
2019年 日本
監督: 新海誠
出演(声):
醍醐虎汰朗:森嶋帆高
森七菜:天野陽菜
本田翼:須賀夏美
吉柳咲良:天野凪
平泉成:安井刑事
倍賞千恵子:冨美
小栗旬:須賀圭介
<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
『秒速5センチメートル』などの新海誠監督が、『君の名は。』以来およそ3年ぶりに発表したアニメーション。天候のバランスが次第に崩れていく現代を舞台に、自らの生き方を選択する少年と少女を映し出す。ボイスキャストは、舞台「『弱虫ペダル』新インターハイ篇」シリーズなどの醍醐虎汰朗とドラマ「イアリー 見えない顔」などの森七菜ら。キャラクターデザインを、『君の名は。』などの田中将賀が担当した。
********************************************************************************************************
雨が降り続く世界。ひとりの少女が雨空から差し込む一筋の光に導かれ、いつしか廃ビルの屋上にある小さな鳥居に辿り着く。鳥居をくぐった少女は雲を突き抜けて上空高く舞い上がり、いつしか空と雲が織りなす壮大な景色を目の当たりにする。夢とも現実とも知れぬイントロで物語は始まる。
時に2021年。故郷の離島から家出してきた16歳の高校1年生・森嶋帆高は、フェリーで東京へ向かう。雨の甲板で滑って転び、海に落ちそうになったところをフリーライターの須賀圭介に助けられる。そうして帆高が辿り着いた東京は異常気象に見舞われており、長期間にわたって雨が降りしきっている。
帆高は働き口を探すも、16歳で身分証明書もなく保証人もいない身では、仕事もアルバイトすら見つからない。ネットカフェで寝泊まりするもたちまち金が底を尽き、ホームレスと化す。ところは歌舞伎町。あるビルの入り口で寝ていたところを咎められるが、逃げ出す時に捨てられていた拳銃を手に入れる。
そんな折、帆高は時間を潰していたファストフード店で女性店員にハンバーガーを恵んでもらう。背に腹は代えられずフェリーで知り合った須賀を訪ねることにし、住み込み・食事つきで働くことになる。須賀の事務所には、須賀の姪でアシスタントをしている夏美がいて、主にオカルト系の記事を書いている。帆高は須賀や夏美の仕事の手伝いや身の回りの世話をすることになる。
そんなある日、帆高は以前ハンバーガーを恵んでくれた少女が怪しげな男たちに囲まれているところに出くわし、咄嗟に少女を連れて逃げようとする。帆高は追ってきた男に拾った拳銃を発砲する。てっきり本物ではないと思っていた帆高も男も驚くが、この隙になんとか2人は逃げることに成功する。少女は天野陽菜と名乗る。陽菜こそが冒頭で不思議な経験をした少女である。
陽菜には不思議な力があり、それはいっとき天気を晴れにすることができるというもの。その不思議な力の真実はともかく、陽菜が祈るとあたりが晴れるのは事実。弟の凪と貧しい二人暮らしをしているにも関わらず、アルバイトをクビになってしまった陽菜に帆高は「晴れ女の能力」を活かして金を稼ぐことを思いつき、ホームページを立ち上げる。すると次々に依頼が入り、“100%の晴れ女”として評判になっていく・・・
このアニメは、『君の名は。』の新海監督が製作したということで、『君の名は。』の主人公も出てくるが、そんなことはよほどマニアックなファンでないとわからない。それはともかく、雨が降り続く世界というのも面白い前提である。運動会が苦手な子にはありがたいかも知れない。
そんな不思議な世界の物語がどこにいくかは観ていてまったくわからない。晴れ女の能力を持つ陽菜だが、どうやらその能力もタダではなく、少しずつ身体の一部が透けていくようになる。一方、帆高には故郷の両親から捜索願が出されており、さらに加えて拳銃を使用したことが警察に発覚し、陽菜の家や須賀の事務所にまでも警察の捜査の手が及ぶようになる。
帆高は陽菜と弟の凪を連れて逃げるが、どこも宿泊させてもらえない。やむなく逃げ込んだのはラブホテル。そこで、帆高は陽菜から自分が“人柱”であり、自分が犠牲になることで東京は本来の気候を取り戻すのだと知らされる。帆高は陽菜の話が俄かには信じられないが、夜が明けていつの間にか陽菜が姿を消し、東京は数か月ぶりの晴天に恵まれる・・・
「天気の子」といってもなんだか人柱などというものが出てきて、どうも暗い雰囲気で物語は進む。劇中は常に雨空なので暗いのは仕方ないのかも知れないが、どうもこの手のアニメにはハッピーエンドを期待してしまうのにそういう方向には進まない。陽菜が人柱にならなければ東京は雨が降り続き、人柱になれば天気は回復する。その昔、人知ではどうにもならない自然の力をなんとかするために人柱が考えられたのであろう。現代には廃れた風習だが、それを蘇らせるとは・・・
もしも自分が人柱になれば、東京の天気は回復すると言われても、それではと手を挙げられる人は少ない気がする。たかが天気である。もしもそんな世界になったら、人々の暮らしはどうなるのだろうなどという妄想にいつの間にか引き込まれてしまう。帆高と陽菜にとっては良かったかも知れないが、物語の中の東京の行く末にモヤモヤ感が残ってしまった映画である・・・
評価:★★☆☆☆