフリカ系アメリカ人女性として初めて新20ドル紙幣に採用された奴隷解放運動家ハリエット・タブマンの激動の人生を映画化。「プレイヤー 死の祈り」の女性監督ケイシー・レモンズがメガホンをとり、「ホテル・エルロワイヤル」など映画でも活躍するミュージカル女優シンシア・エリボが主演を務め、主題歌も担当。第92回アカデミー賞では主演女優賞と主題歌賞にノミネートされた。1849年、メリーランド州。ブローダス家が所有する農園の奴隷として幼い頃から過酷な生活を強いられてきたミンティは、いつか自由の身となって家族と一緒に人間らしい生活を送ることを願っていた。ある日、奴隷主エドワードが急死し、借金の返済に迫られたブローダス家はミンティを売ることに。家族との永遠の別れを察知したミンティは脱走を決意し、奴隷制が廃止されたペンシルベニア州を目指して旅立つが……。共演は「女王陛下のお気に入り」のジョー・アルウィン、『ドリーム』のジャネール・モネイ。
********************************************************************************************************

これまでも黒人奴隷の苦難を描いた作品は多々観てきたが、これはアフリカ系アメリカ人女性として初めて新20ドル紙幣に採用された奴隷解放運動家ハリエット・タブマンを描いた実話ということで興味深い作品である。

時に1840年代のメリーランド州のブローダス農場。黒人奴隷のミンティは、奴隷から解放された自由黒人のジョン・タブマンと結婚している。ジョンとミンティは、それぞれ別々の農場で働いている。同じ農場の黒人同士で結婚するものかと思っていたので、ちょっと意外である。冒頭で、ミンティはジョンと共に農場のオーナーで奴隷の所有者エドワード・ブローダスに自由黒人になれるという約束をした手紙を見せ、その履行をせまる。しかし、エドワードは無情にもその手紙を破り捨てる。

約束を守るどころかブローダス家の跡取りギデオンはミンティを殴った上、なんとミンティを売りに出す。かつてミンティは、実の姉を売られてしまったという過去を持ち、当時のそれは永遠の別れに等しいことでもあり、遂にブローダス農園からの逃走を決意する。ミンティはジョンと再会を約束して別れ、父ベンを訪ねる。ミンティの決意を知った父は、ミンティに教会を訪れることを勧める。そしてミンティは、そこで牧師から逃走のアドバイスを受ける。

翌朝、ギデオン達はミンティがいなくなったのに気づき捜索を開始する。犬を使った捜索で、ギデオンはたちまち森をさまようミンティを橋の上に追い詰める。逃げ場を失ったミンティは、「自由よりも死を選ぶ」とギデオンに覚悟を告げると、橋の上から流れの激しい川に飛び込む。なんとか川岸にたどり着いたミンティは、馬車に隠れて乗り込んで移動する。白人もすべてが同じではなく、黒人に同情的な白人もいる。馬車のオーナーは、ミンティに気付きながらも逃亡を見逃す。こうしてミンティは、牧師に教えられたフィラデルフィアの黒人奴隷解放組織を目指す。

なんとかフィラデルフィアにたどり着いたミンティは、黒人奴隷解放組織を探しあて、リーダーのウィリアム・スティルに会う。ウィリアムはミンティの100マイルに及ぶ逃走に驚き、ミンティに新しい生活を始めるにあたり、新しい名前を名乗ることを勧める。ミンティは母の名前と夫の姓から「ハリエット・タブマン」と決める。そしてハリエットは、自由黒人のマリー・ブキャナンを紹介され、マリーの家で暮らすことになる。1年後、生活が落ち着いたハリエットは、家族を解放することを決意する。

せっかく逃亡に成功したのに、再び戻るのは勇気のいることだと思う。見つかって捕まれば、足の腱を切られて逃げられないようにされるかもしれない。そうなれば一生奴隷生活から逃げられない。しかし、ハリエットの決意は変わらない。そしてなんとかブローダス農園に着いたハリエットは、ジョンと再会する。ところが、ジョンはすでに再婚して子供が生まれるという。危険を冒して戻ったハリエットにとっては重大な裏切り行為に思われるが、ハリエットが死んだと聞かされたジョンにしてみれば無理もないかもしれない。

