
原題: Rain Man
1988年 アメリカ
監督: バリー・レビンソン
出演:
ダスティン・ホフマン:レイモンド
トム・クルーズ:チャーリー
バレリア・ゴリノ:スザンナ
ジェラルド・R・モーレン:ブルーナー医師
ジャック・マードック:ジョン・ムーニー
マイケル・D・ロバーツ:バーン
<映画.com>
********************************************************************************************************
高級外車ディーラーのチャーリーは、絶縁状態にあった父の訃報を聞き、遺産目当てに帰省する。ところが、遺産の300万ドルは全て匿名の人物に相続されることとなっていた。その人物が、今まで存在すら知らなかった自閉症の兄レイモンドであると知った彼は、兄を病院から連れ出してロスへと向かうが……。アカデミー賞主要4部門(作品・監督・脚本・主演男優賞)他、多数の映画賞に輝いた、バリー・レビンソン監督による感動作。
********************************************************************************************************
この映画を観たのはもう37年も前なのかと感慨ひとしお。いつかもう一度観たいと思ううちに今日まで来てしまった。改めて先送りはやめようと鑑賞に至る。
チャーリー・バビットは、高級スポーツカーを扱うディーラーを営んでいる。港に到着する4台のランボルギーニを満足気に見つめる。しかし、環境保護局から連絡が入り、入管手続きにさらに時間がかかるとの事。されど顧客に対する納車期限は迫っている。審査を急ぐようにと交渉する一方、顧客には納車を待てないかと訴え、しかも納入のために借り入れた借入金の返済期限も同時に迫り、まさに混乱を極めている。
チャーリーは口八丁で社員のレニーに対応させ、一旦、混乱を収拾させると社員兼恋人のスザンナと週末を過ごすため、パーム・スプリングスへ出発する。よくまぁ遊びに行けるものだという気もするが、そのあたりの気持ちの切り替えがうまいのかもしれない。ところが道中、レニーから電話が入り、父が死去したという報告を受ける。実はチャーリーは父とケンカ別れをして、絶縁状態のまま疎遠になっていたが、さすがに無視はできないのか、葬儀に向かう。
といっても、長い年月絶縁状態だった父の死に悲しみの感情が湧くわけでもなく、チャーリーは喪服すら着ることもせず、葬儀を見守る。葬儀が終わるとチャーリーは父の弁護士から父の遺言状を見せられる。チャーリーに残された遺産は、1949年製のビュイック・ロードマスターと、数々の品評会で優勝したバラの木というもの。およそ300万ドル相当のそれ以外の遺産は、なんと遺言状に書かれた受取人のために、信託銀行に預けられるとの事。しかも受取人のことは開示されず、チャーリーは憤懣やるかたない思いを抱く。
チャーリーに残された1949年製ビュイック・ロードマスターは、チャーリー親子の関係を終わらせるきっかけとなった因縁の代物。それはチャーリーが16歳の時、成績で“オールA”をとり、その褒美として父の愛車のビュイックを運転させてほしいとせがむが、父はそれを拒む。ならばとチャーリーは、黙ってキーを持ち出し、友人らとビュイックでドライブに出かける。しかし、父はあえて警察に車の盗難届を出したため、チャーリーは警察に拘留されてしまう。しかも友人たちはすぐに家族が迎えに来たが、チャーリーの父は2日間放置する。ブチ切れたチャーリーは家を飛び出し、それ以降は音信を断っていた。
そんな関係なのに、金に困っているせいか、チャーリーは300万ドルの遺産が気になる。すぐに信託銀行へ行き受取人が誰なのか調べるが教えてくれるはずもない。しかし、財産を管理する管財人が、ブルーナーという医師だということがわかり、チャーリーはブルーナに会うため病院に行く。されどやはりブルーナーが教えるわけもない。やむなく帰ろうとしたチャーリーだが、いつの間にか乗ってきたビュイックの運転席に妙な男が座っている。知恵遅れのようなその男は、なぜかそのビュイックに詳しく、父親の名前はサンフォード・バビットだと答える。その事態にブルーナーはやむなく男はチャーリーの兄だと教える。
チャーリーは兄の存在を知らされておらず驚愕する。兄の名前はレイモンドで、自閉症を患っていると知らされる。そんなレイモンドに300万ドルの遺産が残されたとわかったチャーリーは、どうにも我慢の虫が収まらない。そこで一計を案じたチャーリーは、レイモンドを散歩に連れ出し、ロサンゼルスでドジャースの試合を一緒に観ようと誘い、半ば強引にレイモンドを病院に黙って連れ出す・・・
こうしてチャーリーは、レイモンドとスザンナとビュイックで旅に出る。しかし、金のために自分やレイモンドを利用していると憤慨したスザンナは行動を別にする。こうして兄弟2人となるが、特徴的なのは自閉症のレイモンドの行動。いわゆる普通の生活はしにくいが、特殊能力もある。ホテルで一心不乱に読んでいた電話帳はすべて覚えてしまい、レストランのウエイトレスの名札を見て、電話番号をいい当てる。さらに床にばらまいてしまったマッチの本数を瞬時に言い当てる。このシーンは特に印象に残っている。
普通に生活ができないレイモンドを連れた道中は混乱の道中となる。チャーリーはレイモンドに振り回されてばかりとなる。突然現れた兄。しかも自閉症で普通ではない。長く断絶していた父親からの遺産など欲しがらなければと思うも、金に困っていて、しかも自閉症で金の価値もわからない兄がそれを受け取るという事に我慢がならなかったのだろう。チャーリーの行動は自分勝手でスザンナが怒るのも無理はない。しかし、寝食を共にしているうちに、実は幼い頃、チャーリーはレイモンドと暮らしていた事がわかってくる。そして離れ離れになった経緯も知る事になる。
そして変わりゆくチャーリーの心境。ラスベガスでレイモンドの能力を利用してカジノで一儲けしたチャーリーだが、レイモンドに対する心境の変化は心を温かくしてくれる。6日間かけてようやくロサンゼルスに帰りついたチャーリー。そのチャーリーは、レイモンドに会う前のチャーリーとは違う。そんなチャーリーの姿が心を打つ。アカデミー賞主要4部門を制覇したのも納得。若きトム・クルーズと名優ダスティン・ホフマンのコンビが何より素晴らしく思える。間違いなく名作と思える映画である・・・
評価:★★★★☆