2024年04月29日

【トランス・ワールド】My Cinema File 2848

トランス・ワールド.jpg

原題: Enter Nowhere
2011年 アメリカ
監督: ジャック・ヘラー
出演: 
サラ・パクストン:ジョディ
スコット・イーストウッド:トム
キャサリン・ウォーターストーン:サマンサ
ショーン・サイポス:ハンス
クリストファー・デナム:ケヴィン

<映画.com>
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森の中に迷い込んだ3人の見知らぬ男女を待ち受ける奇妙な運命を描いたサスペンスミステリー。とある森の奥深く。夫とドライブ中にガス欠に陥り、ガソリンを買いに行ったまま戻ってこない夫を探していたサマンサは、1軒のキャビンにたどり着く。するとそこに、同じように車のトラブルに見舞われた青年トムが出現。さらに、今度はジョディという女がやって来る。ジョディは恋人と強盗をしてきたばかりで、なぜキャビンにたどり着いたのかわからないという。3人は助けを求めに森を出ようとするが、いつの間にか同じキャビンに戻ってきてしまう。さらに、3人がやって来たのはそれぞれ別の場所や時代であることが判明する。出演は「シャーク・ナイト」のサラ・パクストン、『フューリー』のスコット・イーストウッド、「インヒアレント・ヴァイス」のキャサリン・ウォーターストーン。
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赤いスポーツカーに乗った若いカップルがとある商店に入り、レジにいた店主に銃を突きつける。男はレジの金を奪うと外に止めてあった車に向かうが、女はさらに金庫も開けろと要求する。これを拒む店主に対し、引き金に指をかけた女は3つ数えるうちに開けろと凄む・・・
所変わって森の中を一人、彷徨っているのはサマンサ。そして一軒の小屋を見つける。中に入って食べ物を漁っていると、斧を持った男が帰ってくる。

トムに問われるままサマンサは、「途中でガソリンが切れ、夫のアダムがスタンドを探しに行ったまま帰ってこなくなり、探しに来た」と答える。トムも車が壊れてここに来て3日目だと言う。人里離れた森の中で、見知らぬ男と2人きりという状況は、女性にはナーバスになるものだろう。車の中で待つと言うサマンサに、トムは夜は寒さで凍死すると小屋に呼ぶ。妊娠しているというサマンサをベッドに寝かせ、トムは床で寝る。その夜、サマンサは、出産間近の自分に危険が迫る夢を見る。

翌日、サマンサは小屋の前で倒れている女性を見つけて中に入れる。トムは自分の車からガソリンを抜き、サマンサの車に入れるというアイデアを実行しに行くが、転倒してガソリンをばら撒いてしまう。小屋で倒れていたのは、ジョディという冒頭で強盗を働いた女性。言動は乱暴で、強盗をするのも頷ける。やがてジョディは「出て行く」と言って小屋を出るが、銃声や叫び声を聞いてすぐ帰って来る。そして問われるまま、「彼氏とケンカして車から降ろされた」と答える。3人はまた一夜を過ごすが、ジョディはベッドに縛り付けられる夢を見る。

翌朝、3人は身の上話をする。すると不思議な事がわかる。サマンサはそこをニューハンプシャーだと言うが、ジョディはウィスコンシンだと答える。さらにトムはサウスダコタだと言う。訳のわからないまま、3人はまた一夜を過ごす。翌日、移動することに決めた3人は森を進んでいく。すると地下に掘られた防空壕を見つける。サマンサの父はドイツ人であり、第二次世界大戦で戦死したと語る。そして地図を見たサマンサは、そこがポーランドかもしれないと言う。

不思議なことに、3人はいつの間にか小屋に戻ってきてしまう。そこでさらに不思議な事がわかる。ジョディが強盗して手に入れたお金をサマンサに見せるが、サマンサはそれをおもちゃだと言う。訝しがるジョディに製造年が未来になっていると言う。1984年製造の札にジョディは思わずサマンサに今は何年かと聞く。サマンサの答えは驚いたことに「1962年」。さらにジョディは今は1985年であると言い、トムに聞くと「2011年」と答える。3人は場所も時間も異なるところに生きていることがわかる・・・

