
原題: Me Before You
2016年 アメリカ
監督: テア・シャーロック
出演:
エミリア・クラーク:ルイーザ・クラーク(ルー)
サム・クラフリン:ウィル・トレイナー
ジャネット・マクティア:カミーラ・トレイナー
チャールズ・ダンス:スティーブン・トレイナー
ブレンダン・コイル:バーナード・クラーク
<シネマトゥデイ>
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世界中で読まれているジョジョ・モイーズの恋愛小説「ミー・ビフォア・ユー きみと選んだ明日」を映画化。バイク事故で車いすの生活となり生きる気力をなくした青年実業家と、彼の介護に雇われた女性の切ない恋の行方を描く。主人公の女性をテレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」などのエミリア・クラーク、実業家を『ハンガー・ゲーム』シリーズなどのサム・クラフリンが演じる。そのほか『アルバート氏の人生』などのジャネット・マクティア、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』などのチャールズ・ダンスらが脇を固める。
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とある有能そうなビジネスマンが、忙しげに電話をかけながらビルの外へ出てくる。電話に気を取られたその時、一台のバイクが突っ込んでくる・・・
一方、主人公のルイーザはパン屋に勤めているが、閉店にともなって失職する。両親と家族を支えるためにパン屋で働いていたが、のんびりしているゆとりはなく、すぐに新しい職を探し始める。しかし、なかなかこれといった仕事が見つからない。最後に職業案内所で障害者の世話係という仕事を紹介される。他の仕事に比べても給料がよく、ルイーザは早速、面接に行く。
そこは裕福な豪邸。面接相手は障害者の母親で、事故に遭って障害を負った息子ウィルの世話係を探していたのである。運よく採用されたが、息子とは冒頭で事故に遭った男。首から下が不随であり、わずかに手を動かせる程度という状態。そんな我が身を悲観してか、ウィルは人に対して愛想が悪く、これまで何人も世話係が辞めていっていた。ルイーザにも冷たくあたり、10日間経っても心を開こうとはしなかった。
ルイーザは、自分なりにいろいろと試みるが、ウィルは心を開かない。頭にきたルイーザは、ウィルに本音をぶちまける。本当はファションの仕事に就きたいこと、でも家族のためにお金が必要なこと。そうした態度がウィルの心に響いたのか、ウィルはルイーザに対して徐々に心を開いていく。車椅子で少しずつ外へも出るようになる。いつしかウィルはルイーザに笑顔を見せるほどになり、そんなウィルを母親は安堵の表情で見つめる。
しかし、そんなある日、ルイーザはウィルの両親が衝撃的な話をしているのを耳にしてしまう。実はウィルは安楽死を望んでおり、スイスの安楽死の協会へ半年後に行くことを決めていたのである。何とかそれを思いとどまらせようとする母親と、望み通りにしてあげようとする父親とが口論していたのである。話を聞いてしまったルイーザは、ウィルに生きてほしくて、考え方を変えさせようと、彼にたくさんの経験をさせようと計画する。
明るい世話係が人生を悲観している障害者に人生の楽しみを思い出させていくという展開は、『最強のふたり』(My Cinema File 1182)を彷彿させられる。ここでもルイーザはウィルのために様々な計画を考えて実行に移していく。ウィルの元彼女の結婚式に出席したり、コンサートに行ったりと、ルイーザがいなければおそらくやらなかったこと。ウィルもそれらを楽しみながら過ごしていく。『最強のふたり』(My Cinema File 1182)でも同様に障害を持った主人公は前向きになっていったが、ルイーザはウィルから安楽死の意志は変わらないことを聞かされ、絶望の淵に落とされる。
よくよく考えてみると、ウィルの気持ちはよくわかる。当然ながら次第にルイーザに惹かれていくが、ほとんど動けない自分にとってその気持ちを生かす事は出来ない。ただでさえ絶望の中にいるのにさらに絶望の度合いを深めていく。ウィルの身になって考えてみると、「ルイーザの献身によってウィルは生きる希望を見出してメデタシメデタシ」というわけにはいかない。なかなか考えさせられるストーリーである。それにしても、安楽死が認められる環境にあるという事はうらやましい環境でもある。日本でもそういう環境が整うことを望んでしまう。
とんちんかんな邦題にあきれるのはいつもの事として、“Me Before You”という原題には深く感じさせるものがある。邦題に先入観を持たずに観たい映画である・・・
評価:★★☆☆☆