2022年05月28日

【ドライブ・マイ・カー】My Cinema File 2553

ドライブ・マイ・カー.jpeg
 
2021年 日本
監督:濱口竜介
原作:村上春樹
出演: 
西島秀俊:家福悠介
三浦透子:渡利みさき
岡田将生:高槻耕史
霧島れいか:家福音
パク・ユリム:イ・ユナ
ジン・デヨン:コン・ユンス
ソニア・ユアン(袁子芸):ジャニス・チャン

<映画.com>
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村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」に収録された短編「ドライブ・マイ・カー」を、「偶然と想像」でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した濱口竜介監督・脚本により映画化。舞台俳優で演出家の家福悠介は、脚本家の妻・音と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある秘密を残したまま他界してしまう。2年後、喪失感を抱えながら生きていた彼は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島へ向かう。そこで出会った寡黙な専属ドライバーのみさきと過ごす中で、家福はそれまで目を背けていたあることに気づかされていく。主人公・家福を西島秀俊、ヒロインのみさきを三浦透子、物語の鍵を握る俳優・高槻を岡田将生、家福の亡き妻・音を霧島れいかがそれぞれ演じる。2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、日本映画では初となる脚本賞を受賞したほか、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞の3つの独立賞も受賞。また、2022年・第94回アカデミー賞では日本映画史上初となる作品賞にノミネートされる快挙を成し遂げたほか、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞とあわせて4部門でノミネート。日本映画としては『おくりびと』以来13年ぶりに国際長編映画賞(旧外国語映画賞)を受賞した。そのほか、第79回ゴールデングローブ賞の最優秀非英語映画賞受賞や、アジア人男性初の全米批評家協会賞主演男優賞受賞など全米の各映画賞でも大きく注目を集めた。日本アカデミー賞でも最優秀作品賞はじめ、計8冠に輝いた。
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ベッドの上で妻の音(おと)が物語を語る。それは「山賀という同級生の家に毎日のように忍び込む女子高生」の話。それに耳を傾けるのは夫の家福。家福は舞台演出家。音は、元女優で今は売れっ子の脚本家。彼女は、夫とセックスをしたあと、夫に脚本の草案である物語を語って聞かせるが、翌日、目覚めるとなぜか記憶が曖昧になっており、夫が覚えていた物語を聞き直し、それを脚本に仕上げるということを習慣にしている。

家福が演出と出演を兼ねる演劇は、出演者がみなそれぞれ違う言語で話すという独特のもの。芝居を終え、楽屋で化粧を落としている家福のもとに、妻の音がやってきて、彼女が脚本を書いたドラマに出ているという高槻という若い俳優を紹介する。高槻は芝居に感動したと少し大げさに話して引き上げて行く。

ウラジオストックの演劇祭から招待された家福は、早朝、出かけていく。妻の音は、『ワーニャ叔父さん』の上映台本を吹き込んだテープを家福に手渡す。家福には車を運転しながら、テープを聞き、ワーニャの台詞の部分を暗唱するという習慣がある。この習慣は終始この映画の中で描かれる。空港に着いた家福だが、演劇祭の事務局から寒波のためフライトは一日延期すると連絡が入る。空港で宿泊するという選択もあったが、家福は帰宅する。

家に帰ってくると、何やら異質な空気が流れている。部屋に入った家福は、そこでどこかの男と激しく抱き合う妻の姿を目撃する。こういう場合、自分だったらどうするだろうと思う。家福はそのまま黙って部屋を出ると、空港近くのホテルに宿泊する。夜になると、まだ家福が日本のホテルにいることも知らず、妻がビデオ通話をしてくる。いつもどおりに振る舞う妻に対し、家福も何事もなかったかのように振る舞う。

