2022年11月26日

【ギャング・オブ・アメリカ】My Cinema File 2624

ギャング・オブ・アメリカ.jpeg

原題: Lansky
2021年 アメリカ
監督: エタン・ロッカウェイ
出演: 
ハーヴェイ・カイテル:マイヤー・ランスキー
ジョン・マガロ:青年時代のマイヤー・ランスキー
サム・ワーシントン:デヴィッド・ストーン
アナソフィア・ロブ:アン・ランスキー
ミンカ・ケリー:モーリーン
デビッド・ケイド:ベン・バグジー・シーゲル
シェーン・マクレー:チャーリー・ラッキー・ルチアーノ

<映画.com>
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禁酒法時代から半世紀にわたりアメリカの暗黒街を支配した伝説的マフィア、マイヤー・ランスキーの人生を描いたクライムドラマ。年老いたランスキーに伝記執筆のため作家がインタビューを行い、そこで語られるランスキーの人生を、1910年代から80年代まで、時代を行き来しながらサスペンスフルに描いていく。1981年、マイアミ。作家のデビッド・ストーンは、伝説的なマフィアであるマイヤー・ランスキーの伝記を書くことになり、ランスキー本人にインタビューをする。ランスキーの口から語られる彼の人生は、半世紀以上におよぶギャングたちの抗争の記録でもあった。そしてインタビューが終わりに近づいた頃、ストーンはFBIが3億ドルとも言われるランスキーの巨額な資産を捜査していることを知る。捜査協力を強いられたストーンは、ある決断を下すが……。作家ストーンをサム・ワーシントン、年老いたランスキーをハーベイ・カイテルが演じた。監督・脚本を手がけたエタン・ロッカウェイの父親であるロバート・ロッカウェイが、実際に生前のランスキーにインタビューを行っており、ワーシントン演じる作家ストーンのモデルになっている。
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舞台は1981年のマイアミ。デヴィッド・ストーンは、とあるレストランで緊張の眼差しである人物を待っている。そしてその男がやってくる。初老のその男は、レストランでは顔馴染み。ウエイトレスも気軽に挨拶する。その男の名はマイヤー・ランスキー。デヴィッドはなんとこのマフィアのボスの伝記本を書こうと思い、取材を申し込んだのである。家に家族を残しての単身出張。その背景にはデヴィッドの苦しい生活がある。

ランスキーは自分の伝記本を書くための条件を提示する。それは肺がんを患い、余命宣告を受けたランスキーが死ぬまで原稿は誰にも見せないこと。ランスキーが許可するまで、ストーンに話したことは全てオフレコにすること。内容からすると、生きているうちに公表されるとマズイことだという事が窺える。ランスキーはなぜ自分の本を書きたいのかとストーンに尋ねる。建前の理由はすぐに見抜かれ、本音は別居中の妻子を養うための金が欲しいからだと白状すると、ランスキーに気に入られる。

ランスキーは自身の人生を赤裸々に語り始める。少年時代、ロシアに住むユダヤ人の両親の間に生まれたランスキーは、ある日おじと一緒に道を歩いていて武装したコサック隊と出会う。コサック隊は「袋からイモを出して、投げ上げろ」と命じ、おじが素直に従うと、コサック隊はイモを斬ると見せかけておじの手を斬り落とす。強者が弱者を見下していたぶる姿は、ランスキーの中に強烈な思いと決意をもたらす。その後ランスキーは、一家で渡米する。

10歳になったランスキーは、特に数字が得意な子供であった。近所の大人たちが興じるサイコロ賭博を毎日観察する。初めての賭けは見事に負けて、夕食代として預かった金を失う。金を奪われたことへの怒りからランスキーはオッズと配当金を計算し、確率の変動を見守る。その結果、ランスキーはイカサマを見抜き、金を取り返す。しかし、この経験からランスキーは、ゲームを支配する側になろうと心に誓う。

