
2018年 日本
監督: 関根光才
原作: 本谷有希子
出演:
趣里:寧子
菅田将暉:津奈木
田中哲司:村田
西田尚美:真紀
松重豊:磯山
石橋静河:美里
織田梨沙:莉奈
仲里依紗:安堂
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小説家、劇作家、演出家などマルチな活動を展開する芥川賞作家・本谷有希子の同名小説を趣里の主演で映画化。過眠症で引きこもり気味、現在無職の寧子は、ゴシップ雑誌の編集者である恋人・津奈木の部屋で同棲生活を送っている。自分でうまく感情をコントロールできない自分に嫌気がさしていた寧子は、どうすることもできずに津奈木に当たり散らしていた。ある日突然、寧子の目の前に津奈木の元恋人・安堂が現れる。津奈木とヨリを戻したい安堂は、寧子を自立させて津奈木の部屋から追い出すため、寧子に無理矢理カフェバーのアルバイトを決めてしまう。趣里が主人公・寧子役を演じるほか、津奈木役を菅田将暉、安堂役を仲里依紗がそれぞれ演じる。数々のCMやAKB48、Mr.ChildrenなどのMVなどを手がけ、カンヌ国際広告祭でグランプリなどを受賞した関根光才の長編劇映画初監督作品。
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登場人物は同棲中の寧子と津奈木のカップル。寧子はメンタルに問題を抱えており、過眠症で寝てばかりいる。帰宅した津奈木が声をかけても「うるさい!」と怒鳴り、ものを投げつける有様である。津奈木は弁当を買いに出るが、寧子は煙草がない事に気付き煙草とコーラを買ってきてと津奈木にメールを送る。自動販売機でコーラを買った津奈木は、販売機が割れているのを見て、寧子と初めて出会った日のことを思い出す。
それはとある飲み会に参加した津奈木が、酔っ払った寧子を送っていくことになる。寧子の酔い方は酷いあり様で、友人たちもいつもの事なのかあきれ顔。何も知らない津奈木に寧子を預けてさっさと去ってしまう。津奈木が親切に自動販売機で水を買って寧子に渡すと、一気に飲み干し、突然頭を自動販売機に打ち付ける。額からは血が流れてるが寧子は気にもしない。さらに心配する津奈木をよそに寧子は走り出す。酔っているとしても異常である。
そんな津奈木は、物書きになりたくて出版社に入ったものの、三流週刊誌の編集部に配属され、ゴシップ記事の執筆に追われる日々を送っている。編集長はとある女優のスキャンダラスな記事を津奈木にまわすが、津奈木も他の仕事を抱えて手一杯である。同僚の女性記者が、裏取りをしていない記事を案じるが、津奈木はしばらくしたらみんな忘れると淡々と仕事をこなす。その様子はどこか諦めている感じが漂う。
一方の寧子はバイトの面接を受けようとしたが、起きられずに面接をドタキャンする。同棲していると言っても2人の寝室は別々であり、寧子は完全なヒモ状態。さらに津奈木に対する態度も悪く、普通であれば追い出されるだろう。なぜ津奈木が根気よく付き合っているのかよくわからない。そして突然夕食を作る事を思い立ち、津奈木のリクエストを聞くとスーパーに買い物に行く。ところがミンチが売り切れていたせいで調子が狂い、卵を床に落としてしまい愕然とする。帰宅して、料理にとりかかるが、ブレーカーが落ちてしまい、どうにもならなくなって大声を上げて泣き出す。
津奈木が戻ると、真っ暗な部屋で寧子がうずくまっている。肉親であればまだしも、他人の女であれば自分ならとても耐えられない。そして物語は動いていく。寧子がいつものように昼過ぎまで寝ていると、見知らぬ女が訪ねてくる。女は安堂といい、かつて津奈木とつき合っていたと言う。津奈木を見かけて尾行したという安堂は、どうやら津奈木と復縁する事を望んでいる。津奈木の性格からして寧子をいまのまま追い出すことはできないので寧子に働いて自立するように求める。
突然やってきて、彼氏を横取りすると宣言し、寧子を知り合いのカフェバーにバイトとして紹介する。寧子も寧子なら、この安堂も安堂である。しかし、このカフェバーのオーナーは心が広く、さして理由も聞かずに寧子を迎え入れる。とは言え、突然しっかり者になるわけでもなく、寧子は失敗の連続で、きちんと起きられず遅刻ばかりしてしまう。津奈木は津奈木で、たくさんの仕事を押し付けられ、夜遅くまで働くことが増えて次第に疲弊していく。寧子は調子がよくなり津奈木に話しかけるが、今度は津奈木にそれを聞くゆとりがない。そして事件が起こる・・・
社会の片隅で不器用に生きる2人。女はメンタル不調で、行動は怪しい。男の立場からすると、付き合うどころかそばにも寄って欲しくないタイプである。トイレのウォシュレットのことが心配という話を真面目にされても引くだけである。本人も苦しんでいて、「生きているだけで本当にしんどい」と寧子は語る。そしてあまりにもしんどくなって、店を飛び出した寧子は、走りながら服を脱ぎ、マンションの屋上でとうとう全裸になってしまう。タイトルの意味がこのあたりでわかってくる。
すぐにブレーカーが落ちてしまう部屋で暮らす2人。その姿は本当に「生きているだけで、愛」である。こんな女の近くには寄りたくないと心から思うも、映画だからいいとも言える。寧子には幼い頃、母親が全裸で踊っていた記憶がある。それは遺伝なのであろうか。だとすれば、2人の子もまた寧子のようになるのだろうか。そんなことを考えながら観終わった映画である・・・
評価:★★☆☆☆