2025年02月10日

【月の満ち欠け】My Cinema File 2967

月の満ち欠け.jpg
 
2022年 日本
監督: 廣木隆一
原作: 佐藤正午
出演: 
大泉洋:小山内堅
有村架純:正木瑠璃
目黒蓮:三角哲彦
伊藤沙莉:緑坂ゆい
田中圭:正木竜之介
柴咲コウ:小山内梢
菊池日菜子:小山内瑠璃

<シネマトゥデイ>
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『鳩の撃退法』などの原作で知られる佐藤正午の直木賞受賞作を実写映画化。妻子を同時に失い幸せな日常を失った男が、数奇な運命に巻き込まれていく。監督は『ナミヤ雑貨店の奇蹟』などの廣木隆一、脚本は『そして、バトンは渡された』などの橋本裕志が担当。『探偵はBARにいる』シリーズなどの大泉洋が主人公を演じ、廣木監督作『ストロボ・エッジ』などの有村架純、ドラマ「消えた初恋」などの目黒蓮、大泉主演作『青天の霹靂』などの柴咲コウらが共演する。
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主人公の小山内堅は、東京でサラリーマンとして重要な仕事を任されることになり、充実した日々を送っていたが、最愛の妻梢と娘瑠璃を突然の交通事故で失い、失意のうちに故郷の青森に帰る。生きる気力を失い、漁港で働きながら細々と暮らしているところに、「三角哲彦」と名乗る男が訪ねてくる。事故の日に、瑠璃は面識のないはずの自分に会いに来ようとしていたと、三角は語る。

そして物語は、過去へと遡る。仲睦まじい小山内夫婦に待望の娘が生まれる。妻・梢は「夢のなかでこの子に、名前は瑠璃にしてほしいと言われた」と言い、娘を瑠璃と名づける。両親の愛情をたっぷり注がれた瑠璃はすくすくと育つ。しかし7歳のとき、瑠璃は1週間ほど高熱で寝込む。それ以降、瑠璃の様子が変わった事に梢が気付く。クマのぬいぐるみを「アキラ君」と呼ぶようになったり、生まれる前の流行歌「リメンバー・ラヴ」を口ずさんだり、ジッポのライターを直してみたり。

そしてある日、突然瑠璃の行方がわからなくなる。警察にも捜索願を出し、必死に探したところ、瑠璃は高田馬場のレコード店にいるところを保護される。なぜそんな所に行ったのか、多くを語ろうとしない瑠璃。映画「アンナ・カレーニナ」を大人しく観ていたと告げられるが、小山内は瑠璃に「高校を卒業するまでは1人で遠くに行かない」と約束をさせる。それからは瑠璃の奇妙な言動も減り、元の穏やかな日々が続く。

青森まで突然やって来た三角は、小山内の娘と同じ「瑠璃」という名を持つ、かつて愛した女性について語り始める。それはまだ三角が学生のころ、ある雨の日、三角がアルバイトしているレコードショップの店先で雨宿りしている女性と出会う。その女性の名は正木瑠璃。一目で心惹かれるも、奥手なのか三角は連絡先も聞けずに別れる。しかし、生活圏が近いようで、三角と正木瑠璃はいくどか偶然の出会いを繰り返す。

瑠璃が映画館で映画を観ていると、そこに哲彦が現れる。その映画は「アンナ・カレーニナ」。瑠璃が時折口ずさむ流行歌は、小山内瑠璃が口ずさんでいた「リメンバー・ラヴ」。そして三角がバイトしていたレコードショップこそ、小学生の小山内瑠璃がたった1人で行ったレコードショップ。さらに正木瑠璃は人妻であるが、結婚相手と出会ったのはアルバイト先。そこで夫になる男性にジッポのライターを売ったのである。

ここに至り、この映画は生まれ変わりをテーマにした物語だとわかってくる。いずれも瑠璃という名の女性。生まれる前に母親の夢の中で「瑠璃も玻璃も照らせば光る」の「瑠璃」という名にしてほしいと訴え、その名前をもらって生まれてくる。不老不死と合わせて魂の不滅を信じたい人間が考えたもので、仏教の輪廻転生でもある。ここでは動物に生まれ変わったりせず、都合よく人間に生まれ変わる。

そうした生まれ変わりをテーマにしたのも悪くはないと思う。三島由紀夫の名作『豊穣の海』も生まれ変わりをテーマにした壮大な物語であった。しかしながらこの物語は何となくストーリーが荒く、大作家の名作には遠く及ばない。そもそも生まれ変わりなど、身近な者にしかわかるはずもなく、それも疑惑レベルの代物である。それが正木瑠璃の夫は、高校生の小山内瑠璃が「リメンバー・ラヴ」を歌っているのを聞いただけで妻の生まれ変わりと確信してしまうのである。

あり得ない設定でもそれなりのリアリティがあればストーリーに入っていける。しかし、あり得ない設定にあり得ない展開が重なると興覚めしてしまう。そして生まれ変わりは3度に及ぶ。それも都合よく関係者だったりする。さすがに最後はすっかり覚めてしまう自分がいた。大泉洋が主役だし、製作者は感動モノを意図していたのかもしれないが、興覚めするストーリー展開は、出演陣の熱演にも関わらず心に響いてこない。これは完全にストーリーの自滅だろう。つくづく、残念な一作である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする