2022年06月25日

【ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結】My Cinema File 2561

ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結.jpeg

原題: The Suicide Squad
2021年 アメリカ
監督: ジェームズ・ガン
出演: 
マーゴット・ロビー:ハーレイ・クイン
イドリス・エルバ:ブラッドスポート
ジョン・シナ:ピースメイカー
ジョエル・キナマン:リック・フラッグ
ピーター・カパルディ:シンカー
デヴィッド・ダストマルチャン:ポルカドットマン
ダニエラ・メルキオール:ラットキャッチャー2
マイケル・ルーカー:サバント
アリシー・ブラガ:ソル・ソリア
ピート・デヴィッドソン:ブラックガード
シルベスター・スタローン:キング・シャーク
ヴィオラ・デイヴィス:アマンダ・ウォーラー

<映画.com>
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「バットマン」や「スーパーマン」を生んだDCコミックスに登場する悪役たちがチームを組んで戦う姿を描いたアクションエンタテインメント。デビッド・エアー監督により映画化された『スーサイド・スクワッド』を、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズで大きな成功を収めたジェームズ・ガン監督が新たに描く。ジョーカーと別れて彼氏募集中の身になり、ますますクレイジーになったハーレイ・クインを筆頭に、最強スナイパーのブラッドスポート、虹色のスーツに身を包んだ陰キャのポルカドットマン、平和のためには暴力もいとわないという矛盾な生き様のピース・メイカー、ネズミを操って戦うラットキャッチャー2、そして食欲以外に興味のないキング・シャークという、いずれも強烈な個性をもった悪党たちが、減刑と引き換えに、危険な独裁国家から世界を救うという決死のミッションに挑む。出演は、前作に続いてハーレイ・クイン役を演じるマーゴット・ロビーほか、イドリス・エルバ、ジョン・シナ、ジョエル・キナマンら。サメの姿をしたキャラクター、キング・シャークの声をシルベスター・スタローンが担当した。
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スーパーヒーローのオールスターチームを作って活躍させるというのは、マーベルもDCコミックもそれぞれやっているが、スーパーヒーローに対する悪役をチームにしてしまおうというアイディアはDCコミックならではである。そんな悪のチーム通称『スーサイド・スクワッド』を主役にした『スーサイド・スクワッド』の続編である。

独裁者ルナ将軍率いる南米の国コルト・マルテーゼでは、ナチス時代の研究所ヨトゥンヘイムで何やら秘密の実験を行っている。その情報を掴んだ米国政府は、ヨトゥンヘイムの破壊計画を立案する。その危険なミッションを実行する部隊として白羽の矢が立ったのは、刑務所に収監されている極悪犯罪者たちを集めたチーム。犯罪者たちは首にマイクロ爆弾を仕込まれ、命令に違反すればそれを爆破させるという脅しを受けチームに参加させられる。

そうして結成されたタスクフォースX(通称スーサイド・スクワッド)を率いるのはリック・フラッグ大佐。唯一の犯罪者でない軍人である。そうして上陸作戦が開始されるが、内通者がいたために作戦は筒抜け。上陸チームは待ち伏せ攻撃を受けてしまう。ここでチームは壊滅状態となり、生き残ったフラッグ大佐とハーレイ・クインは捕虜となってしまう。新たにチームに加わった犯罪者は、ほとんど馴染みのない顔ぶれ。前作『スーサイド・スクワッド』に登場したのはハーレイ・クインとキャプテン・ブーメランくらい。しかし、そのキャプテン・ブーメランもあっさり黒焦げになってしまう。

しかし、政府高官のアマンダ・ウォーラーは、密かに別のチームを派遣している。そのチームを率いているのは、スーパーマンに重傷を負わせた経歴を持つ最強の暗殺者ブラッドスポート。以下、凄腕殺人マシーンのピースメイカー、色とりどりの水玉<ポルカ・ドット>を身体から噴射させ敵を倒すポルカ・ドットマン、ネズミを自在に操るラットキャッチャー2、そしてサメ男ナナウエというメンバー。イタチ男にサメ男というのは、何か仮面ライダーの怪人みたいでおふざけ感が強い。

主人公は「ジョーカーの元恋人」ハーレイ・クインということになるが、これがまた強い。一見、頭のイかれた女なのであるが、格闘技術の方も優れたものがある。上陸時に敵の軍隊に囲まれ捕虜となるが、ルナ将軍には「反米の象徴」として歓迎される。プロポーズまでされるが、なんとあっさりこれを殺してしまう。当然再び捉えられてしまうが、拷問に耐えた挙句、隙をついて戒めを解くと警備兵を次々と薙ぎ倒して1人で脱出する。これだけの腕前なのになんで逮捕されたのかと思ってしまう。

ヨトゥンヘイムで行われていたのは、NASAが宇宙で遭遇した生命体の実験。これが一つ目のヒトデの化け物。これもおふざけ感が強い。次々と分身を放出してはその分身が人の顔に張り付くというエイリアンもどきの繁殖をする。スーサイド・スクワッドは、このヒトデの姿をした巨大な宇宙生命体と戦うことになる。悪役がいつの間にか人類代表として戦うというのもまたありなのであろう。

前作から引き続き登場するのは主役のハーレイ・クインとリック・フラッグ大佐、そしてブーメラン男くらいで、ほとんどが新メンバー。悪役だからだろうか、どのヒーローと対決していたのかもわからず、オールスター戦という感じはあまりしない。そのあたりがどうしても苦しいところ。まだまだ続編がありそうなエンディング。これはこれで、ほどほどに楽しみたいと思うシリーズである・・・


評価:★★☆☆☆








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2022年06月24日

【82年生まれ、キム・ジヨン】My Cinema File 2560

82年生まれ、キム・ジヨン.jpeg

原題: Kim Ji-young: Born 1982
2019年 韓国
監督: キム・ドヨン
出演: 
チョン・ユミ:ジヨン
コン・ユ:デヒョン
キム・ミギョン:ミスク
コン・ミンチョン:ウニョン
キム・ソンチョル:ジソク
イ・オル:ヨンス
イ・ボンリョン:ヘス

<映画.com>
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平凡な女性の人生を通して韓国の現代女性が担う重圧と生きづらさを描き、日本でも話題を集めたチョ・ナムジュのベストセラー小説を、「トガニ 幼き瞳の告発」「新感染 ファイナル・エクスプレス」のチョン・ユミとコン・ユの共演で映画化。結婚を機に仕事を辞め、育児と家事に追われるジヨンは、母として妻として生活を続ける中で、時に閉じ込められているような感覚におそわれるようになる。単に疲れているだけと自分に言い聞かせてきたジヨンだったが、ある日から、まるで他人が乗り移ったような言動をするようになってしまう。そして、ジヨンにはその時の記憶はすっぽりと抜け落ちていた。そんな心が壊れてしまった妻を前に、夫のデヒョンは真実を告げられずに精神科医に相談に行くが、医師からは本人が来ないことには何も改善することはできないと言われてしまう。監督は短編映画で注目され、本作が長編デビュー作となるキム・ドヨン。
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原作小説の方を先に読んでいたが、映画化されたとあって観てみることにした映画。

冒頭、子供を乗せたベビーカーを置き、公園のベンチに座って一息ついている主人公のジヨン。近くにいた男が「女は楽でいい」と友人たちと話している。会話が聞こえてきたジヨンはいたたまれなくなってその場を離れる。一方、ジヨンの夫のデヒョンは精神科にやってくる。医師に妻の様子がおかしいと相談に来たのである。妻のジヨンが、時々別人が憑依しているような状態になり、しかもその事を覚えていないという状況に心配になったのであるが、医師からは「本人を連れて来い」と言われてしまう。

正月、デヒョン夫妻は恒例となっている夫の実家への帰省にあたり、気を遣ったデヒョンはジヨンに代わりに旅行に行こうと持ちかける。しかし、行かなければ行かないで後で何を言われるかわからない。あえてジヨンは夫の実家への帰省を選ぶ。そして実家へ行けば、家事の手伝いで休む間もない。普段は手伝ってくれるデヒョンだが、手伝えば母親からジヨンが嫌味を言われるから手伝えない。そして妹夫婦が来た時にジヨンが豹変する。それはあたかもジヨンの母が憑依したかの如くにジヨンも自分の実家に帰してくれと訴える。デヒョンは慌ててジヨンの具合が悪いと告げて実家を後にする。

原作小説は、ジヨンの小さい頃からの姿を追うが、この映画も回想という形でジヨンの子供の頃の出来事を描いていく。ジヨンの母もまた弟の学費を稼ぐべく貧しい家計を助けるため懸命に働いている。母親は、本当は教師になりたかったと話す。ジヨンの父・ヨンスも末っ子の弟ジソクを溺愛し、姉ウニョンやジヨンも常々不満に思っている。男であるジソクには甘く、女であるジヨン達には、女だからと我慢する事を強いている。

ジヨンは懸命に努力して就職する。仕事のできる女上司にも認められ、それを目標に結婚しても仕事を続けたいと密かに考えている。しかし、現実は甘くない。上司も男尊女卑の社会の中、日常的に差別的な言動を受けてもグッと堪えている。子供がいるが母親に預けてまともに子育てができていない。そんな現実の中、ジョンは結婚を機に退職し、そして子供が生まれる。

男女雇用機会均等法の施行により、日本も男女平等が進んでいるはずであるが、現実は差にあらず。されど韓国社会の男尊女卑度からすると、そんな日本も先進国に思える。原作小説はかなりひどい様子を細かく描いているが、映画は時間の関係もあるのだろう、小説よりも軽い。それでもジヨンを取り巻く理不尽な環境は、目に余るものがある。夫のデヒョンはかなり妻に優しいが、パートに出たいと伝えたジヨンに「必要ない」と反対する。それはデヒョンなりの優しさであるのだが、ジヨンにとっては逆効果。その夜、飲めない酒を飲んだジヨンが、かつての元同僚が憑依している姿だと気づいたデヒョンは愕然とする。

物語はそんなジヨンを描いて行く。韓国社会を覆う男尊女卑の空気は厚い。それは実の父親でさえ唯一の男子である弟を溺愛する姿に現れている。弟のジソクに健康のため漢方薬を買ってくるが、この行為に母親はキレてしまう。「実の娘が苦しんでいる時に、健康な弟にだけ漢方薬を買ってくるのか」と。それは母自身もずっと耐えてきた男女差別に声を上げたとも言える。その後、父親もジヨンの分の漢方薬も密かに注文する。そこは実の親子であるが、ただ男の視線からは見えていない現実なのである。

原作小説もお隣の国とは言え、暗澹たる気持ちにさせられる内容。そのエッセンスはこの映画でも十分伝わってくる。かつての女上司が独立し、会社を立ち上げた事を知ると、ジヨンも意を決して働きたいと連絡を取る。また働けるという期待にジヨンは久々に生き生きし、デヒョンも育児休暇を取って協力すると言ってくれる。明るい展開に水を差すのはデヒョンの母親。育児休暇はデヒョンのキャリアにプラスにならないという現実。母親の怒りもよくわかる。そういう重苦しい社会の現実が、映画の中で広がる。

つくづく韓国に生まれなくて良かったと思う。自分は男ではあるが、こういう世界の中で、その優位を味わいたいとは思えない。ジヨンだけが気の毒なのではなく、ジヨンの母もまたそんな1人。お隣の国とは言え、我が国もであるが、女性が暮らしやすい社会に早く転換していけば良いのにと思う。映画は我々とは違う世界の姿を見せてくれる。韓国女性が少しでも生きやすい社会になることを願いたくなる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2022年06月18日

【ニュースの真相】My Cinema File 2559

ニュースの真相.jpeg

原題: Truth
2015年 オーストラリア・アメリカ
監督: ジェームズ・バンダービルト
出演: 
ケイト・ブランシェット:メアリー・メイプス
ロバート・レッドフォード:ダン・ラザー
エリザベス・モス:ルーシー・スコット
トファー・グレイス:マイク・スミス
デニス・クエイド:ロジャー・チャールズ

<映画.com>
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2004年のアメリカで実際に起こった、あるスクープ報道が広げた波紋の一部始終を、ケイト・ブランシェットとロバート・レッドフォードの共演で描いた実録ドラマ。ジョージ・W・ブッシュ米大統領が再選を目指していた04年、米国最大のネットワークを誇る放送局CBSのプロデューサー、メアリー・メイプスは、伝説的ジャーナリストのダン・ラザーがアンカーマンを務める看板番組で、ブッシュの軍歴詐欺疑惑というスクープを報道する。しかし、その「決定的証拠」を保守派勢力に「偽造」と断定されたことから事態は一転。メアリーやダンら番組スタッフは、世間から猛烈な批判を浴びる。この事態を収拾するため、局の上層部は内部調査委員会を設置し、調査を開始するが……。メアリー・メイプスの自伝を、『ゾディアック』 『アメイジング・スパイダーマン』などを手がけた脚本家のジェームズ・バンダービルトが初監督を務めて映画化した。
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時に2004年、アメリカは大統領選挙戦の真っ最中。二期目を目指す現職ジョージ・W・ブッシュと民主党のジョン・ケリー候補の一騎打ちとなっている。双方の支持率はほぼ拮抗するなか、アメリカCBSニュースの報道番組「60ミニッツ」が物語の舞台。番組のメインキャスターは伝説のジャーナリスト、ダン・ラザー。そして主人公はプロデューサーのメアリー・メイプスである。

物語はそのメアリーが弁護士に会いに来るところから始まる。何やら窮地に陥ったようである。そしてその原因は半年前に遡る。「60ミニッツ」のスタッフ陣は、ブッシュ大統領に関する重要疑惑の情報を入手する。その疑惑とは、ベトナム戦争時代にブッシュが父ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領のコネでベトナム行きを免れていたこと、そして任期満了前の除隊など軍歴詐称と捉えられてもおかしくないというもの。元中佐のビル・バーケットと会ったメアリーは、そこで当時のキリアン中佐が記した「キリアン文書」のコピーの提供を受ける。

その疑惑は大統領選の行方を左右しかねないもの。実はメイプスのチームは4年前にも同様の疑惑を追っていたのだが、確たる証拠がないことから報道を断念していたという経緯がある。番組の放映まであと5日というわずかな期間で、番組スタッフは総力を挙げて裏付け作業を進めていく。そして2004年9月8日、「60ミニッツ」でダン・ラザーは「キリアン文書」を“新証拠”としてブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑を報じる。報道は瞬く間に全米で一大センセーショナルを巻き起こす。チームとしては快哉を叫びたくなる結果である。

ところが放送直後、保守系のブロガーが「キリアン文章」は捏造されたものだとして反論を開始する。それは、文章が当時は存在しなかったMicrosoft Wordで打たれたものだというもの。フォントも当時は使われていなかったもの(Times New Roman)で、ワードのデフォルトで打った結果とピッタリ一致する。ライバル報道機関はこぞってCBSの失態を批判する。こうしてメイプスらは一転して窮地に追いやられていく。冒頭の弁護士は、ダン・ラザーから紹介された弁護士というわけである。

そう言えば、ブッシュ大統領の経歴詐称疑惑のニュースはうっすらと覚えている。大統領選にもそれほど関心はなかったし、軍歴を詐称したからといって何なのかという気持ちであったこともあって、それほど関心を持たなかったのである。メイプスはまさに池に落ちた犬状態。マスコミや世間の関心は軍歴詐称疑惑ではなく、「キリアン文章」の真偽やCBSの報道姿勢を問うものにすり替わっていく。このあたりは、彼我の報道機関の違いはそれほどないのだと思わされる。

映画の中で解説されるブッシュ大統領の軍歴詐称疑惑はかなり信憑性が高いように思われる。州の空軍に入るも、通常だとそれは連邦空軍からの転属かパイロット上がりかに限られるそうで、そういう経歴がなくいきなり州軍に入ることは通常ないのだとか(州軍の方が戦場に行くリスクがないのだろう)。状況証拠はかなり揃っているが、決定的なものがなかったようである。それが「キリアン文章」が出てきて、飛びついてしまったようである。

原作は、疑惑の張本人であるメアリー・メイプスの自伝であるという。だから映画も当然、メイプスの立場から描かれ、事態の収拾を図るためにCBS上層部から理不尽な対応を受けたという内容になっている。こういう内幕ものは、その真偽はともかくとして、かなり興味を惹かれるところがある。真相は世間からは窺い知れないところに眠っているのだろうが、興味深いところである。

主演はお馴染みのケイト・ブランシェット。ここでは、『ヴェロニカ・ゲリン』(My Cinema File 991)のように信念を貫いて戦う女性として登場する。残念ながら、ヴェロニカ・ゲリンのような大勝利には至らなかったが、家庭では夫と幼い息子を持ちながら社会で活躍する姿が輝いている。そしてダン・ラザーを演じるのは、ロバート・レッドフォード。この2人の共演というだけでも観る価値はある。

まさに、「ニュースの真相」と言える映画である・・・


評価:★★☆☆☆









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2022年06月17日

【スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム】My Cinema File 2558

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム.jpeg

原題: Spider-Man: No Way Home
2021年 アメリカ
監督: ジョン・ワッツ
出演: 
トム・ホランド:ピーター・パーカー/スパイダーマン
ゼンデイヤ:MJ
ベネディクト・カンバーバッチ:ドクター・ストレンジ
ジェイコブ・バタロン:ネッド
アルフレッド・モリーナ:ドクター・オットー・オクタビアス/ドック・オク
ジョン・ファブロー:ハッピー・ホーガン
ジェイミー・フォックス:マックス・ディロン/エレクトロ
ウィレム・デフォー:ノーマン・オズボーン/グリーン・ゴブリン
ベネディクト・ウォン:ウォン
マリサ・トメイ:メイおばさん
J・K・シモンズ:J・ジョナ・ジェイムソン
トビー・マグワイア:ピーター・パーカー/スパイダーマン
アンドリュー・ガーフィールド:ピーター・パーカー/スパイダーマン
トーマス・ヘイデン・チャーチ:フリント・マルコ/サンドマン
リス・エバンスカート・コナーズ/リザードリス・エバンス
チャーリー・コックス:マッド・マードック
トム・ハーディ:エディ・ブロック/ヴェノム

<映画.com>
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『スパイダーマン ホームカミング』 『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』に続く、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)に属する「スパイダーマン」シリーズの第3弾。MCU作品の『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』 『アベンジャーズ エンドゲーム』でもスパイダーマンと共闘した、ベネディクト・カンバーバッチ演じるドクター・ストレンジが登場する。前作でホログラム技術を武器に操るミステリオを倒したピーターだったが、ミステリオが残した映像をタブロイド紙の「デイリー・ビューグル」が世界に公開したことでミステリオ殺害の容疑がかけられてしまったうえ、正体も暴かれてしまう。マスコミに騒ぎ立てられ、ピーターの生活は一変。身近な大切な人にも危険が及ぶことを恐れたピーターは、共にサノスと闘ったドクター・ストレンジに助力を求め、魔術の力で自分がスパイダーマンだと知られていない世界にしてほしいと頼むが……。サム・ライミ監督版『スパイダーマン』シリーズに登場したグリーン・ゴブリンやドック・オク、マーク・ウェブ監督版『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのエレクトロなど、過去のシリーズ作品から悪役たちが登場し、それぞれウィレム・デフォー、アルフレッド・モリーナ、ジェイミー・フォックスら当時のキャストが再登板。さらに、過去シリーズでトビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールドがそれぞれ演じたピーター・パーカー/スパイダーマンも参戦し、3人のスパイダーマンが時空を超えて共闘した。
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前作(『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』)でミステリオを倒し、ロンドンからニューヨークに戻って来たピーター・パーカー。しかし、タブロイド紙「デイリー・ビューグル」の編集長であるJ・ジョナ・ジェイムソンが、ミステリオが残した映像を入手したため世界中にスパイダーマンの正体がピーター・パーカーであることが報道され、知れ渡ってしまう。報道は瞬く間に広がり、ピーターとメイおばさんが住んでいるアパートは、報道陣に囲まれてしまう。

前作で「宇宙の平和を守るヒーロー」と世界を欺いていたミステリオの正体はバレておらず、世間はスパイダーマンを「ヒーローを殺した悪人」と信じる「ミステリオ派」と、「皆を守ってくれるヒーロー」と信じる「スパイダーマン派」に別れてしまう。ピーターは「ミステリオ殺し」の容疑で警察の尋問を受け、さらに警察の尋問は、MJや親友のネッド、メイおばさんにも行われる。なんとか腕利きの弁護士マードック(デアデビルだ)によって釈放されるが、加熱する報道による混乱を避けるため、ピーターとメイおばさんはハッピーの自宅に匿われる。

大学入試を控えたピーターは、突然の大混乱に戸惑いながらもMJとネッドと共に「同じ大学に通おう」と約束する。ところがどこの大学も彼らを受け入れる事を拒否し、3人には不合格通知が届く。この事態に責任を感じたピーターは、魔術師ドクター・ストレンジの屋敷へ相談に行く。これを受けたストレンジは、全世界の人間から「ピーターがスパイダーマンである」という記憶を消す魔術を使おうとする。ところが、直前になってピーターが細かい条件をつけたことから、魔術を中断して魔術の結晶を箱に封じ込める。さらにストレンジは、ピーターが大学側に一切の交渉を行っていないことを知り激怒して屋敷から追い出す。

大学と交渉できることを知ったピーターは、車で空港に向かうMITの副学長を追いかけ、MJとネッドだけでも入学許可を貰おうと懇願するが、その時、突然、ヴィラン「ドクター・オクトパス/ドック・オク」ことオットー・オクタビアスが姿を現す。桁違いのパワーを持つアームを操るオクタビアスに苦戦するが、ピーターはなんとかオクタビアスを捕獲する。しかし、安心したのも束の間、今度はヴィラン「グリーン・ゴブリン」ことノーマン・オズボーンが出現する・・・

この映画では、「マルチバース」という概念が登場する。これはいわば平行宇宙。今現在我々のいる世界と並行してまた別の世界が存在するというもの。実はストレンジの魔術が中途半端に終わったことから、ピーターがスパイダーマンだと知っている者が、いろいろな世界からこの世界に集結しているのである。先のヴィランに加え、「リザード」も現れ、ピーターはストレンジの命を受けて次々にヴィランを地下牢に確保する。さらに全身が砂のヴィラン「サンドマン」ことフリント・マルコと、電気を操るヴィラン「エレクトロ」ことマックス・ディロンが現れる。

並行宇宙=メタバースという概念は実に便利である。スパイダーマン・シリーズもサム・ライミ監督版『スパイダーマン』が終わったと思ったらマーク・ウェブ監督版『アメイジング・スパイダーマン』がスタートし、2本創られた後、本シリーズが唐突に始まっている。それぞれのスパイダーマンも微妙な違いがあって、「別々のもの」と理解すればいいのであるが、それをメタバースは一気に解決してしまう。つまりそれは並行世界のスパイダーマンというわけである。

並行世界のスパイダーマンは、『スパイダーマン:スパイダーバース』(My Cinema File 2155)でも採り上げられていたが、これによってすべてのスパイダーマン・シリーズが同じ世界のものとして語られる事が可能となる。そしてなんとトビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールドが、ともにピーター・パーカー=スパイダーマンとして登場する。3人のスパイダーマンが登場するというのは驚きの展開である。

ストーリーも一捻り二捻り効いていて楽しませてくれる。何より相矛盾していた3つのスパイダーマン・シリーズが一つの世界に収まった(並行世界だから一つではないのだけれど)というのは大きな収穫である。オールスター登場のアベンジャーズとまでは行かなくても、ドクター・ストレンジやデアデビルも物語の中に登場し、さらにヴェノムも予告的な形で、エンドロールに登場する。マーヴェルは実に商売上手である。それでも面白いから文句はない。

次は『ヴェノム』のようであるが、こちらもしっかりと楽しみたいと思わされる一作である・・・


評価:★★★☆☆







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2022年06月11日

【閉鎖病棟−それぞれの朝−】My Cinema File 2557

閉鎖病棟−それぞれの朝−.jpeg
 
2019年 日本
監督: 平山秀幸
原作: 帚木蓬生
出演: 
笑福亭鶴瓶:梶木秀丸
綾野剛:塚本中弥(チュウさん)
小松菜奈:島崎由紀
坂東龍汰:丸井昭八
平岩紙:キモ姉
綾田俊樹:ムラカミ
小林聡美:井波

<映画.com>
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山本周五郎賞を受賞した帚木蓬生のベストセラー小説「閉鎖病棟」を、「愛を乞うひと」の平山秀幸監督・脚本で映画化。長野県のとある精神科病院にいる、それぞれの過去を背負った患者たち。母親や妻を殺害した罪で死刑判決を受けたものの、死刑執行に失敗し生きながらえた梶木秀丸。幻聴が聴こえて暴れるようになり、妹夫婦から疎まれて強制入院させられた元サラリーマンのチュウさん。父親からのDVが原因で入院することになった女子高生の由紀。彼らは家族や世間から遠ざけられながらも、明るく生きようとしていた。そんなある日、秀丸が院内で殺人事件を起こしてしまう。笑福亭鶴瓶が秀丸役で『ディア・ドクター』以来10年ぶりに主演を務め、秀丸と心を通わせるチュウさんを『そこのみにて光輝く』の綾野剛、女子高生・由紀を『渇き。』の小松菜奈がそれぞれ演じる。
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映画はモノクロ画面でいきなり死刑執行シーンから始まる。手順通りに進み、3人の刑務官がボタンを押す。そして絞首刑が執行される。ところが検視官が検死をしようとしたところ、死刑囚・梶木秀丸は息を吹き返す。規定ではこういう場合、2度目の執行はなされない。死は免れたものの、脊髄を損傷した秀丸は下半身に麻痺を患い車椅子となる。そしてそのまま密かに外部の施設へと送られる。

ところは長野県にある六王子病院。そこは精神病患者を扱う病院。坂の上にあることから、入居者は「坂の上の人たち」と地元住人からは呼ばれている。院内は、出入り口は施錠されており、看護師たちも出入りは面倒臭そう。入居者はさまざまであるが、症状の安定している者は外出も許されている。チュウさんと呼ばれる塚本中弥もそんな外出許可をもらえる一人であり、坂の下の町へ買い物に行っては、買ってきた物を入居者に転売して看護師に叱られる。

陶芸小屋でろくろを回すのは、あの秀丸。チュウさんもここをよく訪れ、買い物を請け負う。そのチュウさんには、カメラが好きなしょうちゃんと呼ばれる昭八が常にそばにいる。そんな病院に母親に連れられた女子高校生・島崎由紀が来院する。言葉を発しない由紀。状況からするといじめにあったのかと思わされるが、医師の大谷から妊娠について聞かれると、突如部屋を飛び出す。そのまま屋上へ出た由紀は、秀丸の目の前で飛び降りる。

幸い下が花壇であり、クッションとなったことから一命をとりとめるが、これによってお腹の子供は流産してしまう。それ以降、そのまま入院する由紀。そんな由紀にチュウさんは温かい言葉をかける。そんなチュウさんも、妹夫婦が面会に来て母親を施設に入れると聞かされると冷静さを失い、過去のフラッシュバックから発作に襲われる。入居者たちは皆事情を抱えている。

そして由紀が抱える事情も明らかになる。義父に性的な虐待を受けた由紀だが、よりによってその義父によって無理やり退院させられる。表情は優しい義父だが、その目的は明らか。帰宅した由紀は母親に離婚するように頼むが、母は義父と由紀の関係を知っており、それどころか由紀に家から出ていくように告げる。由紀の絶望感は想像に難くない。家を出ていく決意をした由紀は、義父の事務所に忍び込んで小銭を盗み出すが、義父に見つかる。逃げようともみ合いになり義父を階段から突き落としてそのまま逃げ去る。そして再び六王子病院に戻って来る。

精神病院が舞台となった物語。それはまた『クワイエットルームにようこそ』(My Cinema File 465)とはまた違った精神病院の物語。そして薬物中毒の重宗という男が来たことから、院内に不穏な空気が流れ始める。気になる秀丸の過去であるが、それはかつて仕事を早く終え帰宅した日に妻の不倫現場に遭遇し、逆上して妻とその相手を殺してしまったというもの。自宅には認知症で寝たきりの母親がおり、一人残すことを哀れに思い、自分が贈ったマフラーで首を絞めたのである。これもなかなか重い。

そして事件が起きる。コメディタッチの『クワイエットルームにようこそ』(My Cinema File 465)に対し、こちらは実にシリアス。家族はいないのに、家族の元に泊まりに行くと嬉しそうに外出する女性。詳しい事情には触れられないが、そこにも物語がありそうである。心温まる交流があったと思ったら、不幸な事件が起こる。それが人間なのか。そして秀丸が取った行動。改めて善と悪という言葉が脳裏を過ぎる。

ラストで秀丸が車椅子から立ち上がろうとするシーンが、さまざまなことを代弁しているような映画である・・・


評価:★★★☆☆







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