家福と音との間にはかつて娘がいたが、肺炎で亡くしている。それがなんとなく2人の間に距離を作っている。そしてその夜、また音は家福に物語の続きを語る。そして次の日の朝、家福が出かける準備をしていると、音が「帰ってきたら話したいことがある」と言う。これまでの流れを考えると、あまり良い話ではないように思えるが、そう感じた家福は夜遅くに帰宅する。すると床に音が倒れており、あわてて救急車を呼ぶが、くも膜下出血で音は息を引き取る。

2年後、家福は広島で行われる国際演劇祭で行われる『ワーニャ叔父さん』の舞台演出家として招待される。家福は長年乗り続けている愛車で広島へ向かう。出迎えたのは、演劇祭プログラマーの柚原とドラマトゥルク兼韓国語通訳のユンス。そして家福は、演劇祭の規定で滞在中は車を運転できないと告げられる。車の中で台詞の練習をするため、宿泊場所も1時間ほどかかる場所を希望した家福としては承服しかねるが、規定は変えられない。そして23歳の女性ドライバー・みさきが運転手を務めることになる。

こうして、家福はみさきに運転してもらいながら、いつものようにテープをかけてもらい、『ワーニャ叔父さん』の台詞を練習する生活をスタートさせる。それは音が吹き込んだテープ。そして家福は、オーディションの応募者の中に高槻がいるのに驚く。それは音の浮気相手でもある。自分だったらどうするだろうとここでも考える。家福はあえて高槻を合格させ、あろうことか主役のワーニャ役に指名する・・・

アカデミー賞の作品賞にノミネートされたことで話題となったこの映画。アカデミー賞に輝いたから面白いとは必ずしも言えないが、それでも観る価値はある。物語は、愛する妻を失った男の物語。そこに雇われ運転手と妻の浮気相手とが絡んでくる。妻が浮気をしていたと知っても、黙って知らん顔を通した家福。それを責めれば夫婦関係が維持できないと考えたようである。

浮気相手の高槻は、そんな家福になんらかの思いを抱いているように思えてならない。そしていつも無表情で愛想がなく、それでいて仕事はきちんとこなすドライバーのみさき。少しずつ過去を語るみさきだが、みさきの人生もまたどんよりとした雲に覆われているが如くである。着々と進む舞台稽古。セリフを棒読みするだけの家福の稽古も独特である。3人の交流が後半のストーリーの中心である。

静かに、そして淡々と進む物語。家福はユンスとも距離を縮めていく。そしてずっと笑顔を見せることのないみさきも自らの生い立ちを家福に語る。それは運転手とそこに乗る者との心の交流。音の紡ぐ物語も意外な続きがある。そして家福の音に対する秘めたる思い。物語のエンディングも静かなもの。それは観る者それぞれに続きを連想させる。なるほど、本場のアカデミー賞で評価されるのもわかる気がする映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2022年05月27日

【モータル・コンバット】My Cinema File 2552

モータル・コンバット.jpeg

原題: Mortal Kombat
2021年 アメリカ
監督: サイモン・マッコイド
出演: 
ルイス・タン:コール・ヤング
ジェシカ・マクナミー:ソニア・ブレイド
ジョシュ・ローソン:カノウ
浅野忠信:ライデン
メカッド・ブルックス:ジャクソン・ジャックス・ブリッグス
ルディ・リン:リュウ・カン
マックス・ハン:クン・ラオ
チン・ハン:シャン・ツン
ジョー・タスリム:ビ・ハン/サブゼロ
ネイサン・ジョーンズ:レイコ
シシ・ストリンガー:ミレーナ
ダニエル・ネルソン:カバル
マチルダ・キャンバー:エミリー
ローラ・ブレント:アリソン
真田広之:ハサシ・ハンゾウ/スコーピオン

<映画.com>
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世界的人気を誇る対戦型格闘ゲームで、1995年にも一度映画化されている「モータルコンバット」を、新たに実写映画化。胸にドラゴンの形をしたアザを持つ総合格闘技選手コール・ヤングは、自身の生い立ちを知らないまま、金を稼ぐために戦う日々を送っていた。そんなある日、魔界の皇帝シャン・ツンがコールを倒すため、最強の刺客サブ・ゼロを送り込む。コールは特殊部隊少佐ジャックスに言われるがまま女戦士ソニア・ブレイドと合流し、地球の守護者ライデンの寺院へ向かう。そこでコールは、太古より繰り広げられてきた格闘トーナメント「モータルコンバット」の存在と、自分が魔界の敵と戦うために選ばれた戦士であることを知る。主人公コール役に『デッドプール2』のルイス・タン、女戦士ソニア役に『MEG ザ・モンスター』のジェシカ・マクナミー。日本からも真田広之と浅野忠信が参加し、重要キャラクターのスコーピオンとライデンをそれぞれ演じる。
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最近では映画や漫画に加え、ゲームも映画化されるのが珍しくなくなっているが、これは対戦型格闘ゲームの実写映画化だと言う作品。

物語は17世紀の日本から始まる。白井流の忍者ハサシ・ハンゾウは、妻子とともに慎ましく暮らしている。それでも周囲に護衛がいるのは、重要人物だからなのかと思ってみたりする。小川へ水を汲みに山を下りたハンゾウだが、家屋の方角から妻の悲鳴が聞こえ、急いで駆けつけるも、彼が見つけたのは氷漬けにされてしまった妻と子。そこに現れたのはビ・ハン。

ビ・ハンは氷を操る能力があるようで、白井流の血統を根絶やしにするべくハンゾウの命を狙っている。2人による戦いが繰り広げられるが、ビ・ハンの前にハンゾウは殺されてしまう。ビ・ハンの去った後に家の中から赤ん坊の泣き声が響く。実はハンゾウの妻が生まれたばかりの我が子を隠していたのである。そこに現れたるは謎の男。男は赤ん坊を取り上げると何処かへと姿を消す。

そして舞台は現代に移行する。主人公のコールには生まれつき胸に龍の形をしたあざがある。場末で総合格闘技に励んでいるが、負けが込んでプロモーターにも見放されかけている。そんなコールだが、理解ある妻子に恵まれ、幸福な家庭を築いている。そんなある日、家族で食事をとろうとしていたコールたち。窓の外に季節外れの雪が降ったかと思う間もなく、あの氷を操る男ビ・ハンが現れ、あたり一面を氷で覆いつくす。狙いはどうやらコール。

逃げるコールたち家族の前にジャックスという男が助けに現れる。しかし、ビ・ハンは強敵。ジャックスは自ら囮になるとともにコールに、ソニア・ブレイドを訪ねろと伝える。ジャックスがビ・ハンを引きつける間、コールは妻子を連れて逃げる。そしてソニアを訪ねたコールは、ソニアから事情を聞く。ジャックスとソニアは軍の特殊部隊所属で、龍のあざを持つ人間を探しているとのこと。そして調査の結果、太古の昔から語り継がれる、ある言い伝えの存在にたどり着いたこと。

そして物語に秘められた事情がわかってくる。
・この世には人間界と魔界が存在する
・モータルコンバットという武道大会が開かれ、人間界と魔界の戦士たちがそこで戦う
・龍のあざはモータルコンバットの出場にふさわしい「選ばれた者」の証
・人間界と魔界はこれまで9回の戦いを経ており、人間界の9連敗中。あと1回負けると人間界は魔界に支配されてしまう
・預言では10回目の大会で人間界が勝利する
なるほど、ゲームらしい物語の世界である。

コールは生まれつき胸にあざがあるが、他のメンバーはあざのある人間を殺してあざが移っている。ソニアの家にはカノウという粗暴な男が捕えられているが、魔界の魔物に襲われ、カノウも金に釣られてコールたちと行動をともにすることになる。3人はモータルコンバットについての詳細を得るため、地球の守護神ライデンが居を構える寺院へと向かう。寺院で彼らを出迎えたのは、炎の使い手リュウ・カンと刃物のように鋭利な帽子を操るクン・ラオの2人。あざを持つコールとカノウは奥義を習得するため、訓練を始める。

