
2018年 日本
監督: 三木孝浩
原作: 小玉ユキ
出演:
知念侑李:西見薫
中川大志:川渕千太郎
小松菜奈:迎律子
真野恵里菜:深掘百合香
山下容莉枝:伯母
松村北斗:松岡星児
野間口徹:千太郎の父
中村梅雀:迎勉
ディーン・フジオカ:桂木淳一
<MOVIE WALKER PRESS>
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小学館漫画賞に輝き、テレビアニメにもなった小玉ユキの人気コミックを、青春映画の名手と呼ばれる三木孝浩監督が映画化した青春ドラマ。音楽を通して友情や愛を深めていく3人の高校生を、Hey! Say! JUMPの知念侑李と、中川大志、小松菜奈ら若手実力派たちが演じる。小田和正による書き下ろしの主題歌も物語を盛り上げる。
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冒頭、1人の医師西見薫が子供たちのリクエストに答えてピアノを弾く。それが病院には似つかわしくない、そして子供が喜びそうもないジャズ。無理矢理感が強いが、そこから物語は10年前の1966年の長崎・佐世保へと移る。当時まだ高校生だった西見薫は、上り坂にうんざりしながら転校生としてとある高校にやってくる。家庭の事情からの転校であるが、東京からやって来たお屋敷に住む転校生は、田舎の高校生には好機の目とやっかみにさらされる。
そんな薫にクラス委員の律子が声を掛けてくるが、薫は律子に屋上の場所を聞く。屋上くらい聞くまでもないだろうという心の声は封印する。薫は教室内での息が詰まりそうな雰囲気から逃れて屋上に行くが、そこで寝ていた大柄で横柄な口を利く千太郎と出会う。出会う間も無く千太郎は上級生と屋上入り口のカギをめぐって喧嘩になる。この千太郎が実は薫のクラスメイトでもあり、律子とは幼馴染である。
律子はクラス委員でもあることから、薫を気遣う。そんな律子に薫は、地元のレコード店を聞くと、なんと律子の自宅が偶然にもレコード店であり、薫は律子に案内されて店に向かう。すると、レコード店の地下室がスタジオになっていて、そこにはドラムをたたく千太郎の姿がある。千太郎は巧みなスティック裁きを見せるが、奏でるのはジャズ。薫はピアノを弾くことができるが、クラシック派。しかし、千太郎の姿を楽しそうに見る律子の姿を見て対抗心を抱き、レコードを買ってジャズの練習を始める。
薫がジャズの名盤“モーニン”を弾きこなせるようになると、千太郎との仲は急速に縮まっていく。そんな千太郎には憧れの兄貴分がいて、その兄貴分である桂木淳一が東京から一時帰郷する。淳一は千太郎のジャズの師匠でもあり、薫と千太郎と淳一、律子の父勉の4人でセッションを繰り返す日々でこの年の夏休みは埋まっていく。薫は律子に惹かれていくが、律子の心は千太郎にある。しかし、千太郎は砂浜で知り合った美女・百合香に恋してしまう・・・
物語は、3人の若者の青春ドラマ。男2人と女1人。1960年代の佐世保は、米海軍基地もあって、そんな時代背景の下、ジャズを中心に物語が進む。薫は裕福な家に住んでいるが、そこは叔母の家。千太郎にも悲しい出自がある。なんでジャズだったのかと言えば、それは現代の若者はジャズには見向きもしないだろうというのがあるかもしれない。アポロンとは有名なギリシャ神話の神様だが、実は音楽の神様でもある。
高校生活はたった3年しかない。あっという間に過ぎてしまった己の高校時代が脳裏を過ぎる。時代背景はだいぶ異なるが、大人になっては体験できない世界がそこにはある。ほのかな恋心はあっても、大人のような恋愛関係はほとんどなく、物語は純粋な青春ドラマ。同じ時代を背景にしていても大学生の『ノルウェーの森』( My Cinema File 869)や『無伴奏』( My Cinema File 2004)と雰囲気が違うのは、大学生と高校生の違いが大きいだろう。
純粋な青春ドラマにしばし浸ってみるにはいい映画である・・・
評価:★★☆☆☆