
原題: Last Letter
2018年 中国
監督: 岩井俊二
出演:
ジョウ・シュン:ユアン・チィファ
チン・ハオ:イン・チャン
ドゥー・ジアン:ジョウ・ウェンタオ
チャン・ツィフォン:少女時代のチィファ/サーラン
ダン・アンシー:少女時代のチィナン/ムームー
ジーホン:タン・ジュオ
フー・ゴー:ジャン・チャオ
ビィン・テンヤン:少年時代のイン・チャン
フー・チャンリン:チェンチェン
ウー・ヤンシュ:ウェンタオの母
<シネマトゥデイ>
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『花とアリス』などの岩井俊二が監督を務め、自身の小説「ラストレター」を中国で映画化したラブストーリー。姉の同窓会に出席したヒロインが姉本人と勘違いされ、再会した初恋の人と手紙を交わすようになる。出演は『小さな中国のお針子』などのジョウ・シュンと『長江 愛の詩』などのチン・ハオなど。プロデューサーとして『捜査官X』などのピーター・チャン監督が参加している。
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監督が岩井俊二となっていて興味を持ったこの映画、実は『ラストレター』(My Cinema File 2341)の中国版だという。ただし、こちらの映画の方が制作年次は早い。ストーリーは基本的に同じである。
姉チィナンが亡くなり、妹のチィファは葬儀を終える。たまたま姉宛に同窓会の案内が届いており、チィファはそのことを伝えるため同窓会に出席する。しかし、チィファはなぜか姉に間違えられる。どうやら定期的に開かれている同窓会ではなく、時間を置いた久しぶりのものであったようである。それもあって姉と間違われる他のであるが、少し考えればありえない設定である(普通であれば案内状に返信する形で連絡するだろうし、あるいは入口でそう告げて帰るだろう)。しかし、それはそれとして受け止めて観ていく
同窓会には、チィファが憧れていたイン・チャンも来ている。もしかしたらチィファが姉に間違われたまま席に着いたのは、どこかでチャンに会う事を期待していたのかもしれない。そのチャンは遅れてやって来る。間違われたままスピーチまでしてしまうチィファはさすがに途中で席を立つ。そのチィファのあとをチャンは追いかける。2人の会話はどこか噛みあわない。チャンは小説家としてデビューし、処女作が話題になったが、その後は鳴かず飛ばず。ドラマの脚本を書いて細々と物書きとして生きている。名残惜し気に別れる2人。否、名残惜し気なのはチャンの方である。
チィファはチャンにスマホの連絡先を交換して帰る。そして帰宅した後、チャンからさっそくメッセージが届く。ところがそれを見た夫が激怒してスマホを壊してしまう。やむなくチャンに手紙を書くチィファ。自らの連絡先は伏せたまま、思う事どもを綴る。かつてチャンと姉のチィナンは同級生。チィナンに憧れるチャンとそのチャンに憧れるチィファ。チャンの気持ちを知りつつ、姉にラブレターを書けと言う。その助言に従ってチィナンにラブレターを書くチャン。それをチィファに渡すが、チィファはそれを姉に渡さない。ある時チャンはチィファと話をするが、その時チャンはチィナンが手紙を読んでいない事に気づく。
物語はチィナンとチィファとチャンの学生時代と現在、そしてチィナンとチィファの娘と3つの物語が交差していく。基本的にストーリーは『ラストレター』(My Cinema File 2341)と同じである。亡くなった姉を中心として動く物語。かつての秘めた想いが蘇る。チャンが唯一発表した小説は「チィナン」。姉のチィナンとの思い出を綴ったもの。別れて以来、書けなくなってしまったチャン。男は昔の女の影を引きずるものである。
ノスタルジー溢れる物語。基本的にストーリーは同じであるが、個人的には日本版の方が良かったと思う。それは先に観たからというわけではなく(けっこうストーリーは忘れていたので既視感は少なかった)、もしかしたら出演陣によるものかもしれないし、日本の物語だから日本の風景が良かったのかもしれない。個人的にはそんな感想を抱いたが、中国人がこの映画をどう観たのかはちょっと気になるところであった。
どういう経緯で中国版が(日本よりも早く)できたのかはわからないが、岩井俊二監督の紡ぎ出す物語は心を温かくするものがある。同じストーリーで日本版と中国版、比べて観たい一作である・・・
評価:★★☆☆☆