2022年07月31日

【消された女】My Cinema File 2574

消された女.jpeg

原題: Insane
2017年 韓国
監督: イ・チョルハ
出演: 
カン・イェウォン:カン・スア
イ・サンユン:ナ・ナムス
チェ・ジノ:ジャン院長

<映画.com>
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韓国で実際に起こった、法律を悪用した拉致監禁事件をモチーフに描いた社会派サスペンス。日中の大都会を1人で歩いていたカン・スアは突然、何者かに誘拐され、精神病院に監禁されて強制的な薬物投与と暴力を受けることとなる。これまで経験したことのない狂気の中、彼女は病棟でその一部始終を手帳に記録していった。そして1年後、テレビプロデューサーのナ・ナムス宛に届いた1冊の手帳。そこに記された信じがたい出来事に興味を持ったナムスはスアを訪ねるが、彼女は殺人事件の容疑者として収監されていた。ナムスが取材を進める中で、彼女が体験した地獄のような1年と、その背後にある闇が明らかとなっていく。主人公のスア役に『ハーモニー 心をつなぐ歌』カン・イェウォン。監督は「GOD」「東方神起」など人気アイドルのPVを数多く手がけているイ・チョルハ。
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『追跡24時』というテレビ番組をヒットさせたプロデューサーのナ・ナムスだが、番組にやらせ疑惑の噂が立ち、停職処分を食らってしまう。1年後、ナ・ナムスの下に上司が持ってきた仕事は半端仕事。しかし、復帰を望むナムスに仕事を選り好みすることはできず、ナムスはやむなくその仕事を引き受ける。

企画の打ち合わせが始まったが、どれも退屈なものばかり。しかし、ナムスはその中にあったある日記に興味を示す。それは『追跡24時』を担当していた時のナムスに送られてきた物で、精神科病院に強制入院させられた者が書いた日記だと説明される。日記を書いたのはカン・スアという人物。ナムスには聞き憶えがある名前。その精神科病院は1年前に火事で患者が全員死亡している。興味を惹かれたナムスはこの病院を探索することに決める。

取材のために精神科病院跡地へとやってきたナムスたち取材班は、そこで大やけどを負ったハン・ドンシクという人物と遭遇する。彼は重傷であったことから病院へ搬送される。ひどい火傷を負っているが、なぜか治療をしていない。さらにその名前が日記に出てきたことから、ナムスは彼についても調べることにする。そして精神科病院が火災にあった同日、警察署長のカン・ビョンジュが娘に射殺されるという事件が発生していたことが判明する。更にビョンジュの娘の名前がカン・スアだとわかる。

殺人事件の犯人として医療刑務所に入院しているスアを訪ねたナムス。日記を見せてナムスが正体を告げるとスアは動揺する。事件を確信したナムスは、本格的に調査に乗り出していく。ビョンジュは次の警察庁長候補と言われる人物で、スアは再婚した妻の連れ子。妻はビョンジュが殺害される二ヵ月前に病死しており、さらにスアは事件当日、精神病院に入院していたと言うが、病院にその記録はない。

スアが明かした話は衝撃的である。町中で突然に男たちに車に押し込められ、連れ去られた先が精神科病院。スアは病気ではないと訴えたが聞き入れてもらえず、看護師たちからは日常的に暴力を振るわれ、薬を飲まされる。唯一、ハン・ドンシクという看護師だけが優しく接してくれたという。調べを進めたナムスは、精神科病院のチャン院長がビョンジュの後輩だと知る。

実は精神保護法では、強制入院には保護者と医師の診断書が必要であるが、裏を返せばそれがあれば正常な者でも強制入院させられるのである。これは実に恐ろしい。隙を見たスアは病院からの逃走に成功するが、警官に助けを求めて安心したのも束の間、その警官によって病院に連れ戻されてしまう。精神病院から逃げ出してきたとすれば、普通は本人の話など信じないだろう。

さらにチャン院長の精神科病院では臓器売買が行われている疑いも出てくる。強力な後ろ盾がいるためほとんどの被害者家族は泣き寝入り。そしてスアもその事実を証言する。ナムスは『追跡24時』でこの企画を放送したいと上司を説得する。半端仕事が一世一代の大仕事に代わっていく。

韓国映画は、実在の事件をもとにしたものが多いが、精神病という本人に否定できない病気を利用して強制入院させるということは、悪用されるとかなり恐ろしい。汚職警官が敵にまわるということなら、まだまともな警察官がいれば救いがある(例えば『ブラック アンド ブルー』)。しかし、この映画ではそれすら期待できない。外部に味方がいなければどうにもならない。そしてスアにはそれがいた。ラストに向けてのスアの救出劇。いかにして火災が起こるのか。そして明らかにされる事件の予想外の真実。

細かく言えば粗のあるストーリーだったが、それも「正常な者を精神病院に強制入院させる」という実在の事件に無理に合わせた感がある。その無理がところどころ目についたが、総じて楽しめる内容ではあったと思う。手軽に観られる韓国映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2022年07月29日

【ブラック アンド ブルー】My Cinema File 2573

ブラック アンド ブルー.jpeg

原題: Black and Blue
2019年 アメリカ
監督: デオン・テイラー
出演: 
ナオミ・ハリス:アリシア・ウェスト
タイリース・ギブソン:マイロ・ジャクソン
フランク・グリロ:テリー・マローン
マイク・コルター:ダリウス
リード・スコット:ケヴィン
ボー・ナップ:スミッティ
ナフェッサ・ウィリアムズ:ミッシー

<映画.com>
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『ムーンライト』でアカデミー助演女優賞にノミネートされ、『007』シリーズでも活躍するナオミ・ハリスの主演で、警察の汚職や麻薬密売が横行する現実に立ち向かう女性警官の姿を描いたポリスアクション。ルイジアナ州ニューオーリンズにある故郷の街で、警察官として第2の人生を歩み始めた退役軍人のアリシアだったが、黒人というだけで理不尽な扱いを受けたり、不当な差別を受けたりする日々が続いていた。そんなある日、先輩警察官とともに通報があった現場に急行したアリシアは、そこで警察官が麻薬の売人を殺害する場面を目撃する。見てはならない場面を目にしてしまったアリシアは、口封じのために同僚の警察官から追われる身となってしまう。
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主人公のアリシアは、軍役を終えた後、故郷のニューオリンズに帰ってきて警察官となっている。非番の日にジョギングをしていたアリシアは、突然白人警察官から職務質問を受ける。職務質問と言っても穏やかなものではなく、有無を言わさず押さえつけるというもの。かろうじてIDによって警察官だと分かると解放されるが、人種差別の色濃く残る南部の様子が窺える。

相棒のケヴィンとパトロールに出掛けると、黒人からは「白人の犬」と白い目で見られる。パトロールの途中でアリシアはスーパーに立ち寄り、旧友のマウスと再会する。しかし、ケヴィンは当然のように金を払わずに店のコーヒーを持ち帰る。白人警官が嫌われる所以である。その夜、ケヴィンは夜勤を命じられるが、予定の入っていたケヴィンは困惑する。気を利かせたアリシアは、ケヴィンの代わりに夜勤を引き受ける。これがことの発端。

ベテランの黒人警官ブラウンとパトロールに出たアリシア。夜の街は至るところにトラブルの火種があり、慣れないアリシアは喧嘩の仲裁に入って撃たれそうになるところをブラウンに救われる。善意だけでは通用しない世界である。そして明け方、ブラウンは情報提供者に会うと言って、アリシアをパトカーに残しひとりで廃倉庫に入って行く。間もなく倉庫から銃声が響き、アリシアが駆けつける。すると、言い争う男たちを目にし、次の瞬間、1人の男が黒人を射殺する。

男たちはブラウンと見知らぬ男が2人。そしてそれは麻薬課の刑事マローンとその部下だと判明する。アリシアたち警官は胸にカメラを付けている。それに気づいた刑事の1人がアリシアになんと発砲する。防弾ベストを身につけているとはいえ、撃たれたアリシアは傷を負いながら逃げる。そしてマローンたちはカメラを奪うためアリシアを追う。住宅街を逃げるアリシアだが、住人たちは誰も助けてくれない。それどころか、別のパトカーに救援を頼むも、その警官たちも一味だと分かる始末。アリシアはなんとかマウスの店に逃げ込む。

マウスもアリシアが逃げ込んできたことに初めは迷惑がっていたが、駆けつけた白人警官たちの仕打ちにマウスはアリシアを助ける。ギャングが相手であればまだしも、相手は警官。誰が味方かもわからないアリシアは孤立無援となる。一方、マローンが射殺した売人は、ギャング組織のボスであるダリウスの甥。実はマローンたちは押収した麻薬の半分を横流しして金儲けをしており、それがばれそうになったために協力者であった売人を射殺したのであるが、マローンは射殺したのはアリシアだと嘘の説明をする。逆上したダリウスは組織の部下にアリシアの殺害を命じる。

こうしてアリシアはマローンたち汚職警官とダリウス率いるギャング組織の両方に追われることになる。住民たちはアリシアの味方になどなってくれるはずもなく、唯一マウスだけがアリシアを匿ってくれる。されど、マウスは自宅も職場も知られており、2人は否応なく追い詰められて行く。唯一の切り札が、マローンが売人を殺害した現場を録画したボディカメラ。そしてアリシアは捨て身の作戦に打って出る・・・

タイトルの『ブラック アンド ブルー』とは、ブラックが文字通り黒人を意味し、ブルーは警官を意味する。制服が青いところから来ているのだろう。街には人種差別があり、貧困がある。警官とて正義の味方とは限らず、汚職が蔓延していて誰の味方かもわからない。アリシアのかつての親友ミッシーは、今はギャングの情婦になっている。高級なコートに身を包む姿は、この地に生きる女の生活の知恵なのかもしれない。

ミッシーと同じ環境に育ちながら、軍隊に入ることで街を出たアリシア。警官になって故郷に戻り、警官らしく生きようとするが、街はそれを良しとしない。それがハラハラドキドキの展開となり、最後はなんとかハッピーエンド。警官らしさを貫いたアリシアの姿が心地よい映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2022年07月25日

【団地】My Cinema File 2572

団地.jpeg
 
2016年 日本
監督: 阪本順治
出演: 
藤山直美:山下ヒナ子
岸部一徳:山下清治
大楠道代:行徳君子
石橋蓮司:行徳正三
斎藤工:真城

<映画.com>
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阪本順治監督が日本アカデミー賞最優秀監督賞など数々の映画賞を受賞した「顔」の藤山直美と15年ぶりにタッグを組み、団地に越して来た夫婦にまつわる噂が引き起こす一大騒動を描く。三代続いた漢方薬の店を売り払い、団地へ越してきた清治とヒナ子夫妻。昼間から散歩ばかりの清治に団地の住人たちはあれこれと噂をしているようだが、ヒナ子はそんなことも気にせずパートに出かける毎日を送っていた。清治が散歩に出なくなり、ヒナ子の家にスーツ姿の若い男が出入りするようになると、離婚、清治の蒸発、さらには殺人か、などと好き勝手なことを噂される始末。ヒナ子夫妻にまつわる噂はさらに拡大し、警察やマスコミまでをも巻き込む事態へと発展するのだが……。ヒナ子、清治夫妻に藤山直美、岸辺一徳。団地の自治会長夫妻に石橋蓮司、大楠道代。謎の男には初の阪本組参加となる斎藤工。
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タイトルにある通り、物語の舞台はとある団地。その一室に住むのは、山下ヒナ子と夫の清治。かつて老舗の漢方薬店を営んでいたが、2年前に最愛の息子・直哉を交通事故で亡くしたのを機に店を畳み、半年前から団地に引っ越してひっそりと暮らしている。ヒナ子はスーパーのレジ打ちのパートを始め、清治は団地の裏の林を散策するのが日課となっている。

そんな夫婦をわざわざ訪ねてくるのは、漢方薬局の常連客だった真城。わざわざヒナ子と清治の元を訪れるのは、夫婦の薬が最も効能があるという理由。「ごぶさたです」のつもりで「五分刈りです」などと言う真城はどこか日本語がぎこちない。自分の漢方薬を買いたいとわざわざ訪ねてくるのは、清治には嬉しいところがあるのだろう、廃業したと言いながらも薬の調合は引き受けている。

団地住民たちが集う自治会では、自治会長の改選が近づき、清治は候補に名前が上がる。口とは裏腹に密かに当選後の施策などを考える清治。しかし蓋を開ければ現会長が再選される。現会長も引退を口にするものの、腹の底ではそんな気などない。さらに「ええ人やけど人望がない」と住民に言われ、ショックを受けた清治は団地の人たちから身を隠すことにし、台所の床下にある収納庫の中に隠れることにする。

こうして一切外に出なくなった清治だが、やがて住民たちの間に、清治が蒸発したという噂が立ち始める。自治会長の行徳の妻、君子が様子を見に来ても、清治は床下に隠れたままなのでわからない。そして3カ月もすると、ひょんな事からヒナ子が清治を殺したのではという噂がまことしやかに囁かれるようになる。一方、再びやって来た真城は、自分の同郷人5千人分の漢方薬を作ってほしいと頼んでくる。どうも眉唾な話である。

こうしてヒナ子が夫を殺したのではという噂に団地が揺れ、一方、怪しげな真城が5千人分の漢方薬を作って欲しいという2つのストーリーが並行して進む。ヒナ子が夫を殺したと噂する住民たちの行動は大袈裟。果てにはテレビ局が取材に来たりするのだが、現実的にはこの程度ではあり得ない。しかし、それもコメディならではの包容力が発揮され、違和感なく進んでいく。それよりも真城の行動が段々と常軌を逸してくる。それも「コメディだから」と言えば受け入れられるのだが、それでもこの展開はなぁとおののいてしまう。

『団地』というタイトルからは想像できないストーリー。お人好しだが、パートという仕事においてはそれが逆に働き起こられてばかりいる山下ヒナ子。そしてどこおっとりしていて真面目な行動なのに笑いを誘う夫清治。藤山直美と岸部一徳のコンビが絶妙な演技を見せる。団地の自治会長夫人の大楠道代も何処かボケた自治会長の石橋蓮司もまた味わいがある。さらに2枚目の斎藤工がこれもまたピントがずれた男を演じる。この出演陣ゆえに、後半の奇想天外なストーリーも許容されるように思われる。

コメディから突如SF展開を見せ、そうしたかと思うと意外な何気ないラスト。なんの説明もなく、それでいて観る者を「あっ」と驚かせる。何の警戒感もなく観た映画であるが、例えるなら気がつけば格下の相手に一本取られていた剣道の試合のようである。こういう映画も邦画の魅力の一つなのかもしれないと思わされる一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2022年07月23日

【マトリックス レザレクションズ】My Cinema File 2571

マトリックス レザレクションズ.jpeg

原題: The Matrix Resurrections
2021年 アメリカ
監督: ラナ・ウォシャウスキー
出演: 
キアヌ・リーブス:ネオ/トーマス・アンダーソン
キャリー=アン・モス:トリニティー/ティファニー
ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世:モーフィアス
ジョナサン・グロフ:スミス
ジェシカ・ヘンウィック:バッグス
ニール・パトリック・ハリス:アナリスト
プリヤンカー・チョープラ・ジョナス:サティ
エレンディラ・イバラ:レクシー
ジェイダ・ピンケット・スミス:ナイオビ
クリスティーナ・リッチ:グウィン・デ・ビア

<映画.com>
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1999年に公開され、革新的な映像技術とストーリーで社会現象を巻き起こしたSFアクションの金字塔『マトリックス』。2003年に公開された続編「マトリックス リローデッド」「マトリックス レボリューションズ」で3部作完結となった同シリーズの新たな物語を描く、18年ぶりとなるシリーズ新章。主人公ネオを演じるキアヌ・リーブスが過去作と変わらず同役を担当するほか、トリニティー役のキャリー=アン・モス、ナイオビ役のジェイダ・ピンケット・スミスらが続投。ネオを救世主と信じ、世界の真実を伝え、彼を導くモーフィアス役を「アクアマン」のブラックマンタ役で知られるヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、ネオの宿敵スミス役をドラマ「マインドハンター」のジョナサン・グロフが新たに演じ、ニール・パトリック・ハリス、クリスティーナ・リッチらが扮する新キャラクターも登場する。シリーズの生みの親であり、過去の3作品を監督しているラナ・ウォシャウスキーがメガホンをとった。
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実に衝撃的であった映画『マトリックス』三部作はまだまだ記憶に新しいが、なんと突然続編が登場する。当然、観ないで済ますという手はない。

冒頭、とある雑居ビルの一室で、バッグスはトリニティーによく似た女性がエージェントと戦う姿を見る。しかし、次の瞬間、バッグスはエージェントから追われることになる。ところが、エージェントの1人がなぜかバッグスを助ける。エージェントは彼に赤いカプセルを渡す。それはネオが飲んだあのカプセル。それを飲むと、記憶を失っていたモーフィアスが戻ってくる。そのモーフィアスは、ローレンス・フィッシュバーンではない。

場面が変わり、トーマス・アンダーソンが登場する。人気ゲーム「マトリックス」を開発した世界的ゲームデザイナーとなっており、普通に会社に属して生活をしている。そこには救世主の姿はない。前作のラストがどうだったか記憶を探るが、よくわからない。トーマスは、アナリストの診察を受けながら、会社の指示に従って続編である<バイナリー>を製作している。

トーマスが同僚と行くカフェには、気になる女性がしばし現れる。それはトリニティーであるが、そこではティファニーと名乗っている。お節介な同僚の手助けでトーマスはトリニティーと会話をすることができたが、彼女には2人の子供と夫がいる。トーマスは、しばしばフラッシュバックに襲われる。それはエージェント・スミスであるが、トーマスにその記憶はない。自らを落ち着かせるため、いつも飲んでいる青いカプセルを手にするが、得体の知れない感情に駆られ、カプセルを放り投げてしまう。

いったい、何がどうなったのか、どうしてネオとトリニティーは記憶を失っているのか。分からないまま物語は進む。トーマスがオフィスに戻ると、突然けたたましく非常ベルが鳴り出す。避難する社員で混乱する中、トーマスの元にメールが届く。
“真実を知りたいのなら、その先のドアに入れ”
指示通り向かった先にいたのは、モーフィアス。同時に警察官が突入し、激しい銃撃戦が展開される。

そしていつの間にかトーマスはアナリストの部屋で目を覚ます。夢か現実か、よくわからなくなるのが、マトリックスの世界。ビルの屋上で酒を煽りながら、「心を解き放て」とつぶやきながら飛び降りようとした、トーマスを引き留めたのはバッグス。光るドアに入ると、そこには過去の自分やモーフィアスが映し出されている。そこでモーフィアスは、再び赤と青の2つのピルを差し出し、選択を迫る。そしてトーマスは赤いピルを飲む・・・

前作の続編とされていながら、物語は新たな世界で新たな展開を見せる。再び現実の世界でポッドの中で目を覚ましたトーマス=ネオは、向かいのポッドにトリニティーが眠っているのを見る。その場でトリニティーを助けることができなかったネオは、バッグスら仲間のいるムネモシュネ号へ連れてこられ、徐々に本来の記憶や勘を取り戻していく。そこで前作でネオがもたらせた平和が続かなった事実を知らされる。そしてネオはトリニティーを救出するためにマトリックスへと戻っていく。

現実世界の登場人物たちは、前作に登場したメンバーのようであるが、覚えていない。この映画をある程度理解するためには、前シリーズ三部作を事前に復習してからの方がいいかも知れない。前シリーズで存在感のあったモーフィアスがなぜ若返っているのか明確な説明はなくよくわからない。そしてやはり中心となるのが、ネオとトリニティー。しかし、ストーリーは説明が不十分でよく理解できたとは言い難い。エージェント・スミスがなぜアナリストと対立したのかもよくわからない。何から何まですべて説明して欲しいとは言わないが、様々な疑問が解消されないままだとどうも消化不良に陥ってしまうのである。

映画の解釈は人それぞれであるが、第1作の衝撃度が素晴らしかっただけに、その後の続編がどうにも消化不良感に苛まされてしまった。マトリックスの中ではスーパーヒーローばりのアクションが展開されるが、それはそれで大いなる見所であった。第1作の余韻で3作続いたが、何度も観たいと思わされるのはやはり第一作だけ。そこがなんとも言えず残念なシリーズである・・・


評価:★★☆☆☆







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2022年07月22日

【夕陽のあと】My Cinema File 2570

夕陽のあと.jpeg
 
2019年 日本
監督: 越川道夫
出演: 
貫地谷しほり:佐藤茜
山田真歩:日野五月
松原豊和:日野豊和
永井大:日野優一
川口覚:新見秀幸
木内みどり:日野ミエ
渡辺早織:山本恵
鈴木晋介:伊藤論
宇野祥平:吉田
滝沢涼子:前川玲子

<映画.com>
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豊かな自然に囲まれた鹿児島県長島町を舞台に、産みの親と育ての親である2人の女性を中心に織りなされる物語を描いた人間ドラマ。1年前に島にやって来た茜は、食堂で働きながら地域の子どもたちの成長を見守り続けていた。一方、島の名産物・ブリの養殖業を夫とともに営む五月は、赤ん坊の頃から育ててきた7歳の里子・豊和との特別養子縁組申請を控え、本当の母親になる喜びに胸を膨らませていた。そんな中、児童相談所の職員により、豊和はかつて東京のネットカフェで起きた乳児置き去り事件の被害者だったことが明かされる。そして、その事件の被告人である産みの母親は、島の食堂で働く茜だった。茜は7年の歳月を経て、再び息子を取り戻すべく島にやって来たのだ。突然の実母の登場に動揺する五月だったが……。茜を『くちづけ』の貫地谷しほり、五月を「アレノ」の山田真歩がそれぞれ演じる。監督は「海辺の生と死」「二十六夜待ち」の越川道夫。
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物語の舞台は、鹿児島の漁師町、長島町。男たちは漁に出て、戻って来れば妻たちは市場で働く。両親が働いている7歳の豊和(とわ)は、朝食は祖母と済ませると、同級生たちと通学する。そんな豊和たちに声をかけるのは、1年前から町の食堂で働く茜。物語は、そんな漁師町で静かに始まる。妻たちが話題にするのは、ある女性の不妊治療。子供ができず、治療にお金がかかり、諦めようかと話をする。切実な問題である。

実は、豊和は里子である。両親は長年の不妊治療の末、豊和を引き取ったのである。父親の優一は親からブリの養殖場を引き継ぎ、仕事もようやく軌道に乗ってきたことから、母親の五月と豊和との特別養子縁組を望んでいる。そんな五月は、仕事終わりの茜を夕陽が良く見える場所に連れていく。茜に元気がない様子を気にかけてのことであるが、茜は何も語らない。そんな茜は、小学校のキャンプで豊和たちと過ごす。その頃、優一と五月は久しぶりに二人で飲みに行くが、会話の内容は豊和のことばかりであった。

そんな静かな物語が、特別養子縁組の面談を機に大きく動いていく。その日、優一と五月の2人は、初めて豊和の生みの親の話を聞く。なんと、生後3か月で豊和はネットカフェに置き去りにされ、生みの母親は自殺を図るも死にきれずに執行猶予の判決を受けて豊和を手放していたのである。そしてその名前を聞き、2人は驚愕する。それは街の食堂で働く茜であった。偶然であろうはずはなく、五月は慌てて茜の家に遊びに行っていた豊和を連れ戻しに行く。

茜に対する思いやりの気持ちは消え、今は五月の心には不安しか残らない。そして茜を訪ねた役所に務める秀幸は、「豊和の母親に戻りたい」という茜の言葉に絶句する。そして茜は親権を取り戻そうと動き出す。それに対し、豊和を手放すわけにはいかない五月は、一時は感情的になりつつも、置き去り事件のあった東京に行く決心をする。そして当時の児童相談所の保護司に話を聞き、豊和を置き去りにしたネットカフェ、そして茜が飛び降りようとしたビルを巡り歩く・・・

生みの親と育ての親の対立と言えば、『八日目の蝉』を思い出す。浮気相手の子供を連れ去って育てていた女と生みの母親との物語であったが、ここでは赤ん坊を手放さざるを得なかった母親の事情が同情を呼ぶ。詳しい事情はわからないが、若い母親が夫のDVに苦しみ、子供を育てていくお金が尽き、途方に暮れた姿に哀れを催す。親切が一転して憎しみに変わった五月もそんな茜の豊和に対する想いを綴った記録を見て、その苦悩を知る。

果たしてどうなるのだろうと物語の展開が気になる。しかし、「生みの親より育ての親」という諺がある。重要なのは親の思いよりも子供の思い。豊和の気持ちを考えれば、それは「育ての親」になる。小学生の子供にとって、ある日突然、母親だと思っていた人が違うと言われ、別の人を母だと言われても納得はできないだろう。2人の母親のそれぞれの気持ちもよくわかる。実に深いテーマを投げかけてくる映画である。

茜の過去を知った五月。そして何も知らない豊和の無邪気な気持ち。物語は五月と茜の対立を越えた決着を迎える。それはまさにベストと言えるもの。2人の母親の決断に拍手を送りたい。登場人物みんなが幸せになれることを願わずにはいられない映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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