2024年06月29日

【フローレス】My Cinema File 2871

フローレス.jpg

原題: Flawless
1999年 アメリカ
監督: ジョエル・シュマッカー
出演: 
ロバート・デ・ニーロ:ウォルト
フィリップ・シーモア・ホフマン:ラスティ
バリー・ミラー:レオナード
クリス・バウアー:ジャッコ
スキップ・サダス:トミー
ウィルソン・ジェレマイン・ヘレディア:チャチャ
ナショム・ベンジャミン:グレース

<シネマトゥデイ>
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名優ロバート・デ・ニーロが、ドラッグ・クイーンとの奇妙な友情物語を繰り広げる感動の人間ドラマ。監督は『評決のとき』『8mm』などのヒットメーカー、ジョエル・シューマカー。デ・ニーロと互角に渡り合う名演をみせるのは、『ハピネス』で強烈な個性を発揮したフィリップ・シーモア・ホフマン。本作ではきらびやかな衣装に身を包み、絶妙なタッチでドラッグ・クイーンを怪演している。
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主人公は、引退した元警官ウォルト。現役時代に銀行強盗事件で人質14人を救ってニューヨーク市長からも表彰された経歴である。そして今もなおヒーローとして街の人々に愛されている。そんなウォルトが住んでいるアパートには、おかまのラスティが住んでおり、仲間たちが始終出入りしている。昔気質のウォルトにはこれが許せない。また、行きつけのダンスクラブではティアという娼婦が彼に心を寄せるているが、娼婦ゆえに疎ましがり、代わりにカレンとだけ付き合っている。

一方、とある黒人の男が地元のギャングであるミスターZから大金を盗んで逃げる。逃げた先は自分の彼女の部屋。しかし、アパートの管理人が怪しんでミスターZに通報する。男はあっさりミスターZに捕まるが、金のありかを教えないまま一味に彼女とともに射殺されてしまう。騒ぎを聞きつけたウォルトは、銃を手に現場へ向かうが、途中で脳卒中を起こして倒れて意識を失う。病院で目覚めたウォルトは、担当医ニルマラから後遺症によって右半身が麻痺していることを告げられる。

退院したウォルトだが、日常生活もままならないことに絶望し、部屋に引きこもり続ける。心配したニルマラは、自宅でのリハビリを提案する。歌のレッスンが言葉のリハビリに効果があると聞いたウォルトは、おかまのラスティに金を払って歌のレッスンをしてもらうことにする。最初はうまく発音できずに苛立っていたウォルトも、ラスティの励ましによって徐々に前向きな気持ちになっていく。時間を共有する中で、ウォルトはラスティが性転換手術を受けるために歌のレッスンや針仕事で稼いでいることや、既婚者でギャンブル依存症の愛人にセックスの対価として貢いでいることを知る。

窮地に陥った時、真の友が誰かわかるものである。毛嫌いしていたラスティだが、金目当てといいつつ、ウォルトに対するレッスンはそれ以上の物がこもる。心が通じ合っていると思っていたカレンは、金の無心をリハビリで金銭的に余裕がないと告げたとたん、手のひらを返される。一方でウォルトを心配して訪れたティアに、友人から金で頼まれたのだろうと言い放って傷つけてしまう。 歌のリハビリの効果が出始めたウォルトは、自ら外を歩く練習も始め、徐々に回復していく・・・

この映画は1999年の作品。ロバート・デ・ニーロ主演、フィリップ・シーモア・ホフマン共演とあれば観逃す映画ではないが、ここまでまったく知らずにきてしまった。ロバート・デ・二―ロ演じる主人公のウォルトは、元警官だけあって正義感が強いが、昔気質の男。日本で言えば昭和世代であろうか。今でこそLGBTは一定の権利を得ているが、当時は異常者扱いだった記憶が蘇る。ウォルトも「男は男らしく」の男であり、女装して女言葉を話す男を毛嫌いしている。確かに、昔はそうであった。

しかし、自ら脳卒中で倒れ、後遺症で不自由な体になった事から、そのおかまに頼らざるをえなくなる。そして交流を深めるうちにおかまのラスティの人柄がわかってくる。このラスティを演じるのが、フィリップ・シーモア・ホフマン。まったくわからなかったが、本物のおかまと見まがうばかり。ほんのささいな仕草1つとってもなり切っている。さすが名優と思わざるを得ない。お亡くなりになったのがつくづく残念である。そんなラスティは、リハビリに励むウォルトに対し、意外な秘密を打ち明ける。

タイトルの『フローレス』の意味であるが、「きず一つない」、「完璧」を意味するようである。劇中でおかまの美人コンテストの意味でも使われており、なるほどと思える。ラスティとの付き合いから、人の本当の姿を理解していくウォルト。ラストのウォルトとのやり取りに心が温かくなる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年06月28日

【イノセンツ】My Cinema File 2870

イノセンツ.jpg

原題: De uskyldige
2021年 ノルウェー
監督: エスキル・フォクト
出演: 
ラーケル・レノーラ・フレットゥム:イーダ
アルバ・ブリンスモ・ラームスタ:アナ
ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム:アイシャ
サム・アシュラフ:ベン
エレン・ドリト・ピーターセン:アンリエッタ
モーテン・シュバルトベイト:ニルス

<映画.com>
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退屈な夏休みに不思議な力に目覚めた子どもたちの遊びが、次第に狂気へと変わっていく姿を、美しくも不気味に描いたノルウェー製のサイキックスリラー。
ノルウェー郊外の住宅団地。夏休みに友人同士になった4人の子どもたちが、親たちの目の届かないところで隠れた力に目覚める。子どもたちは近所の庭や遊び場で新しい力を試すが、やがてその無邪気な遊びが影を落とし、奇妙なことが起こりはじめる。
監督は、「わたしは最悪。」でアカデミー脚本賞にノミネートされたエスキル・フォクト。ヨアキム・トリアー監督の右腕として、同監督の「母の残像」「テルマ」「わたしは最悪。」で共同脚本を務めてきたフォクトにとって、自身の監督作はこれが2作目となる。撮影を「アナザーラウンド」「ハートストーン」など北欧映画の話題作を多数手がけるシュトゥルラ・ブラント・グロブレンが担当。
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両親と娘2人のとある家族がとあるマンションに引っ越してくる。2人の娘のうち姉のアンナは知的障害を持っている。そのせいか両親の関心は姉の方に向かざるを得ず、妹のアイダは不満を抱えている。その不満はちょっとしたいじわるという形でアンナに向かう。アイダはアンナが無反応であることをいいことに、つねったりするのである。そしてアンナが割ったガラスの欠片を見つけたアイダは、それをアンナの靴に入れる。

引っ越したばかりで誰とも遊ぶ相手のいないアイダは、外へ出て近所に住む少年ベンと知り合う。ベンの秘密基地へと案内されたアイダは、ベンから不思議な力を見せられる。それは目の前に落としたものを空中で手を触れることなく吹き飛ばすというもの。いわゆる念力である。一方、近所にはアイシャという女の子がいる。アイシャにも不思議な力があり、靴を履いた時に痛みを感じて慌てて靴を脱ぐと靴下が血に染まっている。しかし、次の瞬間、それは錯覚であるとわかる。そしてそれはガラス片で怪我をしたアンナの足の状態であった。

母親にアンナを外に連れていくように言われたアイダは、しぶしぶアンナを連れて外へ行く。しかし、ベンと会ったアイダはブランコに乗るアンナを置いてベンと遊びに行く。しばらくしてアイダが戻るとアンナの姿が見えない。慌てて探すと、アンナはアイシャと遊んでいる。アンナは普段言葉を話せないが、なぜかアイシャとは意思疎通を交わしている。聞けばアイシャはアンナの考えがわかるのだと言う。

これを機に、アイシャはアンナとテレパシーで意思疎通して仲良くなる。やがてアイダとベンと4人で遊ぶようになる。アイシャがアンナにある言葉を囁く。それを離れたところにいるベンが感じ取り、アイダに伝えてアイダが答える。無邪気に遊ぶ4人だが、そんなテレパシーを見せつけられたら大人は肝を潰すと思うが、無邪気に遊ぶ子供たち。さらに能力を開花させたベンは、石を飛ばすようになる。この物語がどこへ行くのか、まるで予測もつかない。

家に帰ったベンだが、実は母親はシングルマザーであり、ベンには無関心である。そしてアイシャの母親もシングルマザーだが、鬱状態にある。そんな背景事情が描かれる中、ある日、アイダがアイシャに耳元でベンの悪口を言ってアイシャが笑ったのを、ベンがテレパシーで読み取って喧嘩になる。能力をさらに伸ばしたベンは、その能力でアイダを攻撃しようとするが、アンナがそれに立ちふさがる。にらみ合う2人。次の瞬間、近くにあった大木が真っ二つに割れる・・・

