
原題: Cinderella
2021年 アメリカ
監督: ケイ・キャノン
出演:
カミラ・カベロ:シンデレラ / エラ
イディナ・メンゼル:ヴィヴィアン
ミニー・ドライヴァー:ベアトリス女王
ニコラス・ガリツィン:ロバート王子
ピアース・ブロスナン:ローワン王
<映画.com>
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「ピッチ・パーフェクト」のケイ・キャノンが監督・脚本を手がけ、おとぎ話として誰もが知るシンデレラの物語を、1980年代から現代までの世界的大ヒットポップソングで彩りながら、新たに描いたミュージカル。米ガールズグループ「フィフス・ハーモニー」の元メンバーで、グループ脱退後にはソロアーティストとして躍進し、グラミー賞にもノミネートされたシンガーソングライターのカミラ・カベロが主演。真実の愛を求めるだけでなく、自分の夢を実現させるために邁進する新たなシンデレラ像を体現した。継母役を『アナと雪の女王』のイディナ・メンゼル、国王役をピアース・ブロスナン、女王役をミニー・ドライバー、王子役を「ハートビート」のニコラス・ガリツィンが演じる。Amazon Prime Videoで2021年9月3日から配信。
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「シンデレラ」は子供の頃から様々な形で慣れ親しんできた物語。実写版の『シンデレラ』も記憶に新しい。そんな「シンデレラ」をミュージカル風にアレンジした新解釈の映画である。
昔々、あるところにある王国。その王国の街外れにある一軒の家から物語は始まる。家主は2人目の夫に先立たれたヴィヴィアン。ヴィヴィアンには3人の娘がいる。マルヴォリアとナリッサ、そして継娘のエラである。エラは地下の部屋に住み、義姉たちからは灰まみれという意味の「シンデレラ」と呼ばれている。そんなシンデレラには夢がある。自分で仕立てたドレスを売りたいという元祖のストーリーにはない夢である。
しかし、現実主義・現金主義者の継母ヴィヴィアンは、何不自由のない生活を送るために、3人の娘たちに早く金持ちの男を捕まえて結婚するようにと言っている。それに対し、シンデレラは、ドレスを作る仕立屋として成功したいという長年の夢を叶えるため、今日も地下室でドレスづくりに励む。そんな庶民の生活とはかけ離れた城のお触れ役タウン・クライヤーが陽気な楽器隊を従えて、王国の民たちに衛兵の交代の式典を知らせる。式典には国王と女王、王子と王女ら国王一家が勢揃いするという。
そして衛兵交代式当日、シンデレラは王国民が城に集まるため、自分が作ったドレスを売り込むチャンスと思うが、ヴィヴィアンに怒られてしまう。女が商売なんてという世の風潮なのである。一方宮殿では、ローワン国王が息子のロバート王子のことで頭を痛めている。王子が名家の王女との縁談を断り続けているのである。王位継承という点で王子に早く結婚してほしい。そんな父王の心知らずか、ロバート王子は縁談よりも親友のウィルバー伯爵ら友人たちと遊んでいる方が楽しいのである。
そんなロバート王子の行動をローワン国王が許せるはずもなく、花嫁探しの舞踏会への出席を命令する。憂鬱な気分で臨んだ衛兵交代式で、ロバート王子が宮殿のバルコニーから見たのは、ローワン国王の肖像によじ登って観覧するシンデレラの姿であった。ローワン国王に注意されても臆さず、堂々とした振舞いを見せて去っていくシンデレラに、ロバート王子は一目で恋に落ちる。これも元祖にはないオリジナルのストーリーである。
ロバート王子は一計を案じ、舞踏会への出席の条件として「舞踏会には身分を問わず、国中の若い女性を招待する」ことを国王に認めさせる。そしてロバート王子は、自らシンデレラを舞踏会へ招待するため、変装して街へ繰り出し市場で自作のドレスを売ろうと奮闘するシンデレラを見つける。市場はシンデレラに冷たく、女性の商いということで見下され、挙句に自作のドレスを盗んだものと言われる始末。そんなシンデレラの姿を見ていたロバート王子は、シンデレラが作った亡き実母の形見であるブローチをつけたドレスを高値で買い取る・・・
元祖とは異なるストーリー展開に戸惑う部分もあるが、お約束の舞踏会はきちんと城で開かれる。しかし国民の間では、ロバート王子は問題を起こすだけの役立たずでマザコンと噂され、王室を支えているのはキレ者のグウェン王女とされており、シンデレラからは舞踏会へは行かないと言われてしまう。慌てた王子は、「舞踏会で世界中から集まってくる女性に偏見を持たない大金持ちを紹介する」と取り繕ってシンデレラを舞踏会に誘う。このあたりのオリジナルストーリーは面白い。
そして紆余曲折を経てシンデレラは、自作のドレスを着て舞踏会に出席する。お約束の魔法使いは蜘蛛に食べられそうだった幼虫が羽化した蝶が変身した姿。シンデレラと一緒に地下に住んでいた3匹のネズミが馭者に変身する。ガラスの靴を履き、かぼちゃではなく、庭に置かれた木箱が馬車になる。「時計の針が12時をさしたら、魔法が解ける」というのもお約束。こうしてシンデレラは舞踏会へ出席する。
しかし、ここでもオリジナルのストーリーが展開される。それは男女平等の現代らしいストーリー展開。おそらく「将来の夢はお嫁さん」という夢を見る少女が大半だった時代には受け入れられなかったであろうストーリーである。白馬にまたがった王子様の姿はなく、主人公は自らのドレスを売りたいという夢を追うシンデレラ。ロバート王子にもその昔、鎧をまとって戦いに赴く父親の勇敢な姿に憧れ、国王になりたいと思ったことがある。
12時の鐘が鳴る。魔法が解けかかっているシンデレラは、走りにくいガラスの靴を宮殿前で脱ぎ捨て、馬車に乗ってその場を立ち去る。シンデレラにキツくあたっていたヴィヴィアンにも誰にも話したことがない夢があったことがわかる。ロバート王子の行動はローワン国王の考えをも変える。「このガラスの靴の持ち主を探せ。結婚するかしないかはお前の好きにしろ」とロバート王子に告げ、ロバートは元祖のストーリーにはなかった選択をする。
全般にわたってミュージカル仕立ての映画。しかも80年代の懐かしい曲が中心。歌詞とストーリーが一体となったものは『マンマミーア!』(My Cinema File 553)の如し。元祖のストーリーとは異なる現代のシンデレラストーリー。めでたしめでたしだけは変わらない映画である・・・
評価:★★☆☆☆