やがてランスキーは、イタリア系のストリートギャングの一員ラッキー・ルチアーノと出会う。小柄なランスキーにルチアーノは用心棒代を要求する。ところが、ランスキーはこれを敢然と拒否する。その度胸に感心したルチアーノは、ランスキーと生涯の友情を結ぶ。また、ランスキーはユダヤ人ギャング団で出会った男ベンジャミン・シーゲルを相棒とし、ギャング団を組んで酒の密売と賭博で稼いでいく。

時代は禁酒法から大恐慌へと移りゆく。ストーンの取材に応える形で、物語はランスキーの若かりし頃の姿を描いていく。結婚して3人の子供をもうけるが、長男のバーナードは脳性マヒを患っており一生自分の足で歩くことは出来ない。何でも思い通りになるとは限らないというこの事実に、ランスキーは耐え難いほどのショックを受けたとストーンに語る。

この時代のマフィアの抗争は、名画『ゴッドファーザー』(My Cinema File 36)を筆頭にさまざまに映画化され、よく知られている。登場人物たちの名前も聞き覚えのある者が多数出てくる。しかし、ニューヨークでナチズムが台頭すると、集会をしていたナチス協会を襲撃したり、戦時中は海軍に協力してドイツの諜報網を一掃したというエピソードは知られざるものであり、興味深い。

やがてランスキーは、カジノ事業に進出する。そしてそこには、当然ライバルたちを葬ることも含まれる。生前には公表できないわけである。ランスキーの人生は、アメリカのマフィア史と重なる。ラスベガスのフラミンゴ・ホテルにも携わり、キューバにも進出してキューバ最大のカジノ経営者となる。しかし、イスラエルに対する支援として武器を購入する資金や兵器を寄付するが後に帰化は認められず、逆に強制送還の憂き目に遭う。

そんな歴史に翻弄されるところもあるが、FBIはランスキーが巨額の資産を隠しているとして捜査を続ける。それはストーンにも及び、密かにランスキーから巨額資産について聞きだしてくれれば、報奨金を支払うと持ちかける。FBIはとにかくランスキーの巨額資産を追い求めていたようである。そう言えば、晩年のある・カポネを描いた『カポネ』でも同じような様子であったが、カポネの1,000万ドルに比べると、ランスキーのそれは3億ドルと桁がちがう。

映画比較で行けば、カポネの晩年の様子は脱糞したりとかなり惨めであったが、ランスキーはかくしゃくとしている。お金の有無はどちらもわからないが、健康面と疑惑の金額とで比較すると、ランスキーの方が大物だったという事が言える。犯罪者礼賛は好ましくないが、すでに故人であることを考えれば、アメリカ犯罪史と考えればいいのではないかと思う。それにしても、ランスキーの相棒であったシーゲルは、粛清されて人生を終えているわけであるし、マフィアで生き残るのも楽ではなかったのかもしれない。

最後に、ランスキーが開拓した賭博ビジネスは、年間2,500億ドルをアメリカ経済に貢献し、200万人の雇用を生んでいるとテロップが流れる。果たしてランスキーは悪人だったのか。そんなことを考えてみた映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2022年11月25日

【イレイザー リボーン】My Cinema File 2623

イレイザー リボーン.jpeg

原題: Eraser: Reborn
2022年 アメリカ
監督: ジョン・ボーグ
出演: 
ドミニク・シャーウッド:メイソン・ポラード
ジャッキー・ライ:リナ・キムラ
マッキンリー・ベルチャー三世:ポール・ウィトロック
エディ・ラモス:シュガー・ジャックス

<TSUTAYA解説>
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アーノルド・シュワルツェネッガーが主演を務めた『イレイザー』を、ドミニク・シャーウッド主演でリブートしたノンストップアクション。“イレイザー”こと証人保護プログラムの執行人・メイソンが、犯罪組織を告発したリーナを敵の脅威から守り抜く。
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何やらギャングに捕まったチンピラが逆さに吊るされている。同時に彼女も縛られている。せめて彼女だけは助けてくれとチンピラは懇願するも、ギャングは電動ノコギリを手にすると、チンピラに近づく。するとその時、銃声が響き渡り、ギャングは電動ノコギリを落とす。次の瞬間、現れた謎の覆面男がギャングたちを次々と薙ぎ倒す。そして捕らわれていたチンピラを助けると、何とそのチンピラに銃弾を撃ち込む・・・

撃たれたチンピラだが、すぐに目を覚ます。どうやら偽装だったよう。覆面を脱いだ男メイソンは、「これでお前は消去された」とチンピラに告げる。メイソンは証人保護プログラムの腕利の執行人。まずはご挨拶のシーンである。一方、その頃、組織の女リナは密かにFBIに保護を求め、組織から逃げようとしている。妻の座を利用して金庫から何やら黄金のプレートを持ち出すと、夫コスタを突き落として死なせて逃げる。これをマルコが追うことになる。

リナは証人保護プログラムで保護されることになるが、コスタを死なせた事で雲行きが怪しくなる。そしてリナ本人も保護を拒否し、証言も拒否して逃走しようとする。そこに襲いくる組織の殺し屋。間一髪でメイソンが現れてピンチを救う。そしてリナが死んだ事にして南アフリカに身柄を移す。リナも目の前で自分の弁護士が殺されており、やむなくこれに従う。そして隠し口座のパスワードが記されたプレートを捨てると、メイソンについて行く。

南アフリカに移った2人はスラム街の隠れ家に住む。そして本部からメイソンの師匠ポールらが駆け付ける。何やら情報漏洩があったとし、ポールは自分が保護している女性の様子を見に行く。ところが、隠れ家が襲撃されている。何かがおかしい。すると、ポールは発見した保護対象者を殺してしまう。異変を察知したメイソンは、密かにリナに緊急避難の指示を送る。すると、これに気づいたポールはメイソンと対峙する・・・

アクション映画とわかっていて観たのであるが、掴みはそこそこに良かったが、次第に違和感を感じていく。ヒロインであるリナは、しかし美人ではない。キムラという日本人名なので日本人をイメージしていたのかもしれないが、中途半端。殺し屋マルコはリナを逃した責任から指をつめるような真似をするが、それがなぜか親指。悪に寝返ったポールはマルコと手を組むが、手下に「コニチハ」と呼び掛ける。日本を意識しているのかどうかわからないが、違和感満載。

情報はダダ漏れ。メイソンはリナと共に追われる身となる。繰り広げられる銃撃戦はとにかく撃ちまくるが当たらない。まぁ、実際はそんなものなのかもしれない。メイソンはしばしばピンチに追い込まれるが、悪の方はまるで主人公を殺してはいけないかのように振る舞い、結果的にメイソンとリナはピンチを再三に渡って脱出する。冒頭で助けられたチンピラ、シュガーは南アフリカの地で再出発しており、メイソンの相棒として強力に振る舞う。

何だか期待した割には下手なB級映画の空気満載。一昔前の勧善懲悪モノのように正義に都合よく展開するストーリー。最後の顛末も笑ってしまう。事前にもっとチェックをしっかりやっておけば良かったと後悔。これまでの経験からさして面白くない映画であることは十分気付けたと思う。それを怠った自分自身大いに反省したいところである。そんな反省の映画である・・・


評価:★☆☆☆☆








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2022年11月22日

【ジュディ 虹の彼方に】My Cinema File 2622

ジュディ 虹の彼方に.jpeg


原題: Judy
2019年 イギリス
監督: ルパート・グールド
出演: 
レネー・ゼルウィガー:ジュディ・ガーランド
ジェシー・バックリー:ロザリン・ワイルダー
フィン・ウィットロック:ミッキー・ディーンズ
ルーファス・シーウェル:シドニー・ラフト
マイケル・ガンボン:バーナード・デルフォント
ダーシー・ショー:幼いジュディ

<映画.com>
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「オズの魔法使」で知られるハリウッド黄金期のミュージカル女優ジュディ・ガーランドが、47歳の若さで急逝する半年前の1968年冬に行ったロンドン公演の日々を鮮烈に描いた伝記ドラマ。「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズのレニー・ゼルウィガーが、ジュディの奔放で愛すべき女性像と、その圧倒的なカリスマ性で人々を惹きつける姿を見事に演じきり、第92回アカデミー賞をはじめ、ゴールデングローブ賞など数多くの映画賞で主演女優賞を受賞した。1968年。かつてミュージカル映画の大スターとしてハリウッドに君臨したジュディは、度重なる遅刻や無断欠勤によって映画出演のオファーが途絶え、巡業ショーで生計を立てる日々を送っていた。住む家もなく借金も膨らむばかりの彼女は、幼い娘や息子との幸せな生活のため、起死回生をかけてロンドン公演へと旅立つ。共演に『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のフィン・ウィットロック、テレビドラマ「チェルノブイリ」のジェシー・バックリー、『ハリー・ポッター』シリーズのマイケル・ガンボン。「トゥルー・ストーリー」のルパート・グールド監督がメガホンをとった。
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ジュディ・ガーランドの名前は、往年のハリウッド女優とだけ認識している。調べるてみると、1939年の映画『オズの魔法使い』の主人公ドロシー役に大抜擢され、若干17歳でハリウッドのスターダムへと駆け上がったというからその認識も間違いではない。そんな往年の大女優の晩年を描いた映画である。

冒頭に登場するジュディ・ガーランドは2人の子供とともに舞台に立つ。一仕事終え、疲れた体でホテルに戻るも、どうもフロントマンの様子がおかしい。呼ばれたマネージャーが申し訳なさそうに宿泊をお断りする。どうやら支払いが滞っているらしい。長年の贅沢な暮らしから抜けきれないジュディ。深夜にホテルを追い出されたジュディが2人の子供を連れ、頼ったのは元夫シド・ラフトの家。

深夜の突然の訪問でさぞかし迷惑だろうが、何せ自分の子供である。ジュディと子供達を受け入れるが、子供達の教育環境にもよろしくない。シドの説得に、ジュディも反発しつつ渋々応じることにする。それでも面白くないジュディは、その足でとあるホームパーティーへ行く。そこには女優となった娘のライザ・ミネリがいる。その場でジュディは、ニューヨークでバーの経営をしている青年ミッキー・ディーンズと出会う。

物語はデビューしたての頃に戻る。ジュディはその頃、映画スタジオの指示で生活の全てを仕切られている。スレンダーな体型を保つために満足な食事もできず、仕事のスケジュールはぎっしりで睡眠時間も十分に取れない。マネージャーに訴えても、「普通の生活に戻りたいのか」と言われると反論もできない。若いジュディが服のままプールに飛び込んだりしたのは、せめてもの抗議だったのかもしれない。

そして現代のジュディは、遅刻や無断欠勤が続き映画界からは干されている状態。借金は嵩むばかりで、このままでは子供達とも一緒に暮らすことはできない。そんな時、ロンドンではまだ根強いファンがいる事から、公演の話がもたらされる。稼ぐためにはと、シドに子供達を預けるという苦渋の決断を下し、ジュディは単身ロンドンへと渡航する。

ロンドンでは、クラブオーナー、バーナード・デルフォントから歓迎され、世話係としてロザリン・ワイルダーがつけられる。しかし、本番を前日に控えてもジュディは気分が乗らないと言って帰ってしまう。なかなかの問題児ぶりである。そして本番当日も、開始時間が迫っても部屋にこもっている。焦ったロザリンがホテルへ乗り込み、強制的にジュディをクラブへと連れてくると、舞台へと押し出す。ところがジュディは、一歩舞台へ出ると圧倒的な歌唱力とパフォーマンスでもって観客を魅了する。

ジュディの態度はどちらかと言えば高慢。パフォーマンスに関しては問題がないが、それ以外の部分では、とても一緒に仕事をしたいとは思えない。それでもある夜、出待ちしていた2人の男性ファンと出会い、熱烈なファンのその同性愛カップルを勇気づけるところは人気商売をしている者の勤めを果たすものである。されどホテルにミッキーが現れ、ジュディは彼を同じ部屋に泊めることにする。このあたりの感覚はどうもいただけない。

物語は、最後のロンドン公演を追って行く。しかし、その内容は破滅的。何度も結婚と離婚を繰り返し、金銭感覚は麻痺し、薬物にも依存する。華やかな表の顔とは裏腹に、舞台裏の顔は悲劇的。それはデビュー以降の華やかな世界での成功と引き換えだったのか。考えてみれば、気の毒な人だったのかもしれない。ご本人は40代の若さでこの世を去る。それは栄光の彼方と言うには悲しい。

映画『オズの魔法使い』で歌われた名曲『オーバー・ザ・レインボー』をジュディが歌う。しかし、感極まって歌えなくなってしまうと観客全員が続きを唄う。いいシーンであるが、ジュディのさまざまな思いと切なさが伝わってくる。ジュディが駆け抜けたこの時代のハリウッドは、まだ未成熟だったのかもしれない。主演のレニー・ゼルウィガーの熱演がそんなことを伝えてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2022年11月20日

【ウォーリアー】My Cinema File 2621

ウォリアー.jpeg

原題: Warrior
2011年 アメリカ
監督: ギャビン・オコナー
出演: 
ジョエル・エドガートン:ブレンダン・コンロン
トム・ハーディ:トミー・コンロン
ニック・ノルティ:パディ・コンロン
ジェニファー・モリソン:テス・コンロン
フランク・グリロ:フランク・カンパーナ
ケヴィン・ダン:ジト校長
マキシミリアーノ・ヘルナンデス:コルト・ボイド
カート・アングル:コーバ
<映画.com>
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アルコール中毒の父親が原因で離ればなれになっていた兄弟が総合格闘技の対戦相手として再会する姿を、『インセプション』のトム・ハーディと『スター・ウォーズ』新3部作、『アニマル・キングダム』のジョエル・エドガートン共演で描いた人間ドラマ。アル中の父親から逃れるため母親と一緒に家を出たトミーが、14年ぶりに父親のもとを訪ねてきた。学生時代にレスリング選手として活躍していた彼は、高額の賞金がかけられた総合格闘技イベント「スパルタ」に出場するため、元ボクサーである父親にコーチ役を依頼する。一方、かつて格闘家の選手だったトミーの兄ブレンダンは、現在は教師として働きながら妻子を養っていたが、娘の病気に高額な医療費がかかり自己破産の危機に陥ってしまう。ブレンダンは愛する家族を守るため、総合格闘技の試合で金を稼ぐ事を決意する。兄弟の父親役をニック・ノルティが好演し、アカデミー助演男優賞にノミネートされた。
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舞台はアメリカ合衆国ピッツバーグ。初老の男パディが疲れた足を引きずって自宅に帰ってくると、玄関先に若者が座り込んでいる。それはパディの次男トミー。2人の様子から再会は久しぶりで、しかも2人の仲が良くないことが窺われる。ウィスキーのボトルを飲むように渡すトミーに対し、パディは頑なにこれを拒否する。パディはアルコールが元で家庭を崩壊させており、トミーの目には憎しみが宿る。

父を憎むトミーが父の下を訪ねたのは、コーチを依頼したいというもの。実はパディは、かつては優秀なトレーナーであり、2人の息子はレスリングで優秀な成績を残していたのである。海兵隊を除隊したらしいトミーは、とある理由で金を必要としており、総合格闘技の大会『スパルタ』に出場して、優勝賞金500万ドルを狙おうとしていた。地元のジムにふらりとやってきたトミーは、そのジムの練習生となる。

ジムで大きな顔をしていたのは、『スパルタ』に出場予定の有名選手。相手を見下すその態度は太々しい。あっという間にスパーリングパートナーを倒してしまったその男に、なんとトミーはスパーリングを申し入れる。怪我をしても知らないぞという脅しを気にもせず、リングに上がるトミー。そしてスパーリングが開始されると、瞬く間に男を倒すトミー。これによりトミーはジムオーナーのコルトに認められ、『スパルタ』への参戦権を獲得する。

一方、パディの長男ブレンダンは、今は高校の物理教師をしている。パディの酒乱に悩まされたトミーと母親が逃げ出した後、しばらくは父パディと共に暮らしていたが、堕落した父の元を去っている。妻テスと子供にも恵まれたが、子供が難病に罹り高額な医療費の支払いに迫られ、今やローン返済が滞り、家を差し押さえられる寸前になっている。金策に困ったブレンダンは、総合格闘技の小さな試合に出場し、そこで賞金を手にする。

ところが、これが発覚して停職に追い込まれる。停職でも返済は待ったなし。追い詰められたブレンダンは、旧友のジム経営者兼トレーナーのフランクの下を訪ね、選手としての復帰と『スパルタ』への出場を訴える。フランクは渋るものの、ブレンダンの窮状を理解しており、ちょうどフランクのジムの選手が、トレーニング中の大怪我で『スパルタ』に参加できなくなってしったこともあり、この依頼を引き受ける。

パディはかつての振る舞いを反省し、今や1000日間にわたる禁酒に成功している。トミーが戻ってきたこともあり、ブレンダンの下を訪ねるが、ブレンダンは頑なにこれを拒否し、孫にも会わせない。兄弟と言えど、トミーとブレンダンにも蟠りはある。病気の母親を1人で看取ったトミーには、兄ブレンダンに対する恨みもある。ブレンダンにしてみれば、母親とトミーと共に家を出なかったのは、当時恋人で会った今の妻テスのため。母より恋人と父を選んだブレンダンを許せないトミー。ブレンダンも母の葬式に自分を呼ばなかったトミーを叱責する。

そんな親子関係と2人の息子の関係を描きながら、『スパルタ』に参戦するトミーとブレンダンを物語は追う。トミーは母方の姓を名乗って出場しているため、周囲には2人が兄弟であるとはわからない。優勝候補はロシアの強豪コーバ。その強さは圧倒的。トミーはストレートな破壊力で1回戦を突破する。ブレンダンは相手の打撃に苦戦しながらも巧みな関節技で相手からタップを奪う。

格闘技のドラマは、ボクシング映画を筆頭に数多あるが、総合格闘技はなかなか珍しい。ロシアの強豪コーバを演じるのは、プロレスラーのカート・アングル。その迫力はさすがに本物である。総合格闘技は打撃あり、関節技ありのもの。トミーとブレンダンの戦い方のスタイルも打撃のトミーと関節技のブレンダンというように分かれる。その格闘シーンの迫力は、『ロッキー』シリーズにも劣らない。

互いに勝ち進めば兄弟対決は避けられないし、その前に強豪コーバの存在もある。濃厚な人間ドラマがブレンドされた格闘ドラマは、ついに決勝戦へと進む。父と息子それそれが苦悩を抱えている。織りなされる人間ドラマは観る者の心を打つ。格闘シーンの迫力だけでなく、人間ドラマの部分でも『ロッキー』シリーズに劣らぬものがある。

なんでこの映画が話題にならなかったのだろうかと疑問に思う。それほどに印象深い格闘ドラマである・・・


評価:★★★★☆








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2022年11月18日

【355】My Cinema File 2620

355.jpeg

原題: The 355
2022年 アメリカ
監督: サイモン・キンバーグ
出演: 
ジェシカ・チャステイン:メイソン・ブラウン / メイス
ペネロペ・クルス:ドクター・グラシエラ / グラシー
ファン・ビンビン:リン・ミーシェン
ダイアン・クルーガー:マリー
ルピタ・ニョンゴ:ハディージャ
エドガー・ラミレス:ルイス
セバスチャン・スタン:ニック

<映画.com>
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ジェシカ・チャステイン、ペネロペ・クルス、ファン・ビンビン、ダイアン・クルーガー、ルピタ・ニョンゴら豪華キャストが集結し、世界各国の凄腕エージェントによるドリームチームの活躍を描いたスパイアクション。格闘術を得意とするCIAのメイス、トラウマを抱えるドイツ連邦情報局のマリー、コンピューターのスペシャリストであるMI6のハディージャ、優秀な心理学者であるコロンビア諜報組織のグラシー、中国政府で働くリン・ミーシェン。秘密兵器を求めて各国から集まった彼女たちは、ライバル同士だったが互いの手を取り、コードネーム「355(スリー・ファイブ・ファイブ)」と呼ばれるチームを結成。世界を混乱に陥れるテクノロジーデバイスの利用を画策する国際テロ組織を阻止するべく立ち上がる。『X-MEN:ダーク・フェニックス』のサイモン・キンバーグ監督がメガホンをとった。
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物語は、南米コロンビアのとある麻薬カルテルから始まる。カルテルのボスの息子があらゆるセキュリティを潜り抜け、世界中のインフラや金融システムなどを攻撃可能なデジタル・デバイスを開発する。頭上を飛ぶ旅客機を爆発させるというそのデバイス。あまりにも漫画チックであるが、そう言うツッコミはなしとする。そのデジタル・デバイスさえあれば、核施設や世界市場、空を飛ぶ飛行機から携帯電話まで好きに操作することができる。麻薬カルテルはそのデジタル・デバイスを国際テロ組織に売り込むことにする。

しかしその直後、コロンビアDNI(コロンビア国家情報局)の特殊部隊が現場を襲撃。国際テロ組織はその場から逃亡するが、麻薬カルテル側はデジタル・デバイスの開発者も含めて全滅の憂き目に遭う。襲撃に参加したDNIのエージェントであるルイスは、現場に残されていたデジタル・デバイスを密かにポケットに入れ姿を消す。このデジタル・デバイスの脅威を知った世界各国の諜報機関はデジタル・デバイスの回収に動き出す。

CIAは、ルイスから直接接触してきたことを受け、メイソン・“メイス”・ブラウンとその相棒ニック・ファウラーをフランス・パリに派遣する。パリにあるカフェにてメイスとニックは、ルイスとデバイスを交換しようとする。しかし、その場に思わぬ邪魔が入る。謎の女に襲撃されデバイスを奪われる。ニックはルイスを、メイスは鞄を持ち去った謎の女をそれぞれ追いかける。ルイスを追いかけたニックだが、デジタル・デバイスを狙う国際テロ組織の人間と鉢合わせし、殺害される。

謎の女の正体は、実はドイツ連邦情報局(BND)の秘密工作員マリー・シュミット。ニックが殺されたことを知ったメイスは、彼の仇を取るべく、旧知の間柄である英国情報局秘密情報部(MI6)の元エージェントでありサイバー・インテリジェンスの専門家ハディージャ・アデイェミを仲間に引き入れる。彼女の追跡能力を駆使してデジタル・デバイスの在り処を追跡した結果、ルイスはフランスのホテルに潜伏していることが判明する。一方ルイスは、DNIに所属する心理学者グラシエラ・リベラの説得により、デジタル・デバイスをDNIに受け渡すことにする。

しかし、DNIの捜査官の裏切りに遭いルイスは射殺されてしまう。現場に駆けつけたメイスとマリーは再び格闘となるが、助けを求めるグラシエラの叫び声を聞いて一時休戦し、互いに裏切ったDNIの捜査官を追う。ところが、あと一歩のところで逃げられる。互いに敵対し合っていたメイスとマリーは、同じ目的・共通の敵を持つ者同士協力しあうことにする。ここにメイス、ハディーシャ、マリー、グラシエラの4人の美女が揃い踏みとなる。

タイトルの「355」とは、18世紀のアメリカ独立戦争で活躍した女スパイから来ているらしい。CIA、MI6そしてBNDというスパイ組織の女性エージェントが活躍するというストーリー。この手のものは、『チャーリーズ・エンジェル』を持ち出すまでもなく、それだけで観たくなるものがある。さらにその中心にジェシカ・チャステイン、ペネロペ・クルス、ダイアン・クルーガーが来ると役者がそろう。そこに時代なのか中国人のファン・ビンビンが加わる。

あとは美女たちが八面六臂の活躍をするだけである。漫画のようなデジタル・デバイスを巡って世界中でアクションを繰り広げる。さらにストーリーも、味方だと思ったら敵であったり、敵だと思ったら味方になったりという展開を繰り広げ、観る者を飽きさせない。お祭りチックで脳味噌を使わずに楽しむことができる。それにしても、ジェシカ・チャステインは、シリアスな役からアクションまで幅広い。そしてペネロペ・クルスは相変わらずの美形である。

最後の最後まで飽きさせないストーリー展開も相まって、観て堪能できる映画である・・・


評価:★★☆☆☆









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