
2021年 韓国
監督: イ・ジャンフン
出演:
パク・ジョンミン:ジュンギョン
イ・ソンミン:テユン
イム・ユナ:ラヒ
イ・スギョン:ボギョン
<映画.com>
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1988年に開設された韓国初の私設駅「両元(ヤンウォン)駅」の実話をもとに、小さな駅づくりに奮闘する人々を描いたヒューマンドラマ。線路は通っているのに駅がない村。数学の天才である男子高校生ジュンギョンは、毎日往復5時間かけて学校に通っている。村に駅を作ることを夢見る彼は、機関士の父テユンに反対されながらも、駅の開設を求めて大統領府に手紙を送り続けていた。同級生の女子生徒ラヒにも協力してもらい、説得力のある手紙を書くため正書法の講義を受けたり、有名になるべくテレビの「高校生クイズ」に出場したりと、様々な方法で努力を続けるジュンギョンだったが……。「ただ悪より救いたまえ」のパク・ジョンミンが天才高校生ジュンギョン、「EXIT」のイム・ユナが同級生ラヒ、『KCIA 南山の部長たち』のイ・ソンミンがジュンギョンの父テユンを演じる。監督・脚本は「Be With You いま、会いにゆきます」のイ・ジャンフン。
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主人公はへき地の村に住むジュンギョン。そこは駅がなく電車が止まらない村であり、さらに学校のある町へ行く道がないため、村人たちは線路の上を歩いて町へ行っていた。難所は川にかかる橋。途中に待避所はあるものの、電車が来れば枕木を踏みしめつつ急いで待避所まで行かねばならず、過去には亡くなった人がいる程危険をともなうものであった。ジュンギョンは村を救いたい想いで、大統領宛てに「村に駅を作ってほしい」と何通もの手紙を書き続けていた。
ジュンギョンに母は亡く、電車の運転手をしている父と姉ボギョンと暮らしている。高校生になったジュンギョンは、線路を歩いて町の高校へ通う。そこでラヒとクラスメイトになる。ジュンギョンの駅作りのことを知ったラヒは、手伝いを申し出る。ラヒの父親は議員であり、協力できるかもしれないと言う。そしてラヒはジュンギョンが手紙を書くの手伝うことから始める。ラヒが添削して手紙を出すが、それでも大統領からの反応はない。議員の娘であるラヒには、ソウルの学校に転校する話が出る。ラヒはジュンギョンにも一緒に来てほしいと頼む。だが、ジュンギョンは及び腰である。
ジュンギョンの父の帰りは遅い。それゆえか姉はジュンギョンに何くれとなく構うが、テレもあってか、ジュンギョンは素っ気ない。そしてまた大統領に手紙を書く。なぜ、そこまで駅にこだわるのか。子供の熱情かと思うがそうでもない。ジュンギョンはもともと数学が得意。それを活かし、姉の言葉にヒントを得てトンネル脇に信号を作る。電車の振動を感知して、電車が近づいていることを知らせるものである。手作りの信号だが、村人たちは大いに喜ぶ。
ほんわかした物語が続く。ジュンギョンと高校で一緒になったラヒはなぜかジュンギョンに好意的。議員の娘という恵まれた家庭で育ったラヒはジュンギョンの家庭とは対照的。それでも2人は一緒に勉強したりして、純情な付き合いを続ける。そしてある回顧シーンが出てくる。それは学校で賞を取りトロフィーを貰ったジュンギョンを姉が褒めながらの帰り道。鉄橋を渡り始めた一行に、電車が近づいてくる。急いで待避所に向かう村人たち。最後になるのは姉ボギョン。間一髪で電車をやり過ごすも、その勢いでジュンギョンのトロフィーが線路の下へ落ちてしまう。そしてそれを取ろうとしたボギョンは、バランスを崩してしまう・・・
ほんわかしたドラマが一転して様相を変える。川へ転落したボギョンは帰らぬ人となる。そこでジュンギョンが駅にこだわっていた理由、そして家を離れてソウルへ行くことに抵抗していた理由が明らかになる。それまで何気なく描かれていたシーンが意味を持ってくる。なかなかやってくれる映画である。やがて、ジュンギョンの手紙が効いたのか、駅を作る認可が下りる。しかし、許可は下りたが、予算がつかず工事に入れない。そんな状況下、ジュンギョンはある決断を下す・・・
線路のみで道路がないという異常な環境にある村。映画が終わって、実は実在の駅のことだとわかる。ジュンギョンらの物語はフィクションだろうが、うまく事実とかけ合わせて作ったものだと思う。駅づくりにかけるジュンギョンの思い。その思いに動かされていく周囲の人々。姉やラヒとのエピソード。ジュンギョンを取り巻く人々のストーリーに胸が熱くなる。思わぬ感動系の映画に得した気分になる。
ラヒを演じたイム・ユナは、最近NETFLIXで観ている『キング・ザ・ランド』の主演の美人女優。それで観てみようと思った映画だが、思いもかけぬ拾いものをした気分である。心を温めたい気分の時には観てみたい映画である・・・
評価:★★★★☆