2024年08月31日

【猿の惑星 キングダム】My Cinema File 2904

猿の惑星 キングダム.jpg

原題: Kingdom of the Planet of the Apes
2024年 アメリカ
監督: ウェス・ボール
出演: 
オーウェン・ティーグ:ノア
フレイヤ・アーラン:ノヴァ
ケビン・デュランド:プロキシマス・シーザー
ピーター・メイコン:ラカ
ウィリアム・H・メイシー:トレヴェイサン

<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
猿と人間の争いを描く人気シリーズの一作で、猿が支配者として君臨するようになった近未来を舞台とするSFアクション。家族を失った猿と秘密を知る人間の女性、そして人間を排除しようとする冷酷なリーダーを中心に、猿と人間の共存か猿の独裁かをめぐる争いが繰り広げられる。監督は『メイズ・ランナー』シリーズなどのウェス・ボール。『To Leslie トゥ・レスリー』などのオーウェン・ティーグやドラマシリーズ「ウィッチャー」などのフレイヤ・アーランらが出演する。
********************************************************************************************************

『猿の惑星:創世記』(My Cinema File 779)『猿の惑星:新世紀』(My Cinema File 1387)『猿の惑星:聖戦記』(My Cinema File 1859)と続いてきた『猿の惑星」シリーズの第4弾である。

前3作は、人類の惑星が猿の惑星へと移行する過渡期を描いていた。中心となるのは猿のリーダーであるシーザーであったが、冒頭ではそのシーザーの葬儀が行われる。1つの時代が終わり、そしてそれから数世代が経過したのが本作の舞台。登場するのは、ワシと暮らすイーグル族の若者ノア。何かの儀式があり、仲間のアナヤとスーナとともに鷲の卵を取りに行く。人間には登るのも困難な断崖絶壁も猿であれば登っていける。巣を見つけてもすべての卵を取ることはせず、必ず1つ残す。そうして翌日の儀式に供える。

ところが、帰り道で人間を見かける。人間をエコーと呼び、村でも警戒しているが、帰ってそれを報告する。報告を受けた長老は調査のために猿を送り出す。その夜、物音に目覚めたノアは村の中で人間を見かける。追いかけていくうちに、村の外で調査に出かけた猿が殺されているのを発見する。殺したのは別の猿のグループ。近くに村があるとわかった猿の一群はそのまま村に向かう。突然、襲われた村はなす術もなく、一群によって連れ去られてしまう。生き残ったノアは、単身、仲間を取り戻すために旅に出る。

旅の途中でノアは、オランウータンのラカと知り合う。ラカは本を持っており、書かれた言葉の意味はわからないが知識を継承しようとしている。ラカもまたノアの村を襲った一群に襲われており、グループのリーダーはプロキシマスということがわかる。ラカは、シーザーの真の教えを守ろうとしており、「猿は団結すれば強い」「猿は猿を殺さない」というシーザーの言葉をノアに教える。2匹はプロキシマスの支配する村を目がけて旅をするが、そこで例の人間の女と一緒になる。

初めは餌が欲しいのだろうとラカは人間の女に餌を投げる。女は恐る恐る近づいてそれを食べる。その様子は人間と野生の動物のようであり、立場が逆転している。そうして人間の女を加えて2匹と1人の旅になる。ラカは女を“ノヴァ”と名付ける。しかし、道中、またしてもプロキシマスの一群に襲われる。他の人間のグループに合流したノヴァだったが、一群の目的は人間狩り。そしてなぜかノヴァが特別に追われる。追い詰められたノヴァは、ノアの名を呼ぶ。言葉を話せる人間にノアもラカも驚く・・・

