
2022年 日本
監督: 藤井道人
原作小坂流加
出演:
小松菜奈:高林茉莉
坂口健太郎:真部和人
山田裕貴:富田タケル
奈緒:藤崎沙苗
井口理:三浦アキラ
黒木華:桔梗
田中哲司:平田先生
原日出子:百合子
リリー・フランキー:梶原
松重豊:明久
<映画.com>
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小坂流加の小説を原作にしたラブロマンス。難病で余命10年の女性と、彼女の同窓生である男性が恋に落ちる。メガホンを取るのは『宇宙でいちばんあかるい屋根』などの藤井道人。主演は『恋する寄生虫』などの小松菜奈、『仮面病棟』などの坂口健太郎。『おとなの事情 スマホをのぞいたら』などの岡田惠和、ドラマ「恋はつづくよどこまでも」などの渡邉真子が脚本を務め、『天気の子』などのRADWIMPSが音楽を手掛けている。
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物語は2011年から始まる。入院していた主人公の茉莉は、同室の患者からビデオをもらう。その患者は幼い子を残して亡くなる。茉莉はまだ二十歳だが、10年以上生きる人はほとんどいないといわれる難病の肺動脈性肺高血圧症を患っている。2年間という長い入院生活を終えて退院の日を迎えた茉莉は、もらったビデオを回しながら家族と共に帰宅する。学生時代の友人たちとも再会し、楽しく過ごした帰り道、沙苗から出版社で一緒に働かないかと誘われるが、茉莉は笑顔で断る。
2014年。病気は小康状態。茉莉は、久しぶりに同窓会に出席する。茉莉は病気のことは隠し、東京でOLをしているとみんなに嘘をつく。地元に残っているのが大半な中、茉莉と同じように東京に出ている和人と再会する。一次会が終わると、飲み過ぎて気分が悪くなった和人を介抱しながら、茉莉は学生時代の思い出話をする。何かを思いつめたような表情の和人は、その後、自室のベランダから飛び降りる。幸いにも命をとりとめた和人。親とは絶縁しているようで、行きがかり上、茉莉は同じく同窓生のタケルと一緒に見舞う。
和人なりに生きる事に意味を感じられずの行動だが、余命宣告を受けている茉莉には受け入れられるものではない。そんな気持ちを隠して席を立つ茉莉。後日、病院で茉莉が母親といるのをみかけた和人は、茉莉の母親が病気だと勘違いし、茉莉が自殺しようとした自分に腹を立てたのは母を思ってのことだと和人は誤解する。茉莉とタケルが「焼き鳥屋げん」で開いてくれた退院祝いの席で、和人は茉莉に謝る。帰り道の桜並木でカメラ撮影をしながら茉莉は、和人と話をする。今後の展開を予感させる雰囲気である。
やがて茉莉は在宅で沙苗の出版社のウェブライターの仕事を始め、和人も「焼き鳥屋げん」で働き始める。それぞれ前を向いて歩いていく。2016年、茉莉の姉の桔梗が結婚する。茉莉は陰で親戚が自分の病気の事を話しているのを聞いてしまう。和人との関係は良好だが、余命を考えて恋を避ける茉莉は、和人から告白される。しかし、ひどい息切れを起こしてその場に倒れて救急搬送され、茉莉の病は和人の知るところとなる・・・
タイトルからして死別系悲恋モノという感じがしていたが、どうやら実話をベースとした小説が原作のようである。ふだん、当たり前のように生きている我々は、命が無限だとは思わないが、その期限を意識することはない。しかし、病気などで余命を知らされると、途端に生きる日々が大事になる。茉莉は「あと10年しか生きられないとしたらあなたは何をしますか?」とした小説の執筆に取り掛かる。それを読んだ友人の沙苗は、涙を流しながら世に出そうと話す。
余命宣告を受けてしまうと、相手の事を考えると恋愛には消極的になる。それは相手の時間を奪う事にもなり、どうしても遠慮が出てしまう。茉莉もそうして身を引くが、帰宅して母親にすがり、もっと生きたいと言って泣くシーンは心に迫るものがある。もしも、自分の娘だったらと親としては切なく思う。単なる「お涙頂戴悲恋ストーリー」を予想していたらちょっと違った。主演の2人の共演も好印象の映画である・・・
評価:★★★☆☆