2023年03月31日

【なくもんか】My Cinema File 2671

なくもんか.jpeg

2009年 日本
監督: 水田伸生
出演: 
阿部サダヲ:下井草祐太
瑛太:下井草祐介
竹内結子:山岸徹子
塚本高史:金城大介
皆川猿時:トシちゃん
片桐はいり:みどり
鈴木砂羽:下井草祐子
伊原剛志:父親・下井草健太

<映画.com>
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幼い頃父親に捨てられた祐太は、東京下町・善人通りの惣菜屋「デリカの山ちゃん」の店主夫婦に養子として育てられ、今では2代目店主となって商店街を盛り上げていた。そして密かに思いを寄せていた初代店主夫婦のひとり娘・徹子と結婚にこぎつけた祐太は、生き別れた弟で人気お笑い芸人「金城ブラザーズ」の祐介の存在を知り、再会を果たすが……。『舞妓Haaaan!!!』の水田尾伸生監督・脚本の宮藤官九郎、主演の阿部サダヲが再結集。
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物語の舞台は、とある商店街にある惣菜店「山ちゃん」。店主は2代目の山ちゃん。しかし、実は2代目は幼い頃、両親の離婚に伴って父親に引き取られていた。妊娠中の母親はその後、弟になる祐介を生む。祐太を連れた父が頼ったのが、下町で惣菜屋を営む山ちゃん。しかし、もともとダメな父親は、その日の晩に売上金を盗み失踪してしまう。後に残された祐太は、子供ながらの生きる知恵か、周囲に気配りの利く子供として育つ。山ちゃん宅には長女の徹子がおり、働き者の祐太はいずれ婿養子にという考えも山ちゃんの胸にはあったが、太った徹子に祐太の心は動かない。

人の頼みごとを断らず、常に笑顔で人のために働く祐太は、近所からも愛される存在。やがて山ちゃんは2代目として祐太に店を任せる。その後、山ちゃんは亡くなり、長女の徹子も家を出ていき、家には祐太と認知症になった山ちゃんの奥さんのみとなる。一方、弟の祐介は、母によって育てられるが、その母は祐介の幼い頃に事故で亡くなってしまう。祐介は、親戚の家をたらい回しにされ、転校を繰り返す。そんな中で、祐介は皆を笑わせる術を身につけていく。それは、転校先でいじめられないようにする祐介なりの生きる知恵であった。

そんな経緯もあり、祐介はお笑い芸人になる。そして同じ芸人の金城大介と出会い、兄弟という設定で「金城ブラザーズ」を結成。これが機となりコンビは売れるようになる。ある日、祐太の店に美女がやってくる。それがなんと徹子だと知り祐太は驚愕する。かつての徹子は太っていて、お世辞にも魅力的とは言い難かったが、その変身ぶりに誰もが驚く。認知症で祐太のことを先代山ちゃんだと思い込んでいる徹子の母は、逆に徹子だと分かり歓迎する。

突然帰宅した徹子だが、家を出たあとにもいろいろあり、子供を2人連れての帰宅であった。たちまち心を打たれた祐太は、子供のことなど気にすることもなく、結婚を申し込む。めでたく結婚することになり戸籍謄本を取り寄せた祐太は、初めて自分の弟が金城ブラザーズの祐介であることを知る。事実を知った祐太は、居ても立ってもいられず祐介に会いに行く。しかし、突然の「兄」の訪問に祐介は戸惑う。コンビを組んでいる相方とは、実の兄弟という設定でコンビを結成していたからである・・・

この映画の存在は竹内結子ファンとしてどんな映画なのかと気にはなっていたが、ようやく鑑賞に至る。内容は、人情ドタバタストーリーである。主人公はお人好しの「山ちゃん」こと祐太。人にものを頼まれれば嫌と言わない。それゆえにご近所からいろいろな事を頼まれる。犬の散歩から買い物や老人宅の掃除までそれは多岐にわたり、徹子にもあきれられるほど。それが生き別れた弟の存在を知り、互いに驚く。2人の兄弟の葛藤がメインのストーリー。メインのストーリーはシリアスだが、それをたっぷりとコメディで衣付けしている映画である。