こうして人間界を代表するコールたちと予言を阻止すべく大会前に勝負を決めてしまおうとする魔界のシャン・ツンが戦士を招集し、新たにサブゼロと名乗り、魔界に転生したビ・ハンらを引き連れて寺院へとやってくる。その寺院では、まずカノウがあざによる特殊能力を獲得する。能力の習得には、強い怒りや大切なものを守るという強い執念が必要だとされるが。コールはまだ獲得できずにいる・・・

人間と魔界の戦士たちの戦いがクライマックス。さすがに対戦型格闘ゲームらしい展開。それにしてもゲームの世界観というのも随分凝ったものだと改めて思う。自分はゲームなどやらないから知る由もないが、なるほどどうして映画化されるのも無理はない展開である。ただ、その後の展開はなんとも意味不明。日本からは真田広之と浅野忠信が出演しているが、それが日本人としては心地よい。

まぁ、細かいことはともかくとして、暇つぶしにはなる格闘アクション映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2022年05月21日

【長沙里9.15】My Cinema File 2551

長沙里9.15.jpeg

原題: 장사리: 잊혀진 영웅들/The Battle of Jangsari
2019年 韓国
監督: クァク・キョンテク/キム・テフン
出演: 
キム・ミョンミン:イ・ミョンジュン大尉
ミーガン・フォックス:マギー
チェ・ミンホ:チェ・ソンピル
キム・ソンチョル:ハリュン
キム・イングォン:リュ・テソク上士
クァク・シヤン:パク・チャンニョン中尉
イ・ホジョン:ムン・ジョンニョ
ジョージ・イーズ:スティーブン大佐

<映画.com>
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『友へ チング』のクァク・キョンテク監督が朝鮮戦争下で歴史の闇に埋もれた実話をもとに描いた戦争アクション。北朝鮮の猛攻を受けた韓国軍が戦況を打開するためマッカーサー将軍の指揮下で計画したクロマイト作戦(仁川上陸作戦)。奇襲を成功させるため、軍上層部は無謀とも言える陽動作戦を発動する。イ・ミョンジュン大尉らが率いる訓練期間わずか2週間、平均年齢17歳の772人の学生兵たちは「長沙里(チャンサリ)に上陸せよ」との命を受ける。しかし、彼らに支給されたのは使い古された武器とわずかな弾薬、最小限の食料だけだった。イ・ミョンジュン大尉を「V.I.P.修羅の獣たち」のキム・ミョンミンが演じるほか、アイドルグループ「SHINee」のミンホ、『トランスフォーマー』 『ミュータント・タートルズ』シリーズのミーガン・フォックスらが顔をそろえる。
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朝鮮戦争時代の韓国映画。北朝鮮軍の奇襲によって韓国軍は敗走し、釜山に追い詰められる。この事態を打開したのが仁川上陸作戦であることはよく知られている。しかしその仁川上陸作戦に陽動作戦があったことはまったく知らない。この映画は、その陽動作戦として行われた長沙上陸作戦を描いたものである。

仁川上陸作戦の準備が進む中、韓国軍では長沙里への上陸作戦が行われる。と言っても長沙里に向かうのは輸送船が一隻のみ。乗っている部隊は学生たちで編成された部隊。指揮を取るのはベテランのイ・ミョンジュン大尉であるが、明らかに戦力不足は否めない。たった2週間の訓練で送り出された部隊は台風の真っただ中、長沙里に向かうが、乗船する学生たちは、ひどい船酔いをする者もいれば、ふざけあったり、喧嘩をしたりととてもこれから戦場に向かうという雰囲気ではない。

台風で荒れる天候の中、船からボートで上陸を開始するが、海岸に防衛線を引く北朝鮮軍からは銃撃の歓迎に合う。阿鼻叫喚の戦闘が即始まる。さらに夜が明けると視界も開け、戦闘は激しくなる。多数の仲間が命を落とす激戦の中、韓国軍はなんとか北朝鮮軍の防衛戦を突破する。そして作戦の目標であった高地の奪回に成功する。ほっと息をつく中、学生兵の一人ソンピルは自分が射殺した北朝鮮の少年兵の元へ行く。まだ童顔の敵兵士を見下ろすソンピルの心境がなんとなく伝わってくる。

高地を奪回したイ大尉だが、とうとう食料も弾薬も尽き、無線も壊れてしまう。空腹に耐えかねた学生兵は敵軍が持っていたと生米を海水を使って炊くが、まずくて食べられない。唯一、マンドクだけが意地でも食べる。こうした事態にイ大尉は、北なまりの朝鮮語がしゃべれる兵士のソンピルに、近くの村で食料を調達してくるよう命令する。ソンピルたちは近くの村にやってくるが、そこに居合わせたのは北朝鮮軍の兵士となっていた従兄弟。互いに再会を喜び合うが、北朝鮮軍の上官が現れ、銃撃戦となる。その結果、ソンピルの従兄弟はその場で戦死する・・・

食糧調達は失敗するが、そこに友軍機のヘリコプターが来て食糧が届けられる。つかの間のひと時だが、北朝鮮軍の増援部隊が高地に向かっているとの連絡が入る。イ大尉は、トンネルで相手を待ち伏せて撃破しようと作戦を立てるが、数に勝る敵の攻撃の前に多くの兵士を失う。そして弾薬も尽き、イ大尉は撤収のための船を出すよう連絡する。数で勝る北朝鮮軍を前に、それは困難な作戦。

仁川上陸作戦は有名であるが、その陽動作戦として歴史の裏側でそんなことがあったのかと思う次第。映画はエンターテイメントゆえにどこまで真実に近いのかはわからないが、混乱期ゆえにいろいろあったのだろうと思う。親族なのに敵味方に分かれて戦う羽目になったり、中には拉致されて北朝鮮軍の兵士にさせられたというエピソードもある。唯一の男の子を戦場に送らないよう女の子が男装して部隊に加わってもいる。似たような事例はやはりあったのかもしれない。

知られざる韓国の歴史の影の物語。国が二つに分かれて戦うという悲劇。改めてお隣の国の大変さを思わせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2022年05月20日

【ドント・ブリーズ2】My Cinema File 2550

ドント・ブリーズ2 .jpeg

原題: Don't Breathe 2
2021年 アメリカ
監督: ロド・サヤゲス
出演: 
スティーヴン・ラング:ノーマン・ノードストローム
ブレンダン・セクストン三世:レイラン
マデリン・グレイス:フェニックス
クリスティアン・サギア:ラウル

<映画.com>
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孤独な盲目の老人の家に押し入った若者たちが思いがけない恐怖を味わうさまを描いて全米スマッシュヒットを記録し、日本でもSNSを中心に口コミで評判が広がりロングランヒットとなったホラー『ドント・ブリーズ』の続編。あれから8年。盲目の老人は、惨劇の起こった屋敷でひとりの少女を大切に育てていた。少女と2人だけの生活を誰にも邪魔されないよう、静かに暮らしている老人だったが、少女に向ける表情には言いようのない不気味さが漂っていた。そんな2人の前にある時、謎の武装集団が現れる。彼らが少女を狙って屋敷に踏み入ってきたことから、老人の狂気が再び目を覚ます。前作でフェデ・アルバレス監督とともに脚本を手がけたロド・サヤゲスがメガホンをとり、前作のアルバレス監督も製作・共同脚本として参加。プロデューサーのサム・ライミも続投し、盲目の老人をスティーブン・ラングが再び演じている。
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物取りに入った若者たちが、盲目の年寄りだと思って安心していた相手が実はとんでもない男だったとわかったが、後の祭りという内容で、実に面白かった『ドント・ブリーズ』(My Cinema File 2098)の続編。物語はそこから続く。