前3作とはまったく異なる展開。そこは人間と猿が争う世界ではなく、猿が支配する世界。人間は言葉を話せず、野生に戻っている。チャールトン・ヘストンが帰還した地球の状況に近いのではないかと思う。ノヴァは自らの本当の名はメイだと語る。『猿の惑星:聖戦記』(My Cinema File 1859)では猿の知能を向上させたウイルスが変異し、人間から言葉を喋る能力を奪った語られていたが、どうやらウイルスの影響を免れた人類がいる。そして三度プロキシマスに襲われたノヴァは、メイとともに捕らえられ、ラカは川に流されてしまう。プロキシマスの村に連行されたノアとメイは、そこでプロキシマスの狙いについて知ることになる。

本作では人間がほとんど出てこない。例外はメイで、野生の人間と違って言葉が話せて知能がある。それは猿よりも高い知能で、知識という人類の文明の遺産を受け継いでいる。メインはノアとプロキシマスの対決。ここでは人間は脇役である。プロキシマスは自らシーザーと名乗り、伝説のシーザーの跡を継ぐものとしている。そして自ら支配する村を王国(キングダム)と称している。これがタイトルの由来。プロキシマスは、とあるものを手に入れ、自らの支配を盤石にしようとする意図がある。

メイにも本当の狙いがあり、それを手に入れたメイはラストである場所へ向かう。それからどうなるのか。また続くという事なのだろう。それは「猿の惑星」には危険な匂いを漂わせる。しかし、『猿の惑星』の以前のシリーズのラストにも通じるものがある。それにしても、ノア達が後半、人類が残した倉庫で発見したのは「ママ」と喋る人形。確かチャールトン・ヘストンが発見したのも「ママ」としゃべる人形で、以前のシリーズを意識しているのだろう。まだまだ続くのだと思うが、このシリーズは徹底して最後まで観たいと思う。

このあと、どうなっていくのだろうか。自分たちの村を再建するノアといずこかへと旅立つメイ。楽しみを次に残してくれるシリーズ第4弾である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | SF/近未来ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月30日

【タイラー・レイク 命の奪還2】My Cinema File 2903

タイラー・レイク 命の奪還2.jpg

原題: Extraction II
2023年 アメリカ
監督: サム・ハーグレイブ
出演: 
クリス・ヘムズワース:タイラー・レイク
ゴルシフテ・ファラハニ:ニック・カーン
アダム・ベッサ:ヤズ・カーン
ティナティン・ダラキシュヴィリ:ケテヴァン
トルニケ・ゴグリキアーニ:ズラブ
オルガ・キュリレンコ:ミア
イドリス・エルバ:謎の黒人男

<映画.com>
********************************************************************************************************
クリス・ヘムズワース扮する凄腕の傭兵タイラー・レイクの過酷な戦いをリアルなアクション演出で描き、Netflixで大ヒットを記録した『タイラー・レイク 命の奪還』の続編。
前作のラストでかろうじて命を取り留めたオーストラリア人の傭兵タイラー・レイクが、刑務所に監禁されているジョージアの残忍なギャングの家族を救出するという新たな任務に就き、再び命をかけた危険な戦いに身を投じていく。
『アベンジャーズ エンドゲーム』などでスタントコーディネーターを務め、前作で長編初メガホンをとったサム・ハーグレイブが今作でも監督を務め、ヘムズワースと再タッグ。同じく前作から引き続き、『キャプテン・アメリカ』 『アベンジャーズ』シリーズや「グレイマン」を手がけたアンソニー&ジョー・ルッソ兄弟が製作、ジョー・ルッソが脚本を担当。共演は前作から続投のゴルシテ・ファラハニのほか、「モスル あるSWAT部隊の戦い」のアダム・ベッサ、『007 慰めの報酬』 『ブラック・ウィドウ』のオルガ・キュリレンコら。Netflixで2023年6月16日から配信。
********************************************************************************************************

シリーズ第二弾であるが、物語は前回のラストから始まる。橋の上の戦闘で撃たれたタイラーは、意識を失って橋の上から川に落ちる。そしてとある村に流れ着いたところで救助され、そのままドバイに運ばれる。そこで医師団よる懸命な治療により、なんとかタイラーは意識を取り戻す。その間、ニックが献身的に付き添う。意識を取り戻したものの、タイラーは満足に動ける状態ではなく、回復に向けて厳しいリハビリ生活を送る。

一方で物語は水面下で動いていく。ジョージアのとある農家に知事がやってくる。目的はズラブとの面会。その前にズラブの下にカチリ刑務所に収容されている弟ダヴィッドの刑期が伸びたという知らせが入っており、どうやらズラブが知事を呼び出したようである。ダヴィッドはDEAの捜査員を殺害して収容されているが、なんとかしろというのがズラブの要請。しかし、知事の権限では無理だと答える知事。すると、ズラブは知事の首を農具で刺してその場に埋めてしまう。

ズラブはナカジと称するマフィアを組織している。その力によって弟ダヴィッドは、刑務所の中にいる事は避けられないが、妻と子供2人を同じ刑務所内に住ませている。妻ケテヴァンと子供たちは、収容房の中にいて子どもによくない環境だとデヴィッドに訴えるが、デヴィッドは一顧だにしない挙句には殴られる有様で、ケテヴァンには不満が募っている。唯一、長男サンドロだけがナガジに憧れ、父との暮らしに満足している。

厳しいリハビリ生活を乗り越えたタイラーは退院し、ニックから自然に囲まれた山小屋を用意される。そこでのんびり静養生活を送るが、そこに見知らぬ男が姿を表す。聞けば仕事の依頼だと言うが、タイラーはこれを断ろうとする。しかし、依頼人は元妻のミアだと言われると、断るわけにはいかない。そしてミアの依頼とは、妹ケテヴァンが子ども2人と刑務所に住んでいて、そこから彼女らを連れ出すこと。危険な匂いがプンプン漂う。

依頼を引き受ける事にしたタイラーはさっそくトレーニングに取り掛かる。パートナーは
ニックとニックの弟ヤズ。チームを組んでカチリ刑務所へと向かう。あらかじめ看守の1人を買収しておき、その手引きを受けてタイラーは刑務所内に進入する。そしてケテヴァンと子ども2人を探し出し、脱出を試みる。ところが、息子サンドロが父親が一緒でないことに不安を訴える。それでダヴィッドの仲間にバレることになり、刑務所内が騒がしくなって暴動が始まりまる・・・

前作で主人公のタイラー・レイクの活躍を目にし、さすがにNETFLIXで評判になるだけの事はあると思い、続編も迷わず観る事にしたもの。タイラー・レイクのアクションはゴツゴツしたイメージであるが、今回もそれを踏襲する。前作と同様、今回もか弱い依頼人の救出に関わる。ケテヴァンとその子ども2人である。家族と一緒にいたいという夫ダヴィッドの思いは、一見家族思いであるが、それが刑務所の中となるともはや異常である。家族としてはたまったものではない。その脱出を今回タイラーは引き受ける。

しかし、すなおに脱出できれば面白味はない。家族が連れ出されたことはすぐにダヴィッドにつたわり、仲間たちが妨害に走る。この場面の目玉は、激しい暴動の中を突っ切るところだろう。次から次へと襲いかかってくる囚人たちを片っ端からなぎ倒す。銃を持っていても数の前には無力である。撃ち倒したすぐあとに飛び掛かられるとタイラーも肉弾戦で応じるしかない。そしてタイラーには守らなければならない者たちがいる。

さらに刑務所から脱出して終わりではない。武装したナガジのメンバーが車を追ってくる。防弾装備の車であるが、ナガジ側はRPGも装備していて、そうなると防弾車でも耐えきれない。さらにはヘリも持ち出す。列車に乗り替えて逃げるタイラー一行だが、ナガジ武装団は列車にも乗り込んでくる。接近戦となるが、ナガジも防弾チョッキを装備していて、撃ち倒しても終わりではない。このあたりの攻防戦も見応えがある。