やむなくハリエットは父ベンに会う。ハリエットは父ベンに逃亡を勧めるが、ハリエットが死んだと聞かされて精神を病んだ母を連れて行くのは難しいと判断し、残ることする。そして代わりにブローダス農場の5人の奴隷をフィラデルフィアに連れて行くことにする。農場から5人もの奴隷が逃亡したという知らせにパニックになったギデオンとエリザは、奴隷ハンターを雇ってハリエットら逃亡奴隷の追跡を始めるが、ハリエットたち一行は逃げ切ってフィラデルフィアのウィリアムの事務所に戻る。ウィリアムはこの快挙に驚きハリエットを賞賛する。

この実績を評価されたハリエットは、奴隷を助ける組織「地下鉄道」に紹介され、その一員として以後大勢の奴隷の逃亡を助け、「モーゼ」というニックネームで知られるようになる。こうした活躍が新20ドル札に採用されることになったのだろう。家族がある日突然、オーナーの都合で売られ、離れ離れになる。それが今生の別れになったりする理不尽。改めて奴隷制の酷さに愕然とする。奴隷制を描いた映画はどれも同じ理不尽さを描くが、現代でも残る差別意識は、白人の醜さを表す。

一方、ギデオンを代表とする奴隷の所有者たちにとっては、奴隷は家畜と同じ感覚だったのだろう。ひどいことではあるが、それが当時の価値観であればわからなくもない。農場経営も楽ではなく、奴隷の逃亡は死活問題であれば青くなるのも当然。奴隷の数がステイタスにもなっていたり、当時の白人の価値観も興味深いものがある。そしてハリエットはその後も次々と奴隷たちを逃亡させる。その活躍は胸に心地よい。

ハリエットは90歳を過ぎるまで生きたという。実話の持つ説得力も高く、改めてアメリカの暗部を知ることができ、エンターテイメントとしても歴史の記録としても面白い映画である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 実話ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年02月25日

【荒野のガンマン】My Cinema File 2518

荒野のガンマン.jpeg


原題: The Dealy Companions
1961年 アメリカ
監督: サム・ペキンパー
出演: 
モーリン・オハラ:キット
ブライアン・キース:イエローレッグ
スティーブ・コクラン:ビリー
チル・ウィルス:ターク
ストローザー・マーティン:パーソン
ウィル・ライト:ドクター
ジェームズ・オハラ:カル

<映画.com>
********************************************************************************************************
アメリカ各地の興行者が集まってプロデュースした西部劇の異色作で、製作はチャールズ・B・フィッツ・シモンズ、脚本はアーロン・シドニー・フライシュマンが自作の小説から脚色したもの。演出は興行会からおされたサム・ペキンパー、撮影は「アラモ」のウィリアム・H・クローシア、音楽はピーター・ツィンナーが担当。出演は「罠にかかったパパとママ」のモーリン・オハラ、ブライアン・キース、スティーヴ・コクラン、チル・ウィルスなど。
********************************************************************************************************

「荒野の」とタイトルにつく西部劇は、かつて一世を風靡した全盛時代の西部劇を彷彿とさせる。そして監督が『ゲッタウェイ』(My Cinema File 96)『戦争のはらわた』(My Cinema File 2426)のサム・ペキンパー、そしてAmazon Primeの評価が高いとなれば、観ないわけにはいかない。そうして期待して観た映画ではあるが、結果的には残念極まりない映画であった。

時は、南北戦争が終わってから数年後。元北軍兵のイエローレッグは、とある町にやってくる。そして酒場でイカサマを働いたせいで首をくくられそうになっていた男を見つける。さりげなくその手を確認したイエローレッグは、その男タークを助ける。タークはビリーという男と行動を共にしており、イエローレッグは3人で銀行強盗を働く事を持ちかける。いかにも金に汚い感じのタークは、ビリーが乗り気になったこともあってこの話に乗ることにする。

目的の銀行がある町に着いた3人は、真っ先に酒場に行く。西部劇と言えば、酒場は欠かせないステージである。ところがこの酒場は、時に教会も兼ねており、3人が到着した時はまさにミサが行われるため、酒の提供が止まってしまう(ヌードの絵も隠されてしまう)。そして牧師の下、ミサが始まるが、ある子持ちの女が周りの女たちから露骨に後ろ指を刺されているのを見る。その女キットは、当時はいかがわしい場所とされていたダンスホールで働くシングルマザーであった。当時の空気から言えば、キットはいかがわしい女なのだろう。そしてここでなぜかイエローレッグは帽子を取ることを頑なに拒む。

