2024年10月25日

【世界一キライなあなたに】My Cinema File 2927

世界一キライなあなたに.jpg

原題: Me Before You
2016年 アメリカ
監督: テア・シャーロック
出演: 
エミリア・クラーク:ルイーザ・クラーク(ルー)
サム・クラフリン:ウィル・トレイナー
ジャネット・マクティア:カミーラ・トレイナー
チャールズ・ダンス:スティーブン・トレイナー
ブレンダン・コイル:バーナード・クラーク

<シネマトゥデイ>
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世界中で読まれているジョジョ・モイーズの恋愛小説「ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日」を映画化。バイク事故で車いすの生活となり生きる気力をなくした青年実業家と、彼の介護に雇われた女性の切ない恋の行方を描く。主人公の女性をテレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」などのエミリア・クラーク、実業家を『ハンガー・ゲーム』シリーズなどのサム・クラフリンが演じる。そのほか『アルバート氏の人生』などのジャネット・マクティア、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』などのチャールズ・ダンスらが脇を固める。
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とある有能そうなビジネスマンが、忙しげに電話をかけながらビルの外へ出てくる。電話に気を取られたその時、一台のバイクが突っ込んでくる・・・

一方、主人公のルイーザはパン屋に勤めているが、閉店にともなって失職する。両親と家族を支えるためにパン屋で働いていたが、のんびりしているゆとりはなく、すぐに新しい職を探し始める。しかし、なかなかこれといった仕事が見つからない。最後に職業案内所で障害者の世話係という仕事を紹介される。他の仕事に比べても給料がよく、ルイーザは早速、面接に行く。

そこは裕福な豪邸。面接相手は障害者の母親で、事故に遭って障害を負った息子ウィルの世話係を探していたのである。運よく採用されたが、息子とは冒頭で事故に遭った男。首から下が不随であり、わずかに手を動かせる程度という状態。そんな我が身を悲観してか、ウィルは人に対して愛想が悪く、これまで何人も世話係が辞めていっていた。ルイーザにも冷たくあたり、10日間経っても心を開こうとはしなかった。

ルイーザは、自分なりにいろいろと試みるが、ウィルは心を開かない。頭にきたルイーザは、ウィルに本音をぶちまける。本当はファションの仕事に就きたいこと、でも家族のためにお金が必要なこと。そうした態度がウィルの心に響いたのか、ウィルはルイーザに対して徐々に心を開いていく。車椅子で少しずつ外へも出るようになる。いつしかウィルはルイーザに笑顔を見せるほどになり、そんなウィルを母親は安堵の表情で見つめる。

しかし、そんなある日、ルイーザはウィルの両親が衝撃的な話をしているのを耳にしてしまう。実はウィルは安楽死を望んでおり、スイスの安楽死の協会へ半年後に行くことを決めていたのである。何とかそれを思いとどまらせようとする母親と、望み通りにしてあげようとする父親とが口論していたのである。話を聞いてしまったルイーザは、ウィルに生きてほしくて、考え方を変えさせようと、彼にたくさんの経験をさせようと計画する。

明るい世話係が人生を悲観している障害者に人生の楽しみを思い出させていくという展開は、『最強のふたり』(My Cinema File 1182)を彷彿させられる。ここでもルイーザはウィルのために様々な計画を考えて実行に移していく。ウィルの元彼女の結婚式に出席したり、コンサートに行ったりと、ルイーザがいなければおそらくやらなかったこと。ウィルもそれらを楽しみながら過ごしていく。『最強のふたり』(My Cinema File 1182)でも同様に障害を持った主人公は前向きになっていったが、ルイーザはウィルから安楽死の意志は変わらないことを聞かされ、絶望の淵に落とされる。

よくよく考えてみると、ウィルの気持ちはよくわかる。当然ながら次第にルイーザに惹かれていくが、ほとんど動けない自分にとってその気持ちを生かす事は出来ない。ただでさえ絶望の中にいるのにさらに絶望の度合いを深めていく。ウィルの身になって考えてみると、「ルイーザの献身によってウィルは生きる希望を見出してメデタシメデタシ」というわけにはいかない。なかなか考えさせられるストーリーである。それにしても、安楽死が認められる環境にあるという事はうらやましい環境でもある。日本でもそういう環境が整うことを望んでしまう。

