
2021年 日本
監督: 佐藤祐市
原作: 成薫
出演:
岩田剛典:キダ
新田真剣佑:マコト
山田杏奈:ヨッチ
中村アン:リサ
石丸謙二郎:安藤
大友康平:宮澤社長
柄本明:川畑
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岩田剛典と新田真剣佑が初共演し、第25回小説すばる新人賞を受賞した行成薫の同名小説を映画化。それぞれ複雑な家庭環境で育った幼なじみのキダとマコト。同じ境遇の転校生ヨッチも加わり、3人で支え合いながら平穏な毎日を過ごしてきた。しかし、20歳の時にヨッチが2人の前からいなくなってしまう。そんな2人の前に政治家令嬢でトップモデルのリサが現れ、マコトは彼女に強い興味を抱くが、まったく相手にされない。キダはあきらめるよう忠告するが、マコトは仕事を辞めて忽然と姿を消してしまう。そして2年後、裏社会に潜り込んでいたキダは、リサにふさわしい男になるため必死で金を稼いでいたマコトと再会する。マコトの執念と、その理由を知ったキダは、マコトに協力することを誓い、キダは「交渉屋」として、マコトは「会社経営者」として、それぞれの社会でのし上がっていく。そして迎えたクリスマスイブ、マコトはキダの力を借りてプロポーズを決行しようとするが、それは2人が10年の歳月をかけて企てた、ある壮大な計画だった。監督は『累 かさね』「キサラギ」の佐藤祐市。
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クリスマスの夜。賑わう街中をサンタクロースの恰好をした男キダが歩いていく。「お前にもドッキリ仕掛けといたぞ」とスマホの向こうから幼なじみのマコトの声が聞こえる。そんなキダとマコトは、幼い頃から兄弟のように育ってきている。昔からドッキリを仕掛けることが生き甲斐のマコトと、そのドッキリに毎回引っかかってしまうキダ。大人になった2人は、「プロポーズ大作戦」を決行しようとしている。
時は遡る。キダとマコトは共に両親を亡くしているが、2人が小学生の時、一人の女の子が転校してくる。その女の子ヨッチは、2人と同じで両親がなく孤独であった。同じ境遇であったことから、2人はヨッチと仲良くなる。そして3人は中学、高校と仲の良い時を過ごす。男2人と女1人。こういうパターンはいつしか三角関係になっていくものであるが、3人にはそんな様子は見えない。
そして時が過ぎ、キダとマコトは自動車修理工場で働いている。そこにある日、高級車に乗ったリサという女がやってくる。いかにも金持ちのお嬢さん風であるが、態度は極めて横柄。乗ってきた高級車は前部を激しく損傷している。ルールを無視して一方的に修理をしろと詰め寄る。問い詰めれば無免許で父にバレると困るのだと言う。破損の原因は犬を轢いたとリサは言う。工場の宮澤社長に金を渡し内密に修理するよう迫る。
高飛車な態度のリサにキダは呆れるが、マコトは果敢にリサを食事に誘う。得意の手品で一輪のバラをリサに差し出し、さらに万国旗を出して見せる。しかし、この程度でリサが興味を示すわけもない。マコトを見下したリサはその場を去っていく。「住む世界が違う」と言うキダに、「世界じゃなく、分けられてるだけだ」とマコトは答える。それから間もなくしてマコトは姿を消す。
やがて自動車工場は閉鎖されるが、社長の好意でキダはある男を紹介される。それは裏社会で生きる男。幼馴染だと語るその男は、交渉屋に向いているとしてキダを雇う。そこでキダはメキメキと頭角を表す。そして裏のルートを駆使して行方不明になっていたマコトの居場所を突き止める。マコトはひたすら金を集めており、集めた金でワイン輸入会社を買い若手実業家として表社会でのし上がっていく。目的は大物政治家の娘でモデルのあのリサに近づくためであった・・・
『名も無き世界のエンドロール』とは何か深い意味がありそうなタイトルだと思い、映画に対する関心も高かった。どんな内容なのかという先入観を持たずに観たので、展開が読めない。「エンドロール」については、途中でヨッチが「映画は終わるから嫌い。エンドロールが流れると涙が出てきて死にたくなる。現実に戻るのが嫌」と語ることからきている。そしてこれが最後に大きな意味を示してくる。社会に出た2人のシーンにヨッチが出てこない。この疑問も最後に明らかになる。
最後の最後にすべてをひっくり返すストーリー。幸福の絶頂から恐怖のどん底へ。それは見事などんでん返し。それは見事なドッキリ。観ていてやられた感が漂うが、スッキリするというものではない。それは虚しく、そしてもの悲しい。最後の最後までキダにドッキリを仕掛けたマコト。ラストで手を繋ぎ横断歩道を渡るマコトとヨッチ。そしてそれを見つめるキダ。その表情が何とも言えない。
2022年を締めくくる最後の映画であったが、締めくくりに相応しい、心に染み入る映画である・・・
評価:★★★☆☆