
原題: Archive
2020年 アメリカ
監督: ギャビン・ロザリー
出演:
テオ・ジェームズ:ジョージ・アルモア
ステイシー・マーティン:ジュールス・アルモア/J3/J2の声
ローナ・ミトラ:シモーヌ
ピーター・フェルディナンド:ミスター・タッグ
リチャード・グローヴァー:メルヴィン
ハンス・ピーターソン:エルソン
リア・ウィリアムズ:管理システムの電子音声:(英語版)
トビー・ジョーンズ:ヴィンセント・シンクレア
<映画.com>
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『ダイバージェント』シリーズのテオ・ジェームズが主演を務めたSFスリラー。日本の山奥にある施設で人型アンドロイドの開発を進めるロボット工学者ジョージ・アルモア。会社からは成果をあげていないと不評だが、実は亡き妻ジュールをよみがえらせるための研究を続けていた。「アーカイヴ」というシステムを通じて彼女と交流するジュールは、そこから違法にデータを取り出し、J1、J2とバージョンアップしたアンドロイドを開発。そしてついに、まるで本物のジュールのようなJ3の完成が目前に迫る。そんな矢先、J2が予想外の行動をとり始め、さらに施設が外部の何者かに見つかってしまう。共演は「ニンフォマニアック」のステイシー・マーティン、『アンダーワールド ビギンズ』のローナ・ミトラ、『裏切りのサーカス』のトビー・ジョーンズ。ヒューマントラストシネマ渋谷&シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2021」上映作品。
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物語の舞台となるのは、ある秘境めいた山奥にあるARM社の研究施設。設定上、山梨県ということになっているが、山梨県にはとてもありそうにないところである。その研究施設で、たった1人でAI開発を行っているのが主人公のジョージ・アルモア。ロボット2台が話し相手という寂しい環境である。最初のロボットJ1は、言葉は理解できても話せない。2台目のJ2は会話ができる。そして今、ジョージは3台目の制作に取り掛かっている。
ジョージに連絡してくるのは、会社の上司シモーヌ。彼女はジョージに対し研究成果の進展がないと文句を言う。加えて、技術の盗難に遭う危険性が増したため、警備隊を送ると連絡してくる。実は、ジョージはJ2が人と同様に会話をすることができることもJ3を密かに開発していることもシモーヌに報告していないのである。J3は、ボディは上半身までしか出来上がっていない。
J2はJ1のアップロード版。知識の蓄えも進んでいるし、言葉を喋れる。そしてJ3はさらにアップロードし、ある感情を有する予定。ジョージはJ3の開発を進める一方、黒い装置アーカイヴからかかってくる電話で時折会話をしている。会話の相手は妻のジュール。時折、2人でドライブをしていたシーンが回想される。研究が認められ、日本の山梨の施設に行くことになったと語るジョージ。そこへ対向車線から弾き飛ばされた車が視界を覆う・・・
どうやら事故に遭って、妻の肉体は死んでしまったよう。妻の記憶や意識がアーカイヴに記録され、会話ができるようである。だが、近頃アーカイヴのジュールとは通信が途絶えがちで会話も満足にできない状態。そこに本社から訪問者が訪れる。アーカイヴ・システム社の担当者で、シンクレアと名乗る。シンクレアによれば、いずれアーカイヴに記録された故人もまた死に至る可能性を聞き、動揺するジョージ。故人が休眠に入った場合は、アーカイヴの装置ごと丁重に埋葬されると言う。
シンクレア達を追い返したあと、ジョージはJ3を起動させる。初めは混乱状態であったが、会話が交わせるようになる。それを見ていると、J3はジュールのよう。どうやら亡き妻ジュールをJ3に移し、アンドロイドとして復活させようとしているようである。そしてそんなジョージの様子を影からじっと見つめるJ2。J2には感情があり、J3が完成したら自分の役割が取って代わられるのではないかと思っている。人間並のジェラシーである。
ある日、安全システムの修理のためジョージは外出する。鉄塔に上りシステムの修理を行ったが、不具合が続く。どうにか再起動を行い復旧させる。その夜、会社のリスク査定人に呼び出されたジョージは、施設が何者かの組織に狙われていると告げられる。施設にはジョージしかいないはずだが、何者かに睡眠中の姿を隠し撮りした写真が届いたと言い、充分に気をつけろと忠告される・・・
山奥の秘境で密かにアンドロイドの研究を続ける主人公。それはどこか『エクス・マキナ』(My Cinema File 1675)を彷彿とさせる。造っているのはAIではなく、亡き妻の記憶を持ったアンドロイド。アーカイヴに「保管」された妻の記憶。そうやって「生き残る」ことができるのは、果たして幸せなのだろうかとふと思う。それでも妻を思うジョージはJ3の開発を続ける。しかし、一方で確実に施設で何かが起きている。
面白いのはJ2のジェラシー。自分よりも性能の良いJ3を開発するジョージを陰で見つめる。それはあるいは自分が用無しとなることに対する恐怖なのかもしれない。施設の見回りをしたジョージが帰ってくると、雨の中で立ち尽くすJ1を発見する。J1は防水ではないのでショートしたらデータが消えてしまう。窓が割れて何者かが侵入した形跡がある。ミステリアスな展開が続く。そしてすべてがひっくり返るラスト。
そう言えば、映画『アザーズ』も最後にすべての前提がひっくり返るストーリーだった。ミステリアスな展開もそれですべての説明がついてしまう。妻を愛するジョージの思い。自分はアーカイヴの中に入っても生き続けたいと思うだろうか。こんな未来がいつか実現するのだろうか。そんなことを考えてみたくなる映画である・・・
評価:★★★☆☆