
原題: Enter Nowhere
2011年 アメリカ
監督: ジャック・ヘラー
出演:
サラ・パクストン:ジョディ
スコット・イーストウッド:トム
キャサリン・ウォーターストーン:サマンサ
ショーン・サイポス:ハンス
クリストファー・デナム:ケヴィン
<映画.com>
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森の中に迷い込んだ3人の見知らぬ男女を待ち受ける奇妙な運命を描いたサスペンスミステリー。とある森の奥深く。夫とドライブ中にガス欠に陥り、ガソリンを買いに行ったまま戻ってこない夫を探していたサマンサは、1軒のキャビンにたどり着く。するとそこに、同じように車のトラブルに見舞われた青年トムが出現。さらに、今度はジョディという女がやって来る。ジョディは恋人と強盗をしてきたばかりで、なぜキャビンにたどり着いたのかわからないという。3人は助けを求めに森を出ようとするが、いつの間にか同じキャビンに戻ってきてしまう。さらに、3人がやって来たのはそれぞれ別の場所や時代であることが判明する。出演は「シャーク・ナイト」のサラ・パクストン、『フューリー』のスコット・イーストウッド、「インヒアレント・ヴァイス」のキャサリン・ウォーターストーン。
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赤いスポーツカーに乗った若いカップルがとある商店に入り、レジにいた店主に銃を突きつける。男はレジの金を奪うと外に止めてあった車に向かうが、女はさらに金庫も開けろと要求する。これを拒む店主に対し、引き金に指をかけた女は3つ数えるうちに開けろと凄む・・・
所変わって森の中を一人、彷徨っているのはサマンサ。そして一軒の小屋を見つける。中に入って食べ物を漁っていると、斧を持った男が帰ってくる。
トムに問われるままサマンサは、「途中でガソリンが切れ、夫のアダムがスタンドを探しに行ったまま帰ってこなくなり、探しに来た」と答える。トムも車が壊れてここに来て3日目だと言う。人里離れた森の中で、見知らぬ男と2人きりという状況は、女性にはナーバスになるものだろう。車の中で待つと言うサマンサに、トムは夜は寒さで凍死すると小屋に呼ぶ。妊娠しているというサマンサをベッドに寝かせ、トムは床で寝る。その夜、サマンサは、出産間近の自分に危険が迫る夢を見る。
翌日、サマンサは小屋の前で倒れている女性を見つけて中に入れる。トムは自分の車からガソリンを抜き、サマンサの車に入れるというアイデアを実行しに行くが、転倒してガソリンをばら撒いてしまう。小屋で倒れていたのは、ジョディという冒頭で強盗を働いた女性。言動は乱暴で、強盗をするのも頷ける。やがてジョディは「出て行く」と言って小屋を出るが、銃声や叫び声を聞いてすぐ帰って来る。そして問われるまま、「彼氏とケンカして車から降ろされた」と答える。3人はまた一夜を過ごすが、ジョディはベッドに縛り付けられる夢を見る。
翌朝、3人は身の上話をする。すると不思議な事がわかる。サマンサはそこをニューハンプシャーだと言うが、ジョディはウィスコンシンだと答える。さらにトムはサウスダコタだと言う。訳のわからないまま、3人はまた一夜を過ごす。翌日、移動することに決めた3人は森を進んでいく。すると地下に掘られた防空壕を見つける。サマンサの父はドイツ人であり、第二次世界大戦で戦死したと語る。そして地図を見たサマンサは、そこがポーランドかもしれないと言う。
不思議なことに、3人はいつの間にか小屋に戻ってきてしまう。そこでさらに不思議な事がわかる。ジョディが強盗して手に入れたお金をサマンサに見せるが、サマンサはそれをおもちゃだと言う。訝しがるジョディに製造年が未来になっていると言う。1984年製造の札にジョディは思わずサマンサに今は何年かと聞く。サマンサの答えは驚いたことに「1962年」。さらにジョディは今は1985年であると言い、トムに聞くと「2011年」と答える。3人は場所も時間も異なるところに生きていることがわかる・・・
その時、今度は別の男がやって来る。男はドイツ軍の軍服に身を包んでいる。3人を銃で脅し、拘束するが、ジョディの首にかけたロッケトペンダントを見て動揺する。それは男が持っているものであり、サマンサも持っていると言い出し、さらにトムも持っていたがなくしたと言う。これらの事から、彼らが置かれた異常な状況がわかってくる。彼らに共通している事実。なぜ、このような現象が起きたのかの説明はないが、彼らに何が起こっていくのかを映画は描いていく。
こういう不思議系の話は嫌いではない。されど、もっと丁寧に描いて欲しかったと思わざるを得ない。第二次世界大戦中に空襲で死んだ1人のドイツ軍兵士。しかし、その空襲は唐突であり、雑である。予算が足りなかったのか、技術者が雇えなかったのか。やがて彼らに訪れた運命。ちょっとした事で歴史は変わる。普通はその事に気づかないが、戦争で亡くなった若者たちにも生きていれば歴史を変えた者がいたかもしれない。最後は雑な展開になってしまったが、そんな想像で補ってみた一作である・・・
評価:★★☆☆☆