まるで軍隊のようなナガジであるが、獅子身中の虫は息子のサンドロ。父親を崇拝するがゆえに、その父から逃げようとする母に反抗し、タイラー一行の隙を見て伯父のズラブに連絡する。逃げ切ったと安心していたタイラーたちに再び完全武装のナガジたちが襲い掛かってくる。とにかく激しいバトルが続く。この迫力がこのシリーズの見どころの一つだろう。最後はメデタシメデタシであるが、ラストで再びタイラーの前に仕事を依頼した男が現れ、新たな仕事を依頼する。それは次の作品の暗示なのだろうか。そうだとすれば、楽しみにして待ちたいと思わされる一作である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | アクション/シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月29日

【カモン カモン】My Cinema File 2902

カモン カモン.jpg

原題: C'mon C'mon
2021年 アメリカ
監督: マイク・ミルズ
出演: 
ホアキン・フェニックス:ジョニー
ギャビー・ホフマン:ヴィヴ
ウディ・ノーマン:ジェシー
スクート・マクネイリー:ポール

<映画.com>
********************************************************************************************************
「20センチュリー・ウーマン」「人生はビギナーズ」のマイク・ミルズ監督が、ホアキン・フェニックスを主演に、突然始まった共同生活に戸惑いながらも歩み寄っていく主人公と甥っ子の日々を、美しいモノクロームの映像とともに描いたヒューマンドラマ。ニューヨークでひとり暮らしをしていたラジオジャーナリストのジョニーは、妹から頼まれて9歳の甥ジェシーの面倒を数日間みることになり、ロサンゼルスの妹の家で甥っ子との共同生活が始まる。好奇心旺盛なジェシーは、疑問に思うことを次々とストレートに投げかけてきてジョニーを困らせるが、その一方でジョニーの仕事や録音機材にも興味を示してくる。それをきっかけに次第に距離を縮めていく2人。仕事のためニューヨークに戻ることになったジョニーは、ジェシーを連れて行くことを決めるが……。『ジョーカー』での怪演でアカデミー主演男優賞を受賞したフェニックスが、一転して子どもに振り回される役どころを軽やかに演じた。ジェシー役は新星ウッディ・ノーマン。
********************************************************************************************************

主人公のジョニーは、ニューヨークでラジオジャーナリストを務めている。今は主に子供たちへのインタビューを行う仕事に取り組んでいる。ジョニーには家族はいないが妹のヴィヴがおり、ある晩、ヴィヴに電話をする。ヴィヴは一人息子のジェシーの世話に手を焼いているが、それ以上に単身赴任している夫ポールが精神的に不安定になり、会いにいかなければならなくなったという話になる。しかし、ジェシーを連れて行くわけにはいかなくて困っているという話になる。話の流れでジョニーはジェシーの面倒を見ることになる。

渡りに船、ジョニーは実の兄でもあり、ヴィヴはジョニーの好意に甘える事にする。そうしてジョニーはヴィヴの家にやってくる。しかし、9歳のジェシーは自由奔放で好奇心旺盛。朝から大音量でクラシック音楽を流す。ジョニーがたしなめると「土曜日だから問題ない」と意に介さない。さらには大人ばりの質問攻めにしてジョニーを困惑させる。子供のいないジョニーは
戸惑うばかり。「普通にやれ」と言えば、「普通って何?」と聞き返される有様である。

ジェシーの自由奔放さはとどまる所を知らない。音楽が流れる歯ブラシを買いたいと言って店で我がままを言ってジョニーの言う事を聞かず、突然姿を消してジョニーを慌てさせる。そしてそんなジョニーを見て楽しんでいる様子も伺えて、観ている方にもジョニーの苛立ちが伝わってくる。しかし、「普通って何?」という問いかけには深いものがあり、ただの我がままな子供と言い切るのも難しい。

一方、夫ポールを訪ねて行ったヴィヴであるが、ジェシーに手を焼くジョニーの気持ちが痛いほど理解できる。夫のポールはもともと精神病を患っており、単身赴任の1人暮らしでその症状が悪化する。病院へ行くことも拒絶し、その様子はまるで子供のようで、ヴィヴにしてみれば、厄介な子供が2人もいるような状況とも言える。当初は2〜3日だと思っていた滞在時間がいつしか長引いていく。

ヴィヴとジョニーも仲の良い兄妹というわけではない。1年前に認知症の母を亡くしているが、その時に母親に対する対応を巡って確執を生んでいる。認知症の母が「免許の更新に行く」と言った際に、ジョニーは着替えを手伝うが、ヴィヴは「いちいちそんなことを聞いていたらキリがない」とジョニーを責める。どちらが正しいという事はなく、自分だったらジョニーと同じ行動を取るだろうと観ながら思ってしまう。

物語はそんな2人の兄妹を中心に進んでいく。それにしてもジェシーは大人から見れば興味の対象が次々と変わり、言動もまちまち。空気を読むという事も無縁であり、何となく父親の精神疾患を受け継いでいるように思えてならない。やがてジョニーもニューヨークに帰らなければならなくなり、やむなくジェシーも連れて行く。インタビューの仕事にも連れて行き、インタビューの間だけ同僚に子守を頼んでなんとか仕事をこなす。時間的・精神的にゆとりがあれば、ジェシーのような厄介な子供でも大丈夫であるが、そうでなければきついだろうと思う。

映画は全編がモノクロ。内容は普通のドラマであるが、なぜモノクロにしたのか監督の意図は素人には分からない。自分の唯一の甥であり、ジョニーはジェシーを力づくで言うことを聞かせるのではなく理解しようとする。夜、ジョニーに一緒に寝ていいかと聞くジェシーはまだまだ子供なのである。公園で2人で向き合って叫び合うシーンは何とも言えない心地よさを感じさせられた。これを機にジョニーとヴィヴの関係も改善されていっただろうと想像させられる。

ジョニーが仕事でインタビューする相手は子どもたち。その話す言葉も大人を凌駕すると思われるところもある。ジェシーだけでなく、子どもの視線というのもこの映画が訴えたかったことなのかもしれない。ジェシーがどんな大人になっていくのか、ちょっと気になった映画である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月27日

【水で書かれた物語】My Cinema File 2901

水で書かれた物語.jpg

1965年 日本
監督: 吉田喜重
出演: 
岡田茉莉子:松谷静香
入川保則:松谷静雄
岸田森:松谷高雄
山形勲:橋本伝蔵
浅丘ルリ子:橋本ゆみ子

<映画.com>
********************************************************************************************************
石坂洋次郎の同名小説を「ちんころ海女っこ」の石堂淑朗と高良留美子、「日本脱出」の吉田喜重が共同で脚色、吉田喜重が監督した文芸もの。撮影は鈴木達夫。
********************************************************************************************************

時折、古い映画を観ている。今回はタイトルも聞いたことのない映画だったが、AmazonPrimeの評価が高かったので観てみる事にした映画。

主人公は地方の銀行に勤める松谷静雄。シャッターが閉まると行員はそろばん片手に札勘をする。勘定を合わせるのであるが、懐かしい光景である。静雄は母の静香と二人暮らし。父親は早くに病死している。物語は現在の静雄と10年前の少年時代の静雄とを交互に描いていく。映画は1965年の作品。10年前は戦後10年経っているが、戦時中なので映画も10年時代を遡っているのかもしれない。

静雄は橋本ゆみ子と婚約している。ある日、職場の引き出しに見慣れぬ封筒が入れられており、中を見ると「橋本ゆみ子はヴァージンか」と書かれている。婚約者の貞操を疑う内容であるが、時代はまだ「結婚するまで守る」という風潮なのである。ゆみ子は車に静雄と父橋本伝蔵を乗せて走る。女性が運転するというのは、この時代からすればかなり進歩的。あっけらかんとセックスの話をするのも時代の先端を行っている。

ゆみ子は婚前交渉にも積極的。むしろ静雄の方が抑え役に回っている。ただ、静雄も淡白な草食系男子の走りかと言えばそうではなく、芸者と寝るのは厭わない。そしてその芸者は橋本伝蔵に頼まれたと、屈託がない。橋本伝蔵は百貨店オーナーであり、羽振りの良い地元の権力者である。ゆみ子は金持ちの家の娘で、わがまま一杯に育っている様子が見て取れる。

静雄の少年時代、父高雄は結核なのか、家族で旅館の風呂に入浴中に血を吐く。そして病院に入院する。母静香は献身的に病院に通う。ある日、病室で母静香は父高雄にキスをする。それを静雄が見てしまう。この映画ではキスシーンやベッドシーンが頻繁に登場する。しかし、時代なのだろうかどれも控え目で、この時代にこの映画を観た人が『愛のコリーダ』(My Cinema File 2889)を観たら卒倒するかもしれないと思う。そして母静香は橋本伝蔵と不倫関係にある。当時は不倫がどのようにして受け止められていたのだろうかと思ってしまう。

子供の静雄は、母の後をこっそりとつけて行き、伝蔵の別宅に入っていくのを確認する。そこに何の意味があるのかはわからなくとも、子供なりに何か秘められたものを感じるのであろう。静雄はゆみ子という魅力的な婚約者がいるにも関わらず、ゆみ子よりも母静香の事が気になって仕方がない。そんな静雄には密かな疑惑が湧いてくる。それは自分の父親は本当に高雄なのかという事。もしも伝蔵であれば、ゆみ子とは異母兄妹となってしまう。

物語は、ゆみ子と結婚したものの、なお母と伝蔵との関係が気になって仕方がない静雄の悩みを追って行く。AmazonPrimeの評価がどのように決められているかはわからないが、その展開は眠気を催してしまう。ラストの伝蔵と静香の行動も理解できないままであった。観る者の感覚の違いもあるのだろうかと思ってみる。現代では不倫も大胆なベッドシーンも珍しくはなく、女は結婚前に処女でなければいけないという風潮ももはや風化しており、この映画に残された古き時代の感覚に、歴史感を感じるのみである。

エンターテイメントとしてよりも、60年前の時代の記録としての方に意味を感じるだけの映画である・・・


評価:★☆☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月25日

【デューン 砂の惑星 PART2】My Cinema File 2900

デューン 砂の惑星 PART2.jpg

原題: Dune: Part Two
2024年 アメリカ
監督: ドゥニ・ビルヌーブ
出演: 
ティモシー・シャラメ:ポール・アトレイデス
ゼンデイヤ:チャニ
レベッカ・ファーガソン:レディ・ジェシカ
ジョシュ・ブローリン:ガーニイ・ハレック
オースティン・バトラー:フェイド=ラウサ・ハルコンネン
フローレンス・ピュー:皇女イルーラン
デイブ・バウティスタ:ラッバーン・ハルコンネン
クリストファー・ウォーケン:パーディシャー皇帝シャッダム4世
レア・セドゥ:レディ・マーゴット・フェンリング
スエイラ・ヤクーブ:シシャクリ
ステラン・スカルスガルド:ウラディミール・ハルコンネン男爵
シャーロット・ランプリング:教母ガイウス・ヘレネ・モヒアム
ハビエル・バルデム:スティルガー
アニヤ・テイラー=ジョイ

<映画.com>
********************************************************************************************************
『メッセージ』 『ブレードランナー2049』のドゥニ・ビルヌーブ監督がフランク・ハーバートのSF小説を映画化し、第94回アカデミー賞で6部門に輝いたSFアドベンチャー大作『DUNE デューン 砂の惑星』の続編。
その惑星を制する者が全宇宙を制すると言われる砂の惑星デューンで繰り広げられたアトレイデス家とハルコンネン家の戦い。ハルコンネン家の陰謀により一族を滅ぼされたアトレイデス家の後継者ポールは、ついに反撃の狼煙を上げる。砂漠の民フレメンのチャニと心を通わせながら、救世主として民を率いていくポールだったが、宿敵ハルコンネン家の次期男爵フェイド=ラウサがデューンの新たな支配者として送り込まれてくる。
ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソンら前作のキャストに加え、『エルヴィス』のオースティン・バトラー、『ミッドサマー』のフローレンス・ピュー、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』のレア・セドゥが新たに参加。
********************************************************************************************************

前作『DUNE デューン 砂の惑星』(My Cinema File 2539)で破壊されたアトレイデス家の生き残りであるポールと母レディ・ジェシカは、惑星アラキスの原住民である砂漠の民フレメンに受け入れられる。ハルコンネン家の追手が迫るも、巧みにこれを撃退する。敵の遺体はサンドワームを呼び寄せて始末する。フレメンに合流したポールだが、フレメンから与えられた試練に向かう。それは巨大なサンドワームを乗りこなすこと。そしてポールは見事この試練をこなしてフレメンに受け入れられる。

ポールは、アラキスの言葉で「礎」を意味する「ウスール」をフレメンの名前として、砂漠ネズミの名である「ムアディブ」を戦士名として授かり、ポール・ムアディブ・ウスールとなる。一方のジェシカは、フレメンの教母から後継に指名され、「命の水」を飲んで新しい教母となる。「命の水」を飲んだジェシカは、胎内の娘との会話と過去を見ることが可能になる。そして、一族はハルコンネン家の追撃を逃れて原理主義者たちのいる南部へ移動する。南部にはフレメンの指導者たちが集まることになっている。

一部未来を視る事ができるポールは、南部へジェシカと自分が行くことで、多くの人々が飢え、さらに愛したチャニを失う未来を視て、南部へ行くことを拒む。その頃、フレメンに手を焼くハルコンネン家は、凶暴な性格の次男フェイド=ラウサ・ハルコンネンが新たにアラキスにやって来る。出来上がったナイフを受け取り、試し斬りで側近を斬ってしまうような男である。闘技場では自らアトレイデスの残兵3人を葬り、気炎を上げる。

『スター・ウォーズ』(My Cinema File 739)では、「フォース」が不思議な力として描かれていたが、この映画では「命の水」を飲んだジェシカは自分のお腹の退治の声を聞き、未来だけでなく過去も見えるようになる。この胎児が大人になった姿で登場するが、演じるのはNetflixドラマ『クイーンズ・ギャンビット』や『ラストナイト・イン・ソーホー』(My Cinema File2884)のアニャ・テイラー=ジョイというのも面白い。

結局、みんなとともに南部へ行くことになったポールは、そこで「命の水」を飲む。これは実は男が飲んだら危ないとされていて、ただしジェシカはポールなら耐えられるとみて飲ますのである。サンドワームの幼虫から抽出する「命の水」を飲んだポールは死の瀬戸際をさまようが、チャニの涙が解毒剤になり、ポールはこれを克服する。それと同時に、母ジェシカが宿敵ウラディミール・ハルコンネンの娘だったことを知る。『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』(My Cinema File 903)で、ルーク・スカイウォーカーがダースベイダーの息子だったのに匹敵するようなものかもしれない。

こうした展開を経て、物語は皇帝との対決、ポールとフェイド=ラウサとの対決へと進む。その間に描かれるサイドストーリーも濃厚であり、重厚感あるストーリーが2時間46分という大作になっている。「男には耐えられない」と言われる「命の水」の毒を、チャニの涙と共に解毒したポールは、リサーン・アル=ガイブとしてフレメンの指導者となる。チャニに生涯の愛を誓いながら皇帝にある要求を出す様子は、自らが皇帝になるためには犠牲を厭わないという決意の表れ。この展開も興味深い。

物語は終わらない。さらに第三部へと続くわけで、これだけの物語がまだまだ観られるという満足感は大きい。さらにはどんな物語が続くのであろうか。惑星「デューン」での雄大なスケールの物語は大いなる楽しみを残す。ポールとチャニはいったいどうなるのか。第三部が待ち遠しい一作である・・・


評価:★★★★☆







posted by HH at 00:00| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | SF/近未来ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする