
原題: Flawless
1999年 アメリカ
監督: ジョエル・シュマッカー
出演:
ロバート・デ・ニーロ:ウォルト
フィリップ・シーモア・ホフマン:ラスティ
バリー・ミラー:レオナード
クリス・バウアー:ジャッコ
スキップ・サダス:トミー
ウィルソン・ジェレマイン・ヘレディア:チャチャ
ナショム・ベンジャミン:グレース
<シネマトゥデイ>
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名優ロバート・デ・ニーロが、ドラッグ・クイーンとの奇妙な友情物語を繰り広げる感動の人間ドラマ。監督は『評決のとき』『8mm』などのヒットメーカー、ジョエル・シューマカー。デ・ニーロと互角に渡り合う名演をみせるのは、『ハピネス』で強烈な個性を発揮したフィリップ・シーモア・ホフマン。本作ではきらびやかな衣装に身を包み、絶妙なタッチでドラッグ・クイーンを怪演している。
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主人公は、引退した元警官ウォルト。現役時代に銀行強盗事件で人質14人を救ってニューヨーク市長からも表彰された経歴である。そして今もなおヒーローとして街の人々に愛されている。そんなウォルトが住んでいるアパートには、おかまのラスティが住んでおり、仲間たちが始終出入りしている。昔気質のウォルトにはこれが許せない。また、行きつけのダンスクラブではティアという娼婦が彼に心を寄せるているが、娼婦ゆえに疎ましがり、代わりにカレンとだけ付き合っている。
一方、とある黒人の男が地元のギャングであるミスターZから大金を盗んで逃げる。逃げた先は自分の彼女の部屋。しかし、アパートの管理人が怪しんでミスターZに通報する。男はあっさりミスターZに捕まるが、金のありかを教えないまま一味に彼女とともに射殺されてしまう。騒ぎを聞きつけたウォルトは、銃を手に現場へ向かうが、途中で脳卒中を起こして倒れて意識を失う。病院で目覚めたウォルトは、担当医ニルマラから後遺症によって右半身が麻痺していることを告げられる。
退院したウォルトだが、日常生活もままならないことに絶望し、部屋に引きこもり続ける。心配したニルマラは、自宅でのリハビリを提案する。歌のレッスンが言葉のリハビリに効果があると聞いたウォルトは、おかまのラスティに金を払って歌のレッスンをしてもらうことにする。最初はうまく発音できずに苛立っていたウォルトも、ラスティの励ましによって徐々に前向きな気持ちになっていく。時間を共有する中で、ウォルトはラスティが性転換手術を受けるために歌のレッスンや針仕事で稼いでいることや、既婚者でギャンブル依存症の愛人にセックスの対価として貢いでいることを知る。
窮地に陥った時、真の友が誰かわかるものである。毛嫌いしていたラスティだが、金目当てといいつつ、ウォルトに対するレッスンはそれ以上の物がこもる。心が通じ合っていると思っていたカレンは、金の無心をリハビリで金銭的に余裕がないと告げたとたん、手のひらを返される。一方でウォルトを心配して訪れたティアに、友人から金で頼まれたのだろうと言い放って傷つけてしまう。 歌のリハビリの効果が出始めたウォルトは、自ら外を歩く練習も始め、徐々に回復していく・・・
この映画は1999年の作品。ロバート・デ・ニーロ主演、フィリップ・シーモア・ホフマン共演とあれば観逃す映画ではないが、ここまでまったく知らずにきてしまった。ロバート・デ・二―ロ演じる主人公のウォルトは、元警官だけあって正義感が強いが、昔気質の男。日本で言えば昭和世代であろうか。今でこそLGBTは一定の権利を得ているが、当時は異常者扱いだった記憶が蘇る。ウォルトも「男は男らしく」の男であり、女装して女言葉を話す男を毛嫌いしている。確かに、昔はそうであった。
しかし、自ら脳卒中で倒れ、後遺症で不自由な体になった事から、そのおかまに頼らざるをえなくなる。そして交流を深めるうちにおかまのラスティの人柄がわかってくる。このラスティを演じるのが、フィリップ・シーモア・ホフマン。まったくわからなかったが、本物のおかまと見まがうばかり。ほんのささいな仕草1つとってもなり切っている。さすが名優と思わざるを得ない。お亡くなりになったのがつくづく残念である。そんなラスティは、リハビリに励むウォルトに対し、意外な秘密を打ち明ける。
タイトルの『フローレス』の意味であるが、「きず一つない」、「完璧」を意味するようである。劇中でおかまの美人コンテストの意味でも使われており、なるほどと思える。ラスティとの付き合いから、人の本当の姿を理解していくウォルト。ラストのウォルトとのやり取りに心が温かくなる映画である・・・
評価:★★☆☆☆