2023年12月31日

【ア・フュー・グッドメン】My Cinema File 2791

ア・フュー・グッドメン.png

原題: A Few Good Men
1992年 アメリカ
監督: ロブ・ライナー
出演: 
トム・クルーズ:ダニエル・キャフィ
ジャック・ニコルソン:ネイサン・R・ジェセップ
デミ・ムーア:ジョアン・ギャロウェイ
ケヴィン・ポラック:サム・ワインバーグ
キーファー・サザーランド:ジョナサン・ケンドリック
ケヴィン・ベーコン:ジャック・ロス

<映画.com>
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キューバ米海軍基地で起った不審な殺人事件の真相を探る若き弁護士の姿を中心に、軍隊内の組織悪を暴く過程での、登場人物たちの人間的成長を描くドラマ。監督は「ミザリー」のロブ・ライナー。映画の主要部分を成す法廷場面は、カリフォルニアのカルバー・スタジオに巨大セットを組んで撮影された。製作はライナーと、『JAWS・ジョーズ』のデイヴィッド・ブラウン、「スタンド・バイ・ミー」のアンドリュー・シェインマン。エグゼクティブ・プロデューサーはウィリアム・S・ギルモアとレイチェル・フェファー。ブロードウェイでロングラン・ヒットとなったアーロン・ソーキンの舞台劇を基に、彼自身が脚色。撮影は「JFK」のロバート・リチャードソン、音楽は「シティ・スリッカーズ」のマーク・シェイマンが担当。トム・クルーズ、ジャック・ニコルソン、デミ・ムーアなど豪華なスターが競演している。
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この映画が公開されたのは、もう30年も前になる。当時売り出し中だったトム・クルーズ主演であり、さらに個人的にファンであったデミ・ムーアとの共演という事で前のめりで観た記憶がある。そして深い余韻とともに記憶に残っている作品である。ふと、もう一度観てみたくなり、2023年最後の作品として再鑑賞に至る。

物語はキューバにあるグァンタナモ米軍基地で就寝中のサンティアゴ1等兵にドーソン上等兵とダウニー1等兵とが襲い掛かる。手足を縛り上げて暴行を加えたところ、サンティアゴ1等兵は1時間後に死亡するという事件が起きる。ワシントン法務監査本部の内務課に勤務する法務官のジョアン・ギャロウェイ少佐は、上司にこの事件の弁護をさせて欲しいと申し出る。しかし、上司はジョーの希望を受け入れず、海軍法務総監部の法務官ダニエル・キャフィ中尉にオーナー弁護士を依頼することを決定する。

実はこの事件は、「コードR(レッド)」と基地内で呼ばれる規則違反やミスをした兵士に対する制裁措置が取られた可能性があり、上層部は事件を早期解決させる必要があるとの判断から、新米だが司法取引に長け、9か月で44件の示談を成功させた法務官のキャフィに白羽の矢を立てたのである。さらにサム中尉を補佐として任命する。命令となれば、不服であっても従わなければならない。ジョアンはさっそくキャフィに会いに行く。

ところが、キャフィは2人の弁護よりも野球の試合が大事で練習に余念がない。示談で手早く済ませてしまおうと考えるキャフィと、法廷で2人の無実を証明するべきだと考えるジョーとはことごとく対立する。ドーソンらは、暴行したことは認めるが殺してはいないと主張していたが、軍医の診断は口に押し込んだ布に毒が染み込ませてあったと殺人を匂わせる。ドーソンたちはあくまでも海兵隊の規律を守るために、上司のケンドリック中尉の命令(コードR)に従っただけであると訴えている。

実は被害者のサンティアゴは訓練について行けず、転属を望んで各所に手紙で訴えていた。その中で、基地外への違法発砲の証言を匂わせており、これを知った基地の最高責任者であるジョセップ大佐は、厳しい指導を命じていた。すなわち、これが「コードR」である。部下のマーキンソン中佐はこの決定に反対し、サンティアゴを転属させるべきだと主張するが、ジェセップは国家安全保障会議のメンバーでもある実力者であり、その決定には誰も歯向かえなかった。

キャフィは、ジョアンとサムを伴い、キューバのグァンタナモ基地に行き、ジョセップたちから事情を聞く。ジェセップは、サンティアゴの転属を許可し、朝一番の便でキューバを離れる予定だったと主張する。それを覆す材料はどこにもなく、キャフィは早々に示談にすべきとの考えに従って処理しようとする。しかし、ジョアンはこれを良しとせず、キャフィの考えに反対し、法廷で戦うことを主張する。

キャフィは有能であるが、実に軽い男。トム・クルーズの演じる男にはそういう男が多い。そして有能であり、それゆえに裁判をしても勝てないと早々に判断し、被告の2人にとってもっとも罪が軽くなる方法を考え、検察側の検事であるロス大尉としばしば処分の落としどころを話し合う。有利な状況をかき集め、罪は話し合うたびに軽くなっていく。一方、真面目なジョアンはキャフィのお手軽な解決策を良しとしない。あくまで無罪での法廷闘争を主張し、キャフィを突き上げていく。この2人の対立は実に面白い。

最後は被告2名の意志が尊重される。2人はあくまでも上司の命令に従って制裁を加えたものであり、死亡したのは予想外の事故だと考える。キャフィの主張する減刑では有罪であることを認めることになり、たとえわずかな懲役で出所できたとしても海軍を不名誉除隊しなければならず、そんなことは断じて選びたくないと考える。結局、キャフィはジョアンの熱意とこの2人の意志とにより、渋々法廷闘争の方針に切り替える。

このやり取りも実に面白い。キャフィは単に面倒だからお手軽に司法取引にしようとしているのではなく、状況証拠から「勝てない」と判断している。裁判をして意志を通すのもいいが、結果として有罪となり、10年あるいは20年の懲役になるよりいいだろうと考える。そしてそれはある意味正論でもある。実際、ジェセップ大佐は、その力でもって徹底して証拠隠滅を図っており、勝てる見込みは極めて少ない。こうした状況下で、軍事裁判が開始される。

ストーリーはラストの裁判に向けて進んでいく。あの手この手で被告に有利な材料を集めるキャフィたち弁護士グループ。状況は二転三転する。最後までスリリングな展開が続く。そしてラストでいよいよラスボス、ジェセップ大佐とキャフィが対峙する。このジェセップ大佐を演じるのが、ジャック・ニコルソン。自信過大で傲慢な言動は憎々しいほど。しかし、そこには最前線であるグァンタナモ基地を預かっているという自負がある。その姿は間違いなくこの映画の成功要因である。

実際のところはよくわからないが、ジェセップのような大物を裁判に呼び出し、そこで下手にその名誉を傷つければ、逆にキャフィが軍事法定で罪を問われるとされる。それでも戦うことを選んだキャフィに胸が熱くなる。トム・クルーズもデミ・ムーアも実にいい。そして感動的なラスト。間違いなく、トム・クルーズの初期の代表作と言えるだろう。こういう映画は、何度観ても心に残るものである。1年の最後を締めくくるにふさわしい一作である・・・


評価:★★★★☆









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2023年12月30日

【未来世紀ブラジル】My Cinema File 2790

未来世紀ブラジル.jpeg

原題: Brazil
1985年 イギリス
監督: テリー・ギリアム
出演: 
ジョナサン・プライス:サム・ラウリー
ロバート・デ・ニーロ:タトル
キム・グライスト:ジル・レイトン
イアン・ホルム:カーツマン氏
ピーター・ヴォーガン:ヘルプマン次官

