
原題: The Keeper
2018年 イギリス・ドイツ
監督: マルクス・H・ローゼンミュラー
出演:
デヴィッド・クロス:バート・トラウトマン
フレイア・メーバー:マーガレット・フライアー
ジョン・ヘンショウ:ジャック・フライアー
デブラ・カーワン:クラリス・フライアー
マイケル・ソーチャ:ビル・ツイスト
ハリー・メリング:スマイス軍曹
ゲイリー・ルイス:ジョック・トンプソン
バーバラ・ヤング:サーラおばあちゃん
オリビア・ミニス:バーバラ・フライアー
トビアス・マスターソン:ジョン・トラウトマン
クロエ・ハリス:ベッツィ
<映画.com>
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イギリスの国民的英雄となった元ナチス兵のサッカー選手バート・トラウトマンの実話を基に描いたヒューマンドラマ。1945年、イギリスの捕虜となったナチス兵トラウトマンは、収容所でサッカーをしていた折に地元チームの監督にスカウトされる。その後、名門サッカークラブのマンチェスター・シティFCにゴールキーパーとして入団するが、元ナチス兵という経歴から想像を絶する誹謗中傷を浴びせられてしまう。それでもトラウトマンはゴールを守り抜き、やがてイギリスの国民的英雄として敬愛されるように。そんな彼には、誰にも打ち明けられない、秘密の過去があった。主人公トラウトマンを『愛を読むひと』のデビッド・クロス、妻マーガレットを「サンシャイン 歌声が響く街」のフレイア・メーバーがそれぞれ演じた。
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1944年、ヨーロッパ戦線。ある森の中でドイツ兵のバート・トラウトマンは連合軍の攻撃を受け、捕虜として捕らえられる。イギリスのランカスターの捕虜収容所に移送されたバートは、そこで捕虜としての生活を送る。イギリス軍のスマイス軍曹はドイツ兵に恨みを持ち、対応は厳しい。そんなある日、バートはたばこ欲しさに捕虜仲間とサッカーの賭けをする。ゴールに立ったバートがシュートをブロックすればタバコを手に入れるというもの。そこで次々にゴールを阻み、タバコを手に入れるバート。
すると、その光景を目にしていたのが、ランカスターで小売店を経営するかたわらでサッカークラブの監督をしていたジャック・フライアー。実は自分のクラブが降格の瀬戸際であり、背に腹は代えられず、スマイス軍曹と交渉してジャックは、バートを自分のクラブのキーパーとして借りる約束を取り付ける。クラブの選手たちは、ドイツ兵がチームに入ることに反発するが、降格の危機に迫られたジャックは強引に入れる。
ジャックの期待通り、バートは卓越したディフェンス能力を発揮し、クラブを勝利に導く。初めこそバートはこっそりジャックのたばこをくすねる程度であったが、回数を重ねるうちに見返りを求めるようになる。そこでジャックは、バートを店の雑用係として使うことにする。収容所の作業やスマイスに便所掃除をさせられて辟易していたバートにとって、それは大いなる開放を意味する。
ジャックの娘マーガレットは、ドイツ兵のバートに嫌悪感をあからさまにする。ジャック以外の者がバートと距離を置く中、マーガレットの妹バーバラは、まだ幼さを残しており、それほどドイツ兵に敵意を抱いていないこともあり、やがて2人は日常会話を交わすようになる。さらにその様子を見ていたマーガレットも、いつしかバートの姿を目で追うようになっていく。その間、チームはバートの活躍もあって勝利を重ねていく。
映画は実在の人物を追った伝記ドラマ。捕虜としてイギリスに移送されたドイツ兵がサッカーを通じてイギリス社会に溶け込んでいく。冒頭ではロンドン空襲が描かれ、ドイツ兵に対するイギリス人の激しい敵意も納得する。ドイツ兵もすべてが残虐なわけではなく、バートは志願兵ではあるが、もともとは穏やかな人物。東部戦線で味方がロシアの少年を射殺しようとするシーンが何度も繰り返される。それがなぜかバートの心に滓となって残っている。収容所では、“再教育”としてスマイスが虐殺されたユダヤ人の映像を見せると、ナチスのメンバーと対立するドイツ兵が出る。
チームは連勝を重ねついに決勝戦へと駒をすすめるが、そんな最中、戦争終結にともなって捕虜のドイツ兵たちも本国へ送還されることになる。メンバーとも打ち解けて、さらにはマーガレットともいつしか距離を縮めたバートは、残留することに決める。そしてそんな活躍を見ていたイングランドの名門サッカークラブ、マンチェスター・シティFCの監督がバートに声をかけてくる・・・
昨日の敵を迎え入れるイギリスの人々の反応は様々。現代の感覚で見ていると、受け入れることには何の抵抗もないように思うが、実際に家族を失っていたりすると反発する人たちの気持ちもよくわかる。この実話が感動的なのは、そんな対立が解消していく様子である。会場につけばバスを降りたとたんヤジが飛び卵が投げつけられる。スタンドはブーイングの嵐。そんな環境でよくプレーができたなと思う。
テレビで試合を見ているシーンでは、当時の映像が使われていて興味深い。それでもやがてイギリスの人々がバートを受け入れていったのは、やはりバートのサッカーの実力であるのは間違いない。スポーツに国境はないのだと改めて思わされる。映画だから脚色はあるのだろうが、実話の持つ感動がじっくりと伝わってくる映画である・・・
評価:★★★☆☆