冒頭、燃え盛る家の中から1人の少女が逃げ出し、道路に倒れ込む。それから8年、その少女フェニックスは成長し、父親ノーマンと愛犬のシャドーと共に暮らしている。そのノーマンは、あの盲目の男である。退役軍人であり、フェニックスにも何やら訓練を施している。前作では、娘は交通事故に遭って亡くなったとなっていたが、火事場でフェニックスを助け、以来、一緒に暮らしているようである。しかし、ノーマンはフェニックスを学校にも行かせず、家に閉じ込めておく有様で、フェニックスも最近はそれに反発している。

ノーマンは近所付き合いはしないが、唯一訪ねてくるのは、ヘルナンデス。フェニックスの気持ちを汲み取ったヘルナンデスは、ノーマンを説得してフェニックスを連れ出す。フェニックスは、火事で焼け落ちた家へ連れて行ってもらう。そしてそこで火事で亡くなった母親を密かに弔う。その帰り道、フェニックスは公園のトイレで不審な男に絡まれる。シャドーが同行していたことで難を逃れ、ヘルナンデスの車で自宅へと戻ったフェニックスはノーマンに「学校に行き友達を作りたい」と言うがノーマンの答えはNOである。

公園のトイレでフェニックスに絡んだ男は、どうやら何かをやらかす様子。背景には児童誘拐のニュースが流れる。そしてその日の夜、ノーマンの家からの帰り道で、ヘルナンデスは1台のトラックに道を阻まれる。トラックにはトイレでフェニックスに絡んだ男レイランと別の男が乗っている。そしてヘルナンデスは警戒するものの、隙をついた仲間の男がナイフでヘルナンデスを刺殺する。さらにレイランたちは、シャドーを森におびき寄せて殺してしまう。狙いは明らかにフェニックスである。

シャドーを探してノーマンが家から出て行った隙にレイランたちは家へと侵入。その堂々たる手口に寒気を覚える。侵入者の存在に気づいたフェニックスは、必死に逃げようとする。ノーマンが盲目だと知ったレイランたちは油断するが、家に戻ったノーマンは本領を発揮。フェニックスと地下室へと逃がす一方で、侵入した男の1人を返り討ちにする。前作と違って初めから武装したレイランたちにノーマンも余裕はない。

前作ではノーマンから逃れるために「ドント・ブリーズ」であったが、本作ではレイランたちから逃げるフェニックスがその立場になる。ストーリーはフェニックスを誘拐しようとするレイランたちと守ろうとするノーマンとの戦いという展開。多勢に無勢、しかもノーマンは盲目。そしてフェニックスはレイランが伝えたある事実に愕然とし、ノーマンにさえ不信感を抱いてしまう。そして予想外のレイランの正体。

一旦はフェニックスをさらわれてしまったノーマン。こうなると盲目の彼に追跡する術はない。ところが意外な方法でノーマンは、レイランたちの潜伏先へと迫る。フェニックスが狙われた理由も酷いもの。今回は正義の立場に立つノーマン。フェニックスを守る死闘が見せ場となる。前作とはまったく趣が異なる内容。翻ってみれば、前作でノーマンは娘を事故で失っていた。それを思い出すと冒頭のシーンの意味もわかってくる。そしてノーマンがフェニックスを学校にもいかせなかった理由も。

よく考えられているなと思うも、ストーリーとしては平凡である。前作ほどのインパクトはない。残念ながら「息を止めるほどではなかった」映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2022年05月17日

【セキュリティ】My Cinema File 2549

セキュリティ.jpeg

原題: Security
2017年 アメリカ
監督: アラン・デロシェール
出演: 
アントニオ・バンデラス:エドアルド・"エディ"・ディーコン
ベン・キングズレー:チャーリー
リアム・マッキンタイア:ヴァンス
カン・リー:デッド・アイズ
キャサリン・メアリー・デ・ラ・ローシャ:ジェイミー