主演の阿部サダヲは、映画によって変幻自在の感がある。『死刑にいたる病』(My Cinema File 2657 )ではサイコキラーだったし、『奇跡のリンゴ』(My Cinema File 1189)では熱狂する農家、しかしながら、この映画や『舞妓Haaaan!!!』のようなコメディも実にしっくりする。そして何と言っても竹内結子の存在がこの映画を観ようと思った最大の理由。個人的にファンであったからだが、もう新作が観られないのが残念である。さらに伊原剛志のダメ男ぶりも何とも言えない。

コメディテイストで笑わせておいて、メインのストーリーをしっかり伝えるという王道の展開。阿部サダヲの怪演と竹内結子の魅力も相まって、楽しく鑑賞できる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2023年03月30日

【ザ・ランドロマット パナマ文書流出】My Cinema File 2670

ザ・ランドロマット.jpeg

原題: The Laundromat
2019年 アメリカ
監督: スティーブン・ソダーバーグ
出演: 
メリル・ストリープ:エレン・マーティン
ゲイリー・オールドマン:ユルゲン・モサック
アントニオ・バンデラス:ラモン・フォンセカ
ロバート・パトリック:ペリー
デヴィッド・シュワイマー:マシュー・カーク
ジェフリー・ライト:ボンキャンパー
シャロン・ストーン
デヴィッド・シュワイマー:マシュー・カーク
ジェームズ・クロムウェル
ロバート・パトリック:ペリー

<映画.com>
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Netflixで2019年10月18日から配信。19年・第76回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品作品。
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エレンは長年連れ添った夫とナイアガラの滝を訪れる。結婚40年を祝って新婚旅行で訪れた地を再訪したのである。ともに手を取りジョージ湖のクルーズ船に乗り込む姿は理想的な老夫婦像である。しかし、そんな幸せのクルーズは突然の大波で終わりを告げる。船は転覆し、エレンはなんとか助かったものの、夫は帰らぬ人となってしまう。この事故で21人が犠牲となる。

エレンは、クルーズ会社から加入している保険会社を通じて賠償金が支払われるとの説明を受ける。しかし、その裏でクルーズ会社の社員は、保険会社から今回の事故は補償の対象外だと通告され愕然とする。クルーズ会社が加入していた保険は「ユナイテッド再保険」という別の保険会社に再保険が掛けられており、その仕組みはよく理解できない。エレンは賠償を当て込んでラスベガスのマンションを購入しようと娘や孫を連れて物件を訪れるが、その気になったエレンだが、不動産業者から別の客に売ることになったと告げられる。倍額を現金で払うと言われると何も返せない。

エレンは賠償額を知らされ、その少なさに愕然とする。納得がいかないエレンは、西インド諸島にある「ユナイテッド再保険」を訪ねる。エレンがはるばる訪ねあてた住所地はなんと郵便局。実は「ユナイテッド再保険」はペーパーカンパニーだったのである。エレンはその場にいた人に尋ねる。それは偶然にもユナイテッド再保険取締役であったが、名義上の取締役でもあり、白を切って立ち去る。その取締役はそのままマイアミに飛ぶが、そこで内国歳入庁の捜査官に逮捕される。

諦めきれないエレンは、登記所でマンションの買い手を調べ、パナマの会社の名義となっていることを突き止める。しかも、その会社は信託会社が管理しており、会社も信託会社も同じ女性が取締役となっている。そしてその全てが「モサク・フォンセカ」法律事務所に登録されている。エレンは「モサク・フォンセカ」に電話するが、相手にされずに電話を切られてしまう・・・

タイトルの『ザ・ランドロマット』とはコインランドリーという意味らしい。西インド諸島と言えば、税金が安いためにペーパーカンパニーが乱立しているというイメージがある。そこでさまざまなスキームで節税対策が練られていると聞いているが、この物語はそうした実態を面白おかしく描いていく。サブタイトルには「パナマ文書流出」とあるが、それは直接描かれるわけではなく、ストーリーだけ追っていてもよくわからない。

チャールズという人物が妻と娘に2,000万の価値がある無記名株を手渡すが、モサク・フォンセカに提示したところ、現在の価値は37ドルしかないと伝えられ、憤然とし席を立つ。さらに中国の重慶では、重慶の権力者である薄熙来の妻の谷開とある英国人実業家のやり取りが描かれる。それらがすべて「パナマ文書」のニュースに結びつけられるが、なんとも取ってつけた感が強い。「パナマ文書」のインパクトを描くのであれば、もう少しわかりやすいのが良かったように思う。

主演は大御所メリル・ストリープであり、ハズレはないと踏んで鑑賞に至るが、ストーリーとしてはイマイチだったと言わざるを得ない。大物が出演していたとしても、それが映画の面白さの保証になるとは限らないのである。そんなことを実感させられた映画である・・・


評価:★★☆☆☆









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2023年03月28日

【ブレット・トレイン】My Cinema File 2669

ブレット・トレイン.jpeg

原題: Bullet Train
2022年 アメリカ
監督: デビッド・リーチ
出演: 
ブラッド・ピット:レディバグ
ジョーイ・キング:プリンス
アンドリュー・小路:キムラ
アーロン・テイラー=ジョンソン:タンジェリン
ブライアン・タイリー・ヘンリー:レモン
真田広之:エルダー
マイケル・シャノン:ホワイト・デス
ベニート・A・マルティネス・オカシオ:ウルフ
ザジー・ビーツ:ホーネット
マシ・オカ:車掌
福原カレン:車内販売の売り子
ライアン・レイノルズ:カーバー
チャニング・テイタム:乗客
サンドラ・ブロック:マリア

<映画.com>
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作家・伊坂幸太郎による「殺し屋シリーズ」の第2作「マリアビートル」を、『デッドプール2』のデビッド・リーチ監督がブラッド・ピット主演でハリウッド映画化したクライムアクション。いつも事件に巻き込まれてしまう世界一運の悪い殺し屋レディバグ。そんな彼が請けた新たなミッションは、東京発の超高速列車でブリーフケースを盗んで次の駅で降りるという簡単な仕事のはずだった。盗みは成功したものの、身に覚えのない9人の殺し屋たちに列車内で次々と命を狙われ、降りるタイミングを完全に見失ってしまう。列車はレディバグを乗せたまま、世界最大の犯罪組織のボス、ホワイト・デスが待ち受ける終着点・京都へ向かって加速していく。共演に『オーシャンズ8』のサンドラ・ブロック、『キック・アス』シリーズのアーロン・テイラー=ジョンソン、『ラスト サムライ』の真田広之ら豪華キャストが集結。
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日本人の父親キムラが息を切らせて病院へ駆け込んでくる。ベッドに横たわった幼い息子は意識不明の重体。どうやらデパートの屋上から落とされたらしい。死ななかったのがせめてもの幸い。そこへキムラの父が訪れ、「父親は家族を守るものだ」と叱責する。キムラは息子を手にかけた犯人を捜しに向かう。

一方、時を同じくして、休暇を終えた殺し屋“レディバグ”は仕事に復帰する。そしてさっそく指令を受け取る。それが同僚のカーバーの代打と知って不機嫌になるが、逆らうことなく、仲介者“マリア・ビートル”からの指示に従い、東京から京都へ向かう新幹線に乗り込む。仕事内容は、取手にステッカーが貼られた大金の入ったブリーフケースを回収すること。レディバグは指示を無視して、あえて銃を置いていく。

同じ新幹線に乗り込んだのは、暗殺者コンビである“タンジェリン”と“レモン”。彼らは“ホワイト・デス”と呼ばれるマフィアのボスから、放蕩息子を連れ戻すために送り込まれている。ボスのホワイト・デスは、ロシア出身であり、かつて峰岸組の右腕として力をつけ、後に組長である峰岸を裏切って殺害し、自分の組織を築いたという過去がある。彼の息子は実はある組織に捕らわれていたが、“タンジェリン”と“レモン”は助け出すのに16人+1人(巻き添え)を殺したと語る。なかなかの凄腕である。

息子を突き落した犯人の手がかりをつかんだキムラも同じく列車に乗り込む。犯人は、“プリンス”と呼ばれる女子高生の暗殺者。キムラと相対したプリンスは、息子を突き落したのはキムラを誘い出すためだと明かす。用意周到なことに、病室に手下を潜ませており、自分に逆らえば息子を殺すと脅す。プリンスはキムラの銃を奪うとトラップを仕掛ける。それは引き金をひくと撃った本人の頭が吹き飛ぶというシロモノ。最後にこれが使われるが、この映画は途中でさまざまにばら撒かれた伏線がきちんと使われる面白さがある。

レディバグは、プロの殺し屋という雰囲気はなく、どこか飄々としている。しかしながら腕の方は一流で、難なくタンジェリンとレモンのコンビを倒すとブリーフケースを回収する。そして次の停車駅で降りようとするが、次の新横浜で降りようとする彼の目の前に現れたのは、別の殺し屋“ウルフ”。ウルフは、結婚式で妻を毒殺された過去があり、その犯人をレディバグだと考え、復讐に燃えている。そんなわけで、ただでは済まず、レディバグは社内でウルフとの格闘を余儀なくされる。

タイトルにある通り、舞台は新幹線の中。しかし、その新幹線は、我々の良く知ったそれではない。どこか近未来的なデザインなのである。それどころか始発の東京駅から始まり、途中の停車駅もどこか異世界の雰囲気を漂わせていて、とても新幹線という感じがしない。「外国人が見た日本」のイメージから創作された感じがする。そう言えば、映画『ウルヴァリンSAMURAI』(My Cinema File 1249)の新幹線もそうだったように思う。

新幹線には実は他にも殺し屋が乗っている。蛇の毒を使った殺し屋であり、また、途中駅からは組織の殺し屋が乗ってくるし、最後は黒幕ホワイト・デスも登場する。最初から最後まで賑やかな展開が続く。錯綜する登場人物たちの関係もまた複雑に絡み合う。主演はブラッド・ピットだが、日本からは真田広之が出演し、マイケル・シャノンもホワイト・デス役で登場し、懐かしいライアン・レイノルズも出てくる。さらにチャニング・テイタムが一乗客として顔を出し、最後はなんとサンドラ・ブロックまで出てくる。驚きのキャスト陣である。

舞台がどうだとか細かい事は気にせず、単純に楽しみたい一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2023年03月27日

【アナザー・ラウンド】My Cinema File 2668

アナザー・ラウンド.jpeg

原題: Druk
2020年 デンマーク
監督: トマス・ビンターベア
出演: 
マッツ・ミケルセン:マーティン
トマス・ボー・ラーセン:トミー
マグナス・ミラン:ニコライ
ラース・ランゼ:ピーター
マリア・ボネビー:アニカ

<映画.com>
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デンマークを代表する人気実力派俳優のマッツ・ミケルセンが、アカデミー外国語映画賞にノミネートされた『偽りなき者』のトマス・ビンターベア監督と再タッグを組んだ主演作。冴えない高校教師のマーティンと3人の同僚は、ノルウェー人の哲学者が提唱した「血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」という理論を証明するため、実験をすることに。朝から酒を飲み続け、常に酔った状態を保つと授業も楽しくなり、生き生きとするマーティンたち。生徒たちとの関係も良好になり、人生は良い方向に向かっていくと思われた。しかし、実験が進むにつれて次第に制御がきかなくなり……。『偽りなき者』でもミケルセンと共演したトマス・ボー・ラーセンやラース・ランゼらがマーティンとともに実験を行う同僚教師を演じた。脚本に『偽りなき者』 「ある戦争」のトビアス・リンホルム。新型コロナウイルスの影響で通常開催が見送られた2020年・第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクションに選出されたほか、第78回ゴールデングローブ賞の最優秀外国語映画賞にノミネート、第93回アカデミー賞でも監督賞と国際長編映画賞の候補に挙がり、国際長編映画賞を受賞した。
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主人公は高校の歴史教師マーティン。しかし、授業はどうも気乗りしないような態度で、生徒からの評判も良くない。夜勤のある妻アニカとはすれ違い、ふたりの息子ともうまくコミュニケーションを取れずにいる。そしてある日、とうとう学校で授業のレベルが低いと生徒やその親から抗議されてしまう。そんな状態だからその夜に同僚の心理学教師ニコライの40歳の誕生日会に参加してもどこか浮かない。体育教師のトミーと音楽教師のピーターもそんなマーティンを心配する。

誕生日会であり、3人が酒を飲む中でひとり水を飲んでいるマーティンに対し、ニコライは「君に欠けているのは自信と楽しむ気持ちじゃないか」と問う。そして、ノルウェー人学者の理論「人間は血中アルコール濃度が0.05%に保たれていると、仕事もプライベートもうまくいく」という仮説についての話題になる。仲間たちに促されてマーティンは酒を飲み、その夜は仲間たちと気持ちよく酔い、心地よく帰宅する。

翌朝、マーティンは前夜の話が心に残っており、酒を飲んで授業に向かう。そしてそれを仲間に報告する。4人はこれを実験と称し、記録をとりながら実証することにする。真面目な実験であるために飲酒ルールを決める。その内容は、「体内アルコール濃度を測り0.05%を維持する」、「夜20時以降と休日は飲酒しない」というものである。そしてその効果はてきめんに表れる。マーティンは快活に授業を行い、その変化に生徒たちも驚くが、徐々に生徒たちの支持を得ていく。

