2024年03月30日

【シンデレラ】My Cinema File 2836

シンデレラ.jpeg

原題: Cinderella
2021年 アメリカ
監督: ケイ・キャノン
出演: 
カミラ・カベロ:シンデレラ / エラ
イディナ・メンゼル:ヴィヴィアン
ミニー・ドライヴァー:ベアトリス女王
ニコラス・ガリツィン:ロバート王子
ピアース・ブロスナン:ローワン王

<映画.com>
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「ピッチ・パーフェクト」のケイ・キャノンが監督・脚本を手がけ、おとぎ話として誰もが知るシンデレラの物語を、1980年代から現代までの世界的大ヒットポップソングで彩りながら、新たに描いたミュージカル。米ガールズグループ「フィフス・ハーモニー」の元メンバーで、グループ脱退後にはソロアーティストとして躍進し、グラミー賞にもノミネートされたシンガーソングライターのカミラ・カベロが主演。真実の愛を求めるだけでなく、自分の夢を実現させるために邁進する新たなシンデレラ像を体現した。継母役を『アナと雪の女王』のイディナ・メンゼル、国王役をピアース・ブロスナン、女王役をミニー・ドライバー、王子役を「ハートビート」のニコラス・ガリツィンが演じる。Amazon Prime Videoで2021年9月3日から配信。
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「シンデレラ」は子供の頃から様々な形で慣れ親しんできた物語。実写版の『シンデレラ』も記憶に新しい。そんな「シンデレラ」をミュージカル風にアレンジした新解釈の映画である。

昔々、あるところにある王国。その王国の街外れにある一軒の家から物語は始まる。家主は2人目の夫に先立たれたヴィヴィアン。ヴィヴィアンには3人の娘がいる。マルヴォリアとナリッサ、そして継娘のエラである。エラは地下の部屋に住み、義姉たちからは灰まみれという意味の「シンデレラ」と呼ばれている。そんなシンデレラには夢がある。自分で仕立てたドレスを売りたいという元祖のストーリーにはない夢である。

しかし、現実主義・現金主義者の継母ヴィヴィアンは、何不自由のない生活を送るために、3人の娘たちに早く金持ちの男を捕まえて結婚するようにと言っている。それに対し、シンデレラは、ドレスを作る仕立屋として成功したいという長年の夢を叶えるため、今日も地下室でドレスづくりに励む。そんな庶民の生活とはかけ離れた城のお触れ役タウン・クライヤーが陽気な楽器隊を従えて、王国の民たちに衛兵の交代の式典を知らせる。式典には国王と女王、王子と王女ら国王一家が勢揃いするという。

そして衛兵交代式当日、シンデレラは王国民が城に集まるため、自分が作ったドレスを売り込むチャンスと思うが、ヴィヴィアンに怒られてしまう。女が商売なんてという世の風潮なのである。一方宮殿では、ローワン国王が息子のロバート王子のことで頭を痛めている。王子が名家の王女との縁談を断り続けているのである。王位継承という点で王子に早く結婚してほしい。そんな父王の心知らずか、ロバート王子は縁談よりも親友のウィルバー伯爵ら友人たちと遊んでいる方が楽しいのである。

そんなロバート王子の行動をローワン国王が許せるはずもなく、花嫁探しの舞踏会への出席を命令する。憂鬱な気分で臨んだ衛兵交代式で、ロバート王子が宮殿のバルコニーから見たのは、ローワン国王の肖像によじ登って観覧するシンデレラの姿であった。ローワン国王に注意されても臆さず、堂々とした振舞いを見せて去っていくシンデレラに、ロバート王子は一目で恋に落ちる。これも元祖にはないオリジナルのストーリーである。

ロバート王子は一計を案じ、舞踏会への出席の条件として「舞踏会には身分を問わず、国中の若い女性を招待する」ことを国王に認めさせる。そしてロバート王子は、自らシンデレラを舞踏会へ招待するため、変装して街へ繰り出し市場で自作のドレスを売ろうと奮闘するシンデレラを見つける。市場はシンデレラに冷たく、女性の商いということで見下され、挙句に自作のドレスを盗んだものと言われる始末。そんなシンデレラの姿を見ていたロバート王子は、シンデレラが作った亡き実母の形見であるブローチをつけたドレスを高値で買い取る・・・

