2024年12月31日

【デッドプール&ウルヴァリン】My Cinema File 2950

デッドプール&ウルヴァリン.jpg

原題: Deadpool & Wolverine
2024年 アメリカ
監督: ショーン・レビ
出演: 
ライアン・レイノルズ:ウェイド・ウィルソン/デッドプール
ヒュー・ジャックマン:ローガン/ウルヴァリン
エマ・コリン:カサンドラ・ノヴァ
モリーナ・バッカリン:ヴァネッサ
ロブ・ディレイニー:ピーター
レスリー・アガムズ:ブラインド・アル
アーロン・スタンフォード:パイロ
マシュー・マクファディン:パラドックス
ダフネ・キーン:ローラ/X-23
ジョン・ファブロー:ハッピー・ホーガン
ジェニファー・ガーナー:エレクトラ
ウェズリー・スナイプス:ブレイド
チャニング・テイタム:ガンビット
クリス・エバンス:ジョニー・ストーム
ヘンリー・カビル:カヴィルリン

<シネマトゥデイ>
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ライアン・レイノルズ演じるデッドプールとヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンが共闘を繰り広げるアクション。世界の命運を左右する、あるミッションをめぐって、鍵を握るウルヴァリンにデッドプールが助けを要請する。監督を『ナイト ミュージアム』シリーズや『フリー・ガイ』などのショーン・レヴィが務める。
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前作の最後にケーブルのタイムトラベル装置を使って過去に戻ったデッドプールは、ガールフレンドのヴァネッサの命を救った後、神聖時間軸・アース616へと移動する。何を思ったのか、アベンジャーズへ加入すべくハッピー・ホーガンとの面接に望む。しかし、人格的な問題なのか、面接に落とされる。命を救ったヴァネッサとの関係も悪化し、破局してしまう。ウェイドはヒーローを引退し、中古車セールスマンとして平凡な生活を送っている。

その日、ウェイドの誕生日パーティーが催されるが、そこへ時間変異取締局(通称TVA)のエージェントが現れ、ウェイドを連行する。TVAエージェントはドラマシリーズの『ロキ』を観ていたので馴染みがあったが、そうでないと意味不明かもしれない。連行したのはミスター・パラドックス。彼によれば、将来的な危機から神聖時間軸を守るためにウェイドを招聘したのだという。その最中、ウェイドたちが暮らす時間軸がもっとも主要な存在「アンカー」であったウルヴァリンが死亡したため、ゆるやかな滅亡へ向かっていると知る。

分岐時間軸の剪定をやめたTVAに痺れを切らしているパラドックスは、デッドプールがTVAの仲間になった後に彼の時間軸の滅亡を加速させ、すぐにでも消し去る計画を語るが、デッドプールは拒絶しパラドックスのタイム・パッドを奪うと、数々のマルチバースを訪れて代わりとなるウルヴァリンを探し始める。最終的にバーで酔いつぶれているウルヴァリンをTVAに連れ帰るが、パラドックスによればこのウルヴァリンは自身の世界を失望させるほど酷い行いをしたため、アンカーとしての適性はないという。デッドプールはパラドックスの魂胆を見抜くが、ウルヴァリン共々剪定され、虚無の世界に送られてしまう。

この虚無の世界もいきなり出てきたのでは、わからないのではないかと思えてならない。TVAによって元の時間軸から剪定された者たちが生き残りをかけて生活している場所で、そこで喧嘩になったウェイドとウルヴァリンが戦っていると、一人の男が現れる。それはファンタスティック・フォーのメンバー、ジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチ。3人は虚無で人攫いを行うミュータントたちの襲撃で捕獲され、カサンドラ・ノヴァの要塞に連行される。強力なテレキネシスとマインドコントロールの能力を持つミュータント、カサンドラ・ノヴァは、チャールズ・エグゼビアの妹である。

能力も飛びぬけ最強の存在として虚無の世界に君臨するカサンドラ。まずは元の世界に戻るためデッドプールとウルヴァリンは共闘する。デッドプールは相変わらずのマシンガントーク。X−MENシリーズではどこか亜流感のあるデッドプールであるが、ようやくX−MENの主流であるウルヴァリンとタッグを組む。しかし、この2人、事あるごとに対立し派手に殺し合う。と言っても、両者は不死身の再生能力を持っているために死ぬ事はなく、互いに気を失うまで戦い続ける事になる。そして本作では、ブレイド、エレクトラ、ガンビット、そして『LOGAN ローガン』(My Cinema File 1796)に登場したローラ/X-23が登場する。オールスターとは言わないが、隅からかき集めてきた感がある。

『LOGAN ローガン』(My Cinema File 1796)では、能力が衰えて死亡したウルヴァリンであるが、マルチバースの概念を導入した事により、もう「何でもあり」である。ブレイドなどすっかり忘れた存在だったが、「昔の名前で出ています」的な登場である。そして最後には様々な世界のデッドプールが登場する。女性から骸骨だけのもの、あるいは犬のデッドプールも登場し、もう笑ってしまう。あまり広げ過ぎない方がいいように思うが、何とも言えない。

今後、アベンジャーズとの共闘はあるのだろうか。X−MENの世界はどうなるのだろうか。マルチバースはせっかく一つの世界として完結した『LOGAN ローガン』(My Cinema File 1796)を無にしてしまうものであると言える。製作者の意図はわからねど、それもいかがなものかと思わざるを得ない一作である・・・


評価:★★☆☆☆







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2024年12月30日

【ブルーズド 打ちのめされても】My Cinema File 2949

ブルーズド 打ちのめされても.jpg

原題: Bruised
2021年 アメリカ
監督: ハル・ベリー
出演: 
ハル・ベリー:ジャッキー・ジャスティス
エイダン・カント:デシ
シーラ・アティム:ブッダカン
エイドリアン・レノックス:エンジェル
ワレンチナ・シェフチェンコ:レディキラー
ダニー・ボイド・Jr:マニー

<シネマトゥデイ>
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『マイ・サンシャイン』などのハル・ベリーが監督と主演を務めたドラマ。不名誉な引退をした元格闘家の女性が、息子との再会を機に再起を図る。ドラマシリーズ「サバイバー:宿命の大統領」などのエイダン・カント、『レッド・ライト』などのアドリアーニ・レノックス、ドラマ「アガサ・クリスティー 蒼ざめた馬」などのシーラ・アティムのほか、ヴァレンティーナ・シェフチェンコ、リーラ・ローレンらは出演する。
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元UFC選手のジャッキー・ジャスティスは、試合の最中に相手から逃げるという最悪の負け方をして選手を引退する。それが尾を引いたのか、現在は清掃員の仕事をしながら元マネージャーのデシと暮らしている。デシは働いておらずヒモ状態。そんな有様だから暮らしぶりもよくない。デシはジャッキーに復帰を促すも、本人にそのつもりはない。そんなある日、デシはジャッキーを地下格闘技の場に連れていく。

そこではルールもろくにないようなむき出しのファイトの場所。相手を倒した大女が勝ち名乗りを挙げるが、ジャッキーに気付くと露骨に挑発してくる。初めはいなしていたジャッキーだが、プライドを踏みにじる挑発にキレて勝負を受ける。最初こそ劣勢だったが、そこは昔取った何とかで華麗な動きであっという間に大女をぶちのめす。それはまだまだ現役で通じる動き。これを見ていた大手ジムを経営しているイマキュートという男がジャッキーをスカウトする。そしてトレーナーのブッダガンに会えと伝える。

不機嫌なままデシと帰宅したジャッキーを待っていたのは、長年仲が悪く疎遠だった母親のエンジェル。露骨に嫌悪感をむき出しにするジャッキーだが、要件というのは離婚して父親が引き取っていたジャッキーの子供マニーの養育のこと。何と警官だったジャッキーの元夫が、内偵捜査中に撃ち殺されてしまったと言う。さらにその現場を見てしまったマニーは、精神的ショックから言葉を話せなくなってしまったとの事。マニーを半ば押し付けるようにして帰って行く母親。

血を分けた息子を追い出すわけにもいかず、やむなく家に置くが、自身マニーとどう接したらいいのか分からず戸惑い、さらに恋人のデシもいい顔をしない。家族を養わなければならなくなった事もあり、ジャッキーはブッダガンを訪ね、トレーニングを始めることになる。一方、言葉を話さないマニーに対し、ジャッキーは少しずつ歩み寄っていく。マニーが父親と一緒にキーボードを弾きながら歌う動画を見つけ、ジャッキーはキーボードをプレゼントする。マニーの顔にはにかみながら笑顔が浮かぶ。

トレーニングに精を出すジャッキーではあるが、合間にマニーの学校で編入手続きをする。そこでしゃべろうとしないマニーはお漏らしをしてしまう。子育てとの両立は難しく、トレーニングにやむを得ずマニーを連れて行くジャッキー。ブッダガンはそんなジャッキーの苦労を見て優しくマニーの面倒をみる。やがてイマキュートから、レディキラーという選手とのタイトルマッチを持ちかけられる。ブランクのあるジャッキーには厳しい相手だが、負けても1万ドルのファイトマネーに、ジャッキーは首を縦に振る・・・

落ち目の選手が家族のために無謀ともいえるタイトルマッチに臨むというストーリーは、どこか『ロッキー』(My Cinema File 32)に相通じるところがある。ジャッキー自身、恵まれているとは言えない子供時代を過ごし、母親との確執にも母親さえ知らない辛い過去がある。自暴自棄とも言える生活にピリオドを打ったのは、突然現れた我が子。家族のために厳しいトレーニングをこなし、無敵のチャンピオンに挑む。

ボクシングではなく総合格闘技であるのもUFCがメジャーになってきた証なのだろうか。演じるハル・ベリーは相当練習を積んだのか、技のキレも素人目には本職と見分けがつかない。最後の対戦相手であるレディキラーを演じるのは実際のUFCのチャンピオンらしい。迫力ある試合展開はなかなか見応えがある。試合の迫力、1人の選手の再生、そして母子のドラマ。ハル・ベリーは監督を務めたというし、力が入っていると感じる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年12月29日

【砂の城】My Cinema File 2948

砂の城.jpeg

原題: Sand Castle
2017年 イギリス
監督: フェルナンド・コインブラ
出演: 
ニコラス・ホルト:マット・オークル二等兵
ローガン・マーシャル=グリーン:ハーパー軍曹
ヘンリー・カヴィル:サイバーソン大尉
グレン・パウエル:ディラン・チャツキー軍曹
ニール・ブラウン・Jr:エンゾ伍長
ボー・ナップ:バートン軍曹
サミー・シーク:マフムード

<映画.com>
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『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のニコラス・ホルト主演による戦争ドラマ。退役軍人の脚本家クリス・ロースナーの実体験を基に、イラク戦争に従軍した若き米軍兵士の姿を通して戦地の過酷な現実を描き出す。2003年、イラクの紛争地域。学費を稼ぐため軍に入隊した青年オークルは、同じ部隊の仲間たちとなじむこともできず、命じられた任務を必死にこなす日々を送っていた。そんなある日、彼の所属する部隊に新たな任務が下される。それは、危険地域バクーバで、米軍が破壊した水道設備を修復するというものだった。共演に『スパイダーマン ホームカミング』のローガン・マーシャル=グリーン、『マン・オブ・スティール』のヘンリー・カビル。Netflixで2017年4月21日から配信。
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物語は2003年のイラクで始まる。学費を稼ぐ目的で軍に入隊したオークルが主人公。しかし、僅か3ヶ月で入隊したことを後悔し始める。戦地に出ることを避けるため、自分の手をわざと車のドアに挟んで負傷兵となる。だが、その程度ではたかが知れている。ある程度経つと見抜かれたのかまだ残る痛みを訴えるも、原隊復帰を命じられる。そしてオークルが所属する第2歩兵部隊に命令が下される。

それはバグダッドの北北東に位置するバクーバの村で作戦に従事するもの。さっそく敵との激しい交戦の中、戦闘ヘリで敵の拠点を攻撃して制圧するが、その際にポンプ施設を破壊してしまう。そのため村への給水が滞り、村人の生活に支障が出てしまう。やむなく作戦本部はポンプ設備の修復と村人への水の支給を歩兵部隊へ命じる。オークルも第2歩兵部隊の一員としてこの任務に着くことになる。

第2歩兵部隊は、給水車を護送して水源と村とを往復しながらポンプ施設の修復を行うことになる。何よりも米兵だけでは人が足りず、現地の村人を雇い復旧作業に従事してもらうべく村人に協力を募るが、誰一人復旧作業への協力を申し出る村人は現れない。そこで部族長から村人の参加を促すようにと協力を求めるが、村には反米勢力もいて米軍に協力すれば報復される可能性があるとして部族長にも協力を拒まれてしまう。

米軍の立場からすると誰のための工事なのかと腹立たしいのかもしれないが、現地の人の立場だと「破壊したのは米軍なので米軍が治すのが筋」となるのだろう。そして給水車は途中でゲリラの待ち伏せ攻撃に遭う。何とかこれを撃退するも、給水車は穴だらけでせっかくの水が漏れてしまう。第2歩兵部隊のチャッキーは、村人のための水を運んでいるのにその村人たちに襲撃されることに理不尽さを覚える。

給水車を修繕し、再び水の配給を続ける第2歩兵部隊だが、今度は村人へ配水中に敵ゲリラの襲撃を受ける。村人も何人か犠牲になるが、今度はチャッキーが銃弾を浴びて戦死する。第2歩兵部隊は村人の生活を支える活動に対するモチベーションが低下する。それでも配水中に知り合った村の小学校の校長が現れ、水の配水をオークルに頼んでくる。それなら襲撃をやめさせろと突っぱねるオークルの気持ちは当然。だが、校長は襲撃者とは立場を異にしており、子供たちのためには水が必要だと粘る。オークルは一計を案じ校長の力を借りることを上官に提案して承認をもらう・・・

イラク戦争を背景とした映画は多々あるが、これはとある歩兵部隊の実体験を基にした映画だという。その活動は実に地味。派手な戦闘シーンがあるわけではなく、内容はとある村に対する水道の復旧活動が中心となる。しかし、敵ゲリラによる妨害工作を受ける中でそれは簡単ではない。現地の村人にもゲリラ活動を行う反米勢力はいるが、大半は普通の市民。そして戦争で一番被害を受けるのはこの普通の市民。それは大量破壊兵器云々といった政治的な話は全く関係のない市井の市民。

主人公も米軍の最下級の一兵士であり、その視点はあくまでも現場でのもの。村人の校長の協力でポンプを修理する村人たちが集まる。ようやく工事が順調に進むかと思われた翌日、村で逆さ吊りにされた焼死体が発見される。それはオークルたちに協力した校長の変わりはてた姿。武力で敵勢力を一掃してもゲリラは一掃できない。イラク戦争で問題になった事が一つの事例として描かれる。果たしてイラク戦争とは何だったのか。

繰り返される反抗勢力との激しい銃撃戦。オークルたちの部隊も無傷ではなく、負傷者も出る。そんな日常が描かれていく。やがてオークルに帰国命令が出る。それは冒頭でオークルが望んだものに他ならない。しかし、イラクでの復旧活動を送ったオークルには違う気持ちが芽生えている。それは成長なのであろうか。物語はオークルが帰国するところで終わりを告げる。帰国したオークルがどうなったのか。続きを創造してみたくなった映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年12月28日

【ウーマン・キング 無敵の女戦士たち】My Cinema File 2947

ウーマン・キング.jpg

原題: The Woman King
2022年 カナダ・アメリカ
監督: ジーナ・プリンス=バイスウッド
出演: 
ビオラ・デイビス:ナニスカ
トゥソ・ムベドゥ:ナウィ
ラシャーナ・リンチ:イゾギ
シーラ・アティム:アメンザ
ヒーロー・ファインズ・ティフィン:サント・フェレイラ
ジョン・ボイエガ:キング・ゲゾー
ジミー・オドゥコヤ:オバ・アデ

<映画.com>
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19世紀アフリカを舞台に、女性のみで構成された最強の戦士部隊の戦いを、史実に着想を得て描いた歴史アクション。
1823年。西アフリカのダメホ王国は、奴隷貿易を背景とする民族間抗争に脅かされていた。優れた戦闘技術とすさまじい闘志で王国を守る女戦士部隊アゴジェを率いる将軍ナニスカは、敵対するオヨ王国との戦いに備え、新兵を集めて訓練を開始。その中には、アゴジェに憧れる少女ナウィの姿があった。
『フェンス』のビオラ・デイビスがカリスマ性あふれる将軍ナニスカを熱演するほか、『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』のラシャーナ・リンチ、『スター・ウォーズ』シリーズのジョン・ボイエガが共演。『オールド・ガード』のジーナ・プリンス=バイスウッドが監督、「シティ・オブ・エンジェル」のダナ・スティーブンスが脚本、俳優マリア・ベロが原案・製作を担当。
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なんとなくタイトルからして勝手に『ワンダーウーマン』(My Cinema File 1838)のようなイメージを抱いていたが、まったく違うものであった。物語の舞台は1823年の西アフリカ、ダホメ王国。架空の国かと思ったら、実在の国であると言う。しかも、統治するのはゲゾ王であり、どうやら史実を基にした物語のようである。

冒頭、マヒ族の村を女の軍団が襲う。それはダホメ王国の女戦士軍団アゴジ。率いるのはナニスカ。急襲が功を奏したのか、村人を倒し、捕らえられていた者たちを解放する。どうやら奴隷として売られるところだったようである。村へ凱旋したアゴジ。村人たちは敬意を評して(下を向いて直接見ない)これを迎える。一方、滅ぼされた村へやってきたのは、アバ・オデ将軍率いる一行。将軍はダホメ討伐を決意する。

その頃、ダホメ王国の住人であるナウィが家に帰ると、両親がナウィをとある男に紹介する。それは結婚相手。男はかなり年上であるが、裕福な身であり、ナウィを紹介されると居丈高にしっかり働けと命じる。これに反抗的な態度を取ると、男はその場でナウィを殴る。両親の前でも気にしない態度に、男尊女卑の考え方が根付いている事が窺える。そして気が強いのかナウィは殴り返す。怒った男は婚約を破棄して帰ってしまう。父親も激怒し、ナウィを王宮に連れて行くと、王に献上してしまう。

献上されたナウィは、アゴジのメンバーに加えられる。訓練を経て正式な戦士になると、結婚はできず子も産めず生涯を戦士として過ごす事になる。ナニスカの右腕を務めるアメンザが新メンバーに向かって告げる。覚悟のない者は去れと。中には冒頭で襲撃された村から連行されてきた女たちもいる。その者たちはその場を去っていくが、中には残る者もいる。こうして訓練の日々が始まる。ナウィを指導する教官はイゾギ。ルールその一は、「イゾギに逆らうな」であった。

ある日、ゲゾ王の下にオヨ帝国のアバ・オデ将軍が使者としてやってくる。アバ将軍は貢物としてアゴジ戦士40名を要求する。断れば戦争である。この様子を見ていたナニスカは動揺する。ナニスカはかつて捕虜にされアバ将軍にレイプされた過去があり、この苦い思い出が脳裏を過ぎる。戦士を差し出せと言うのも屈辱である。時間稼ぎのために20名と交渉し、ナニスカはその20名を選ぶ。その頃、奴隷貿易のためポルトガル人の船団が港に入港する・・・

奴隷貿易とは、白人が一方的にアフリカの黒人を捕らえていたようなイメージがあるが、ここでは黒人が黒人を捕らえて奴隷として売っている様子が描かれる。女戦士と言ってもどの程度だったのかはわからない。体力的には男の方が上であるし、ワンダーウーマンならまだしも、人間であれば限界はある。王宮には大奥のような男子禁制エリアがあって、宦官以外の男は入れないというのも興味深い。出てくる宦官はどうもおかまチックである。

物語はナニスカと少女ナウィを中心に描かれる。アゴジ戦士として初めて会った2人だが、実は意外な関係がある事が判明する。否応なく戦いに巻き込まれていくアゴジ。ナウィの成長は戦いによって促される。女戦士というと、おそらく白人ならビジュアルが求められると思うが、黒人だとそこはあまり求められないのか。スーパーヒーローがいるわけでもなく、戦いもかろうじて勝利するという感じ。アクションが売り物という者でもない。

歴史的な史実だったという事が言いたかったのかどうかはわからないが、何が売りだったのかと問われると苦しいようにも思う。ストーリー、出演者、アクションのいずれも中途半端感がある。Amazon primeでは高評価だっただけに期待していたのだが、少々肩透かしを食ったというのが正直な感想。今一歩感が否めなかった映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年12月27日

【遙かなる帰郷】My Cinema File 2946

遙かなる帰郷.jpg

原題: La Tregua
1996年 イタリア・フランス・ドイツ・スイス
監督: フランチェスコ・ロージ
出演: 
ジョン・タトゥーロ:プリーモ・レーヴィ
ラデ・シェルベッジア:モルド
テコ・セリオ:ロヴィ大佐
マッシモ・ギーニ:チェザーレ
ステファノ・ディオニジ:ダニエーレ
クラウディオ・ビシオ:フェラーリ

<映画.com>
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アウシュヴィッツから奇跡的に生還したプリーモ・レーヴィが、故郷イタリアへ戻るまでの8か月の旅を書き記した記録文学のベストセラー『休戦』の映画化作品。監督は「黒い砂漠」「パレルモ」のフランチェスコ・ロージ。製作はレオ・ペスカローロとグイド・デ・ラウレンティス。脚色はロージと「みんな元気」のトニーノ・グエッラ。脚本はロージとステーファノ・ルッリとサンドロ・ペトラリァ。撮影は「湖畔のひと月」のパスクワリーノ・デ・サンティスだが、撮影中に死去。その後をマルコ・ポンテコルヴォが受け継いだ。音楽は「イル・ポスティーノ」のルイス・バカロフ。美術は「小さな旅人」のアンドレア・クリザンティ。編集はロージ作品には欠かせないルッジェーロ・マストロヤンニだが、編集中に死去。その後をブルーノ・サランドレアが受け継いだ。衣裳は「イノセント」のアルベルト・ヴェルソ。出演は「バートン・フィンク」「ガール6」のジョン・タトゥーロ、「ビフォア・ザ・レイン」のラーデ・シェルベジヤ、「心のおもむくままに」のマッシモ・ギーニ、「カストラート」のステーファノ・ディオニジほか。
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物語は終戦間近のアウシュビッツ強制収容所から始まる。証拠隠滅のためか、収容者たちを使って書類の焼却を行うドイツ軍の兵士たち。静寂の後、やがて偵察と思しきソ連兵がやってくる。主人公のプリーモはそれを冷静に見ている。やがてソ連軍の本体が到着し、収容されていたユダヤ人たちは解放される。囚人服を脱ぎ捨てて着替える囚人たち。プリーモも一旦は脱ぐものの、何を思ったのか再び囚人服を着る。しばらくはソ連軍の保護下に置かれるが、仲の良い友人ダニエーレと別々にトラックに乗せられる。

プリーモは実はイタリア人。イタリア人なのにどういう経緯でアウシュビッツに送られたのかは説明がないのでわからない。プリーモは故郷イタリアに帰る事を考える。謎のギリシャ人モルドと知り合い、行動をともにする。列車に乗せられるが、その列車は途中で故障してしまう。まだドイツは降伏しておらず、ソ連軍は西へと進撃している。そんな混乱の中、故郷への道は遠い。

そして着いた街から聞こえてきたイタリア語に引き寄せられてとある建物に入っていくプリーモとモルド。そこはどうやらイタリア兵が集まっている宿舎。背景事情がわからないのがどうにももどかしい。やがてモルドはプリーモを捨てて立ち去る。だが、ボロボロの靴を履いていたプリーモに靴を残していく。プリーモは一人故郷への旅を続ける。ソ連兵に連れていかれたところでは、医者という事になる。どうやら大学卒である事からドクターとなったようである。生きるためにはなんでもやる。

行く先々で様々な人と出会い、時に助けられる。アウシュビッツ帰りだと知ってとある夫人が食事をさせてくれる。しかし、プリーモとその時一緒にいた男は、その恩をあだで返し、夫人の亡き夫が残したというバイオリンを盗んでくる。途中で再びモルドに出会うが、モルドはいつの間にか娼婦の取りまとめ役に収まっている。こういう男はどこへ行ってもたくましく生きていくのかもしれない。そのモルドも故郷へ帰るギリシャ人の一行に交じって去っていく。再び故郷を目ざすプリーモ。

解説によると、プリーモの旅は8か月かかったという。途中でドイツ降伏の報が入り、人々は喜びを爆発させる。しかし、プリーモにとっては故郷への旅がまだまだ残っているせいか、浮かれる事もない。再びダニエーレと再会するが、ドイツ人に憎しみを露にするダニエーレに対し、プリーモは淡々としている。収容所でそれほどひどい目に合わなかったのか、それとももともとそういう性格なのか。そして長い旅路に終わりが訪れる。

最後までプリーモが収容所に入れられた状況がわからず、それが心に引っ掛かる。プリーモが帰りついた家は立派に残っており、迎える家族もいる。ユダヤ人狩りにあったわけでもなさそうであるし、なぜイタリア人のプリーモがアウシュビッツに入れられていたのであろうか。収容所でドイツ兵に慰み者になっていた女性が、解放後、「ドイツ兵に媚びを売った」とダニエーレに責められる。しかし、プリーモはそれを諌める。プリーモはどこまでも善人である。

ちょっと趣旨は違うが、ホロコーストを生き抜いたユダヤ人の旅という意味では『家へ帰ろう』(My Cinema File 2568)というのがあった。ホロコーストで生き残っても人によっては故郷に帰りつく苦難もあっただろうし、それでもまだ帰る故郷に待つ人がいたプリーモは幸運だったのかもしれない。一人のホロコーストの生き残りの証言として参考にしたい映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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