日本では珍しいノルウェーの映画。どこにでもあるマンションでの子供たちの姿を追って行く物語のように思っていたが、何と登場人物の子供たちには超能力が備わっているという物語になっていく。相手の心を読み、触れずに物を動かし、しまいに人を操るようになる。ベンはちょっと変わったところがあり、アイダに出会ってすぐの頃、面白半分にネコをマンションの高階の階段から落とす。そして骨折したのかびっこを引くネコの頭を踏みつぶして殺してしまう。この残忍さが超能力と結びつき、後半の恐怖へと繋がって行く。

超能力は、人間の憧れる力である。人の心を読み、触れずに物を動かし、人を自在に操る。されどそれが悪用されると恐ろしいことになる。ベンは自分に感心のない母親に能力でフライパンをぶつけて大怪我をさせ、倒れたところに煮え立った鍋を落とす。助けを求める母親の声を無視し、やがて母親は動かなくなる。マンションの大人を操り、近所で気に入らない子を撲殺する。殺したのは大人であり、ベンには疑いの目すら向けられない。

そんなベンの狂気がとうとうアイダら3人に向かう。ベンの狂気と暴走する能力は誰にも止められない。そして大人は誰もそれに気づかない。後半は危険を感じたアイダがベンから身を守る戦いへとなっていく。一見、普通のドラマに思えたストーリーは、超能力者の戦いへと展開していく。耳慣れないノルウェー語であり、異国感にあふれた物語。こんな子供がいたら実に恐ろしい。そんな想像をさせられた映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年06月22日

【アムステルダム】My Cinema File 2869

アムステルダム.jpg

原題: Amsterdam
2022年 アメリカ
監督: デビッド・O・ラッセル
出演: 
クリスチャン・ベイル:バート・ベレンゼン
マーゴット・ロビー:ヴァレリー・ヴォーズ
ジョン・デビッド・ワシントン:ハロルド・ウッドマン
クリス・ロック:ミルトン・キング
ラミ・マレック:トム・ヴォーズ
マイク・マイヤーズ:ポール・カンタベリー
ロバート・デ・ニーロ:ギル・ディレンベック
テイラー・スウィフト:リズ・ミーキンズ

<MOVIE WALKER PRESS解説>
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ある殺人事件の容疑者にされてしまった3人の男女が巨大な陰謀に迫っていくクライムサスペンス。『アメリカン・ハッスル』のデヴィッド・O・ラッセルが史実を基に、ほぼ実話の物語を描いた。容疑者となる3人を、『ザ・ファイター』のクリスチャン・ベール、『スーサイド・スクワッド』のマーゴット・ロビー、『TENET テネット』のジョン・デビッド・ワシントンが演じるほか、アニャ・テイラー=ジョイ、マイケル・シャノン、ラミ・マレック、ロバート・デ・ニーロら豪華キャストが脇を固める。
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時は1930年代のニューヨーク。第1次世界大戦に参戦し、戦傷を負った医師バートは、自分と同じ復員兵に寄り添った治療をする医院を開いている。治療にくる復員兵たちに対し、バートは薬品を惜しげもなく差し出し、新薬と称して国が承認していない薬も作り出して治療にあたっている。そんなバートには戦友がいる。ある日、その一人である黒人弁護士のハロルドから呼び出される。軍隊で世話になったミーキンズ将軍が亡くなり、娘リズからその死因に不信なところがある事から解剖してほしいと頼まれたと言う。

世話になったこともあり、バートはミーキング将軍の死体の解剖を引き受ける。そして解剖の結果を受け取るが、胃の中の内容物から何者かの手によって殺害された可能性があるとわかる。さっそくリズに報告すべく、バートとハロルドは待ち合わせ場所へ向かうが、なぜかリズは2人を避けようとする。なんとかリズを捕まえた2人だが、リズは誰かに脅かされたようで怯えている。そして話の途中で、突然現れた男がリズを車道に突き飛ばし、リズは走ってきた車にひかれて死んでしまう。

呆然とするバートとハロルドだが、リズを突き飛ばした男は2人を指さし、2人が彼女を突き飛ばしたと叫び始める。明らかな濡れ衣であるが、明確な目撃者もなく、2人は不利な状況になる。警察も来て騒ぎも大きくなり、2人はあわてて逃げ出す。逃げながらバートは初めてハロルドと出会った時のことを思い出す。バートが部隊に派遣された時、黒人兵たちが平等に扱えと当時の部隊の上官に申し立てており、騒ぎをききつけたミーキンズ将軍がこれを認めてバートを上官に指名する。ハロルドはこの時の黒人兵の中心であった。

ハロルドはバートたちと激戦を闘い、ともに負傷して病院に担ぎ込まれる。そこで看護師として働いていたヴァレリーは、2人の手当を担当する。バートは片目を失い、背中に大けがを負う。ハロルドもまた左頬に醜い傷跡が残る。やがて2人は退院するが、以後2人はヴァレリーと意気投合し、3人は信頼のおける友人同士となる。片目を失ったバートに対し、アムステルダムに義眼を作るいい技師がいるとヴァレリーが言い、3人はアムステルダムへ行く。

アムステルダムでの療養生活は3人にとってとても楽しいものとなる。義眼を得たバート、ヴァレリーのハートを射止めたハロルドと、2人は心行くまで身体と心の傷を癒す。やがて傷が癒えたバートは、アメリカに帰国することにする。しかし、アメリカに帰国したバートがモルヒネ依存症になってしまったのを知り、ハロルドも彼を救うためにアメリカへ帰ることを決意する。それにヴァレリーを連れて行こうとするが、なぜかヴァレリーは置手紙をして姿を消してしまう・・・

『アムステルダム』というタイトルがついているものの、アムステルダムが物語の中心というわけではない。ストーリーの中心は何かの陰謀であり、それによって主人公が敬愛する将軍とその娘が殺されている。その陰謀を主人公が探っていくというもの。医師と弁護士という社会的に信頼が置ける職を持つ2人だが、殺人犯との汚名をきせられて警察から追われる。追われながらも黒幕を求めて東奔西走する。主人公のバートは名家の子女を妻に迎えるが、歓迎されていない。戦争に行ったのも従軍したのも高邁な理想というよりも厄介払いの感がある。

そんな主人公を演じるのは、クリスチャン・ベール。それだけでも観る価値はある。マーゴット・ロビー、ジョン・デビッド・ワシントンという共演陣も豪華であり、楽しみにして観たのではあるが、ストーリー自体のインパクトは今ひとつというところ。ただ、ラミ・マレックやロバート・デ・ニーロ、あげくにテイラー・スウィフトといった大物が脇役として登場するという豪華さに何とも言えない贅沢感がある。

アムステルダムは3人がひたすら楽しく過ごした町。またそこに行こうとバークを誘うハロルドとヴァレリー。その気持ちが良く伝わってくる。そういう意味では、タイトルにも含みのある事がわかる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年06月21日

【ロケットマン】My Cinema File 2868

ロケットマン.jpg

原題: Rocketman
2019年 イギリス・アメリカ
監督: デクスター・フレッチャー
出演: 
タロン・エガートン:エルトン・ジョン
ジェイミー・ベル:バーニー・トーピン
ブライス・ダラス・ハワード:シーラ
リチャード・マッデン:ジョン・リード

<シネマトゥデイ>
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「Your Song/ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」などで知られるミュージシャン、エルトン・ジョンの半生を描いた伝記ドラマ。主演は『キングスマン』シリーズなどのタロン・エジャトン、共演に『リヴァプール、最後の恋』などのジェイミー・ベル、『ジュラシック・ワールド』シリーズなどのブライス・ダラス・ハワードらが名を連ねる。『キック・アス』などのマシュー・ヴォーン監督とエルトン・ジョン自身が製作を務め、『サンシャイン/歌声が響く街』などのデクスター・フレッチャーがメガホンを取った。
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エルトン・ジョンと言えば、イギリスのシンガーだという事は知っていたが、代表曲を知っているわけでもない。されどなんとなく興味があったこともあり、自伝映画である本作の鑑賞に至る。初めに奇抜なオレンジ色の悪魔を模したコスチュームを着たエルトン・ジョンが扉を開けて入ってきたのは、依存症の互助会。そして自らアルコール、コカイン、そして性依存や買物中毒等自分が抱える問題を参加者の前で明かす。成功して大金を手にした人によくありがちな事である。

エルトン・ジョンは、時間はどのくらいかかるのかと問う。それに対し、会の進行役は「あなた次第だ」と答え、どんな子供時代だったのかと訊く。そして物語はエルトン・ジョンの子ども時代へと飛ぶ。エルトン・ジョンの本名はレジナルド・ドワイト(レジー)であり、母シーラと軍人の父スタンリー、そして祖母アイヴィと一緒に暮らしている。シーラは派手好きで上流階級に憧れる主婦、スタンリーは兵役で家を留守がち。夫婦仲は悪く、幼いレジーに目を掛けてくれたのは唯一アイヴィだけであった。

そんなある日、ラジオから流れる『スケーターズ・ワルツ』を聴いたレジーは、楽譜無しでメロディをピアノで弾きはじめる。それを見たアイヴィは、孫に音楽の才能があることを見抜き、ピアノの個人レッスンを受けることを勧める。音楽に夢中になったレジーは、オーケストラを指揮し、ピアノで伴奏する自分を想像しながら練習に励む。しかし、父親は厳格でレジーに甘えを許さず、レコードに興味を示したレジーに「触るな」と怒鳴る始末。両親の愛情が少ない家庭である。

11歳になったレジーは、ピアノの先生から王立音楽院のオーディションを受けるよう勧められる。両親は面倒くさがるが、アイヴィがレジーをオーディション会場に連れていく。レジーが会場へ入って行くと、試験官が『トルコ行進曲』を弾いていたが、レジーに気づいて途中でやめる。そして試験官から弾いてみるよう促されたレジーは、『トルコ行進曲』を試験官が弾くのを止めたところまで弾く。演奏をやめた理由を(試験官が)「そこまでしか弾かなかったから」と答えるレジー。その才能はすぐれたものだったのだろう。

その後、両親は離婚する。そしてある日レジーはエルヴィス・プレスリーのレコードをもらう。これが大きな転機となり、ロックに大きな影響を受けたレジーは仲間と一緒にバンドを組み、音楽活動を始める。そのバンドに声が掛かり、アメリカのミュージシャンが興行に訪れた際のバックバンドとして雇われる。どうすれば音楽で成功するのかと尋ねたレジーは「生まれた自分を捨てることだ」と教えられ、バンドメンバーのエルトン・ディーンに、これからエルトンと名乗ると告げる。

さらに音楽の才能を募る広告を見たエルトンは、音楽出版社を営むディック・ジェームスの事務所を訪ねていく。そこでレイという男の面接を受けたレジーは、即興でピアノを披露するが、歌詞がない。実はレジーには歌詞作りが難しい。そんなレジーに、レイは歌詞を渡して曲を作るように言う。そして名前を訊かれたレジーは、その場に飾られていたビートルズの写真を見て、エルトン・ジョンと答える。エルトン・ジョンの名前がジョン・レノンから来ているのは初めて知った事である。

この時、渡されたのが作詞家バーニー・トーピンの書いた『Border』。連絡を取って会った2人は直ぐに意気投合する。こうしてバーニーが詩を書き、エルトンがそれに合せて曲を作るという関係が生まれる。ディックとレイからジョン・レノンとポール・マッカートニーが一緒に住んで音楽を作っているように一緒に住めと言われ、エルトンとバーニーもアパートを借り、曲作りに励む。エルトンは大家の女性と付き合うようになるが、どこか心の中に違和感を抱える。そして仲間に指摘され、エルトンは自身が同性愛者だと気づく・・・

名前しか知らなかったエルトン・ジョンの物語はなかなかドラマチックである。ミュージカルのように展開されるストーリー。随所に流れるエルトン・ジョンの曲は聞いた事があるものもある。それを聞いているだけでも心地よい。そして成功の階段を駆け上がっていく物語は心躍るものである。しかしながら成功者はどこかで食い物にされ、足を踏み外す。『エルヴィス』(My Cinema File 2731)でもそうであったが、エルトン・ジョンも恋愛関係にあった男をマネージャーにしてお金を搾取される。

酒とドラッグに溺れ、周囲のアドバイスも耳に入らない。そんな中でもバーニーとの関係がずっと続いたのはエルトン・ジョンにとっては良かったのだろう。そんなエルトン・ジョンの自伝として観るもよし、音楽を楽しむのもよし。どちらも楽しめる。観終わってあらためてYouTubeで映画の中に出てきた曲を聴く。観終わったあとも楽しめる映画である・・・


評価:★★★☆☆









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2024年06月18日

【左様なら今晩は】My Cinema File 2867

左様なら今晩は.jpg
 
2022年 日本
監督: 高橋名月
原作: 山本中学
出演: 
久保史緒里:愛助
萩原利久:陽平
小野莉奈:果南
永瀬莉子:玲奈
中島ひろ子:みさき
宇野祥平:奥田

<MOVIE WALKER PRESS解説>
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不器用なサラリーマンとピュアな幽霊の奇妙な共同生活を描いた、山本中学による同名コミックを実写映画化。幽霊の愛助を乃木坂46で活躍する久保史緒里が務め、愛助と共同生活を送ることになった陽平を『十二人の死にたい子どもたち』の萩原利久が演じた。監督を務めたのは、『正しいバスの見分けかた』の高橋名月。
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主人公はごく普通のサラリーマン半澤陽平。冒頭の引っ越しシーン。出て行くのは一緒に暮らしていたと思しき彼女。喧嘩別れというわけではなく、部屋を出ていく時も穏やかに話す2人。しかし、陽平の一言に彼女は怒る。どうやら陽平の優しさにも問題があったようである。出て行く時、彼女は部屋にあったお札を持って行く。そして1人になったその夜、陽平は部屋でビールを飲んでいると、急に部屋の電気が消える。さらに物が動き、冷蔵庫の扉が勝手に空き、陽平はビビりまくる。

するといつの間にか陽平の前に見知らぬ女性が現れる。女は自ら幽霊だと告げる。なんと陽平と彼女が引っ越してきた時からずっとそばで見てきたと話す。女は「あんたは優しいふりして、結局なんも考えとらん」と陽平にダメ出しする。面倒なことから逃げてばかりだから、彼女にも逃げられたと手厳しい。女はその部屋で死んだというが、名前も覚えていない。わずかに「あ」と「い」がついたという程度である。そこで陽平は女の幽霊を愛助と呼ぶことにする。

愛助を見つめていた陽平に照れたのか、愛助は平手打ちにする。幽霊の平手打ちが効くわけないのであるが、なぜか陽平はその場に倒れてしまう。そのまま朝を迎えた陽平は、頬を赤く腫らしたまま出社する。さっそく後輩女性の果南から頬が赤くはれていることを指摘される。果南は面白がって陽平の顔をスマホで撮るが、なんと陽平の顔の周りに黒いもやがかかっている。その日、帰宅した陽平は、コンビニで購入した線香を点ける。すると姿を現した愛助は線香の香りをいい香りだと語る。

陽平は不動産屋を訪れ、今住んでいる部屋は事故物件ではないかと尋ねる。不動産屋の奥田はクレームを警戒してしらを切る。陽平が家に帰ると、愛助は勝手に線香をたいていて、部屋の中は線香の煙が充満している。急いで窓を開ける陽平。除霊方法などを検索するが、いい方法は見つからない。さらに愛助は、部屋からは出られないと言う。どうやら地縛霊のようである。もともと陽平には優柔不断なところがあり、霊と言っても若くて可愛いところがあるからか、陽平は愛助の存在を受け入れていく・・・

幽霊と同居していく主人公の物語。それをラブコメ風に仕上げている。ここは現実的にどうこうとツッコミを入れるものではない。幽霊に普通に触れたりできるところも、深く突っ込むところではない。それはそういうものとして観ていくのが、この手の映画の正しい鑑賞方法である。幽霊である愛助は過去の記憶が曖昧。言葉はどこかの方言であり、物語の舞台は地方都市(なんとなく広島あたりのように思う)。当然、気になるのは愛助の正体。しかし、頼みの綱の不動産屋は個人情報を盾に教えてくれない。観ている方もちょっと気になる。

触れられるのならどこまで触れられるのだろうかと大人は考えてしまうが、ここはお花畑的な思考が必要だろう。さらに一緒にビールを飲む2人。ビールまで飲めるのかと思うも、よく見ればグラスのビールは減っていない。そんな関係が続き、会社では陽平は果南から「生気が感じられない」と言われる。つのだじろうの漫画で育った世代としては、「来た来た」と思うも、それ以上の進展はない。やはり恐怖映画とは違ってお花畑映画である。

幽霊と言いつつ、昼間も普通に出てくるし、挙句に部屋を出て2人でデートまでできてしまう。そしてその姿はどうやらほかの人にも見えるのだが、そのあたりの説明はない。ちなみに、果南が陽平にモーションをかけ、部屋に押し入ってきた時、果南には愛助が見えない。そこもあまり突っ込むところではないのだろう。どこからどこまでも、まだまだ恋愛に憧れ夢見る少年少女向けのラブコメである。大人的には物足りないが、そういうものとして観るべきであろう。

大人にはちょっと物足りない少年少女向け恋愛映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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