<MOVIE WALKER PRESS>
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アリイ・バロッソ作曲の“ブラジル”がバックに流れる近未来ブラック・コメディ。製作はアーノン・ミルチャン。共同製作はパトリック・カサヴェッティ。監督は「バンデットQ」のテリー・ギリアム。脚本はテリー・ギリアム、トム・ストッパード、チャールズ・マッケオンの共同。撮影はロジャー・プラット、音楽はマイケル・ケイメン、特殊効果はジョージ・ギブスが担当。出演はジョナサン・プライス、キム・グライストほか。ギリアムが製作会社と編集方針で対立。結果複数のバージョンが存在することとなった。日本で上映されたのは142分のヨーロッパ版。
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 この映画はかつて観た映画である。有名な映画であるが、内容は頭に残っていない。どんな映画だったか、気になって再び鑑賞に至った次第。

 物語の舞台は、時代は定かではないどこかの国。そこは国家による国民管理が徹底した社会。爆弾テロが横行し、世間を震撼させている。そして政府は、ハリー・タトルという暖房修理屋を容疑者として掴み、それが情報剥奪局に伝わる。そこで仕事中にハエを追った担当者がそのハエを叩き潰すが、プリンターにその死骸が落ちてしまい、タトルと印字すべきところをバトルと印字してしまう。

その情報に基づき、政府は容疑者としてハリー・バトルという靴職人の男を逮捕する。突然部屋の天井に穴をあけ、ドアを壊して押し入り拘束する。権利を読み上げることもしない。人権無視の逮捕劇である。バトルの住むアパートの上階に住んでいたトラック運転手のジルは、部屋の床に穴をあけられてしまうが、もちろん修理もされない。しかし、それ以上に誤認逮捕である旨を訴えに行く。ところがたらい回しにされた上に些細な不備を理由に門前払いされてしまう。

一方、政府の記録局で働くサムは、日々同じ夢を見ている。それは大空を自由に飛び回る自分が、やがて天に舞う美女と口づけを交わすというもの。そんなサムは情報剥奪局による誤認逮捕の情報を見つけてしまうが、事なかれ主義の性格から上司と共に証拠を黙殺してしまう。さらに局長の友人である母親のコネで出世のチャンスが訪れるが、興味の無いサムは誘いを断ってしまう。

自宅に帰ったサムは部屋の暖房器具が故障したため修理業者を呼ぶ。無慈悲な留守電の対応にげんなりしていると、数分と経たぬうちに修理屋が訪れ、暖房器具を修理する。名前を聞けばハリー・タトルと名乗る。さらに正規のルートを通さない修理は違法だという。タトルは金も取らずに去っていく。

無実の罪で逮捕されたハリー・バトルは、なんとそのまま処刑されてしまう。さらに逮捕から処刑にかかった費用はすべて遺族に請求される。しかし、拘留費に超過払いが生じ、サムは払い戻しに訪れる。そこで、サムはバトル家の上階に住むジルを見て思わず息を飲む。ジルは、毎晩サムの夢に現れる美女そっくりだったのである。慌ててジルの後を追ったサムだったが、ジルはトラックで走り去ってしまう。

以来、ジルのことが頭から離れないサム。ジルの情報は情報剥奪局にあるが、当然部外者には教えてもらえない。しかし、母親のコネの昇進を受け入れれば情報略奪局への入局が叶うとなり、サムは断っていた昇進を受け入れ、情報剥奪局へ配属される。そうしていよいよジルのデータを検索するが、そこでも「マル秘」扱いとなっている。犯罪者の拷問担当の友人のジャックに聞くと、どうやら政府の誤認逮捕をあちこちに訴えていることから、犯罪者としてマークされているのだとわかる。

原題はただの❝Brazil❞。邦題はさらにひと捻りして『未来世紀ブラジル』。近未来の社会を描いたのであろうが、情報はすべて紙ベースだし、情報機器もすべて20世紀の発想を超えられていない。どうにも滑稽な未来社会である。それはそうと、そこでは人権も軽視されている。逮捕も無茶苦茶だし、おまけに費用請求までしっかりされる。ろくに検証されることもなく逮捕され、拷問された挙句、迅速に処刑されてしまう。考えるまでもなく、恐ろしい社会である。