元祖とは異なるストーリー展開に戸惑う部分もあるが、お約束の舞踏会はきちんと城で開かれる。しかし国民の間では、ロバート王子は問題を起こすだけの役立たずでマザコンと噂され、王室を支えているのはキレ者のグウェン王女とされており、シンデレラからは舞踏会へは行かないと言われてしまう。慌てた王子は、「舞踏会で世界中から集まってくる女性に偏見を持たない大金持ちを紹介する」と取り繕ってシンデレラを舞踏会に誘う。このあたりのオリジナルストーリーは面白い。

そして紆余曲折を経てシンデレラは、自作のドレスを着て舞踏会に出席する。お約束の魔法使いは蜘蛛に食べられそうだった幼虫が羽化した蝶が変身した姿。シンデレラと一緒に地下に住んでいた3匹のネズミが馭者に変身する。ガラスの靴を履き、かぼちゃではなく、庭に置かれた木箱が馬車になる。「時計の針が12時をさしたら、魔法が解ける」というのもお約束。こうしてシンデレラは舞踏会へ出席する。

しかし、ここでもオリジナルのストーリーが展開される。それは男女平等の現代らしいストーリー展開。おそらく「将来の夢はお嫁さん」という夢を見る少女が大半だった時代には受け入れられなかったであろうストーリーである。白馬にまたがった王子様の姿はなく、主人公は自らのドレスを売りたいという夢を追うシンデレラ。ロバート王子にもその昔、鎧をまとって戦いに赴く父親の勇敢な姿に憧れ、国王になりたいと思ったことがある。

12時の鐘が鳴る。魔法が解けかかっているシンデレラは、走りにくいガラスの靴を宮殿前で脱ぎ捨て、馬車に乗ってその場を立ち去る。シンデレラにキツくあたっていたヴィヴィアンにも誰にも話したことがない夢があったことがわかる。ロバート王子の行動はローワン国王の考えをも変える。「このガラスの靴の持ち主を探せ。結婚するかしないかはお前の好きにしろ」とロバート王子に告げ、ロバートは元祖のストーリーにはなかった選択をする。

全般にわたってミュージカル仕立ての映画。しかも80年代の懐かしい曲が中心。歌詞とストーリーが一体となったものは『マンマミーア!』(My Cinema File 553)の如し。元祖のストーリーとは異なる現代のシンデレラストーリー。めでたしめでたしだけは変わらない映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年03月29日

【小説の神様 君としか描けない物語】My Cinema File 2835

小説の神様 君としか描けない物語.jpeg
 
2020年 日本
監督: 久保茂昭
原作: 相沢沙呼
出演: 
佐藤大樹:千谷一也
橋本環奈:小余綾詩凪
佐藤流司:九ノ里正樹
杏花:成瀬秋乃
莉子:千谷雛子
坂口涼太郎:野中
山本未來:河埜
片岡愛之助:千谷昌也
和久井映見:千谷優理子

<シネマトゥデイ>
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作家・相沢沙呼の小説を、『HiGH&LOW』シリーズなどの久保茂昭監督が実写映画化した青春ドラマ。あらゆる面で対照的な2人の高校生小説家が、協力してベストセラー作品を生み出そうと奮闘する。ネガティブな売れない作家をEXILEやFANTASTICS from EXILE TRIBE のメンバーで『4月の君、スピカ。』などの佐藤大樹、ドSの売れっ子作家を『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』などの橋本環奈が演じる。
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高校2年生の千谷一也は、クラスでもわりと目立たない存在。学校では文芸部に所属している。そして、実は「千谷一夜」というペンネームで小説家デビューしている。その事実は隠しており、知っているのは文芸部の部長九ノ里だけである。しかし、一也は小説家としてはスランプ状態で、中学でデビューして以降は本も売れず、ネットでも酷評されて自信を失っている。だが、母子家庭で妹も心臓病で入院中とあって、一也は売れる小説を書く必要に迫られている。

ある日、一也は部長の九ノ里の頼みで、同じクラスの転校生・小余綾詩凪を文芸部に勧誘することになる。ところが、もともと奥手の一也ゆえに声のかけ方が分からず、「小説は好きですか?」と聞いてしまい、恥ずかしさのあまり教室を駆け出してしまう。その後、一也は妹の見舞い前に立ち寄った本屋で、同じく高校生小説家「不動詩凪」の平積みされた文庫本を目にする。自分との差は歴然としており、心穏やかではない。そして妹も「不動詩凪」の大ファンとなればなおさらである。