<映画.com>
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深夜のショッピングモールを舞台に、犯罪組織に命を狙われた少女を守る警備員たちの戦いを、アントニオ・バンデラス主演で描いたアクション。ショッピングモールの夜間警備員として働くことになった元軍人のエディ。勤務初日、ひとりの少女が店内に逃げ込んでくる。彼女は両親を犯罪組織に殺害され、目撃者として裁判で証言をする予定だったため、その組織に命を狙われているのだった。武装した男たちが次々と店内に侵入し、外部との通信も遮断される中、エディは今日はじめて会ったばかりの同僚たちと共に少女を守るべく奔走する。犯罪組織のボス役に『ガンジー』のベン・キングズレー。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2017」上映作品。
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エディ・ディーコンは、元海兵隊の大尉。詳しい事情は明らかにされないが、退役した後1年間引き籠っていたが、このままではいけないと仕事を探すことにする。ところが思うように仕事は見つからない。実は担当の女性がエディの心理的外傷を気にして紹介を渋っていたのだが、働けるのなら低賃金でも構わないというエディの訴えにショッピングモールの夜間警備の仕事を紹介する。

一方、FBIの捜査官達が、ある少女の身を守るべく物々しく警備を固めて移送している。その途中で何者かが一行を襲撃する。周到な準備と火力で捜査官達を圧倒し、捜査官は何とか少女を逃がすのが精一杯で、やがて全滅してしまう。そんなことはつゆ知らぬエディは、妻のバレリアに電話を掛け、働くことになったのでしばらく離れて暮らすことを伝える。バレリアのエディを心配する様子から夫婦仲は良いのだと伺える。そして、エディは職場へと向かう。

警備員はエディの他にリーダーのヴァンス、メイソン、ルビー、ジョニーがいる。エディは何気なく同僚達の様子を観察し、建物内にシャッターが設置されていることに疑問を持ってヴァンスに理由を問う。どうやら周辺の町にはギャングがはびこり、強盗としてやって来ることもあって治安が悪いのだとわかる。さっそく、巡回するエディだが、少女が助けを求めてやって来る。エディは尋常ではないほどの少女の怯え方を見て、ドアを開けて中に入れる。それはFBIに警護されていた少女。少女は中に入ると、安堵したのか気を失ってしまう。折りからの停電のせいで電話が通じず、警察に通報することもできない。

そしてそこにやってくるのが、少女の父と名乗る男。それはFBIを襲撃したグループのリーダー。男は言葉巧みに少女の明け渡しを求めるが、エディは違和感を拭えない。ヴァンスは男を信じてドアを開けようとしたとき、目を覚ました少女が嫌だと叫んで逃げ出す。途端に警戒するヴァンスだが、男は冷静にヴァンスに大金を提示し、静かに少女の引き渡しを求める。拒否すれば皆殺しにするとの脅しも加える。ヴァンスはドアを開けようとするが、エディがそれを止める。男はエディを褒めて立ち去るが、ここに至り長い夜が始まる。

エディは追われている少女ジェイミーに事情を聞く。そしてジェイミーの父親はギャングに殺され、犯行現場を目撃したジェイミーはFBIの証人として翌日証言することになっていることがわかる。今や電波妨害で携帯も使えず、外部との連絡が取れない状況下、朝まで持ちこたえるしかない。元海兵隊のエディが必然的に警備員グループの主導権を握り、殺し屋グループの襲撃に備える。襲う者と守る者。この構図はよくあるパターンである。

殺し屋グループは自動小銃で武装しているが、警備員側にはスタンガンしかない。この圧倒的状況下でのエディ以下警備員グループの奮闘が映画の見どころ。対する敵のトップを演じるのは、ベン・キングスレー。物静かに相手を脅し、情け容赦なく殺しにくる。主人公のエディを演じるのはアントニオ・バンデラス。大物2人の共演だから、それだけでも観る価値はある。

映画は多少のツッコミどころを残しながらもスッキリ終わる。ちょっとアクション映画でもという気分の時にはいい映画だろう。最後にエディはぬいぐるみを抱え、娘と妻に会いに行く。エディの再生にも心穏やかに感じる映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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