2025年02月14日

【ファントム・スレッド】My Cinema File 2968

ファントム・スレッド.jpg

原題: Phantom Thread
2017年 アメリカ
監督: ポール・トーマス・アンダーソン
出演: 
ダニエル・デイ=ルイス:レイノルズ・ウッドコック
レスリー・マンヴィル:シリル
ヴィッキー・クリープス:アルマ
カミーラ・ラザフォード:ジョアンナ
ジーナ・マッキー: ヘンリエッタ・ハーディング伯爵夫人
ブライアン・グリーソン:ロバート・ハーディング医師
ハリエット・サンソム・ハリス

<映画.com>
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『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のポール・トーマス・アンダーソン監督とダニエル・デイ=ルイスが2度目のタッグを組み、1950年代のロンドンを舞台に、有名デザイナーと若いウェイトレスとの究極の愛が描かれる。「マイ・レフトフット」 『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 『リンカーン』で3度のアカデミー主演男優賞を受賞している名優デイ=ルイスが主人公レイノルズ・ウッドコックを演じ、今作をもって俳優業から引退することを表明している。1950年代のロンドンで活躍するオートクチュールの仕立て屋レイノルズ・ウッドコックは、英国ファッション界の中心的存在として社交界から脚光を浴びていた。ウェイトレスのアルマとの運命的な出会いを果たしたレイノルズは、アルマをミューズとしてファッションの世界へと迎え入れる。しかし、アルマの存在がレイノルズの整然とした完璧な日常が変化をもたらしていく。第90回アカデミー賞で作品賞ほか6部門にノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞した。
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物語の舞台は1950年代のロンドン。主人公のレイノルズ・ウッドコックは、社交界のセレブや金持ちを顧客とするオートクチュールの仕立屋。独身の姉のシリルと2人で自らのファッション・ブランドを運営している。そんなレイノルズは仕事の虫。その日も朝から食事もそこそこに仕事をする。一緒に食卓についていた恋人も、甘い会話など望むべくもない。そんな態度に愛想をつかしてしまう。

ある日、郊外の別荘へ向かったレイノルズは、立ち寄ったレストランで働くウェイトレスのアルマを見染める。アルマもまんざらではない様子。そしてレイノルズはいきなりアルマを食事に誘う。仕事の虫の割には手が早い。高級レストランで食事をし、うっとりとしたアルマを別荘へと連れて行く。しかし、ベッドに直行するのではなく、仕事場へと誘い、そこでアルマの体の採寸を始める。どこまでが愛情でどこまでが仕事なのかわからないが、レイノルズはアルマを自宅へ連れ帰る。

レイノルズはそのままアルマをモデルとしてしまう。レイノルズとアルマは交際なのか仕事仲間なのか曖昧なままに関係を続ける。しかし、レイノルズの態度は変わらず、朝食時にも仕事に没頭し、アルマに対してトーストにバターを塗る音にも反応して文句を言う。されどアルマはそんなレイノルズを受け入れ、言われるままにモデルとしてショーにも登場する。ショーの後、疲れ果てたレイノルズをアルマはいたわり、やがてアルマはレイノルズのアシスタントのようになっていく。

ある時、レイノルズはバーバラという常連客に結婚式のドレスを納入する。結婚式の当日、レイノルズはアルマと共に式に出席する。しかし、その場でバーバラは酔ってしまい、醜態をさらす。それを見ていたアルマは、レイノルズにバーバラには自分たちのドレスはふさわしくないと告げる。2人は式の後バーバラの自宅に押しかけてドレスを返せと迫る。けれど当の本人はドレスを着たままベッドで酔いつぶれている。強引に押し入った2人はなんとバーバラからドレスを脱がして持ち帰る。

次にレイノルズはベルギーのプリンセス・モナのウエディングドレスの仕事を受注する。アルマは仕事のパートナーであるとともに私生活のパートナーでもあり、レイノルズを喜ばせようとサプライズの夕食を考える。それをシリルに相談するが、シリルはやめた方がいいと答える。ならばとアルマは1人で考えて準備をするが、帰宅したレイノルズはモナの仕事で不機嫌になっており、またサプライズを素直に喜ぶ性格でもない。自分のために手間暇かけて準備した事に感謝するような思いやりもない。とうとうアルマは日頃の不満をレイノルズにぶちまける・・・

主人公のレイノルズは、オートクチュールの仕立屋。腕が良いそうで評判を得ているが、性格は気難しい。時代の男のあり方もあるのかもしれないが、仕事以外に興味を示さず、女性との付き合いにおいてもお世辞でも相手を喜ばそうなんてしない。それでもモテるのは、ファッションという女性を毒する世界に君臨しているからなのかもしれない。そのオートクチュールであるが、1950年代のその様子は、『ミセス・ハリス、パリへ行く』(My Cinema File 2881)とまったく同じである。

『ミセス・ハリス、パリへ行く』(My Cinema File 2881)では、主人公のミセス・ハリスはパリのオートクチュールの代表クリスチャン・ディオールに憧れてお金を貯めてパリに行くが、同じロンドン市内の他の国内オートクチュールには魅力を感じなかったのだろうか、などと思ってみたりした。ビジュアル的にはじいさんに入るレイノルズを愛するアルマは、その愛が高じてとんでもない行動に出る。歪んだ愛の形とでも言えるだろう。この映画は、いったいどういう映画なのだろうか、恋愛映画なのかサスペンスなのか。

鬼気迫る様相で仕事に没頭するレイノルズと鬼気迫る内面の激しい愛でレイノルズに向かうアルマ。2人はとうとう結婚するが、それは純愛とは程遠い。一昔前のロンドンを舞台にした狂気的な愛の物語。アルマ役のヴィッキー・クリープスはあまり美人とは言えないが、狂気の愛を見せる迫力は十分である。原題は「幻の糸」とでも訳すのであろうか。ストーリーを合わせ考えると意味深さを感じさせる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | サスペンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする