
原題: Greenland
2020年 アメリカ
監督: リック・ローマン・ウォー
出演:
ジェラルド・バトラー:ジョン・ギャリティ
モリーナ・バッカリン:アリソン・ギャリティ
ロジャー・デイル・フロイド:ネイサン・ギャリティ
スコット・グレン:デイル
<映画.com>
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突如現れた彗星による世界崩壊までの48時間を、普通の一家の目線で描いたディザスタームービー。突如現れた彗星の破片が隕石となり地球に衝突した。さらなる巨大隕石による世界崩壊まで残り48時間に迫る中、政府に選ばれた人々の避難が始まる。建築技師の能力を見込まれたジョン・ギャリティ、そして妻のアリソンと息子のネイサンも避難所を目指して輸送機に駆けつけた。しかし、ネイサンの持病により受け入れを拒否され、家族は離れ離れになってしまう。人々がパニックに陥り、無法地帯と化していく中、生き残る道を探すギャリティ一家が目にしたのは、非常事態下での人間の善と悪だった。『エンド・オブ・ホワイトハウス』シリーズのヘラルド・バトラー、『デッドプール』シリーズのモリーナ・バッカリン、『ドクター・スリープ』のロジャー・デイル・フロイドがギャリティ一家を演じる。監督は『エンド・オブ・ステイツ』でバトラーとタッグを組んだリック・ローマン・ウォー。
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主人公は、建築技術者のジョン・ギャリティ。仕事を早めに切り上げると、いそいそと帰宅する。妻アリとの関係はなんとなくぎこちない。そこから訳ありなのだろうと推測がつく。そんな親の様子とは反し、学校から帰宅した息子ネイサンは父の姿に大喜びする。2人の話題は、現在地球に接近中の彗星クラークの話。そんなネイサンは糖尿病を患っている。折から近所の友人たちを招いてパーティを開くことになっており、ジョンはネイサンを連れて買物にでかける。すると突然ジョンのスマホがアラームを告げる。
それは「大統領アラート」で、ジョンの家族に避難を指示するもの。訝しく思うジョンだが、急いで帰宅すると家には友人たちがすでに到着しており、これから始まる隕石の天体ショーをテレビで見ようとしている。バミューダ海域を映したカメラには何の変化もないが、突然地鳴りのような音が響き渡る。様子を見に外に出たジョンを衝撃波が襲い、テレビのニュースはフロリダ州のタンパに落ちた巨大隕石の被害を伝える。そして再びジョンのスマホと家のテレビがアラートを受信し、ギャリティ家の3人が最優先避難者に選ばれたと伝える。
友人たちはあわてて自宅へと戻るが、アラートが届いているのはギャリティ家だけ。ジョンとアリは荷造りして車に乗り込む。アラートが届いていない近所の住民たちのある母親は、半狂乱になって子供だけでも一緒に連れて行ってくれとジョンの車の前に立ち塞がる。懇願する母親を振り切ってジョンは車を出すが、こういう時の行動には考えさせられるものがある。冷たいようだが、たとえ連れて行ってもアラートの対象でないから避難先で子供だけ拒否されるかもしれないというジョンの冷静な意見に頷く。
指定された空軍基地に着いた3人が車を降りてゲートへ向かうと、そこには多くの人が殺到している。ようやく基地内に入れた3人はリストバンドをつけられ絶対になくさないよう忠告される。荷物は1家族1バッグと制限され、必要最小限にまとめていると、ネイサンのインシュリンが見当たらない。車内に落としてきたことがわかり、ジョンは離陸が迫る中、取りに戻る。ところが、実は病人は避難対象外にされているため、事情がわかるとアリとネイサンは搭乗を拒否されてしまう。ここに至り、ジョンはアリとネイサンとはぐれてしまう。
この手のパニック映画はよくある。主人公一家がさまざまな障害を乗り越えて逃げていくものである。『2012』(My Cinema File 488)もそんなパニック映画だったが、人間の醜さと温かさがこの映画でも数多描かれる。誰もが自分だけは助かりたいと思うもの。法律にも「緊急避難」というのが認められていて、自分の命がかかっている時には溺れる者から浮き輪を奪っても罪にはならない。そんな人間の醜さから、一時はジョンの家族3人がバラバラになってしまう。
そんな中で、家族が再開できたのは「おじいちゃんの家で落ち合おう」と集合場所を決めたことが一つ。そして「情報」。グリーンランドに選ばれた者が入れるシェルターがあるとわかり、カナダからそこへ向かう航空機があるとわかる。自分だったらどうするだろうと映画を観ながら考える。しかし、巨大隕石の落下のインパクトは全地球規模で影響が出る。恐竜の絶滅を甘く見てはいけない。ジョンはグリーンランドに向かう決断を下す。
映画のタイトル『グリーンランド』とは、避難シェルターのある場所。ジョンはアリとネイサンを連れてグリーンランドに避難する。その逃避行を物語は描いていく。ネイサンが子供ながら糖尿病でインシュリンの注射が必要だとか、人間の醜い行動(ただし、誰もが命がかかっている中で醜いといえるかは難しい)で家族3人がバラバラになってしまうとか、物語はハラバラドキドキの展開で観る者を楽しませてくれる。ちなみにジョンが選ばれたのは建築士という技術者だったから。他にも医者とかが選ばれている。自分はどう転んでも対象外だ。
主人公は、アクション映画に多々出演しているジェラルド・バトラー。妻のアリを演じるのはドラマ『ゴッサム』でお馴染みのモリーナ・バッカリン。最後の最後までスリリングな展開は、見応え十分である。ギクシャクしていた夫婦関係も危機の中で再び一枚岩になる。人類の大半が犠牲になるわけで、ハッピーエンドと言えるのかどうかはわからないが、ラストの日差しが眩しい映画である・・・
評価:★★☆☆☆