効果はマーティンだけではなく、他の3人にも同じように現れる。気をよくしたマーティンは、さらにアルコール濃度の制限をなくそうと提案し、0.06%から次第に0.12%にまであげていく。こうなると、酔っ払いである。足取りはおぼつかなくなり、壁に頭をぶつけるほどである。それでもまさか職場で酔っ払っているとは誰も思わないのか、咎められることもない。しかし、授業は大成功。マーティンは生徒たちから喝采をあびる。かつての授業風景が噓のようである。

アルコールの効果は授業にとどまらない。それは家族関係にも及ぶ。マーティンは家族を誘って旅行に出かける。自然の中でカヌーに乗り、キャンプをする。そんな様子に妻の心もほぐれ、その夜はなんとテントで久しぶりに妻と愛し合う。それはかつての幸せな生活が戻ってきたようである。同僚のトミーは指導している少年サッカーでチームが勝利を納め、いじめられていた少年がチームメイトから認めらる。ピーターには恋人ができ、それぞれの人生が前向きになっていく・・・

アルコールが入れば人は陽気になり、その場は楽しいものとなる。しかし、アルコールは嗜好品であり、仕事中は飲まないというのが当然である。しかし、ここでは仕事で成果を上げるために酒を飲もうと真面目に取り組む(しかも教師がである)物語である。教師らしく、仮説実証のために、ルールも決めて実施し、なんと予想以上の効果を上げてしまう。もちろん、アルコールに対する免疫にもよるだろう。私など酒があまり強くない人間にとってはあまり効果がないことは簡単に予想できる。事実、アルコール濃度を上げすぎた4人は酩酊して周りから大顰蹙を買う。

それでもこの映画では、適度なアルコールは見事に効果を発揮する。特に内向型の人で酒が弱くない人であれば、実際に効果はあるのかもしれない。「酒」としたままであれば問題もあるが、「薬」として服用するならば問題はないように思う。実際にやってみたらいいのではないかと思う。何事もそうであるが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」。飲みすぎは、もちろん効果などない。映画の後半はそんな当然の成り行きを描いていく。

主演はおなじみのマッツ・ミケルセン。デンマーク人でありながら、国際的にもメジャーであり、日本でいえば渡辺謙や真田広之のような存在なのかもしれない。
アカデミー賞国際長編映画賞に輝いたというのも頷けるデンマーク映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2023年03月25日

【ダウンサイズ】My Cinema File 2667

ダウンサイズ.jpeg

原題: Downsizing
2017年 アメリカ
監督: アレクサンダー・ペイン
出演: 
マット・デイモン:ポール・サフラネック
クリステン・ウィグ:オードリー・サフラネック
ホン・チャウ:ノク・ラン・トラン
クリストフ・ヴァルツ:ドゥシャン ・ミルコヴィッチ
ウド・キア:ヨリス・コンラッド

<映画.com>
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『ファミリー・ツリー』「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」のアレクサンダー・ペイン監督が、マット・デイモンを主演に迎え、人類が縮小可能になった未来社会を舞台に、社会風刺を交えて描くドラマ。ノルウェーの科学者によって人間の身体を縮小する方法が発見され、身長180センチなら13センチにまで小さくなることが可能になった。人口増加による環境、食料問題を解決する「人類縮小200年計画」が立ち上がり、一度小さくなれば二度と戻ることはできないが、それでも各国で小さくなること(ダウンサイズ)を選ぶ人々が徐々に増えていく。アメリカのネブラスカ州オマハでストレスフルな生活を送る、どこにでもいる平凡な男ポール・サフラネックは、少しの蓄えでも裕福で幸せな生活が遅れるという縮小された世界に希望を抱き、ダウンサイズを決意。しかし、土壇場で妻のオードリーが逃げ出してしまう。ポールは縮小された人間たちの世界で、ひとり寂しい生活を送ることになり、自暴自棄になるのだが……。
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物語はノルウェーで始まる。ヨルゲン・アスビョルンセン博士はラットを使い生物を縮小化する技術の開発に成功する。それから5年後、学会でなんと自ら縮小化を行ったヨルゲン博士が登場し世間を驚愕の渦に落とす。それは身長180cmの人間を12.9cmにまで小さくできる技術。これにより世界の環境問題を解決できるとする。博士は自らと妻を含め36人の勇敢な志願者の縮小に成功。36人の被験者はその後、小さな村を作り移住。世界初のミニ人間の共同体で安全に暮らし初めていた。後にその村は始まりの村と呼ばれるようになる。