一方、サムの母親は異常なまでに若返り整形に余念がない。背景はわからないが、相当な金持ちであり、友人と整形の方法を競い合っているが、外科手法の母親に対し、化学療法の友人はどう見ても失敗しているが、主治医を信じて包帯の厚みが増していくにもかかわらず、その信頼を失わない。これもある意味恐ろしい。そして情報略奪局を始めとして、役所の仕事は必要以上にお役所的である。

物語は、いわば口封じのためジルを逮捕しようと躍起になる政府と夢に見た女性を守ろうとするサムの行動を追う。正直言って、ストーリーはそれほど面白いとは言えない。ただ、全編にわたってモノクロ画面で描かれる「未来社会」は、いろいろと風刺に満ちている。そのあたりが名画としての評判の元になっているのかもしれない。映画のラストは、監督のギリアムと製作会社との間で対立し、結果複数のバージョンが存在するという。今回観たのは監督推奨バージョンのようだが、こちらの方が個人的には好みである。

ハリー・タトルを演じるのは、なぜかロバート・デ・ニーロ。無名俳優の中に混じって出演しているのも何か不思議な感がある。何かを訴えかけているようで、その何かは明確にはわからない。されどその不気味さ、根底に秘められた恐ろしさは感じることができる。何十年ぶりかで観たが、そんな含みのある映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2023年12月29日

【君の誕生日】My Cinema File 2789

君の誕生日.jpeg

原題: Birthday
2019年 韓国
監督: イ・ジョンオン
出演: 
ソル・ギョング:ジョンイル
チョン・ドヨン:スンナム
キム・ボミン:イェソル
ユン・チャニョン:スホ
キム・スジン
イ・ボンリョン

<シネマトゥデイ>
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多くの人が命を落としたセウォル号沈没事故を題材にしたドラマ。事故で息子を失った悲しみに沈む家族が、前を向こうとする。メガホンを取るのは、ボランティアとして事故の遺族と接してきたイ・ジョンオン。『名もなき野良犬の輪舞(ロンド)』などのソル・ギョング、『男と女』などのチョン・ドヨンのほか、キム・ボミン、ユン・チャニョン、キム・スジン、イ・ボンリョンらが出演している。
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韓国へ向かう国際線の中で、沈んだ表情を浮かべているのは主人公のジョンイル。空港へ降り立ったジョンイルは、沢山の土産物を抱え、長く不在にしていた自宅アパートを訪れる。しかし、チャイムを鳴らしても反応がない。誰もいないのではなく、部屋には妻のスンナムと、娘のイェソルがいるが、インターフォンの画面に映ったジョンイルの姿を見たスンナムは、不思議そうな顔をするイェソルに「静かに」と言い、居留守を使う。

やむなく、ジョンイルは妹の家に向かう。翌日、ジョンイルは妹に案内され、イェソルの通う小学校へ向かい、そこでイェソルと再会する。ジョンイルが単身、海外に渡ったのはイェソルが幼い頃。ゆえにイェソルはジョンイルが父親だとすぐにわからない。喫茶店で普段食べないスイーツを前にしたイェソルは、ジョンイルに「半分持って帰っていいか」と問う。兄に持って行くという答えにジョンイルは怪訝な表情を浮かべる。そしてイェソルの案内で自宅に戻ったジョンイルは、長男の部屋を見て呆然とする。それがなぜかはまだわからない。

近所のスーパーで働くスンナムは、帰宅してジョンイルと再会する。そこにあるのは諦めの表情。そしてジョンイルに離婚届を差し出す。しかしジョンイルはこれをすぐに受け入れられるものではなく、離婚の話は保留としたまましばらく妹の家に厄介になりつつ、スンナムと話をしていくことにする。帰国して仕事が決まっていない様子のジョンイルは、たびたびイェソルを訪ねて一緒に過ごす。そしてある日、課外授業に同伴したジョンイルは、海を見るなり怯えて泣き出すイェソルに困惑する。

一体、どういうドラマなのだろうかと疑問が続く。なぜジョンイルが家族と離れて外国で働いていたのかは不明だし、その間、残された家族3人がどう暮らしていたのかもわからない。そしてやがてジョンイルとスンナムの息子スホが実は事故で亡くなっているということがわかる。そしてその事故というのが、セウォル号事件だということも明らかになる。スンナムはスホを亡くしたことからまだ立ち直れずにいる。家の玄関の電気は調子が悪く、スイッチを操作していないのに点いたり消えたりする。スンナムは勝手に玄関の明かりが点くと、スホが帰ってきたのだと思うようになっている。

セウォル号事件の被害者の家族に、国が多額の補償金を支払うというニュースが流れる。被害者家族の中にそれを受け取る者が出てくる。受け取るか受け取らないかが被害者家族の一つの議論の的になっている。そんなある日、被害者家族の支援団体の代表がスンナムの家を訪れ、スホの誕生日を祝おうと提案する。ジョンイルはその計画に前向きだが、スンナムは頑なに拒否をする。これがタイトル『君の誕生日』の由来。それにしても、スンナムの時は止まり、心はスホに留まる。スホのために季節ごとに服を買うのに、イェソルには買わない。それに対して、イェソルがどう感じるかを考えるゆとりもない。

有名なセウォル号事件を間接的に扱っているこの映画。ある遺族に焦点を当て、その様子を描いていく。しかし、背景描写が不十分でよくわからないところが気になってしまう。ジョンイルが海外へ行っていた事情とか期間とか。刑務所に入っていたというセリフもあり(それで再就職も断られてしまう)、それと海外に行っていた関係もよくわからない。国からの補償金を受け取らない理由も明確には語られない。個人的には事故関係者に恨みはあってとしても、「それはそれ、これはこれ」で受け取ればいいように思えてしまう(そう言えば、『茜色に焼かれる』(My Cinema File)もそうであった)。

愛する息子を突然失い、心にぽっかりと空洞ができ、深い悲しみを抱えて生きる家族を映画は追っていく。しかし、どうもその悲しみだけを延々と見せつけられても観ていてキツイものがある。スホが、スンナムを連れてベトナムに行き父と再会する夢を抱いていたことを知ったジョンイルは、空港の出国カウンターで担当者に泣きつき、スホのパスポートに韓国の出国スタンプを手に入れるが、実際に出国もしていなかったわけであり、そこまでしてスタンプを手に入れることに素直に共感できなかった。

さらにラストの誕生日もまたしかり。どうにもわざとらしいお涙頂戴劇に観ていてとうとう覚めてしまう。韓国人の気質なのか、男でも女でもオイオイ声を上げて大泣きするのは、どうも違和感を禁じ得ない。もう少ししみじみじんわり描いてくれた方が、個人的には心に響いたかもしれない。それにしても、どうせならセウォル号事件そのものをもっと描いて欲しかったと思う一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2023年12月28日

【SCOOP!】My Cinema File 2788

SCOOP!.jpeg
 
2016年 日本
監督: 大根仁
出演: 
福山雅治:都城静
二階堂ふみ:行川野火
吉田羊:横川定子
滝藤賢一:馬場
リリー・フランキー:チャラ源
斎藤工:小田部
塚本晋也:多賀
中村育二:花井
山地まり:山地まり
澤口奨弥:元気
石川恋:石川恋