一也の所属する文芸部の部員は2人しかいない。そこに、1年生の成瀬が入部希望でやってくる。成瀬は「千谷一夜」の小説の大ファンであり、たまたま一也が本人だと知って狂喜乱舞する。「千谷一夜」の小説への熱い思いを吐露する成瀬に、自信のなさから苛立つ一也。そこへ詩凪もやってくる。自暴自棄的な一也の不甲斐なさを責め、「小説の神様を信じてないのか?」と問う。これがタイトルのゆえん。日本は八百万の神々の国。トイレにも神様がいるのであり、小説に神様がいてもおかしくない。

それからまたしばらくして、一也は担当編集者の河埜に呼び出される。スランプに喘ぐ一也に対し、河埜は「不動詩凪」との共作を提案する。「不動詩凪」がプロットを考え、それを一也が文章にするというもの。逡巡する一也だが、「話題性があるから売れる」という河埜の言葉を受け快諾する。そして姿を現した「不動詩凪」の正体は、小余綾詩凪であった。このあたり、いかにも作られたストーリーだが、そこはあまり突っ込まないことにする。

ストーリーはこうしてコンビを組むことになった一也と詩凪とが2人で1つの作品を生み出していく様子を追っていく。自分一人で作品を書いていた詩凪がなぜ文章を他人に任せるのか。そこにはそれらしい理由が説明されるのであるが、どうも取って付けた感が否めない。まぁ、それはあまり突っ込まないのがいいだろうと思う。2人の小説家コンビが、喧嘩しながら最後にはいい作品を完成させるというのは、ありがちと言えばありがちな、王道とも言えるストーリーである。

高校の部活を題材にした映画となれば、その種類は様々であるが、取材と称して部員全員でテニス部に体験入部をするなどのエピソードも含めて、「作られた感」が強く漂う。フィクションはみな作り物ではあるが、そこに自然にストーリーを展開していくか、わざとらしさが目について「作られた感」が色濃く出てしまうかは脚本家の手腕なのかもしれないが、時折興覚め感を感じたのは事実である。まぁ、主演の橋本環奈がどこまでもかわいらしいのでいいのかもしれない。

これはこれで、一度観れば十分だと思う映画である・・・


評価:★★☆☆☆










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2024年03月26日

【フレンチ・キス】My Cinema File 2834

フレンチ・キス.jpeg

原題: French Kiss
1995年 アメリカ
監督: ローレンス・カスダン
出演: 
メグ・ライアン:ケイト
ケヴィン・クライン:リュック・テシエ
ティモシー・ハットン:チャーリー
ジャン・レノ:ジャン=ポール・カルドン刑事

<映画.com>
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恋人を奪い返しにパリを訪れたアメリカ人女性の旅を描く、キュートなラブ・コメディ。全編、フランスでのオール・ロケーションを敢行、各地の名所を収めた映像も見どころ。「めぐり逢えたら」「星に想いを」など、このジャンルでは他の追随を許さないメグ・ライアンが主演と共同製作を兼ねている。監督は「わが街」「ワイアット・アープ」のローレンス・カスダン。脚本はアダム・ブルックス。製作はティム・ビーヴァンとエリック・フェルナー、キャサリン・ギャラン、メグ・ライアンの共同で、ライアンの主宰するプルーフロック・プロが製作協力に当たっている。撮影は4度オスカー候補となり、「ワイアット・アープ」などでカスダンとの名コンビを組むオーウェン・ロイズマン、美術は「クイズ・ショウ」「ネル」のジョン・ハットマン。音楽は「ジュニア」「ウォーターワールド」のジェームズ・ニュートン・ハワードがスコアを書き、ルイ・アームストロングの『ラ・ヴィ・アン・ローズ』、コール・ポーター作曲の『I Love Paris』などの名曲がフィーチャーされている。共演は「デーヴ」「殺したいほど アイ・ラヴ・ユー」のケヴィン・クライン、『レオン』のジャン・レノ、「Q&A」のティモシー・ハットン、「美しすぎて」のフランソワ・クルゼ、モデル出身の新星スーザン・アンビーら。
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ローレンス・カスダン監督、メグ・ライアン主演という事で、懐かしくなって観た映画。「ラブコメの女王」メグ・ライアンの作品がひたすら懐かしい。

そのメグ・ライアン演じるケイトは、カナダで婚約者のチャーリーとの結婚を控えて幸せの絶頂にいる。結婚前にフランスに出張することになったチャーリーから、同行しないかと誘われるが、極度の飛行機恐怖症とあって残ることにする。しかし、これが裏目に出る。まもなくチャーリーから連絡があり、一方的に別れを告げられる。パリで運命的な出会いがあったというのがその理由。ショックを受けたケイトは、意を決してパリ に向かう。

いざ、飛行機に乗ったものの、たちまち恐怖心に襲われる。そんなケイトの隣に座ったのは怪しげなフランス人のリュック。リュックは、ケイトが眠っている隙にぶどうの苗木とダイヤのネックレスをこっそりケイトのバッグに忍び込ませる。なんとかパリに到着したケイトは、そのままチャーリーが滞在しているホテルに向かう。しかし、そこでチャーリーと女の姿を目にしたケイトは、衝撃のあまり気を失う。運悪く、その隙にスリの男がケイトのバッグを持ち去ってしまう。

まさに踏んだり蹴ったりのケイト。さり気なくあとを追ってきたリュックは、自分の隠したものも一緒に盗難に遭ったことから、親切を装って心当たりの男の元へと向かう。「蛇の道は蛇」である。なんとかバッグを取り戻すが、ぶどうの苗木はあったもののダイヤがない。焦るリュック。それを後目にケイトはカンヌへ旅立ったチャーリーの後を追う。ダイヤが気になるリュックは列車でもケイトに付きまとう。

その列車内でケイトは急な腹痛に襲われる。フランスの列車はトイレがないのか、ケイトはとある駅で途中下車する。そこでも親切を装うリュックは付き添うが、その駅はリュックの故郷でもあり、下車したついでに次の列車までの時間つぶしに、リュックは実家のぶどう園にケイトを連れて行く。事情があって実家のぶどう園は弟が継いでいるが、リュックは近隣に自分のぶどう園を持つのが夢だとケイトに語る・・・

コメディゆえに気楽に観ていられる。婚約者がいるにもかかわらず、パリに出張に行って電撃的に一目ぼれしたフランス美女と恋に落ちた恋人を追ってパリに向かう主人公。そこにどうやら盗んだダイヤを持って帰国する男が隣に座る。荷物検査を回避するためか、ダイヤをケイトのバッグに隠したことから、リュックはケイトに付きまとう。それに伴う騒動を映画は追っていく。奪われた恋人を取り戻す事で頭がいっぱいのケイトは、うさん臭いリュックを警戒する余裕もないのか、2人でカンヌまで行く。そしてリュックは恋人奪還作戦に協力を申し出る。

「ラブコメの女王」と称される通り、確かにメグ・ライアンはラブコメ作品に多数出演している。その中では 『恋人たちの予感』(My Cinema File 1234)が、一番好きかもしれないが、個人的には 『戦火の勇気』(My Cinema File 439)『プルーフ・オブ・ライフ』(My Cinema File 388)のようなシリアスな映画が好みである。最近は、あまり出演作品も観られなくなってしまったが、折に触れ過去の作品を観なおして行きたい。そう思わせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年03月22日

【THE WITCH/魔女 -増殖-】My Cinema File 2833

魔女 -増殖-.jpeg

原題: 마녀 Part2. The Other One
2022年 韓国
監督: パク・フンジョン
出演: 
シン・シア:少女
パク・ウンビン:ギョンヒ
ソ・ウンス:チョ・ヒョン
ソン・ユビン:デギル
チン・グ:ヨンドゥ
チョ・ミンス:ペク総括
イ・ジョンソク:チャン
キム・ダミ:ク・ジャユン