さらに10年後、縮小化は世界的に行われるようになっている。妻と暮らしていた主人公のポール・サフラネックは麻酔医として生計を立てているが、妻の希望する家はポールの収入では購入が難しい。そんな憂鬱な日々を送る中、ポールは高校の同窓会へ参加し、縮小化した友人と再会する。縮小化するとものが少なくて済む。すると生活コストが圧倒的に低くなるというメリットがある。小さくなれば豪邸に住める上に豪勢な暮らしができると言う。親友は住むならアメリカに建設されたミニ人間の町レジャーランドがいいと勧める。

興味を持ったポール夫妻は見学へ向かう。そしてポールは妻と縮小化を決意する。あらゆる私財を現金化し、レジャーランドへと向かう。縮小化=ダウンサイズは入念な準備を施される。銀歯などはダウンサイズされず、そのままでいると頭より大きくなって頭が破裂するという。映画では描かれなかったが、失敗の積み重ねもあったのだろう。男女別に別れ、麻酔で眠らされている間にあらゆる体毛を剃られ、腸内の洗浄もされ、専用装置でダウンサイズの手続きは完了する。

目覚めたポールは妻を待つが、そこに妻から電話が入る。なんと妻は体毛を剃られた段階で急に怖くなりダウンサイズをやめてしまったと言う。このダウンサイズだが、どうやら一方通行でダウンサイズすると元には戻ることができないらしい。呆然としながら豪邸に案内されるポール。しかし、妻と暮らすはずだった豪邸は1人にはあまりにも広すぎる。数時間後、夫婦の結婚指輪が届けられるが、ポールは複雑な思いに駆られる。

ダウンサイズはあらゆる方面に広がる。その夜のニュースで、ダウンサイズされた人間の密航が報じられる。それはテレビの箱に隠れていたというもの。しかし、劣悪な環境でベトナムから密航して来た17人のベトナム人の内、ノク・ラン・トランという女性を除き全員が死亡したという。ノク・ランも感染症で片脚の切断をしたという。ノク・ランはそもそもベトナムの政治犯であり、投獄された後、本人の意思と関係なくダウンサイズされたという。ダウンサイズの政治利用である。

環境問題が深刻化する現在、ダウンサイズして生活すれば二酸化炭素の排出も減り、ゴミも減り、環境負荷を軽減させることができる。日本的には「ドラえもん」の世界だが、さすがハリウッドはそれをかなり現実化して描き出す。主人公も理想を持ってダウンサイズするが、なんと土壇場で妻が心変わりして1人になってしまう。そんな主人公のダウンサイズした町での暮らしが描かれていく。

ダウンサイズが一般化してくると、現実の世界と同じような問題が生じてくる。主人公のようにある程度の財産を持ち、それを現金化した者はゆとりをもって暮らせるが、理想郷的であったはずのレジャーランドには貧困層も存在している。ご丁寧にレジャーランドの外の一般の無人住宅がいつのまにかマンションのようになっている。ノク・ランのような移民労働者たちが集まってその日暮らしの生活を送っているのである。

もしもこんなダウンサイズが現実的に実現したとしても自分は応じないだろうなとなんとなく思う。確かに豪邸に住んでゆとりのある暮らしを送れるのかもしれない。ただ、ダウンサイズした人間にとっては、ネズミも巨大な恐竜のようなものだろうし、スズメバチのような昆虫も危険な存在になる。ちょっと水が溢れれば普通の人間には何でもない床下浸水も大洪水になる。そんな妄想を抱いてしまう。

思わぬ妻の心変わりから1人ダウンサイズして孤独な生活を始めることになった主人公のポール。それでも人生は動いていく。新たにドゥシャンやベトナムから密航して来たノク・ラン・トランと知りあい、ダウンサイズの世界の暮らしを送っていく。いろいろと現実世界と比較して考えさせられるところはある。それはまた楽しい妄想でもある。人間の本質は小さくなっても変わらない。ノク・ランと知り合い、ポールは次第に影響を受けていく。そんなポールの姿が人間の生きる力を感じさせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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