とんちんかんな邦題にあきれるのはいつもの事として、“Me Before You”という原題には深く感じさせるものがある。邦題に先入観を持たずに観たい映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年10月22日

【ビューティフル・ライフ】My Cinema File 2926

ビューティフル・ライフ.jpg

原題: A Beautiful Life
2023年 デンマーク
監督: メヒディ・アバス
出演: 
クリストファー:エリオット
インガ・イブスドッテル・リッレオース:リリー
クリスティーヌ・アルベク・ボーエ:スザンヌ
アルダラン・エスマイリ
セバスチャン・イェセン
パウ・ヘンリクセン
ヨナタン・ハルボウ

<シネマトゥデイ>
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音楽の才能を認められた漁師の青年が、過去に問題を抱えながらもスターダムを駆け上がっていく姿を描いたヒューマンドラマ。有名音楽プロデューサーに見いだされた青年が、プロデューサーの娘と共同で成功を目指す。出演はデンマークで活動するミュージシャンのクリストファーやインガ・イブスドッテル・リッレオースなど。監督を『トスカーナ』などのメヒディ・アヴァスが務める。
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デンマーク映画というと珍しい気もするが、過去17年間で3,000本近い映画を観ているとそれなりに数もあるものである。もっとも著名な俳優マッツ・ミケルセンを輩出した国なので、その主演映画という形でのものが多いのも確かである。それでもハリウッドでリメイクされた『THE GUILTY/ギルティ』(My Cinema File 2451)などのような印象的な映画もあるので見逃せないところもある。これはそんなデンマーク映画。

主人公のエリオットは漁師である。雇われて仕事をし、漁獲量に応じた給料をもらう。それに不平を漏らす仲間もいるが、エリオットは淡々としている。仲間からのギャンブルへの誘いにも応じない。船に住んでいる理由はわからないが、子供の頃の家族写真を大事にしている。そんなある日、友人のオリバーに頼まれて歌の演奏のステージに立つ。その日、客の中に著名な音楽マネージャーのスザンヌが来ており、張り切るオリバー。しかし、アピールにも関わらず、興味を惹くことはできない。

ショックで歌が止まってしまったオリバー。後ろでギターを弾いていたエリオットは、機転を効かして歌い継ぐ。するとそれを聞いたスザンヌと娘のリリーが一転して注目する。オリバーとしてはたまらない。終わって帰る際、オリバーは悪い仲間に金を返せと迫られ、エリオットは相手を殴ってこれを救う。逮捕されたエリオットをスザンヌが救う。1週間で1万クローネ払うので来いと。しかし、エリオットは興味を示さない。淡々と漁師の日常に戻る。

そんなエリオットの背中を押したのは雇い主。漁師として燻っているのを見かねたのであろう。スザンヌの屋敷に無理やりエリオットを連れていくと、首を宣告してエリオットの退路を断つ。一方、スザンヌとリリーの母娘の間にはあるわだかまりがある。それは亡き父をめぐってのすれ違い。そこへやって来たエリオット。その実力を見込んだスザンヌは、エリオットのプロデュースをリリーに託す。こうして物語の舞台は整っていく。しかし、どうもわかりにくい。

エリオットの両親は死んでいるが、なぜエリオットがそれを引きずって惰性のように生きているかがわからない。その苦悩が理解できない。さらにオリバーは都合よくエリオットを利用するだけなのであるが、なぜエリオットがオリバーにこだわるのかもよくわからない。突然恋仲になるエリオットとリリー。映画の時間の関係かもわからないが、安易すぎる展開に興醒め感さえしてくる。それでもSNSで火がついたエリオットの歌はなかなかいいものがある。

全編にわたってデンマーク語(たぶん)なのであるが、なぜか歌詞は英語。そういうものなのだろうか。母娘のわだかまりもやむをえない事情があったことがわかって和解する。エリオットの成功を妬んだオリバーの嫌がらせによってエリオットが深く傷つくこともあるが最後はハッピーエンド。しかし、エリオットが抱えていた事情が最後までわからず、残尿感の残る後味は否めない。もう少しわかりやすくしてほしかったところである。エリオットの歌はとても良かったことが救いの映画である・・・


評価:★★☆☆☆









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2024年10月19日

【浜の朝日の嘘つきどもと】My Cinema File 2925

浜の朝日の嘘つきどもと.jpg
 
2021年 日本
監督: タナダユキ
出演: 
高畑充希:茂木莉子/浜野あさひ
柳家喬太郎:森田保造
大久保佳代子:田中茉莉子
甲本雅裕:岡本貞雄
佐野弘樹:チャン・グオック・バオ
神尾佑:市川和雄
竹原ピストル:川島健二
光石研:浜野巳喜男
吉行和子:松山秀子

<MOVIE WALKER PRESS解説>
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福島県南相馬市に実在する映画館を舞台に、経営が傾いた映画館を存続させようと一人の女性が奔走する様子を描くヒューマンドラマ。『四十九日のレシピ』、『ロマンスドール』のタナダユキ監督が自らのオリジナル脚本を、『キャラクター』、『ヲタクに恋は難しい』の高畑充希を主演に迎え映画化した。共演に、お笑い芸人でタレントの大久保佳代子、落語家の柳家喬太郎ら。
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舞台は福島県南相馬市。ひとりの女性が道に迷いながらこの街の映画館「朝日座」に辿り着く。「朝日座」は創業100年近くを誇る名画座として地元の人々に愛されていたが、東日本大震災やコロナ禍により経営を続けていくことが難しくなっている。閉鎖を決断した支配人の森田保造が古い映画のフィルムを燃やしているところに辿りついた女性が来て慌てて止める。そして自分は、頼まれてこの映画館を立て直しに来たと語る。女性は名前を聞かれ、チケット売り場に目をやると「茂木莉子(もぎりこ)」と名乗る。

茂木莉子の本名は、じつは浜野あさひ。福島県郡山市で生まれ育ったが、高校1年生の時に東日本大震災と福島第一原発事故が発生する。タクシー運転手だった莉子の父巳喜男は、誰もが避けた原発の除染作業に従事する人々の送迎を引き受けるために独立してタクシー会社を立ち上げる。まったくの善意だったものの、これによって莫大な富を得た事から世間の妬みを買い、思わぬ批判を浴びてしまう。立ち上げたタクシー会社の名称が「浜野あさひ交通」だった事から、莉子はクラスでも孤立する。

そんな莉子を見かねた教師の田中茉莉子が声をかける。茉莉子も風変りな教師で、校長に隠れて莉子と映画のDVDを観たりする。父親は世間から「震災成金」と揶揄され、南相馬に居づらくなった莉子は、東京の高校に転校する。しかしそこでも周囲に溶け込めず、結局莉子は茉莉子の下に転がり込む。以来、一緒に映画を観たりして過ごす。そうした莉子の過去が現在と交差して描かれる。

突然現れた莉子は「朝日座」の再建を宣言する。しかし、「朝日座」は既に売却手続きに入っており、閉館した後はスーパー銭湯とリハビリ施設に建て替えられることになっている。莉子は仲介業者である岡本不動産に掛け合い、何とか閉館を阻止できるか頼んでみる。岡本も「朝日座」がなくなることを残念がっていたが、森田には450万円の借金がある。手付金を返済するためにもその資金を調達すべくクラウドファンディングを開始することにする。次々に障害が立ちふさがるが、莉子は敢然と立ち向かう・・・

「朝日座」は昔懐かしいタイプの映画館。こういう映画館が各地にあったなと思う。今や映画館は立派なシネマコンプレックスになり、また動画配信サービスの普及によりこういう昔ながらの映画館から客足も遠のいているのであろう。そうした映画館の立て直しというのが縦糸のストーリー。そしてそれに邁進する莉子と菜莉子の物語が横糸のストーリーとなる。しかし、昔ながらの映画館が利益を上げて存続していくというのは簡単ではない。