<シネマトゥデイ>
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遺伝子操作により殺人兵器と化した少女を描いた『The Witch/魔女』の続編。秘密研究所から逃れた少女を相手に、彼女の命を狙う工作員、超能力者集団や犯罪組織らが激しいバトルを繰り広げる。前作に続きメガホンを取るのは『新しき世界』などのパク・フンジョン。ヒロインを演じるのは、オーディションで選ばれたシン・シア。ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」などのパク・ウンビンのほか、ソ・ウンス、ソン・ユビン、チン・グらが出演する。
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『The Witch/魔女』がかなり面白かったので迷わず観ることにした続編。とは言え、物語は唐突に前作とは関係ないところで始まる。昔懐かしい感じのする社員旅行。楽しげなバスの車中だが、いつの間にかバスは人里離れた荒地にやってくる。訝しがる社員たち。すると、車内にガスが撒かれ、ガスマスクをつけた男たちが1人の女性を拉致する。連れ去られた女性が目を覚ますと、テレビからバスの転落事故のニュースが流れている。そして女性はお腹の中に子供がいると言うとその場にいた謎の人物は謎めいた言葉を残す。

時は移って現代。どこかの施設が襲撃され、あたりに死体が散乱する中、1人の少女が血まみれの姿で外に出ていく。あたりは一面の雪景色だが、少女は裸足で歩いていく。道路に出たところで1台の車に拾われる。車に乗っていたのは怪しげな男たち。どうやら後部座席に1人の女性を拘束している。どう見ても危ない状況であるが、少女は無関心な表情である。かと思えば異常な記憶力を示して男たちを驚かせる。男たちは少女に何者かと詰め寄るが、その瞬間少女を掴んでいた男が車のドアごと外に投げ飛ばされる。

一瞬の出来事に周りの皆は何が起きたのか理解できない。そして車は森に突っ込み大破する。拘束されていた女ギョンヒは、事故で倒れている男たちを後目に少女を連れてその場を立ち去る。ギョンヒは闇医者の叔父に連絡をとり、助けてもらうと少女の傷の手当ても頼む。そこで少女は背中にあったはずの弾痕が消えるなどの脅威的な治癒力を見せる。何か事情がありそうだと考えたギョンヒは、少女が回復するまで自分の家に匿うことにする。

ギョンヒは、父の死後、弟のデギルと牧場を経営している。しかし、地元を牛耳っているヤクザのヨンドゥに土地を売り渡すよう脅迫されている。ヨンドゥは、リゾート開発のためにギョンヒの土地を何としても手に入れる必要があり、部下を半殺しにされたヨンドゥは、部下を大勢連れてギョンヒの家にやってくる。これに対し、ギョンヒは父の猟銃を手に対峙するが、多勢に無勢である。デギルとともに捕らえられ、無理やり署名させられそうになる。その時、いつのまにか少女が屋根の上に立ち、ヤクザたちを見下ろしている・・・

続編と言いながら、前作の主人公ジャユンは出てこない。そして謎の少女が中心となる。その正体は謎であるが、だんだんとわかってくる。冒頭で誘拐された妊娠した女性。どうやら謎の研究所で生み出された超能力者であるようである。その能力はすさまじい。見かけはひ弱な少女だが、大の男が軽く吹っ飛ばされる。さらには自己治癒能力も高く、なんとなくかつて愛読していた漫画『超人ロック』を髣髴とさせられる。

少女と対峙するのは、ヤクザ組織だけではなく別の組織もその行方を追っている。それは研究所を襲撃し全滅させた土偶という組織。少女が生き残っていたことを知り、少女を殺すつもりで容赦なく人々を殺し、少女の居場所を追う。三つ巴のような形でギョンヒの家を舞台に衝突する。たった1人の少女の超能力のすさまじさがこの映画の見どころだろうか。まさに魔女である。前作の主人公ジャユンも最後に登場する。

そう言えば、この映画のサブタイトルは「増殖」であった。そして映画はさらなる続編を示唆して終わる。まだまだ続きを楽しめるようである。悪くはないと思う。この手の映画は好きなジャンルである。第三弾の登場を楽しみに待ちたいと思う一作である・・・


評価:★★☆☆☆










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2024年03月21日

【TITANE チタン】My Cinema File 2832

TITANE チタン.jpeg

原題: Titane
2021年 フランス・ベルギー
監督: ジュリア・デュクルノー
出演: 
アガト・ルセル:アレクシア/アドリアン
ヴァンサン・ランドン:ヴァンサン
ギャランス・マリリエ:ジュスティーヌ
ライス・サラーマ:ライアン
ドミニク・フロ:マカレナの女性
ミリエム・アケディウ:アドリアンの母
ベルトラン・ボネロ:アレクシアの父

<シネマトゥデイ>
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幼少期に交通事故に遭い、頭部にチタンプレートを埋め込まれた女性の数奇な運命を描いた異色スリラー。『RAW 少女のめざめ』などのジュリア・デュクルノーがメガホンを取り、第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞のパルムドールに輝いたほか、数々の映画賞で高い評価を獲得した。キャストには『ティエリー・トグルドーの憂鬱』などのヴァンサン・ランドンをはじめ、アガト・ルセルらが名を連ねる。
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父と娘が車に乗っている。後部座席に座っている娘のアレクシアは、声を上げたりシートを蹴とばしたりして運転中の父親をイラつかせる。挙句にシートベルトを外したため、父が叱ろうとした途端、事故を起こしてしまう。アレクシアは頭に大怪我を負い、大手術の末、頭蓋骨にチタンプレートがはめ込まれる。リハビリを終えて退院したアレクシアは、車に駆け寄ってチタンプレートの入った頭を車に静かにつけるのであった。

そして月日が流れる。アレクシアは、美しく成長した今でもなお側頭部に大きな傷跡を残している。モーターショーのショーガールとして働いているが、ある夜のショーのあと、1人の男が駐車場でアレクシアを待ち伏せして声をかけてくる。追い払うのが難しいと判断したのか、アレクシアは男にキスをする。男としてはこれに応じて熱烈なキスになる。ところが、アレクシアは長い金属のヘアピンを髪から抜き取ると、おもむろにこれを男に突き立てる。

突然の行為に観ている方も驚かされるが、アレクシアは男の死体をトランクに入れると何食わぬ顔で帰宅する。平然とシャワーを浴びるアレクシア。するとどこかから何かの音が響いてくる。それはガレージに止められたマッスルカー。その車に裸で乗り込むアレクシア。直後に車は、上下に激しく振動する。それはまるで車との性行為のよう。この映画はしばしば意味の分からないシーンが多々出てくる。

そのアレクシアは、医者である父親に不調を訴える。父は大したことはないと診断するが、アレクシアは、自分が妊娠したことに気づく。トイレで下腹部に異常を感じたアレクシアは、出血に気づく。しかし、その血は真っ黒である。それはまるでオイルのよう。これも意味不明のシーンである。そしてなんとアレクシアは、男を刺殺したヘアピンを陰部に突き入れる。無理やり堕胎を行おうとするも失敗する。なんともグロいシーンである。

その夜、アレクシアは同僚のジャスティンの家に行く。そしてレズ行為に及ぶが、ふとしたきっかけからまたもや凶器のヘアピンを使ってジャスティンを殺害する。すると家人が気が付くが、見られたからにはとばかりにこれも殺害する。そして家人も1人ではない。次から次へと現れるので、アレクシアもうんざりしながら殺し続ける。しかし、すべてを殺害することはできず、とうとうひとりの女性が逃げだし通報する。

警察から追われる身となったアレクシアは実家に戻ると、今度は両親を寝室に閉じ込めて家に火を放つ。一体、どういうストーリーなんだろうと訝しく思う。チタンの頭蓋骨の影響なのか、アレクシアは車と交わり、オイルの血を流す。さらに妊娠による母乳もオイルであり、これはどう解釈すればいいのかと戸惑うばかり。ホラーなのか、連続殺人鬼の物語なのか。そして後半は失踪した少年に成りすまして少年の家族のもとに潜り込む。

タイトルにあるチタンがストーリーにどう影響しているのかは結局わからず。意味不明な連続殺人もまたしかり。意味はわからないが、妊娠も進んでアレクシアの腹はどんどん大きくなり、やがて出産の時を迎える。失踪少年の父親の行動はわからなくもないが、生まれた子供もまた意味不明である。意図的なのかどうなのか。意味不明を盛り込んで観る者を混乱させることだけが目的なのか。そこはよくわからない。

ホラーのようでもあり、バイオレンスのようでもあり、SFと言えなくもない。なんだかそれらがすべてごちゃまぜのような展開なのである。まるで前衛芸術なのかもしれないが、それがわからない者には理解不能な展開である。はたして一体この映画は何を表現しようとしたのか。芸術映画の理解力に乏しい身には極めて厳しい映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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