
2018年 日本・フランス
監督: 濱口竜介
出演:
東出昌大:丸子亮平/鳥居麦
唐田えりか:泉谷朝子
瀬戸康史:串橋耕介
山下リオ:鈴木マヤ
伊藤沙莉:島春代
渡辺大知:岡崎伸行
仲本工事:平川
田中美佐子:岡崎栄子
<映画.com>
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4人の女性の日常と友情を5時間を越える長尺で丁寧に描き、ロカルノ、ナントなど、数々の国際映画祭で主要賞を受賞した「ハッピーアワー」で注目された濱口竜介監督の商業映画デビュー作。第71回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された。芥川賞作家・柴崎友香の同名恋愛小説を東出昌大、唐田えりかの主演により映画化。大阪に暮らす21歳の朝子は、麦(ばく)と出会い、運命的な恋に落ちるが、ある日、麦は朝子の前から忽然と姿を消す。2年後、大阪から東京に引っ越した朝子は麦とそっくりな顔の亮平と出会う。麦のことを忘れることができない朝子は亮平を避けようとするが、そんな朝子に亮平は好意を抱く。そして、朝子も戸惑いながらも亮平に惹かれていく。東出が麦と亮平の2役、唐田が朝子を演じる。
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主人公は泉谷朝子。どこか不思議な雰囲気のある女性で、とある写真展にやってくる。展示作品を眺めていると、1人の男が鼻歌を歌いながら通り過ぎていく。朝子は特に男を意識することなく、偶然同じ方向に歩いていく。美術館を出たところで左右に分かれていく瞬間、子供たちが遊んでいた爆竹が炸裂して無邪気にはしゃぐ彼らに挟まれる形で二人は顔をあわせる。すると男は朝子に近づき、言葉も交わさず2人はキスを交わす。それを機に2人は付き合うようになる。
そんな2人の馴れ初めを朝子は飲み会の席で友人の島春代たちに語る。しかし、春代は「あの男はあかん。しばらくしたら泣くことになる」と忠告するが、そんな忠告は「恋は盲目」の最中にある当事者には伝わらない。男の名は麦(ばく)。麦は朝子をバイクに乗せて走るが、事故で2人とも道路に投げ出されてしまう。しかし、2人は笑いながら道路に寝転んだままキスをする。事故の相手が戸惑ったように2人を見下ろしているのが何とも言えない。
麦は朝子の大学の知人である岡崎伸行の家に下宿している。朝子と麦、春代はしばし岡崎の家に集まって食事をしたり花火をして楽しい時を過ごす。ある夜、麦は「パンを買いに行ってくる」と言って出ていく。ところが、朝子がいつの間にか眠ってしまい、夜が明けて目を覚ますと麦がまだ帰ってきていない。あわてる朝子に岡崎はよくある事とこともなげに言う。やがて麦は帰ってくるが、それからしばらくして「靴を買いに行く」と言って出て行った麦は、とうとう帰ってこない。
それから2年の月日が過ぎる。サラリーマンの亮平にとっては東京勤務になった初日、会議を終えた部屋に隣の喫茶店から配達したコーヒーポットを店員が取りに来る。それが朝子。朝子も東京に出てきていたが、朝子は亮平の顔を見て目を見張る。亮平は麦に瓜二つであった。自分を見て凍りついている朝子の様子を不思議に思う亮平。その日から亮平も朝子のことが気になり、毎朝、喫茶店の前を通っては中を覗くようになる。それからしばらくして、亮平は偶然、朝子とその友人、鈴木マヤにギャラリーの前で出逢う。入場時間を過ぎていたが、亮平は咄嗟に間に入り、入場を許可させる。
これを機に3人は親しくなる。亮平は、会社の同僚の串橋耕介を誘い、マヤと朝子が住む部屋を訪ねる。マヤは舞台女優をしており、それを批判した串橋と険悪な雰囲気になるが亮平と朝子のとりなしで和解する。朝子に対する気持ちが募る亮平。やがて亮平は朝子に告白し、2人は付き合うようになる。そのまま順調に付き合いが深まるかと思われるが、ある日、突然、朝子は「私のことは忘れて」と亮平に告げて姿を消してしまう・・・
朝子の前から突然姿を消した麦。もともと気まぐれで自由人なのだろう。そんな麦が忘れられない朝子。そして2年後に出会ったのは麦と瓜二つの亮平。亮平は麦とは違って常識人の真面目なサラリーマン。同じ顔でも性格は正反対。ジュディ・オングは「好きな男の腕の中でも違う男の夢を見る」と歌ったが、亮平と暮らすようになっても朝子の心のどこかにまだ麦がいる。そして久し振りに再会した春代から朝子は麦が芸能界に入り、活躍している事を教えられる。いなくなれば諦めもつくのだろうが、その存在を知ってしまった朝子がどう思うのか。
男の恋は「名前をつけて保存」、女の恋は「上書き保存」と言われる。それで言えば、朝子の麦に対する思いは気にする事もない。しかし、朝子は「好きな男の腕の中でも違う男の夢を見る」。大阪転勤を機に亮平からプロポーズされ、新居も決まるがそんな2人の前に気まぐれ自由人麦が、「迎えにきたよ」と現れる。どう見ても亮平の方が安定した人生という意味では確かに思えるが、得てして自由奔放な男に女は惹かれるものなのだろうか。
亮平も朝子に「過去の男」がいる事に気づいている。そしていつか過去の男に戻ることを恐れている。自分が亮平の立場だったらどうするだろうかと想像してしまう。きっと相手の女性の魅力度にもよるが、たぶん違う行動を取るだろう。そういう想像もまた映画を観る上での面白いところなのかもしれない。いずれにせよ、個人的には主役の2人に共感できる部分はなく、淡々と眺めた感のある映画である。いろいろとある恋愛風景の1つとしては面白いかもしれない。そんな感想を抱いた一作である・・・
評価:★★☆☆☆