3人は銀行に押し入ろうとするが、一足早く別の無法者が押し入ってしまう。銃を乱射して逃げ出す強盗団。応戦したイエローレッグだが、イエローレッグは過去の銃創の影響で肩に痛みが走り、狙いが外れてキットの息子ミードを撃ってしまう。嘆くキットは(しかし、画面上ではそんなに嘆き悲しんではいない)、ミードの遺体を夫の墓のある町に埋葬すると決意する。しかし、その町は先住民が跋扈する地域を通らなければならず、危険が伴う。止める町民を無視してキットはたった1人で出発する。

イエローレッグは、キットに同行を申し出るが拒まれる。それは息子を殺された恨みかもしれない。そして罪悪感からか、イエローレッグはタークとビリーを連れてキットを追う。このあたりでどうにも違和感を禁じ得なくなる。イエローレッグは、かつて南軍の兵士に頭の皮を剥がれ、殺されかけた経緯がある。その恨みを晴らすべく、相手の男を探しているが、その男がタークである。見つけてすぐに仇を取ればいいが、なぜか「人のいないところで」とこだわって、銀行強盗まで計画する。

さらにそれが失敗すると、今度はキットの護衛に乗り出すが、ここでもタークとビリーを連れて行く。2人も文句を言いながらイエローレッグの命令に従うが、なぜ反発して別行動を取らず、イエローレッグの命じるままに行動するのか意味がわからない。銃を撃つたびに古傷の肩を抱えて痛がり、まともに銃が撃てないイエローレッグ。サム・ペキンパー監督作品とは思いたくないお粗末な展開が続く。

それは最後まで変わらず。先住民がとりあえず妨害行為をし、キットの無意味な水浴びシーンがあり、ストーリーは学芸会レベルと言っても過言ではない。時代がこういう映画を求めたのか許したのか。サム・ペキンパーの名前もこういう映画を見せてしまうと地に落ちてしまうだろう。Amazon Primeの評価もこれであてにならないと思ってしまった。時間の無駄になった映画である・・・


評価:★☆☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | 時代劇/西部劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年02月22日

【ミッシング・ポイント】My Cinema File 2517

ミッシング・ポイント.jpeg

原題: The Reluctant Fundamentalist
2012年 アメリカ・イギリス・カタール
監督: ミーラー・ナーイル
出演: 
リズ・アーメッド: チャンゲス・カーン
リーヴ・シュレイバー: ボビー・リンカーン
キーファー・サザーランド: ジム・クロス
ケイト・ハドソン: エリカ
オム・プリ: アーブ
シャバーナー・アーズミー:アンミ
マーティン・ドノヴァン: ラドロー・クーパー

<映画.com>
********************************************************************************************************
「モンスーン・ウェディング」のミーラー・ナーイル監督が、モーシン・ハミッドの小説「コウモリの見た夢」を映画化した社会派サスペンス。パキスタンでアメリカ人教授が誘拐される事件が発生した。CIAは教授の同僚であるパキスタン人の反米活動家チャンゲスの関与を疑い、現地工作員ボビーを彼の元へ送り込む。ボビーの正体をすぐに見抜いたチャンゲスは、かつて自分がアメリカで過ごした日々について語りはじめる。出演はテレビシリーズ「24」のキーファー・サザーランド、『あの頃ペニー・レイン』とのケイト・ハドソン、『ナイトクローラー』のリズ・アーメッド。
********************************************************************************************************

なんとも言えない映画である。
物語は、パキスタンでアメリカ人の大学教授アンセ・レニアが誘拐される事件が起きるところから始まる。事件には、大学の同僚の教授チャンゲスが関与していると睨んだCIAは、現地で表向きはジャーナリストとして活動している工作員ボビーを、インタビューを装ってチャンゲスに接近させる。しかし、チャンゲスはボビーの正体に気付いていると告げ、その上でボビーに自分の話を「全て」聞くように言う。

そうして物語は、チャンゲスの過去に遡る。パキスタンでは、家柄は良いものの裕福とは言えない家庭に生まれ育ったチャンゲスは、18歳の時にアメリカに留学する。ハングリー精神の成せる技か、優秀な成績で大学を卒業した後に、ニューヨークでコンサルティング会社の職を得る。面接に応じたジム・クロスから自己PRを求められ、見事これに応える。日本人にはなかなか難しいかもしれない。

さらに公園で偶然知り合った写真家のエリカと付き合い始めるが、エリカはなんと勤務先の会長の姪であり、会社での将来も安泰感が漂う。まさに「アメリカン・ドリーム」の体現と言える。ところがここで9.11アメリカ同時多発テロ事件が起きる。アメリカ国内ではイスラム教徒憎しの空気が蔓延し、チャンゲスも不当な差別や迫害を受けるようになる。空港で突然別室に連れて行かれ、全裸で検査を受けさせられるのは屈辱以外の何者でもない。

さらにエリカが開いた写真展で、エリカに悪意はないもののチャンゲスの神経に触る表現があったことから、エリカとの関係にもひびが入る。会社内でも微妙な空気が流れるが、クロスの後押しもあってチャンゲスは順調にキャリアを積んでいく。しかし、人よりも利益を重視する拝金主義のビジネスに思い悩んだチャンゲスは、突然仕事を辞め、エリカとも別れてパキスタンに戻り、大学教授として働くようになる。

こうして物語は、現代のチャンゲスと過去のチャンゲスとを描きながら進む。人質奪還に向けて暗躍するCIA。狙いはボビーと話をするチャンゲス。果たして愛国心を前面に出して運動する学生らの中に入り、チャンゲスもまたイスラム原理主義の活動家なのであろうかと思いながらストーリーを追う。どんな結末が待っているのかと思いきや、それは幾分肩透かし的である。

緊迫したストーリーで見せるでもなく、かと言って深く考えさせる内容でもない。ただ、9.11の影響で人生の歯車が狂ってしまったチャンゲスという1人のパキスタン人の物語となっている。主演のリズ・アーメッドはあまり馴染みがないと思っていたが、『ジェイソン・ボーン』(My Cinema File 1608)『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』(My Cinema File 1665)『ヴェノム』(My Cinema File 2159)などのメジャー作品に結構出演しているのだとわかる。対する渋いリーヴ・シュレイバーはお馴染みだ。

とくにこれといった見どころに乏しく感じる映画ではあるが、なぜアメリカが憎まれ、テロが無くならないのか、理由を垣間見れるように思える映画である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | スリリング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年02月20日

【AVA/エヴァ】My Cinema File 2516

AVA/エヴァ.jpeg

原題: Ava
2020年 アメリカ
監督: テイト・テイラー
出演: 
ジェシカ・チャステイン:エヴァ
コモン:マイケル
ジョン・マルコヴィッチ:デューク
コリン・ファレル:サイモン
ジョアン・チェン:トニ
ジーナ・デイヴィス
ヨアン・グリフィズ

<映画.com>
********************************************************************************************************
『ゼロ・ダーク・サーティ』 『女神の見えざる手』のジェシカ・チャステインが組織に刃向かう暗殺者を演じたアクション。完璧な容姿と知性、圧倒的な戦闘能力を持つ暗殺者エヴァ。彼女は完璧に任務をこなしながらも常に「なぜ標的たちは殺されるのだろうか」と自問自答を繰り返していた。ある日、エヴァは極秘の潜入任務に臨むが、組織から事前に与えられていた情報の誤りから、エヴァの正体に気づいた敵との銃撃戦へと突入してしまう。なんとか生き延びたエヴァは、自分を陥れようとしている存在を疑い、次第に組織に対して激しい不信感を抱くようになる。組織にとって危険因子となった彼女を始末しようとする殺し屋サイモンの魔の手がエヴァに迫っていた。エヴァ役をチャステインが演じるほか、ジョン・マルコビッチ、コリン・ファレルらが脇を固める。監督は、チャステインがアカデミー助演女優賞にノミネートされた『ヘルプ 心がつなぐストーリー』のテイト・テイラー。
********************************************************************************************************

最近は珍しくもなくなった女の格闘アクション映画。主人公は暗殺を生業とするエヴァ。今日も仕事の依頼を受け、フランスの空港で運転手に扮してターゲットであるイギリス人ビジネスマンを車に乗せる。その後をまた別の女がバイクで尾行する。エヴァは田舎道の脇に車を止め、思わせぶりにビジネスマンと向き合う。そしてその会話を謎の女が盗聴する。ビジネスマンは美しいエヴァに下心を見せるが、エヴァは表情一つ変えずターゲットを射殺する。それを確認した謎の女性は静かにその場を離れる。

エヴァのボスはデューク。任務の完了を報告し金を受け取る。そしてエヴァは、母と妹がいるボストンに里帰りすることを告げる。この映画は、エヴァの私生活も描いていく。ボストンに着き、妹ジュディに会いに行くが、ジュディは8年ぶりの姉の里帰りに驚く。病気の母に対する対応については苦言を呈す。そしてエヴァは母を見舞う。ジュディにはマイケルと同棲しているが、実はマイケルはかつてエヴァと付き合っていたという複雑な過去がある。

そしてデュークからエヴァに次の極秘任務が伝えられる。それはサウジアラビアでドイツ人の軍人を殺害するというもの。パーティーで首尾よくターゲットと仲良くなったエヴァはホテルの部屋で2人きりになる。すると、そこへ警護の者たちが駆け付けてくる。病死に見せかける計画だったが、エヴァは咄嗟にターゲットを殺害して任務を果たすと、押しかける護衛たちと乱闘、銃撃戦となり、なんとか切り抜けて脱出する。

ここが前半の山場であろうか。美しく着飾ったエヴァが巧みにターゲットに近づき親密になる。男はみんな鼻の下を伸ばし油断する。ところが、正体がバレて乱闘となる。次々に駆けつける護衛たちを鮮やかに射殺し、スカートを翻して格闘して薙ぎ倒す。美女によるその鮮やかな戦いぶりが容姿とのコントラストとなり、それが女性アクションの見どころでもある。

そしてコリン・ファレル演じる同じ組織の暗殺者サイモンが登場する。サイモンには娘カミーユがいるが、カミーユは冒頭でエヴァの任務をバイクから監視していた謎の女。そしてサイモンはエヴァとデュークの上司でもあるが、エヴァの仕事ぶりが気に入らない。それはエヴァが暗殺時にターゲットに話しかけては、「何を(殺されるようなことを)したのか」と問うていたからである。デュークがエヴァを擁護するものの、サイモンはエヴァを始末するべく、殺し屋を送り込む。

ボストンでの家族との交流により、次第にエヴァの過去が明らかになってくる。妹の彼が自分の元カレという複雑な関係。さらに元カレマイケルにはギャンブル依存という病があり、それがまた復活する。エヴァはマイケルの行きつけの賭場の経営者トニのところにも乗り込んでいく。組織との関係、そして家族との関係の中で、エヴァには常に危険が隣り合う。

わずか8年でこれほどの腕前になれるのかは、突っ込みたくなるところであるが、格闘シーンもふんだんにあり、観ていて飽きない。アクション映画が観たい時には、ピッタリとも言える。映画の時間も短く、短時間で楽しみたい時にはピッタリである。一件落着と思われたラストでエヴァを密かに尾行する女。その先に余韻を残して映画は終わる。それは想像だけで終わらせるのであろうか。続きがちょっと気になる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | アクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年02月19日

【約束のネバーランド】My Cinema File 2515

約束のネバーランド.jpeg
 
2020年 日本
監督: 平川雄一朗
原作:白井カイウ/出水ぽすか
出演: 
浜辺美波:エマ
城桧吏:レイ
板垣李光人:ノーマン
渡辺直美:クローネ
北川景子:イザベラ

<映画.com>
********************************************************************************************************
テレビアニメ化もされた「週刊少年ジャンプ」連載の人気コミック「約束のネバーランド」を実写映画化。自然の中に建てられた楽園のような孤児院「グレイス=フィールドハウス」。そこで暮らす子どもたちは、母親代わりの優しいイザベラを「ママ」と呼んで慕い、いつか里親に引き取られる日を待ちわびている。年長者のエマ、レイ、ノーマンも、外の世界で待つ幸せな暮らしを信じていた。ある日、里親が見つかり孤児院を去ることになったコニーを見送ったエマとノーマンは、彼女が大切にしていた人形を忘れて行ったことに気づく。コニーに人形を届けるため、近づくことを固く禁じられていた「門」へ向かった2人は、そこで無残にも命を奪われ、食料として出荷されるコニーの姿を目撃する。彼らが楽園だと信じていた孤児院は、実は「鬼に献上する食用児を育てる農園」で、ママは「最上級の食用児を育てる飼育監」だったのだ。全てが偽りだったと気づいたエマたちは、孤児全員を引き連れた無謀ともいえる脱獄計画に乗り出す。エマを『君の膵臓をたべたい』の浜辺美波、レイを『万引き家族』の城桧吏、ノーマンを「仮面ライダージオウ」の板垣李光人がそれぞれ演じる。『僕だけがいない街』の監督・平川雄一朗と脚本家・後藤法子が再タッグを組んだ。
********************************************************************************************************

この映画の舞台となるのは孤児院「グレイス=フィールドハウス」。大勢の親のいない子どもたちが幸せに暮らしている。孤児たちの面倒をみているのは、みんなから“ママ”と呼ばれて慕われているシスターのイザベラ。孤児たちはこのハウスできちんと教育を受けて育ち、6歳から16歳までの間に“里親”の元へと引き取られていく。中でももうじき16歳になるエマ、レイ、ノーマンの3人は孤児たちの中でもとりわけ頭脳明晰であった。

自由な空気の孤児院であるが、ただ1つの制限は孤児院の敷地から外に出れないこと。それでも孤児たちは、そのルールを疑うこともなく過ごしている。ある日の夜、孤児の少女コニーに里親が見つかり、晴れて外の世界に出ることになる。みんなで祝福し、笑顔でコニーを見送る。ところがその直後、コニーがお気に入りのぬいぐるみを忘れているらことに気付いたエマとノーマンは、コニーにぬいぐるみを届けるべく、“門”へと急ぐ。

外の世界への唯一の出入り口である“門”には、孤児たちは決して近づいてはならないと固く命じられている。しかし、エマとノーマンは
善意で門にやってくる。たぶん理由を聞けばイザベラも許してくれるという考えがあったのかもしれない。ところが、そこで2人が目にしたのは、すでにコト切れたコニーの姿。そしてそこにやってきたのは、異様な姿をした巨大な怪物。それは“鬼”と呼ばれるもの。そこで2人が耳にしたのは、鬼は子供の肉を好物としていること。孤児たちは実はみな鬼たちの“食肉”として育てられていたのである。

“鬼”がなぜ世界にやってきたのか、詳しくはわからない。人類も抵抗したのだろうが、抗し切れず、“生贄”を差し出すことで鬼たちと手打ちをしたようである。誰も自分の子供を生贄などにはしたくない。そこで孤児が選ばれ、育てられるようになったのであろう。“食用児”も知能の高い方が美味しいらしく、その見極めは6歳。見限られた子は従って6歳で“里子”に出され、優秀な子は16歳まで育てられて食用にされる。食われる方としてはたまったものではない。優秀なエマとノーマンだけに、2人はレイにも真実を告げ、孤児たち全員を引き連れての脱出計画を練り始める。

一方、イザベラも“門”のそばにコニーのぬいぐるみが落ちていたことから、孤児の誰かが真実を悟ったのではないかと考える。対抗策として、新たな補佐役兼監視役シスタークローネを迎え入れる。自分達だけで逃げるのではなく、子供たち全員を逃がそうと考えるエマ。それは簡単なことではなく、表面上は何食わぬ顔でイザベラに従いつつ、密かに孤児たちを訓練する。クローネも表面上監視しつつ、内心ではイザベラを追い落として代わりのママになることを目論んでいる。

こうして孤児たちとイザベラとの対立が進んでいく。なんとなくこの映画を見ながら『アイランド』や『私を離さないで』(My Cinema File 952)『レベル16 服従の少女たち』(My Cinema File 2423)を思い出した。どちらも臓器移植のために「ストック」として人間が育てられていた。『アイランド』でも、美しい島アイランドに行ける権利が当たった人が喜び勇んで出ていくが、実は臓器提供で殺されていたというものであった。『レベル16 服従の少女たち』(My Cinema File 2423)では同じように里子であった。この映画が違うのは、臓器提供ではなく、食用というところである。

となると、無事脱出できるかどうかが、ストーリーの重要な結末。しかし、生まれてからずっと孤児院の中だけで暮らしてきた孤児たちが、守備よく脱出できたとして、はたして無事に生きていけるのだろうかと疑問が湧く。しかし、エマはポジティブで、「生きていける世界がないなら作ればいい」と屈託がない。そういうポジティブな勇気は、誰にでも必要なことであろう。

美しき女優の北川景子が、ここでは微笑みの下に冷たい微笑を隠したママを演じる。しかしながら、子供たちの演技には一部学芸会的な台詞回しが気になるところがあって、どうにも玉に瑕感が否めない。似たようなストーリーになるのは仕方ないであろうが、それ以外のどこかで欠点があるとどうにも悪目立ちしてしまうところがある。そんな残念感はあるが、その後エマたちに安息は訪れたのであろうか。幸せな結末を想像してみみたくなる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | SF/近未来ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする