
原題: Insane
2017年 韓国
監督: イ・チョルハ
出演:
カン・イェウォン:カン・スア
イ・サンユン:ナ・ナムス
チェ・ジノ:ジャン院長
<映画.com>
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韓国で実際に起こった、法律を悪用した拉致監禁事件をモチーフに描いた社会派サスペンス。日中の大都会を1人で歩いていたカン・スアは突然、何者かに誘拐され、精神病院に監禁されて強制的な薬物投与と暴力を受けることとなる。これまで経験したことのない狂気の中、彼女は病棟でその一部始終を手帳に記録していった。そして1年後、テレビプロデューサーのナ・ナムス宛に届いた1冊の手帳。そこに記された信じがたい出来事に興味を持ったナムスはスアを訪ねるが、彼女は殺人事件の容疑者として収監されていた。ナムスが取材を進める中で、彼女が体験した地獄のような1年と、その背後にある闇が明らかとなっていく。主人公のスア役に『ハーモニー 心をつなぐ歌』カン・イェウォン。監督は「GOD」「東方神起」など人気アイドルのPVを数多く手がけているイ・チョルハ。
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『追跡24時』というテレビ番組をヒットさせたプロデューサーのナ・ナムスだが、番組にやらせ疑惑の噂が立ち、停職処分を食らってしまう。1年後、ナ・ナムスの下に上司が持ってきた仕事は半端仕事。しかし、復帰を望むナムスに仕事を選り好みすることはできず、ナムスはやむなくその仕事を引き受ける。
企画の打ち合わせが始まったが、どれも退屈なものばかり。しかし、ナムスはその中にあったある日記に興味を示す。それは『追跡24時』を担当していた時のナムスに送られてきた物で、精神科病院に強制入院させられた者が書いた日記だと説明される。日記を書いたのはカン・スアという人物。ナムスには聞き憶えがある名前。その精神科病院は1年前に火事で患者が全員死亡している。興味を惹かれたナムスはこの病院を探索することに決める。
取材のために精神科病院跡地へとやってきたナムスたち取材班は、そこで大やけどを負ったハン・ドンシクという人物と遭遇する。彼は重傷であったことから病院へ搬送される。ひどい火傷を負っているが、なぜか治療をしていない。さらにその名前が日記に出てきたことから、ナムスは彼についても調べることにする。そして精神科病院が火災にあった同日、警察署長のカン・ビョンジュが娘に射殺されるという事件が発生していたことが判明する。更にビョンジュの娘の名前がカン・スアだとわかる。
殺人事件の犯人として医療刑務所に入院しているスアを訪ねたナムス。日記を見せてナムスが正体を告げるとスアは動揺する。事件を確信したナムスは、本格的に調査に乗り出していく。ビョンジュは次の警察庁長候補と言われる人物で、スアは再婚した妻の連れ子。妻はビョンジュが殺害される二ヵ月前に病死しており、さらにスアは事件当日、精神病院に入院していたと言うが、病院にその記録はない。
スアが明かした話は衝撃的である。町中で突然に男たちに車に押し込められ、連れ去られた先が精神科病院。スアは病気ではないと訴えたが聞き入れてもらえず、看護師たちからは日常的に暴力を振るわれ、薬を飲まされる。唯一、ハン・ドンシクという看護師だけが優しく接してくれたという。調べを進めたナムスは、精神科病院のチャン院長がビョンジュの後輩だと知る。
実は精神保護法では、強制入院には保護者と医師の診断書が必要であるが、裏を返せばそれがあれば正常な者でも強制入院させられるのである。これは実に恐ろしい。隙を見たスアは病院からの逃走に成功するが、警官に助けを求めて安心したのも束の間、その警官によって病院に連れ戻されてしまう。精神病院から逃げ出してきたとすれば、普通は本人の話など信じないだろう。
さらにチャン院長の精神科病院では臓器売買が行われている疑いも出てくる。強力な後ろ盾がいるためほとんどの被害者家族は泣き寝入り。そしてスアもその事実を証言する。ナムスは『追跡24時』でこの企画を放送したいと上司を説得する。半端仕事が一世一代の大仕事に代わっていく。
韓国映画は、実在の事件をもとにしたものが多いが、精神病という本人に否定できない病気を利用して強制入院させるということは、悪用されるとかなり恐ろしい。汚職警官が敵にまわるということなら、まだまともな警察官がいれば救いがある(例えば『ブラック アンド ブルー』)。しかし、この映画ではそれすら期待できない。外部に味方がいなければどうにもならない。そしてスアにはそれがいた。ラストに向けてのスアの救出劇。いかにして火災が起こるのか。そして明らかにされる事件の予想外の真実。
細かく言えば粗のあるストーリーだったが、それも「正常な者を精神病院に強制入院させる」という実在の事件に無理に合わせた感がある。その無理がところどころ目についたが、総じて楽しめる内容ではあったと思う。手軽に観られる韓国映画である・・・
評価:★★☆☆☆