「朝日座」を買う事になっている買手の会社の社長である市川の考えは、存続させたとしてもそれは一時的なセンチメンタリズムでしかなく、今時の若者はYouTubeを見て映画など見ず、スーパー銭湯とリハビリ施設を建てることで地元の雇用を生み出せるというもので、それなりに理が通っている。それでもそんな「朝日座」を復活させようという物語は観ている者の心に温かい風を送り込む。

かつて茉莉子も「朝日座」に通って2本立ての映画を観た事があり、その時2本の映画の組み合わせについて森田に文句を言っていたとのこと。2本立ての映画は私もかつて観に行った事がある。ロードショー館とは違った趣があったものである。時代の流れとは言え、まったく絶滅してしまうのも残念な気がする。映画の中だけでも昔ながらの映画館が存続するストーリーは嬉しく思う。ひたすら「映画愛」を謳った『ニュー・シネマ・パラダイス』(My Cinema File 1731)と比べると、こちらは「映画館愛」と言えるだろう。

実はこの映画とは別にドラマ版があって、この映画はその前日譚との事。ラストで朝日座にとある男がふらりとやってくる。それがドラマ版への橋渡しであるそうである。残念ながらそちらの方を観る手立てがないのだが、是非観てみたいと思わされる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年10月18日

【美しき棘】My Cinema File 2924

美しき棘.jpg

原題: Belle Epine
2010年 フランス
監督: レベッカ・ズロトブスキ
出演: 
レア・セドゥ:プリューデンス
アナイス・ドゥムースティエ:ソニア
アガト・シュレンカー:マリリン
ギョーム・グイ:レナード
ジョアン・リベロー:フランク
アンナ・シガレヴィッチ:フレデリック
マリー・マテロン:デルフィーヌ

<映画.com>
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「美しいひと」「ルルドの泉で」の注目若手女優レア・セドゥが、居場所を求める孤独な少女を繊細に演じた青春ドラマ。母親を亡くした17歳の少女プリューデンス。父親は海外出張、姉はほとんど自宅に帰らないため、彼女は広いアパルトマンの一室で孤独を募らせていく。そんなある日、同年代の不良少女マリレーヌと知り合ったプリューデンスは、彼女を介して違法バイクレースのグループと親しくなるが……。監督・脚本はこれが長編デビューとなるレベッカ・ズロトブスキ。日本ではフランス映画祭2011で上映された。
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冒頭、万引きをしたことが発覚して捕まった2人の少女が取調べを受けている。服を脱ぐように言われてそれに従う2人。と言っても、互いに顔見知りではなく、別々に万引きしたようである。店としてはたまったものではない。2人のうち、1人は主人公の16歳の少女プリューデンス。親に連絡するといわれても、母親は亡くなったばかりで、父親はカナダに出張しており、連絡は取れない。

何とか解放されるが、別の少女・マリリンは悪びれることなく、迎えに来た仲間のバイクに乗って去っていく。家に帰ったプリューデンスだが、家には誰もいない。部屋のテレビでは夜に危険な走り方をするバイク乗り集団を特集する番組が放送されている。そしてプリューデンスはそこにマリリンの姿を見つける。それにしてもバイクの集団暴走なんて今の時代でもあるのだろうかと思ってしまう。

プリューデンスは、再びマリリンを見つけると、自然を装って話しかけて自宅に誘う。いきなり自宅に呼ぶのには驚くが、プリューデンスにはなぜか卑屈に相手に合わせるところがある。好きなレコードをかけるもののマリリンが好きではないと言うと、突然そのレコードのジャケットをびりびりに破いてしまう。マリリンに誘われてバイクの集会に行こうとした時、姉がやってきて引き止められる。

プリューデンスはそのまま姉に連れられて、親戚の会食に連れて行かれる。しかし、どうも居心地がよくない。親戚のソニアとは2人で話をするが、プリューデンスは見栄を張るのか、男性経験もないのにあるような事を言う。それに飽き足らず、夜中に部屋を抜け出してバイク乗りたちとマリリンがいる場所へ向かう。そこにはすでに多くの人が集まっており、1台のバイクが激しく転倒し、プリューデンスとマリリンは一緒に時間を過ごす・・・

何となくAmazonの評価が高いのと、時間が短いのでちょうどいいと選んで観た映画であるが、どうにも眠くなる内容。どうやら母親を亡くした16歳の少女が、父親とも姉とも離れて1人でいる寂しさを何となく非行少女の真似事をして背伸びするものの、背伸びしきれないといった内容。不良といっても一昔前の暴走族もどきだし、中途半端なストーリーに観た事に対する後悔だけが大きくなる。

まだ世の中を知らない16歳の少女が母親を亡くした寂しさからどこにぶつけたらいいかわからぬ気持ちを不良の真似事をして過ごすだけの話。どうにも共感性は湧いてこない。おそらく、母親が生きていた頃は、真面目に真面目に学校に通う初心な少女だったのだろう、不良じみたことをしても様にならない。それでも初体験をしたり、その相手が事故死したりしてブリューデンスは青春のひと時を過ごしていく。

1週間もしたら観た事すら忘れてしまいそうな印象の薄い映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年10月16日

【マダム・ウェブ】My Cinema File 2923

マダム・ウェブ.jpg

原題: Madame Web
2024年 アメリカ
監督: S・J・クラークソン
出演: 
ダコタ・ジョンソン:キャシー・ウェブ/マダム・ウェブ
シドニー・スウィーニー:ジュリア・コーンウォール
セレステ・オコナー:マティ・フランクリン
イザベラ・メルセド:アーニャ・コラソン
タハール・ラヒム:エゼキエル・シムズ
マイク・エップス:オニール
エマ・ロバーツ:メアリー・パーカー
アダム・スコット:ベン・パーカー

<MOVIE WALKER PRESS解説>
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未来を予知する謎の女性マダム・ウェブの活躍を描くマーベル初の本格ミステリー・サスペンス。NYの救命士・キャシー・ウェヴは、生死を彷徨う事故をきっかけに未来予知の能力を得る。そんななか、偶然出会った3人の少女が、黒いマスクとスーツの男に殺される未来を見る。出演は『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』シリーズのダコタ・ジョンソン、「リアリティ」のシドニー・スウィーニー、「ゴーストバスターズ アフターライフ」のセレステ・オコナー。監督はTV『Marvel ザ・ディフェンダーズ』のS・J・クラークソン。
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物語は1973年、ペルーのジャングルで始まる。コンスタンス・ウェブは研究者。臨月にも関わらず、ジャングルの中でとある蜘蛛を探している。その蜘蛛には古来より病気を治すなどの不思議な力があるという。コンスタンスの助手のシムズは、密かにコンスタンスの研究ノートを写真に撮る。そしてコンスタンスがとうとう幻の蜘蛛を捕まえると、シムズは周りの隊員を銃で撃ち、コンスタンスから蜘蛛を奪う。抵抗するコンスタンスともみ合ううちにシムズはコンスタンスを銃で撃ってしまう。蜘蛛を奪ったシムズはそのまま逃げていく。

撃たれたコンスタンスを助けたのは、ラス・アラニャスと呼ばれる地元の部族。コンスタンスを洞窟内の池に連れて行くと、幻の蜘蛛にコンスタンスを噛ませる。幻の蜘蛛の不思議な力が働いたのか、コンスタンスはそのまま水中で赤ん坊を出産する。族長のサンティアゴは「この子は強い。困難になって戻ってきたら、私が迎えよう」と約束する。しかし、赤ん坊を生んだコンスタンスはそのまま息を引き取る。

所変わって2003年のニューヨーク。主人公のカサンドラ・ウェブ(通称キャッシー)は、救急隊員。その日も急患を乗せて混雑する道路を病院に急ぐ。後部では同僚のベン・パーカーが患者の処置をしている。その時、救急車の前にスケートボードの少女マティが飛び出してきて轢きそうになる。これが後の伏線の一つ。アパートに帰ったキャッシーは、窓から入って来た野良猫に牛乳を飲ませ、母のトランクを開ける。中には母の写真とともに蜘蛛の絵や化学式が書かれた手帳がある。キャシーこそ、コンスタンスが生んだ赤ん坊である。

キャッシーとベンは、また新たな事故現場に行く。橋から落ちそうな車から運転手を救出するが、キャッシーは車とともに川に転落してしまう。川に落ちたキャッシーは、不思議な体験をする。周りに蜘蛛の糸のようなものが漂い、青い風船が割れ、両手が血まみれになり、花火が打ち上がり、自分が分裂し、ネオン看板の「S」の文字が落下し、自分が落下する幻影を見る。ベンの心肺蘇生によって息を吹き返すキャッシー。ベンがキャッシーの瞳孔を調べ、血中酸素濃度を測る。ところがキャッシーが「また測るのか?」と言う。ベンも訝しがる。

 一方、シムズはすっかり成功者になっている。オペラを見ていた美人と出会い、家に連れて行く。部屋ではあの幻の蜘蛛を飼っている。美女とベッドを共にしたシムズだが、いつも同じ夢に悩まされる。それは3人の謎の女たちに追い詰められる夢。覆面をした謎の女たちに襲われ、最後はビルの窓から転落する。悪夢で跳び起きたシムズはそれが予知夢だと考え、奴らを見つけて、先に殺すと決める。どこの誰だか分かるのかという事について、シムズはテクノロジーを利用して顔認証で探すとする。実はベッドをともにした美女はNSAの社員であり、シムズはパスワードを聞き出すとこれを殺害する。

キャッシーは、臨死体験以来、不思議な能力を身につける。それは未来予測。少し先の未来を実体験する。そのため、はじめはキャッシーも気がつかない。ただ、同じ場面が繰り返される事で次第に気がついていく。しかし、気づく前に埠頭の倉庫の火事で同僚が事故死する幻影を見ながらそれを阻止できず、キャッシーは深く傷つく。シムズは助手としてアマリアを雇い、NSAの監視システムにアクセスして夢の3人の女を探す。夢を10年後と仮定して現在の顔を再現すると、10代の少女をターゲットと決める。

こうして物語は進んでいく。シムズが3人の女に襲われるのは未来の話。現在はまだ少女であり、3人にその力はない。そこに予知能力を供えたキャシーが絡んでいく。何かに導かれるように、見知らぬ男に3人の少女が襲われるシーンを見て、助けに動く。キャッシーには予知能力はあるが、戦闘能力はない。一方、蜘蛛の力なのかシムズには人間の力を超越した能力がある。3人の少女を守るキャッシーとシムズの戦いがクライマックスに向けて進んでいく。

一応、マーベルの作品であるが、ヒーローモノと言えるのだろうかと思うと、主人公のキャッシーには予知能力しかなく、3人の女もまだ少女でヒーローに変身する前。イマイチヒーローが誰なのか曖昧である。さらに冒頭で不思議な蜘蛛が登場するが、何となくスパイダーマンの二番煎じのように思えてしまう。焦点が定まらないという感じが漂う。これから何らかのヒーローになるのであれば、まずそれを確立させてから本映画は「前日譚」として描いたらいいように思う。

さらにタイトルは「マダム・ウェブ」であるが、キャッシーは独身である。3人の少女の保護者にでもなるのだろうか。また、3人はのちにスパイダーウーマンにでもなるのだろうか。どうにも疑問だらけの中途半端なヒーローモノである。主演は『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(My Cinema File 1606)シリーズのダコタ・ジョンソンであり、ビジュアル的にはバッチリなのであるが、不完全なストーリーが足を引っ張る。

マーベルのヒーローモノだと期待して観たが、残念ながら大きく期待外れの内容であった。はたして続編は作られるのだろうか。そうだとしたら、ヒーロー像を確立しないと厳しいと思える映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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