2022年09月30日

【グリーンランド 地球最後の2日間】My Cinema File 2600

グリーンランド 地球最後の2日間.jpeg

原題: Greenland
2020年 アメリカ
監督: リック・ローマン・ウォー
出演: 
ジェラルド・バトラー:ジョン・ギャリティ
モリーナ・バッカリン:アリソン・ギャリティ
ロジャー・デイル・フロイド:ネイサン・ギャリティ
スコット・グレン:デイル

<映画.com>
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突如現れた彗星による世界崩壊までの48時間を、普通の一家の目線で描いたディザスタームービー。突如現れた彗星の破片が隕石となり地球に衝突した。さらなる巨大隕石による世界崩壊まで残り48時間に迫る中、政府に選ばれた人々の避難が始まる。建築技師の能力を見込まれたジョン・ギャリティ、そして妻のアリソンと息子のネイサンも避難所を目指して輸送機に駆けつけた。しかし、ネイサンの持病により受け入れを拒否され、家族は離れ離れになってしまう。人々がパニックに陥り、無法地帯と化していく中、生き残る道を探すギャリティ一家が目にしたのは、非常事態下での人間の善と悪だった。『エンド・オブ・ホワイトハウス』シリーズのヘラルド・バトラー、『デッドプール』シリーズのモリーナ・バッカリン、『ドクター・スリープ』のロジャー・デイル・フロイドがギャリティ一家を演じる。監督は『エンド・オブ・ステイツ』でバトラーとタッグを組んだリック・ローマン・ウォー。
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主人公は、建築技術者のジョン・ギャリティ。仕事を早めに切り上げると、いそいそと帰宅する。妻アリとの関係はなんとなくぎこちない。そこから訳ありなのだろうと推測がつく。そんな親の様子とは反し、学校から帰宅した息子ネイサンは父の姿に大喜びする。2人の話題は、現在地球に接近中の彗星クラークの話。そんなネイサンは糖尿病を患っている。折から近所の友人たちを招いてパーティを開くことになっており、ジョンはネイサンを連れて買物にでかける。すると突然ジョンのスマホがアラームを告げる。

それは「大統領アラート」で、ジョンの家族に避難を指示するもの。訝しく思うジョンだが、急いで帰宅すると家には友人たちがすでに到着しており、これから始まる隕石の天体ショーをテレビで見ようとしている。バミューダ海域を映したカメラには何の変化もないが、突然地鳴りのような音が響き渡る。様子を見に外に出たジョンを衝撃波が襲い、テレビのニュースはフロリダ州のタンパに落ちた巨大隕石の被害を伝える。そして再びジョンのスマホと家のテレビがアラートを受信し、ギャリティ家の3人が最優先避難者に選ばれたと伝える。

友人たちはあわてて自宅へと戻るが、アラートが届いているのはギャリティ家だけ。ジョンとアリは荷造りして車に乗り込む。アラートが届いていない近所の住民たちのある母親は、半狂乱になって子供だけでも一緒に連れて行ってくれとジョンの車の前に立ち塞がる。懇願する母親を振り切ってジョンは車を出すが、こういう時の行動には考えさせられるものがある。冷たいようだが、たとえ連れて行ってもアラートの対象でないから避難先で子供だけ拒否されるかもしれないというジョンの冷静な意見に頷く。

指定された空軍基地に着いた3人が車を降りてゲートへ向かうと、そこには多くの人が殺到している。ようやく基地内に入れた3人はリストバンドをつけられ絶対になくさないよう忠告される。荷物は1家族1バッグと制限され、必要最小限にまとめていると、ネイサンのインシュリンが見当たらない。車内に落としてきたことがわかり、ジョンは離陸が迫る中、取りに戻る。ところが、実は病人は避難対象外にされているため、事情がわかるとアリとネイサンは搭乗を拒否されてしまう。ここに至り、ジョンはアリとネイサンとはぐれてしまう。

この手のパニック映画はよくある。主人公一家がさまざまな障害を乗り越えて逃げていくものである。『2012』(My Cinema File 488)もそんなパニック映画だったが、人間の醜さと温かさがこの映画でも数多描かれる。誰もが自分だけは助かりたいと思うもの。法律にも「緊急避難」というのが認められていて、自分の命がかかっている時には溺れる者から浮き輪を奪っても罪にはならない。そんな人間の醜さから、一時はジョンの家族3人がバラバラになってしまう。

そんな中で、家族が再開できたのは「おじいちゃんの家で落ち合おう」と集合場所を決めたことが一つ。そして「情報」。グリーンランドに選ばれた者が入れるシェルターがあるとわかり、カナダからそこへ向かう航空機があるとわかる。自分だったらどうするだろうと映画を観ながら考える。しかし、巨大隕石の落下のインパクトは全地球規模で影響が出る。恐竜の絶滅を甘く見てはいけない。ジョンはグリーンランドに向かう決断を下す。

映画のタイトル『グリーンランド』とは、避難シェルターのある場所。ジョンはアリとネイサンを連れてグリーンランドに避難する。その逃避行を物語は描いていく。ネイサンが子供ながら糖尿病でインシュリンの注射が必要だとか、人間の醜い行動(ただし、誰もが命がかかっている中で醜いといえるかは難しい)で家族3人がバラバラになってしまうとか、物語はハラバラドキドキの展開で観る者を楽しませてくれる。ちなみにジョンが選ばれたのは建築士という技術者だったから。他にも医者とかが選ばれている。自分はどう転んでも対象外だ。

主人公は、アクション映画に多々出演しているジェラルド・バトラー。妻のアリを演じるのはドラマ『ゴッサム』でお馴染みのモリーナ・バッカリン。最後の最後までスリリングな展開は、見応え十分である。ギクシャクしていた夫婦関係も危機の中で再び一枚岩になる。人類の大半が犠牲になるわけで、ハッピーエンドと言えるのかどうかはわからないが、ラストの日差しが眩しい映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2022年09月24日

【護られなかった者たちへ】My Cinema File 2599

護られなかった者たちへ.jpeg
 
2021年 日本
監督: 瀬々敬久
原作: 中山七里
出演: 
佐藤健:利根泰久
阿部寛:笘篠誠一郎
清原果耶:円山幹子
林遣都:蓮田智彦
永山瑛太:三雲忠勝
緒形直人:城之内猛
鶴見辰吾:東雲
三宅裕司:櫛谷貞三
吉岡秀隆:上崎岳大
倍賞美津子:遠島けい

<映画.com>
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ベストセラー作家・中山七里の同名ミステリー小説を「8年越しの花嫁 奇跡の実話」の主演・佐藤健と瀬々敬久監督のコンビ、阿部寛の共演で映画化。東日本大震災から9年後、宮城県内の都市部で全身を縛られたまま放置され餓死させられるという凄惨な連続殺人事件が発生した。被害者はいずれも善人、人格者と言われていた男たちだった。宮城県警捜査一課の笘篠誠一郎は、2つの事件からある共通項を見つけ出す。そんな中、利根泰久が容疑者として捜査線上に浮かび上がる。利根は知人を助けるために放火、傷害事件を起こしたて服役し、刑期を終えて出所したばかりの元模範囚だった。犯人としての決定的な確証がつかめない中、第3の事件が起こってしまう。佐藤が容疑者の利根役、阿部が利根を追う刑事・笘篠役を演じるほか、清原果耶、倍賞美津子、吉岡秀隆、林遣都らが脇を固める。
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2011年3月、東日本大震災が起こる。津波被害から逃れた人々が避難している小学校。家族を心配して駆けつけてきたさまざまな人たち。宮城県警捜査一課の笘篠誠一郎もその1人。妻と息子を捜し求めるが、2人の姿はそこにない。そんな笘篠の後ろ姿をいぶかし気に見送る1人の若者。居場所を求めて校舎内を歩き、やがて教室の隅っこで座り込んでいる黄色いジャンパーの子供のそばに座り込む。

それから9年。笘篠は妻の遺体こそ発見されたものの、子供は依然として行方不明のまま。1人生き残ったという自責の念からか、仕事に没頭する毎日である。そんなある日、仙台市内の老朽化したアパートの空き部屋で男の死体が発見される。その男は手足を拘束されたまま放置されて餓死していた。捜査の結果、被害者は仙台市青葉区保健福祉センターの課長を務める三雲忠勝と判明する。

笘篠と後輩の刑事蓮田は、さっそく三雲の勤める保健福祉センターに聞き込みに向かう。会社での三雲は上司からも部下からも信頼され、仕事にも真面目な人物。妻の証言からも三雲の善人ぶりが伺われ、恨みを買う可能性は低い。部下の円山幹子が保健福祉センターの仕事について笘篠と蓮田に説明するが、生活保護率が上がる一方、予算削減によって厳しい状況がわかる。必要な人に行き渡らず、逆に不正受給が蔓延る現状も笘篠と蓮田は目にする。

そしてまもなく第二の事件が起る。被害者は、杜浦市福祉保健事務所の元所長・城之内猛。無人の小屋に拘束されて放置された城之内の死因は、三雲同様に餓死。そして城之内もまた善人と評判を得ていた。しかし、8年前に2人が杜浦市福祉保健事務所で共に働いていたことがわかり、笘篠は生活保護申請問題のトラブルが原因と睨み、円山に再び聞き込みに向かう。

一方、物語は震災時、小学校に避難していた若者・利根泰久を追う。震災後、刑務所に収監されていたようで、更生保護司の紹介でとある鉄工所を訪ねる。社長は似たような前科者を雇っているが、利根が放火をしたと知ると、採用を渋る。それでも何とか採用されると住み込みで働き始める。利根が思い出すのは、9年前の避難所暮らし。そこで親身になって利根を気遣ってくれた老女・遠島けいと、黄色いジャンパーの子供カンちゃんとの出会いであった。

一見、何の関係もなさそうな2つの物語が、震災時と9年後とを交互に繰り返して進む。生活保護の申請にまつわるトラブルを調べる笘篠の姿を通じて生活保護の問題点が浮き上がる。就労の事実を隠して受給する母娘の家庭を訪ねる円山。子供を塾に行かせたいが、スーパーのパート収入では不可能だと訴える母親に、円山はそれは認められないと告げる。また高級車に乗る男を訪ねた円山は返金を強く求める。車は預かっているものとごまかす男に車検証を見せろと詰め寄る姿はなかなかである。

生活保護にまつわる問題はいろいろと耳にする。受給できずに餓死する人がいる一方、不正受給もはびこる。円山が追求する2件の不正受給だが、一概に同列で論じるのは難しそうである。笘篠の調査によって、杜浦市福祉保健事務所にはトラブルになった案件があり、その中に遠島けいの申請を却下したものが見つかる。そしてそれに関して利根泰久という男が容疑者として浮上してくる。ここに2つの物語が1つに繋がる・・・

「護られなかった者たち」というのは、震災で犠牲になった人であり、生活保護が受けられなくて亡くなった人という意味があるのだろうと思う。生活保護の問題は確かにあるのだろうと思う。ここでは福祉保健事務所の職員が無惨に殺害されるという事件が起こり、それはあたかも職員の無慈悲な態度が問題であるかのように描かれる。しかし、それでもよくよく考えれば、犠牲となった職員にも十分に理由はあるように思う。「簡単に社会保障に頼るな」と言わんばかりの態度もある意味当然であると思う。

素直に「ひどい職員だ」と思えるなら、この映画もストレートに楽しめたのかもしれないが、そうではないのでどうも釈然としないものが残る。年金に入っていなかったのは自己責任だし、「いざとなったら生活保護があるから年金なんて入らなくてもいい」と考える者を認めていたら年金制度自体が成り立たない。登場人物である遠島けいが生活保護の申請を取り下げて餓死したのは、やはり本人の選択である。

そうした釈然としないものがあるので、何となくストーリーに引っ掛かりを覚えてしまうが、それを除けば、深い味わいが残る。大勢の犠牲者が出た震災であるが、似たようなストーリーはたくさんあるのかもしれない。原作の小説があって、ストーリーも微妙に違うようである。小説には小説の良さがあるので、また違った味わいがあるのかもしれない。そのうちに原作小説も読んでみようと思わされる。


遠島けいは最後にどんなことを考えていたのだろうか。それはきっと穏やかなものだったのではないだろうかと思わずにはいられない映画である・・・


評価:★★★☆☆







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2022年09月23日

【燃えよ剣】My Cinema File 2598

燃えよ剣.jpeg
 
2021年 日本
監督: 原田眞人
原作: 司馬遼太郎
出演: 
岡田准一:土方歳三
柴咲コウ:お雪
鈴木亮平:近藤勇
山田涼介:沖田総司
尾上右近:松平容保
山田裕貴:一橋慶喜
たかお鷹:井上源三郎
坂東巳之助:孝明帝
伊藤英明:芹沢鴨

<映画.com>
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新選組副長・土方歳三の生涯を描き、過去に映画化、ドラマ化もされてきた司馬遼太郎の歴史小説を、『関ヶ原』の原田眞人監督&岡田准一主演の再タッグで新たに映画化。江戸時代末期。黒船の来航により、外国から日本を守るため幕府の権力を回復させようとする佐幕派と、天皇を中心にした新政権を目指す討幕派の対立が深まりつつあった。武州多摩の農家に生まれた土方歳三は「武士になりたい」という思いで、近藤勇、沖田総司ら同志とともに京都へ向かう。芹沢鴨を局長に、徳川幕府の後ろ盾で新選組を結成し、土方は「鬼の副長」と恐れられながら、討幕派の制圧のため京都の町で活躍を見せるが……。土方歳三役の岡田のほか、土方と生涯愛を貫くお雪役を柴咲コウ、近藤勇役を鈴木亮平、沖田総司役を山田涼介、芹沢鴨役を伊藤英明がそれぞれ演じる。
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1860年、桜田門外で井伊直弼が暗殺されて以降、幕府の威信は失墜し京の治安は急激に悪化する。そんな中、天然理心流を掲げる道場「試衛館」に在籍する田舎百姓の土方歳三は、同郷の近藤勇や沖田総司、井上源三郎と共に武士となることを夢見て近隣の水争いなどで木刀を振り回している。やがて近藤勇が結婚によって天然理心流の正式な後継者となり、試衛館は江戸に道場を開く。そこには山南敬介や藤堂平助など実力者が集うようになる。

その頃、京の都の治安維持のため、一橋慶喜は会津藩主の松平容保を京都守護職に任命し、治安回復を命じる。藩内では反対意見が続出したものの、立場上断ることはできず、さらに不逞浪士を自身の兵を用いて殺害することも出来ず、松平容保は困り果てる。そこで全国から腕に自信のある者を身分を問わず集め京の守護に当てることにする。道場の経営難に陥っていた近藤は、多額の報酬と名を挙げるチャンスに食い付き、土方の反対を押し切り「浪士組」への参加を決定する。

浪士組は発起人の清河八郎が尊王攘夷の思想のために私物化を試みており、早々にその発想を見切った土方は近藤に浪士組に参加していた芹沢鴨へと接近させる。芹沢は会津藩との強い繋がりを持っており、土方は彼を足がかりとして「壬生浪士組」を発足すると、長州藩の浪士を筆頭とした倒幕派の浪士の殺害を決行。こうした活躍によって京の治安は回復し、新人隊士が次々と壬生浪士組へと参加し始める。

人数が増えればそれなりの統率や規律が必要となってくる。そこで土方は「局中法度」を設定し、厳格に運用する。何せ腕自慢で集まった隊士たちであり、その行動はしばし道を外れる。破った隊士に切腹を命じる土方。その姿勢には批判が集まるも、土方は隊長である近藤の代わりに恨まれ役を率先して引き受けようという意図があり、意に解さない。しかし、京の治安が戻る一方で、酒乱かつ荒々しい性格の芹沢の行動は苛烈化し、商人に対する強引な金銭の要求や女性に対する性的暴行が繰り返され、隊の評判が悪化する。

これに対し、松平容保に呼び出された土方は、隊に対する後援の約束と引き換えに芹沢の始末を命じられる。芹沢は剣客でもあり、暗殺は容易ではない。そこで土方は沖田、井上、斎藤一を連れて夜半に芹沢の家に押し入り、芸妓と同衾中の芹沢を襲撃してこれを惨殺する。その頃から、隊は新しい士道を選ぶ組織として「新選組」を名乗り始め、土方は副局長を務める。一方、夫を長州藩の藩士に殺害された未亡人の雪と知り合い、仲を深めていく・・・

原作は、司馬遼太郎の歴史小説。江戸郊外で武士の真似事をしていた土方歳三を主人公に、新選組の活動を描いていく。平和な世の中であれば、農民で終わったはずの人物が、歴史の表舞台に躍り出る。激動の時代ならではであるが、こういう時代はこうした埋もれるはずの人物の活躍が出やすいとも言える。有名な新選組であるが、その活動期間はわずか6年であったと言う。それをフィクションが混じっているとは言え、こうした映画で改めて知ることができるというのもいいものである。

映画は歴史を追って進んでいく。長州藩の浪人が集まっているらしいという情報を得て捜索にあたる新選組。二組に分かれて近藤が率いるグループが「池田屋」に向かう。30人近くいる相手に対し、近藤以下10人で果敢に侵入する。室内での斬り合いはなかなかの迫力。その結果、27人の尊王攘夷派の浪士を殺害し、企てていた計画を阻止することに成功する。

しかし、歴史の動きは止められない。池田屋事件で新選組は注目を集めるようになるが、新たなメンバーが入る一方、既存メンバーとの間で意見がすれ違い、山南が「局中法度」違反として切腹させられる。近藤の暗殺計画が起こり、土方は伊東と藤堂を含めた御陵衛士を暗殺する。そんな中、1867年になり徳川慶喜は大政奉還を行い将軍職を辞する。そして「鳥羽・伏見の戦い」が始まり、「戊辰戦争」へと繋がっていく。「鳥羽・伏見の戦い」では、慶喜が指導力を発揮して増援を送り込んでいたら戦況はどうなっていたか。歴史のifを思わずにはいられない。

そして物語は箱館の五稜郭で終わる。史実はともかくとして、純粋にエンターテイメンとして面白い。新選組はいろいろな角度から小説や映画に採り上げられている。お気に入りは、なんと言っても『壬生義士伝』であるが、この映画もなかなか面白かったと言える一作である・・・


評価:★★☆☆☆









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2022年09月22日

【われらが背きし者】My Cinema File 2597

われらが背きし者.jpeg

原題: Our Kind of Traitor
2016年 アメリカ
監督: スザンナ・ホワイト
出演: 
ユアン・マクレガー:ペリー
ステラン・スカルスガルド:ディマ
ダミアン・ルイス:ヘクター
ナオミ・ハリス:ゲイル
ジェレミー・ノーサム:オーブリー・ロングリッグ

<映画.com>
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『裏切りのサーカス』の原作などで知られ、元MI6(イギリス秘密情報部)という経歴を持つ作家ジョン・ル・カレの同名スパイ小説を、ユアン・マクレガー主演で映画化。イギリス人大学教授ペリーと妻のゲイルは、モロッコで休暇中にロシアンマフィアのディマと偶然知り合う。ディマから組織のマネーロンダリングの情報を聞いたペリー夫妻は、1つのUSBメモリをMI6に渡してほしいとディマに懇願され、突然の依頼に困惑するが、ディマと彼の家族の命が狙われていると知り、その依頼を仕方なく引き受けてしまう。それをきっかけに、ペリー夫妻は世界を股にかけた危険な亡命劇に巻き込まれていく。主人公ペリー役をマクレガー、ディマ役に『ドラゴン・タトゥーの女』のステラン・スカルスガルドがそれぞれ演じるほか、ダミアン・ルイス、ナオミ・ハリスが脇を固める。
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冒頭、ある会場で署名を終えた男が、記念の銃をもらって妻と娘を連れて帰路に着く。しかし、途中で事故現場に行きあわせ、警官に車を停められる。そしてなんとその警官は、男を妻と娘ともども射殺する。自宅にはまだ幼い子供がいて、今から帰るというその時に酷いことである。

そして場面は変わり、休暇でモロッコを訪れていたのは大学教授のペリーと弁護士の妻ゲイル。ベッドではなぜか途中で抱き合うのをやめてしまう。何か問題を抱えているのだろうが、それは後ほど判明する。そして2人はレストランで食事をするが、ゲイルは仕事の電話が入り店を出て行く。それを見ていた男ディマはペリーに話しかける。一緒に飲もうと。ディマは瞬間的に数字を覚えるという特技があるようで、それを利用して半ば強引にペリーを誘いパーティーに連れて行く。

豪勢なパーティーでは、美女にお酒やドラッグを勧められてもてなされる。しかし、ロシア訛りの英語を話すディマには少し胡散臭いところがある。楽しいひと時を過ごしていたペリーだが、全身に入れ墨をした男が女性をレイプしている姿を目撃する。ガタイの良いいかにもマフィア然とした大男にも関わらず、ペリーは男を突き飛ばし女性を助ける。たちまち反撃に遭うが、ディマが割って入り事なきを得る。この勇気にディマはペリーを気に入り、翌朝テニスに誘う。

そこで、ペリーは妻ゲイルをディマに紹介する。ディマは、その夜行われるディマの娘の誕生日パーティーに2人を招待する。せっかくの休暇の最後の夜であり、2人は誘いを断ろうとするが、ディマは強引である。見ていて危ういと感じるが、ペリーも押し切られてしまう弱さがある。そしてそのパーティーで、ペリーはディマにとんでもないことを頼まれる。何とディマはロシアンマフィア「ヴォーリー」のマネーロンダリング担当だと話す。

冒頭で射殺されたのは、実はディマの友人。殺しを指示したのは、ヴォーリーのボスであるプリンス。更に次は自分だと語る。家族を守るため、ディマは自身が持っている情報と引き換えにMI6に保護を求めるため、1つのUSBを差し出し、それをロンドンに戻ったらMI6に渡して欲しいと頼む。ディマの家族とも知り合い、話を聞いてしまったペリーは、断りきれずUSBを受け取る。

ロンドンに戻ったペリーは、入国審査でUSBをMI6のヘクターに渡す。そこで初めてゲイルにもディマの正体が伝わり、ゲイルはペリーを責める。それも当然と言える。ペリーとしては、渡して終わりだという意識があっただろうが、“プリンス”を追うヘクターとディマの思惑にさらに巻き込まれていく。ディマに接触したヘクターに対し、ディマは安全のためペリー夫妻の同席を条件として出してきたのである。当然の如く断る2人に、ヘクターはディマの友人が殺された時の写真を見せ、2人を同席に合意させる。

平和に暮らしていた2人が突如として危険な仲介役に巻き込まれていく。相手は情け容赦のないロシアン・マフィア。しかもMI6も一枚岩ではなく、ヘクターは上司の承認を得ぬまま見込みでディマと接触を進めていく。家族の安全がかかるディマも必死であり、緊迫感のある展開が続いていく。自分だったらどうするだろうかと考えてみるも、おそらく最初の段階で一緒には飲まないだろう。もともと人見知りの性格ゆえであるが、この映画のような背景があれば安心とも言える性格である。

主演はユアン・マクレガー。この映画のように優男役が多いように思うが、個人的には『スターウォーズ エピソードU』(My Cinema File 429)のオビ=ワン・ケノービが好きである。一方、妻のゲイルに扮するのはナオミ・ハリス。こちらもさまざまな映画に出ているが、この2人が共演というだけでも観る価値はある。緊迫感ある展開は、スパイものの第一人者ジョン・ル・カレの真骨頂だろう。

最後の最後まで飽きさせない展開。観て損のない映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2022年09月18日

【THE BATMAN ザ・バットマン】My Cinema File 2596

THE BATMAN ザ・バットマン.jpeg

原題: The Batman
2022年 アメリカ
監督: マット・リーブス
出演: 
ロバート・パティンソン:ブルース・ウェイン/バットマン
ゾーイ・クラビッツ:セリーナ・カイル/キャットウーマン
ジェフリー・ライト:ジェームズ・ゴードン警部補
ポール・ダノ:リドラー
コリン・ファレル:オズ/ペンギン
アンディ・サーキス:アルフレッド
ジョン・タトゥーロ:カーマイン・ファルコーネ
ピーター・サースガード:ギル・コルソン地方検事

<映画.com>
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クリストファー・ノーランが手がけた『ダークナイト』トリロジーなどで知られる人気キャラクターのバットマンを主役に描くサスペンスアクション。青年ブルース・ウェインがバットマンになろうとしていく姿と、社会に蔓延する嘘を暴いていく知能犯リドラーによってブルースの人間としての本性がむき出しにされていく様を描く。両親を殺された過去を持つ青年ブルースは復讐を誓い、夜になると黒いマスクで素顔を隠し、犯罪者を見つけては力でねじ伏せる「バットマン」となった。ブルースがバットマンとして悪と対峙するようになって2年目になったある日、権力者を標的とした連続殺人事件が発生。史上最狂の知能犯リドラーが犯人として名乗りを上げる。リドラーは犯行の際、必ず「なぞなぞ」を残し、警察やブルースを挑発する。やがて権力者たちの陰謀やブルースにまつわる過去、ブルースの亡き父が犯した罪が暴かれていく。『TENET テネット』のロバート・パティンソンが新たにブルース・ウェイン/バットマンを演じ、『猿の惑星:新世紀(ライジング)』 『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』のマット・リーブス監督がメガホンをとった。
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バットマンはこれまで何度も映画化されている。その完成形がクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』トリロジーだと思っていたので、それほどの間をおかずに再映画化というのには、正直抵抗感があったのは事実。されどやはり観ないわけにはいかない。そういう次第で鑑賞に至る作品。

ところはお馴染みのゴッサム・シティ。すでにブルース・ウェインは、バットマンとして活躍している。ジェームズ・ゴードン警部補との協力関係も確立し、月にバットマークを写すコールサインもお馴染みである。『ダークナイト』トリロジーでは、『バットマン ビギンズ』(My Cinema File 2103)でブルース・ウェインがバットマンになる過程を丁寧に描いていったが、このシリーズではそれは大幅に省略されている。

そして事件が起こる。時に市長選のまっ最中であったが、なんと候補者である現職のドン・ミッチェル市長が自宅で殺害される。そこには犯人によって謎かけが残されており、犯人は自身をリドラーと名乗る。さらにバットマンに宛てられたリドラーからのカードが置かれていたことから、ゴードンはバットマンを現場に呼び入れる。すると、ピート・サベージ本部長をはじめとして、現場の警官たちはバットマンが事件現場に入ることに反発する。それをゴードンが押し切っていく。バットマンはやはりダークヒーローである。

そのバットマンは、情報を求めてペンギンが経営するクラブに押し入る。ボディ・ガードはすべて叩きのめしてペンギンに迫る。しかし、その場で働いていたセリーナ・カイルに何かを感じてマークする。セリーナはその後、警官たちが去った後の市長宅に忍び込む。その姿はキャットウーマン。セリーナは巧みに金庫を開けると、市長に取り上げられていた友人のアニカのパスポートを奪い返す。そしてバットマンがその現場を抑える。

バットマンはセリーナに、アニカ探しを協力することと交換にペンギンのクラブの客から情報を聞き出すことを持ちかける。クラブにはさまざまな有力者たちが集っている。その1人ギル・コルソン検事から情報をひきだそうとしたが、検事もまたリドラーに捕えられてしまう。そしてあろうことか、市長の追悼式に爆弾を付けられたコルソン検事が送り込まれる。現場にバットマンが到着すると、リドラーから電話が入りコルソン検事に質問を与える。

どうやらリドラーの狙いは単なる殺人ではなく、街の有力者たちの裏の悪事を暴かんとするもののよう。爆弾で脅されたコルソン検事は、街で流通する薬物“ドロップ”の大がかりな取引を仕組んだサル・マローニの逮捕のために、情報を提供した者の名前を明かすように迫る質問に答えようとせず、爆弾の犠牲となる。リドラーの狙いは何なのか。バットマンはゴードンと共にそれを追い、キャットウーマン=セリーナもそれに絡む。そしてリドラーは、ブルース・ウェインをもターゲットにする・・・

本作での悪の主役は謎なぞのリドラー。キャットウーマンやマフィアのファルコーネ、マローニ、ペンギンと主要メンバーも総登場。全体としてダークな雰囲気が重く漂う。『ダークナイト』トリロジーでは、ウェイン産業のルーシャス・フォックスが数々の試作品を提供してバットマンの活躍を支えたが、この映画ではバットマンの活躍はかなり抑えられている。ブルース・ウェイン自身も憂を帯びていて、クリスチャン・ベールのイメージとは大きく違う。

ブルース・ウェインを演じるのは、ロバート・パティンソン。今でも『トワイライト』シリーズの色白な吸血鬼のイメージが強いが、むしろこの映画のブルース・ウェインの方が、吸血鬼本来のイメージに近い。『ダークナイト』トリロジーのクリスチャン・ベールとも『ジャスティス・リーグ』(My Cinema File 1906)のベン・アフレックともまったく違うブルース・ウェインである。しかし、この映画のダークな雰囲気にはロバート・パティンソンがよくマッチしている。

背景に流れるニルヴァーナの“Something In The Way”という曲もまるでこの映画のために創られたかのようにこの映画の雰囲気を醸し出す。観終わってみれば、完成形と思っていた『ダークナイト』トリロジーに匹敵する内容。これはこれで素晴らしい。そして最後にジョーカーがその存在を匂わす。つまり、続編があるということで、実に楽しみである。同じバットマンでもこうも違いを楽しめるものなのか。そんな思いを強く抱かせる一作である・・・


評価:★★★★☆












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