
原題: The Killing of Kenneth Chamberlain
2019年 アメリカ
監督: デビッド・ミデル
出演:
フランキー・フェイソン:ケネス・チェンバレン
エンリコ・ナターレ:ロッシ
スティーブ・オコンネル:パークス
ベン・マーテン:ジャクソン
<映画.com>
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モーガン・フリーマンが製作総指揮を務め、無実の黒人男性が白人警官に殺害された実在の事件を映画化したサスペンス。殺害までの90分間を実際の事件とほぼ同時間のリアルタイム進行で描き出す。
2011年11月19日、早朝のニューヨーク。双極性障害を患うケネス・チェンバレンは、就寝中に医療用通報装置を誤作動させてしまう。安否確認にやって来た3人の警官に、ケネスはドア越しに通報は間違いだと伝えるが信じてもらえない。最初は穏便に対応していた警官たちは、ドアを開けるのを拒むケネスに不信感を募らせ、次第に高圧的な態度をとるようになっていく。
「ハンニバル」『羊たちの沈黙』のフランキー・フェイソンが主人公ケネス・チェンバレンを熱演し、2021年・第31回ゴッサム・インディペンデント映画賞で主演俳優賞を受賞した。
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ニューヨーク州ホワイトプレーンズのとある集合住宅で暮らすケネス・チェンバレンは、双極性障害と心疾患を患っていて、ペンダント型の緊急通報システムを常に身につけていたが、夜中に寝苦しくなったケネスは、ペンダントを外してテーブルに置く。これが原因で警報管理室に通報が届いてしまう。それを受けてオペレーターがケネスに電話をかけてくる。ところが寝ているケネスは気づかずに応答しない。オペレーターは手順に従って911に連絡する。
連絡を受け、最寄りの警察からやって来たのは、パークス警部補とジャクソンと新人巡査のロッシ。到着した3人は安否確認のためロッシ巡査がドアをノックする。ここに至って目を覚ましたケネスは、ドア越しにロッシの呼び掛けに応じて自分は大丈夫だと伝える。しかし、警察としては直接本人と対面して安否確認をしなければならず、ドアを開けるようにと伝える。しかし、ケネスはドアを開けようとせず、あくまでもドア越しに大丈夫だと繰り返す。
しかし、警官には警官の都合というものがある。とにかくドアを開けて確認したいと繰り返す。ケネスはケネスで大丈夫だと繰り返すばかりでドアを開けようとしない。警察も身元確認をしてケネスが退役軍人だということ、前科がないことを確認する。しかし、頑なにドアを開ける事を拒むケネスに次第に何か隠しているのではないかという疑いを抱く。周囲は治安の悪い地域であり、同じ建物の中にも犯罪者が普通にいる事から警官たちもイライラが募っていく。
最初は穏やかに呼び掛けていた警官たちも次第に言葉使いも行動も荒々しくなっていく。特にジャクソンには人種差別傾向がある。するとケネスの態度もより頑なになっていく。やがて事態は大きくなっていく。近所の人も何事かと顔を出すし、近所に住んでいた姪も連絡を受けて様子を見に来る。姪は懸命に警察に説明しようとするが、感情が高ぶっているジャクソンは聞く耳を持たない。唯一、ロッシ巡査だけが捜査の違法性を指摘して出直そうと進言するが、パークスは新人の訴えを聞こうとしない。
激しくドアを叩くジャクソン。やがて要請を受けて応援の人員が到着する。もはや事態はケネスの安否確認からは大幅に外れ、中に入る事が優先される。その間、ケネスの下には警報管理室のオペレーターから連絡があり、ケネスに落ち着くように呼び掛け、対応策を指示する。しかし、ケネスはドアだけは決して開けようとしない。事態は膠着状態のままドアを破壊して中に入ろうとする試みが続けられる・・・
事件はタイトルにある通り悲劇に終わる。実話だという事が話の重さに加わる。なぜケネスは頑なにドアを開けようとしなかったのか。日本人の感覚なら誰もがすぐにドアを開けるだろう。また日本の警官であればこの程度の抵抗でドアをこじ開けようとはしないだろう。そこはアメリカであり、周辺の治安の悪さと警官に対する信頼度がないことが原因となっている。唯一、冷静で常識的だったロッシが新人で話を聞いてもらえなかった事も悲劇につながっている。
ケネスが素直にドアを開けてさえいたら、警官たちも呼び掛けていたように5分で済む話だったはずである。とは言え、心身に障害を抱えていたことも悲劇の一因になっているのだろう。エンドロールでは、実際の音声でのケネスとオペレーターとのやり取りが流れ、生々しさが蘇る。つくづくこの程度の事で命を落とす事のない平和な国に住んでいるありがたさを実感させられる。観終わって気持ちの重たくなる映画である・・・
評価:★★☆☆☆

