
原題:The Family Man
2000年 アメリカ
監督: ブレット・ラトナー
出演
ニコラス・ケイジ:ジャック・キャンベル
ティア・レオーニ:ケイト・レイノルズ
ドン・チードル:キャッシュ・マネー
ジェレミー・ピヴェン:アーニー
ソウル・ルビネック:アラン・ミンツ
ジョセフ・ソマー:ピーター・ラシッター
マッケンジー・ヴェガ:アニー・キャンベル
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多忙なビジネスマンが別の人生を生きることで愛の大切さを知るラヴ・メルヘン。監督は「ラッシュアワー」のブレット・ラトナー。脚本はデイヴィッド・ダイアモンドとデイヴィッド・ワイスマン。撮影は「ワンダー・ボーイズ」のダンテ・スピノッティ。音楽は『プルーフ・オブ・ライフ』のダニー・エルフマン。衣裳は『あの頃ペニー・レインと』のベッツィ・ハイマン。出演は「60セカンズ」のニコラス・ケイジ、「ディープ・インパクト」のティア・レオーニ、「ミッション・トゥ・マーズ」のドン・チードル、「ベリー・バッド・ウェディング」のジェレミー・ピヴェンほか。
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折に触れ、かつて観た映画を観直している。この映画はニコラス・ケイジの多作な出演作の中でも印象深い方に入る映画として記憶に残っている。
時に1987年、ジャックはロンドンにある銀行での研修へ向かうため恋人のケイトと空港に来ている。ジャックは金融の世界へ、ケイトは法律の世界へとそれぞれのキャリアを築くため、一時的に離れ離れになる別れを惜しんでいる。話し合って決めた結論なのに、直前になってケイトは「考え直して欲しい」とジャックを引き留める。されど一度決めた事だからとジャックは旅立っていく。
それから13年後、ニューヨークのウォール街で成功し大手投資会社の社長になったジャックは、優雅な独身生活を満喫している。自宅は豪華な高層マンションで、女性とも浮名を流している。どうやら、ケイトとは別れてしまったようである。成功の裏にあるのはハードワーク。クリスマス・イヴの夜にも幹部を招集し、2日後に控えた重要なM&Aについての会議をしていると、その間にケイトから連絡が入ったと秘書が報告する。あえて何もせずジャックは帰路に着く。
途中で立ち寄ったコンビニで黒人の青年キャッシュと店員とのトラブルに遭遇する。店員の理不尽な対応に激怒したキャッシュは銃を突きつけるが、ジャックが穏やかに交渉し事なきを得る。ジャックはキャッシュと話をするが、その会話の中で「僕はなんでも持ってる」と答えると、キャッシュは「これから何が起きてもあんたの責任だ」という不思議な言葉を残して去っていく。
翌朝、ジャックが目を覚ますと部屋の雰囲気が一転している事に気付く。隣にはかつて別れたはずのケイトが寝ており、2人の子供が「パパ!」と起こしにくる。わけがわからず、マンハッタンの高層マンションにある自分の部屋に戻るも、なぜか顔見知りだった警備員も理事仲間の知人もよそよそしい態度を取る。極めつけは、勤務先の投資会社に行くと社長の名前に自分の名前はなく、何もかもが変わっている。状況を理解できないジャックの前に現れたキャッシュは、「答えは自分で探せ」とだけ告げると姿を消してしまう。
ジャックは仕方なくケイトのいた家に戻るが、そこには自分の知らない自分の生活がある。時にクリスマスであり、2人で友人宅のパーティーに参加する。そこでも顔見知りの知人たちとの交流があるが、誰もが「投資会社に勤めているジャック」ではないジャックを前提に話をする。唯一娘のアニーだけが様子のおかしいジャックを「パパじゃない」と言う。どうやら父に変装した宇宙人だと思ったようである。
不可解なままジャックは新たな世界での生活を始める。弁護士のケイトはボランティアでの仕事が多く、タイヤの小売り店に務めるジャックはそれほど稼ぎがあるわけでもない。2人の子供を保育園に送り届け、仕事に向かう。そしてだんだんとその世界は、1987年にジャックが海外研修を中止し、戻ってケイトと結婚した世界であることが分かってくる。羽振りの良いかつての独身生活と庶民的でも家族に囲まれた生活。どちらがいいかは難しいところだが、ジャックは元の世界の栄光が忘れられない。
「今生きている人生とは別の人生があったかもしれない」という思いは誰もが抱くかもしれない。しかしそれはたいてい「今よりもいい人生」という事が多いと思う。しかし、ここでは主人公のジャックは今の生活に満足していて、ケイトや子供たちとの生活を望んでいないというところが一味違う。それは務めるタイヤ店に投資会社の会長が偶然やって来た時、ここぞとばかりに自分の能力を売り込むところに現れている。会長の興味を引く事はたやすい事であり、ジャックは難なくそれに成功する。
しかし、嫌々ながら続けていた「家族との生活」が次第にジャックの心に浸透していく。それまで気がつかなかったものに気付いていくジャック。やはり大切なものは金や社会的な地位ではないという事に気付くジャックの姿に、観る者は安堵する。ラストでジャックとケイトは空港のカフェで話をする。2人でどんな話をしたのだろうか。2人の幸せなその後を想像してみたくなる一作である・・・
評価:★★☆☆☆