その時、今度は別の男がやって来る。男はドイツ軍の軍服に身を包んでいる。3人を銃で脅し、拘束するが、ジョディの首にかけたロッケトペンダントを見て動揺する。それは男が持っているものであり、サマンサも持っていると言い出し、さらにトムも持っていたがなくしたと言う。これらの事から、彼らが置かれた異常な状況がわかってくる。彼らに共通している事実。なぜ、このような現象が起きたのかの説明はないが、彼らに何が起こっていくのかを映画は描いていく。

こういう不思議系の話は嫌いではない。されど、もっと丁寧に描いて欲しかったと思わざるを得ない。第二次世界大戦中に空襲で死んだ1人のドイツ軍兵士。しかし、その空襲は唐突であり、雑である。予算が足りなかったのか、技術者が雇えなかったのか。やがて彼らに訪れた運命。ちょっとした事で歴史は変わる。普通はその事に気づかないが、戦争で亡くなった若者たちにも生きていれば歴史を変えた者がいたかもしれない。最後は雑な展開になってしまったが、そんな想像で補ってみた一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年04月28日

【フェイブルマンズ】My Cinema File 2847

フェイブルマンズ.jpeg

原題: The Fabelmans
2023年 アメリカ
監督: スティーブン・スピルバーグ
出演: 
ミシェル・ウィリアムズ:ミッツィ・フェイブルマン
ポール・ダノ:バート・フェイブルマン
セス・ローゲン:ベニー・ローウィ
ガブリエル・ラベル:サミー・フェイブルマン
ジャド・ハーシュ:ボリスおじさん
ジュリア・バターズ:レジー・フェイブルマン
キーリー・カルステン:ナタリー・フェイブルマン
ジーニー・バーリン:ハダサー・フェイブルマン
ロビン・バートレット:ティナ・シルドクラウト
クロエ・イースト:モニカ
サム・レヒナー:ローガン
オークス・フェグリー:チャド

<シネマトゥデイ>
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『E.T.』など数多くの傑作を生み出したスティーヴン・スピルバーグ監督の自伝的作品。映画に心を奪われた少年がさまざまな人々との出会いを通じて成長し、映画監督になる夢を追い求める。『デッド・シャック〜僕たちゾンビ・バスターズ!〜』などのガブリエル・ラベル、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』などのミシェル・ウィリアムズ、『ルビー・スパークス』などのポール・ダノのほか、セス・ローゲン、ジャド・ハーシュらが出演。第47回トロント国際映画祭で最高賞に当たる観客賞を受賞した。
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時に1952年、フェイブルマン家の親子が映画館に入ろうとしている。暗いところを怖がる子どもに、両親は大丈夫と諭す。そして映画館の中に入って鑑賞した映画は『地上最大のショウ』。おっかなびっくりだった一家の長男サミーは、あっという間に映画に引き込まれ、特に劇中での列車と自動車が衝突して大脱線事故を起こすシーンに衝撃を受ける。そしてその年のクリスマスに、サミーは列車とレール一式のおもちゃを買ってもらう。

ここで車で帰宅する家族の会話から一家がユダヤ人であることがわかる。近所の家はみんなクリスマスで家を電飾しているが、サミーの家だけは、電飾がなくて暗い。父バートはエンジニアであり、母ミッツィはピアニスト。クリスマスはユダヤ教の祝日ハヌカでもあり、人々は同じように祝日を祝う。プレゼントに興奮したサミーはさっそく線路を組み立て、列車を連結させて走らせる。

しかし、走る列車を見ていてよみがえるのは、『地上最大のショウ』の脱線事故シーン。車のおもちゃを使ってそのシーンを再現する。脱線してバラバラになった列車を組み立てながら父はサミーに注意する。これに対し、母ミッツィは父の8oカメラをサミーに貸す。脱線シーンを一度撮影しておけば何度も繰り返して壊すこともないと。これがサミーの運命を変える。以来、サミーは何くれとなく家族の様子を撮影したり、妹たちにミイラの扮装をさせてホラー映画を撮ったりするようになる。

1957年、バートはより待遇の良い職場に転職することになり、アリゾナ州フェニックスに引っ越すことになる。ここでこれまでバートとともに仕事をしてきたベニーと離れ離れになることになるが、これにミッツィが抗議する。「彼を置いて自分だけ行くのか」と。実はベニーはフェイブルマン家に一緒に住んでいるかのごとき状態で(映画でははっきりわからなかった)、抗議を受けたバートが交渉したのか、ベニーもフェニックスに行くことになる。

10代になりボーイスカウトに入隊したサミーは、劇場で観たジョン・フォード監督作『リバティ・バランスを射った男』に影響され、アリゾナの砂漠地帯で仲間たちとともに西部劇を撮影する。これがなかなかの出来で、それはボーイスカウトの発表会でお披露目され、銃撃戦の迫力が観客の評判となる。サミーは、バートに銃撃戦のシーンはフィルムに小さな穴を空けて、本当に発砲しているかのような特殊効果をしたと明かす。もうすでにただモノではない感が溢れている。

そんなサミーの発想力に感心しつつも、映画撮影は趣味でしかなく、将来の仕事にはつながらないと説くバートにサミーは反発する。その夏、ここでもベニーを伴ってキャンプ旅行に出かけたフェイブルマン家。サミーは例によってキャンプを楽しむ家族を撮影する。母ミッツィは自由奔放なところがあり、夜には車のライトを照明にしてダンスを踊る。しかし、家族だけならともかく、ベニーの見ている前で服が透けて体のラインが見えるまま踊るのをたしなめる娘の意見に耳を貸さない様子には異様な雰囲気がある。

そんな中、祖母が亡くなる。実母を亡くした母ミッツィはひどく落ち込む。そんなミッツイを元気づけようと、バートはサミーにキャンプに行った際の映像を編集して見せてあげてほしいと頼む。仲間を集めて戦争映画の撮影をする予定があるサミーは渋るが、父のいつにない願いに渋々同意する。そしてキャンプ映像の編集に取り掛かったサミーだが、映像を見ていくうちに、母ミッツィとベニーが友人以上の関係である事に気づいてしまう・・・

この映画は、スティーブン・スピルバーグの自伝的映画であるという。初めて観た映画に衝撃を受け、母にビデオカメラを貸してもらって撮る楽しさを知る。最初は身の回りのものから、やがて仲間を集めてと後の映画監督がこうして生まれたのかと関心する。「好きこそものの上手なれ」と言うが、映画を撮る楽しさに夢中になっていく様子が微笑ましい。そんなサミー少年の様子を描く一方、映画は父と母の様子も描く。

エンジニアの父は腕が良かったのか、どんどんキャリアアップしていく。人が良くて家族にも優しいが、根っからのエンジニアなのか、物事の説明も詳しすぎて一般人には理解できない。母ミッツィは自由奔放なところがある。ピアニストであるというアイデンティティを大切にし、食事で使う食器はすべて使い捨てのもの。洗えば手が荒れるという考えであろうか、そんな嫁に対する姑の小言もどこ吹く風であるが、夫の同僚ベニーとはただならぬ関係にある。

姉妹にはあまりスポットライトが当たらないが、こんな両親の姿もまた映画の重要な要素になっている。映画のタイトルがなぜ「フェイブルマン」なのではなく、『フェイブルマンズ』なのか。その理由がタイトルに表れているようである。高校生になったサミーは、一家とともにカリフォルニアに行くが、学校では猛烈な人種差別に遭う。白人は有色人種だけでなく、ユダヤ人も激しく差別していたという様子がよくわかる。この経験が、後に『シンドラーのリスト』(My Cinema File 755)につながったというのも興味深い話である。

ラストのジョン・フォード監督との会話も実話だというが、大監督になる前の若き日のスピルバーグ監督の姿が輝いて見える一作である・・・


評価:★★★☆☆








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2024年04月27日

【ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密】My Cinema File 2846

ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密.jpeg

原題: Fantastic Beasts: The Secrets of Dumbledore
2022年 アメリカ
監督: デビッド・イェーツ
出演: 
エディ・レッドメイン:ニュート・スキャマンダー
ジュード・ロウ:アルバス・ダンブルドア
マッツ・ミケルセン:ゲラート・グリンデルバルド
エズラ・ミラー:クリーンデンス
ダン・フォグラー:ジェイコブ・コワルスキー
アリソン・スドル:クイニー・ゴールドスタイン
ウィリアム・ナディラム:ユスフ・カーマ
カラム・ターナー:テセウス・スキャマンダー
ジェシカ・ウィリアムズ:ユーラリー・ヒックス
キャサリン・ウォーターストン:ティナ・ゴールドスタイン
ヴィクトリア・イェーツ:バンティ・ブロードエーカー
リチャード・コイル:アバーフォース・ダンブルドア
マリア・フェルナンダ・カーンヂド:ヴィセンシア・サントス
オリバー・マスッチ:アントン・フォーゲル

<映画.com>
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大ヒットファンタジー『ハリー・ポッター』シリーズの前日譚で、魔法動物学者ニュート・スキャマンダーの冒険を描く『ファンタスティック・ビースト』シリーズの第3弾。魔法動物を愛するシャイでおっちょこちょいな魔法使いニュートが、恩師のアルバス・ダンブルドアや魔法使いの仲間たち、そして人間(マグル)と寄せ集めのチームを結成し、史上最悪の黒い魔法使いグリンデルバルドに立ち向かう。その中で、ダンブルドアと彼の一族に隠された秘密が明らかになる。ホグワーツ城やホグズミード村など、「ハリー・ポッター」シリーズでおなじみの場所も多数登場。原作者J・K・ローリングが引き続き自ら脚本を手がけ、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』以降の全シリーズ作品を手がけるデビッド・イェーツ監督がメガホンをとる。ニュート役のエディ・レッドメイン、若き日のダンブルドアを演じるジュード・ロウほか、キャサリン・ウォーターストン、ダン・フォグラー、アリソン・スドル、エズラ・ミラー、カラム・ターナーら「ファンタビ」シリーズおなじみのキャストも集結。グリンデルバルド役は前作までのジョニー・デップに代わり、デンマークの名優マッツ・ミケルセンが新たに演じる。
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物語はどこかの山奥らしきところから始まる。人跡未踏のような森の中を分け入っていくニュートは、ある魔法動物の出産に立ち会う。それは魔法界で神獣とされている「麒麟」。無事に出産に至るが、その時何者かによって襲撃される。ニュートはなんとか守ろうとするが、母麒麟は殺され、生まれたばかりの子麒麟は連れ去られてしまう。襲撃してきたのは、クリーデンスを中心としたグリンデルバルドの手下たち。息絶える母麒麟を見つめるしかできないニュートの前にもう1頭の子麒麟が誕生する。

その頃、ダンブルドアはとあるレストランでグリンデルバルドと会う。2人の会話から、かつてダンブルドアがグリンデルバルドを愛していた事、そしてともに世界を変えるべく友情のあかしとして“血の誓い”を立てた事がわかる。しかし、世界を変える方法が2人の間では異なっており、グリンデンバルドは今や指名手配されている身である。マグルに対し、全面戦争を仕掛けようとしているグリンデンバルドの説得を試みるダンブルドアであるが、考えの違いはいかんともしがたく、2人は袂を分かつ。

ひとりではグリンデンバルドを阻止できないダンブルドアは、ニュート・スキャマンダーにこれを依頼する。2人の間での“血の誓い”の効果は強烈で、ダンブルドアはグリンデンバルドを裏切ろうと心に思っただけで、“血の誓い”による苦痛に苦しめられる。ニュートは、兄のテセウス、ユーラリー・ヒックス、バンティ・ブロードエーカー、ユスフ・カーマ、そしてマグルのパン職人ジェイコブ・コワルスキーに手助けを求める。

グリンデルバルドはドイツを拠点として勢力を固め、指名手配も無罪を手にして解除する。それどころか国際魔法使い連盟のリーダー選挙に立候補し、その座を狙う。前作でグリンデルバルドに賛同し、行動をともにするのは、心を読むことができるクイニー。クイニーに思いを寄せるジェイコブは、無力なマグルでありながらも、ニュートと行動を共にする。グリンデルバルドの力は強大で、テセウスもあっさり捕らえられてしまう・・・

善と悪が対決する形でストーリーは進む。悪の親玉グリンデルバルドの力は大きく、対抗しうるダンブルドアは、“血の誓い”によって直接対決できず、やむなくニュートらに頼らざるを得ない。ダンブルドアには、アバーフォースという弟がいる。『ハリー・ポッター』シリーズでは年を取っていたダンブルドアにも若い頃があったわけで、このシリーズでは若きダンブルドアが活躍する。ニュートたちは、ホグワーツ城に集合するが、『ハリー・ポッター』シリーズ以前の魔法学校がそこにはある。『ハリー・ポッター』シリーズへと続く前日譚的位置づけが濃くなっていくようである。

前作で披露されたニュートの不思議なトランクは今回も大いに活躍する。まるでドラえもんのポケットのように中が広がっていて、どれくらい広いのだろうと興味をそそられる。そしてその中に保護されるのが麒麟。ビール会社の象徴として使われている中国の伝統的な神獣なのかと思うも、詳細はわからない。人の本質を見抜く力を持っているとされて、代表選びに利用される。なぜ、親麒麟ではなく、子麒麟だったのかもわからないまま。何となくモヤモヤ感が残ったのは否めない。

メンバーは前作から引き続いているが、唯一悪の親玉グリンデルバルドがジョニー・デップからマッツ・ミケルセンに代わっていた。「大人の事情」があったのかもしれないが、でんとした悪役というところでは、根っから悪役らしいマッツ・ミケルセンの方が相応しいように思う。個人的には本シリーズの主役であるニュートが、『ハリー・ポッター』シリーズにどういう関係で繋がっていくのかに興味がある。まったく関係ないというよりも、何らかの繋がりがあってほしいように思う。

物語はグリンデルバルドの野望を打ち砕いて終わる。ただ、グリンデンバルドは健在であり、捲土重来、また何か仕掛けてくるのかもしれない。この後もシリーズとして続いてほしいと思う一作である・・・


評価:★★★☆☆










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2024年04月26日

【世の中にたえて桜のなかりせば】My Cinema File 2845

世の中にたえて桜のなかりせば.jpeg
 
2022年 日本
監督: 三宅伸行
出演: 
岩本蓮加:咲
宝田明:敬三
土居志央梨:南雲先生
名村辰:陸斗
吉行和子:敬三の妻

<シネマトゥデイ>
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アイドルグループ「乃木坂46」の岩本蓮加と『ゴジラ』などの宝田明が主演を務め、桜の季節と終活をテーマにした物語を描くヒューマンドラマ。不登校になった高校生が終活アドバイザーとして老紳士と一緒に働きながら、さまざまな人たちの悩みに触れていく。共演は土居志央梨や郭智博、徳井優、吉行和子など。監督を務めるのは短編『サイレン』や短編オムニバス『掌の小説』などの三宅伸行。
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主人公は、女子高生の咲。自身、不登校に陥っているが、なぜか終活アドバイザーの事務所でアルバイトをしている。「依頼者の話を聞くだけの仕事」という仕事内容の説明を受けて応募した咲は、85歳になる敬三と勤務し、事務所のネット広告のPR動画にも出演している。その動画を見ながら、咲の机を見るのはクラスメイトの陸斗。何かと咲の心配をしている。

そんな咲は仕事を終えると、とあるアパートを訪ねる。「南雲先生」と呼ぶその部屋の主人は、元国語教師の女性。咲はすっかりニートと化して引き籠もり生活を送っている彼女の家事をすることが日課のようになっている。何があったのか、南雲は気力を失っており、咲の前で死にたいと口にするほどである。それを聞かされた咲に叱咤される有様は、どちらが教師なのかわからない。

そんなある日,咲の事務所にひとりの若い男が相談に訪れる。この男は家族を残して仕事で遠方に行くため、あらかじめ遺書を書かねばならないとのこと。まだ健康で死ぬイメージができず、いったい遺書に何を書けばいいのかわからないというのが相談の内容。咲は何も答えることがでないが、敬三はまだ整理されていないという男の父親の遺品を整理してみてはどうかとアドバイスする。

咲がなぜ不登校なのか、南雲先生とはどういう関係なのか。それは回想という形で次第に明らかになる。もともと南雲は咲のクラスの国語教師。ところが生徒からは授業を聞かないという形での嫌がらせを受け、どうにもならなくなって学校を辞めてしまったのである。そして咲は、泣き崩れる南雲を無情にも動画撮影しようとしていた同級生と喧嘩になり、それがきっかけで学校へ行くのをやめてしまったのである。

ストーリーにはどうしてもアラが目立つ。映画は所詮作り物であるし、細かい粗探しなどしていたら面白くもないと思うのだが、どうにも気になる粗もある。そもそも高校生に「終活アドバイザー」など不適切だと思うし、人生経験もないのにアドバイスなどできるわけがない。単に専門家を紹介するのであっても、不自然さは否めない。遺書が書けないという男に対しても、仕事の内容すら聞かないのは、ストーリーに合わせた辻褄合わせでしかない。

さらに河川管理の仕事をしていたという男が、自分のしてきた仕事を動画として残しておきたいというのに、普通終活アドバイザーに依頼するだろうか。そして咲はそれを簡単に受け、同級生の陸斗に協力してもらって撮影するに至っては、もう学芸会レベルである。やがて咲は、敬三がかつて自分も咲と同様に不登校児だったことを知る。それは戦時中の出来事。そんな不登校の敬三に話しかけてきたのは、後に妻となる学級委員の女子。かつての母校の裏にあった大きな桜の木を妻と二人でもう一度見たいと語る敬三のために、咲は一肌脱ぐことにする・・・

タイトルは有名な和歌。それにかこつけてではないが、どうしても桜の木をストーリーに引き入れんがために、咲は奮闘する。名前も聞かずに敬三の通っていた小学校を探す。スマホを持っているのにGoogleMapも使わない。田舎の道を人に尋ね回ってようやく小学校を探し当てるが、桜の木は既に枯れてしまっている。体調が悪くて現地へ行けない敬三夫妻のために、陸斗は枯れてしまった桜の木を復活させる。ストーリーに入り込めればなかなかいいシーンである。

この映画を観ようと思ったのは、AmazonPrimeで四つ星評価だったからであるが、誰がどう評価したら四つ星になるのかは大いに疑問。これからは闇雲に評価を信用しないようにしようと思った次第。主演は乃木坂46のメンバーだと言うが、映画の主演に起用されたのは話題性だけのためだけであろう、演技力は素人目にもおぼつかない。最後に遺書を書きにきた男が、宇宙飛行士として宇宙へ飛び立つところがニュースで流れる。テレビで気づいて驚くのもわざとらしい。

頑張って最後まで観たのが精一杯の映画である・・・


評価:★☆☆☆☆









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2024年04月22日

【二つの光】My Cinema File 2844

二つの光.jpeg

原題: Two Lights: Relumino
2017年 韓国
監督: ホ・ジノ
出演: 
ハン・ジミン:スヨン
パク・ヒョンシク:インス

<映画.com>
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『四月の雪』 『八月のクリスマス』など大人の恋愛を繊細に描いた作品で知られる韓国のホ・ジノ監督による短編作品。徐々に視力を失っていくピアノ調律師のインスは、写真同好会を通じて視覚障害を持つアロマセラピストのスヨンと出会う。なにかと悲観的なインスに対して、何事にも前向きなスヨン。2人は次第にひかれあっていき、スヨンは気持ちを率直に伝えるが、インスはそんな彼女に背を向けてしまう。さらに、些細な言葉がすれ違いを生んでしまい……。サムスン電子の視覚障害者支援VRアプリを題材に「愛する人を初めて見る瞬間」をテーマに描いた。映画「ジョゼと虎と魚たち」やドラマ「まぶしくて 私たちの輝く時間」「知ってるワイフ」などで知られるハン・ジミンと、ドラマ「力の強い女 ト・ボンスン」「花郎(ファラン)」などで人気のパク・ヒョンシクが共演。
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ピアノ調律師のインスは、視覚障害者。わずかに視力はあるものの、ほとんど見えない。その日、インスは視覚障害者の集まりに初参加する。入り口で偶然出会ったのは、やはり視覚障害を持つスヨン。その集まりでは、ボランティアの助けを借りて写真を撮るという活動をしている。実際にそういうことをしているのかどうかはわからない。なんとなく見えないのに写真を撮るということに意味はあるのか、素人的に疑問に思う。

スヨンは前向きなタイプで、気持ちを素直に伝えるが、インスは悲観的である。それは生まれた時からの全盲と違い、だんだん見えなくなっていく事からの絶望感があるのかもしれない。手を取って案内しようとするスヨンの申し出を頑なに拒むインス。集会には、視覚障害を持つ様々な人が参加している。問われるまま、「まだ直線歩行は可能で、障害を負ってから三年しか経っていない」と答える。

メンバーは外へ写真撮影に出かける。それぞれが撮りたいものを手で触れ、ボランティアの目を借りてシャッターを切る。撮影の合間に、スヨンはインスに積極的に話しかける。仕事はと聞かれ、ピアノの調律師をしていると答えるインス。スヨンは匂いを嗅ぐ仕事をしていると言う。アロマセラピーをしているようである。目をくっつくくらいに近づけて、ピアノの音を一音ずつ整えるインス。調律しながら「月光」を弾く。

そこに現れたのは同僚の年配者。何かVRのようなゴーグルをつけている。息子が買ってくれたというそのゴーグルは全盲まではいかない視覚障害者向けの視力矯正機能があるようで、それをつけると物が見える。実際に実用化されているのかどうかはわからないが、こういうのがどんどんできると、障害も障害ではなくなっていく。どんどん実用化されてほしいと思う。

スヨンも全盲ではなく、インスの写真をパソコンで拡大して、まだ見える方の目で一生懸命にインスの顔を見ようとする。目が見えるという当たり前のことがいかに貴重なことかとわかる。そしてある晴れた日。その日はメンバーが海へ撮影に来ている。撮影もそこそこに、波打ち際ではしゃぐ人たち。目が見えないと泳ぐということも難しいのだろうと思う。改めて思う目が見えることの幸せ。

撮影が終わり、少し薄暗くなった海辺を歩く二人。映画は、インスに積極的に好意を寄せるスヨンと、戸惑いながらもそれを受け入れていくインスを描く。インスに「見える夢を見るか、見えない夢を見るか」と尋ねるスヨン。「見える夢を見る」と答えるインス。それに対し、まだまだだと言うスヨン。スヨンはもう夢の中でも声ばかり聞こえると言う。何気ない会話であるが、そこにも目が見えるという事の幸せがわかる。

映画はわずか30分ほどの短編である。珍しいなと思いつつ観てみたが、短編でも凝縮されたストーリーが長編と同じように訴えかけてくるものはある。「知ってるワイフ」のハン・ジミン主演であり、それもまた良しである。健常者には当たり前のことでも、障害者にはそれだけで幸せということがある。当たり前の小さな幸せに気づくことができる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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