<シネマトゥデイ>
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原田眞人が監督と脚本を担当した1985年公開の『盗写 1/250秒 OUT OF FOCUS』を基にした福山雅治主演のドラマ。パパラッチとして生計を立てる中年カメラマンが、個性豊かな写真週刊誌の記者らと共に巨大な事件を追いかける。メガホンを取るのは『バクマン。』などの大根仁。共演として、『ヒミズ』などの二階堂ふみ、『HERO』シリーズなどの吉田羊、滝藤賢一、リリー・フランキーらが顔をそろえる。報道に情熱を注ぐ者たちの姿はもちろん、髪とひげを伸ばした福山のワイルドな風貌にも注目。
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物語の舞台となるのは、スクープという雑誌編集部。ある日、1人の女性が編集部を訪ねてくる。騒然とした編集部では誰も気に留めない。女性の名は行川野火。その日スクープに配属された新人である。編集部の副編集長である横川定子は、早々に野火に指示を出す。向かったのは、とある野球選手が遊んでいる店。しかし、そこには既に先客がいる。フリーカメラマンの都城静であるが、当該野球選手のスキャンダルを狙い、鞄に仕込んだカメラで撮影を開始しようとした矢先、野火が相手に話しかけて邪魔されてしまう。

野火を連行して定子に文句を言いに行く静。しかし、定子は逆に静に野火の教育を依頼する。その条件として、次に撮るネタを30万で買うと伝える。借金もある静にしてみれば背に腹はかえられず、渋々了承する。そして野火を乗せた静はさっそく一路、代官山へ行く。静曰く、ネタは自ら捜すものであると、さっそく指導が始まる。静はこれとにらんだ路上に停車している車のナンバーを自前のデータで検索し、とある女優のものだと知り、出てくるのを待って写真に収める。と言っても、スクープがすぐに撮れるものではない。

静の教育は続く。深夜でもおかまいなし。路駐した車でじっと待つ。曰く、スクープをものにすることは、壮絶な暇との戦い。張り込みをしてネタを掴めない日などざらにある。野火は帰りたくてたまらないが、寝ている間にスクープを横取りされるかもしれない。そして深夜2時過ぎ、若い男性アイドル3人と女性アイドル3人が別々に入店して行く。静はすぐに野火を連れて店に入る。さり気なく様子を伺い、男性アイドルの1人が女性アイドルとカーテンで仕切られた部屋に入ると、野火に指示を出し、キスシーンを撮影して逃走する。

野火はそんな仕事は本当に最悪だと罵るが、まったくの同感である。パパラッチなどゴキブリかドブネズミ以下の所業なのだというセリフに共感する。野火が撮った画像は記事になり、世間を沸かせる。だが、野火は素直に喜べない。そして次に民自党青年局長の不倫情報が定子からもたらされる。相手は人気女性アナウンサーとなると、スクープは間違いない。そして得た情報を元に、静と野火は政治家主催のパーティに潜入する。ターゲットはそのままパーティ会場でもあるホテルの部屋に入る。そして女子アナもそこにやってくる。

部屋に入られると外から様子はわからない。ホテルの向かいのビルに陣取った2人は、部屋の窓にピントを合わせるが、カーテンが厚く閉ざされている。いかにしてカーテンを開けさせるか。ここで静の取った方法はなかなかのもの。思わず部屋のカーテンが開き、言い訳のできない恰好をした政治家と女子アナが寄り添う姿を静は激写する。喜びも束の間、SPに見つかった2人は急いで撤収するが、追いかけるSPとカーチェイスになる。実際にSPがここまでするのかどうか知らないが、映画としては面白い。

このスクープにより、雑誌の売り上げは増加する。静と野火のコンビは、やがて息の合った動きを見せるようになり、雑誌の売り上げは毎週のように記録を更新していく。その一方で、スクープ編集部では、大事件の掲載をしたい定子と、グラビア中心でやりたい馬場の意見が対立する。どちらも次期編集長を狙う立場であり譲れない。そして勝負に出た定子はど次のターゲットとして松永事件の犯人である松永の現在の姿を撮って来いと2人に指示を出す。

パパラッチを主人公とした映画としては、『ナイトクローラー』(My Cinema File1562)があったが、個人的にはやはり好きにはなれない。ただ、『ナイトクローラー』(My Cinema File1562)の主人公にはまったく共感できなかったが、この映画の静にはそんな嫌悪感は沸いてこない。その理由を考えてみると、それはターゲットにあるのかもしれない。乱交タレントに不倫政治家、松永事件とは容疑者松永が、4人の若い女性をレイプして殺害したという凄惨な事件。事故現場で負傷者の救助そっちのけでカメラを構えるのとはわけが違うからだろう。

さらにサイドストーリーとして静の情報源であるチャラ源との交流も描かれる。2人の会話から過去に何かあったらしいが、それは劇中の中では明かされない。ベテランと新人のコンビというのもよくありがち。静を演じる福山雅治もイケメンキャラそっちのけでアングラカメラマンを演じる。野火が処女かどうかで定子と10,000円を賭けたりする。その10,000円は最後に野火に託される。あまり主人公としては好意を持てないパパラッチではあるが、あの手この手でターゲットを狙う静と野火のコンビにいつしか期待をしてしまう。

過去にあったある出来事からチャラ源を絶対的に信頼する静。しかし、それはラストでチャラ源すら望まぬ結果となる。いつしかプロのカメラマンに育っていた野火は静の指示を無視して動く。そして静の声を聞いた気がした野火は決定的瞬間をカメラに収める・・・

ストーリーの面白さもあるが、福山雅治と二階堂ふみ、吉田羊、リリー・フランキーといった役者陣の奮闘も映画としての面白さに加わる。いつのまにか、パパラッチに対する嫌悪感は消えている(この映画限定だが・・・)。予想外の展開を見せるストーリー。観て良かったと思える映画である・・・


評価:★★★☆☆








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2023年12月27日

【娼婦ベロニカ】My Cinema File 2787

娼婦ベロニカ.jpeg

原題: A Destiny of Her Own
1998年 アメリカ
監督: マーシャル・ハースコヴィッツ
出演: 
キャサリン・マコーマック:ベロニカ・フランコ
ルーファス・シーウェル:マルコ・ベニエ
オリヴァー・プラット:マフィオ・ベニエ
モイラ・ケリー:ベアトリーチェ・ベニエ
ジャクリーン・ビセット:パオラ・フランコ
ナオミ・ワッツ:ジュリア・デ・レッゼ
フレッド・ウォード:ドメニコ・ベニエ
ジェローン・クラッベ:ピエトロ・ベニエー

<映画.com>
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封建社会で力強く生き抜く女性の愛と官能を描いた文芸ロマン。監督は「みんな愛してる」のマーシャル・ハースコヴィッツ。脚本ハマーガレット・ローゼンタールの自伝を元に新鋭ジェニーン・ドミニーが担当。製作は「恋におちたシェイクスピア」のエドワード・ズウィックとハースコヴィッツ、「パトリシア・アークェットのグッバイ・ラバー」のアーノン・ミルチャン、サラ・キャプラン。製作総指揮は「評決のとき」のマイケル・ネイサンソン、「フィッシャー・キング」のステファン・ランドール。撮影は『ボディ・スナッチャーズ』(V)のボージャン・バゼリ。音楽は「ジキル&ハイド」のショージ・フェントン。美術は『未来世紀ブラジル』 のノーマン・ガーウッド。編集は『戦火の勇気』 スティーヴン・ローゼンブラムと「マスク」のアーサー・コバーン。衣裳は「エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事」のガブリエラ・ペスクッチ。出演は「ブレイブハート」のキャサリン・マコーマック、「ダーク・シティ」のルーファス・シーウェル、「ブルワース」のオリヴァー・プラット、「沈黙の女」のジャクリーン・ビセットほか。
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物語の舞台は1583年のベネチア。商業都市として繁栄していた一方で、女性は男性の所有物とされていた時代である。主人公のベロニカは、その日華やかな高級娼婦が船に揺られて行くのを憧れの眼差しで見つめている。その頃、貴族の友人ベアトリーチェの兄マルコがローマから戻る。再会したベロニカとマルコは互いに惹かれ合うようになる。

やがてベアトリーチェに結婚の話が出る。相手は親ほど年の離れた男で、政略結婚である。ベロニカはショックを受けるが、マルコからもまた身分の違いからベロニカとは結婚はできないと告げられて悲しみに暮れる。そんな娘の様子を見た母パオラは、マルコを手に入れる唯一の方法はかつての自分と同様の高級娼婦になることだと告げる。驚くべきことに、母もかつて高級娼婦だったという。

母はベロニカに高級娼婦としてのイロハを叩き込む。それは身のこなし、しぐさ、教養、男を惹きつける手練手管。やがて全てを身に着けたベロニカのお披露目として母パオラはベロニカを国防大臣に紹介する。貴族らが集う場に現れたベロニカはそこでマルコのいとこマフィオと詩を披露しあう。彼女の美しさと教養は貴族の間でも評判となり、たちまち艦隊総督や司祭など有力者が顧客となる。

美しく磨かれたベロニカにマルコも心を奪われるが、ほどなくしてマルコも家の決めた名家の娘ジュリアと結婚する。そんなある日、詩集を出版することになったベロニカがそのお披露目をしていると、マフィオがかつてベロニカに誘いをすげなく断られたこともあいまって嫉妬から貴族らの面前で彼女を侮辱する。ベロニカは剣でマフィオに決闘を挑みこれを打ち負かすが、マフィオは腹立ちまぎれにベロニカを殴りつける。それを見たマルコは思わずマフィオを殴りつけ、ベロニカを手当てする。

これを機に、マルコとベロニカは体を重ねる。そしてベロニカは他の男と寝るなというマルコの言葉で客を取ることをやめる。その頃、トルコの艦隊がベネチアに攻め入ってくる。ベネチアは、フランスに助力を求めようとフランス王アンリ三世を招く。謁見の場で総督はアンリ三世の要望を受け、えり抜きの高級娼婦たちをアンリ王の前に出すが、彼はマルコと共にいたベロニカに目をつけ、彼女を寝室に呼ぶ。ベロニカは国のためアンリ王に身を任せ、その甲斐あってフランス艦隊を出す約束を取り付けることに成功するが、マルコは耐えらきれずにそのまま戦場へと向かう・・・

娼婦を主人公にした映画というと、真っ先に思い浮かぶのは『プリティ・ウーマン』であるが、この映画は16世紀の娼婦を主人公にした物語。売春は世界で最も古い職業と言われるが、当時のベネチアでは既に娼婦の地位は確立されている。現代でも銀座のホステスはただ美人というだけではなく教養も要求されるらしいが、当時のベネチアも高級娼婦ともなれば体だけではなかったようである。

主人公のベロニカは、なんと母親の手解きを受けて高級娼婦になる。当時、女性は男の所有物とされていたということであり、そこから脱するためには娼婦というのは止むを得ない選択だったのかもしれない。詳しくは説明されないが、ベネチアにやってきたアンリ三世が名高い娼婦を所望する。ひょっとしたらベネチアの娼婦は有名だったのかもしれない。娼婦は女性たち(特に妻たち)から嫌われるが、男も大っぴらに支持できない。それは当時も同じだったようである。

娼婦の愛には悲しい運命が付きまといがち。この物語も同様である。そして宗教裁判が出てくるところも時代を反映している。ベロニカも周りの妻たちから反感を買い、そして宗教関係者や詩の才能からマフィオの恨みも買って窮地に陥る。ペストの流行は魔女の仕業とされ、有罪となれば火炙りの刑となる時代。ラストの宗教裁判はちょっと感動的。男たちも男気を出す。日本でも高級娼婦としては花魁が有名であるが、その負の部分は描かれず、とりあえずロマンティックなストーリーとなっている。

なんとなく観た映画であるが、綺麗な部分だけ見ておきたいと思わされる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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