2009年05月08日

【グラン・トリノ】My Cinema File 390

グラン・トリノ.jpg

原題: Gran Torino
2008年 アメリカ
監督・製作 : クリント・イーストウッド
出演 : クリント・イーストウッド/ビー・バン/アーニー・ハー/クリストファー・カーリー/コリー・ハードリクト/ブライアン・ヘーリー

<STORY>**************************************************************************
朝鮮戦争の帰還兵ウォルト・コワルスキーはフォード社を退職し、妻も亡くなりマンネリ化した生活を送っている。
彼の妻はウォルトに懺悔することを望んでいたが、頑固な彼は牧師の勧めも断る。
そんな時、近所のアジア系移民のギャングがウォルトの隣に住むおとなしい少年タオにウォルトの所有する1972年製グラン・トリノを盗ませようとする。
タオに銃を向けるウォルトだが、この出会いがこの二人のこれからの人生を変えていく…
****************************************************************************************

クリント・イーストウッドの最新作。
最近は監督もこなしているが、本作品では製作、主演とまさに八面六臂の活躍。
いまだ飽くなき制作欲とでもいうのだろうか、次々と生み出される作品はどれも秀作である。

「硫黄島からの手紙」では、全編通して日本人・日本語で製作した。
そこにはかつての敵国である日本及び日本人に対する穏やかな目が感じられた。
本作品でも朝鮮戦争の帰還兵ウォルトの隣人たちはアジアの少数民族である。
やはり同じようにアジア人に対する優しい眼差しが溢れている。

最近のアメリカは金融危機が輪をかけて、自信喪失しているようにみえる。
かつては世界に君臨したビッグスリーも今やクライスラーは破産法を申請し、GMもフォードも風前の灯に等しい。
そんな風潮を受けてか、映画のタイトルにもなったフォードの車グラン・トリノが時代を経ても威厳を保った存在として登場する。
かつて胸を張って歩いていたアメリカが、今のヨレヨレのアメリカに渇を入れるがごくと、である。
ウォルトの長男はトヨタに勤め、トヨタ車に乗っているが、ウォルトが丹精を込めて磨き上げるグラントリノが、かつての自動車王国のシンボルとして登場するのが象徴的である。

そしてウォルトがしばしば手にするのがM1ガーランド自動小銃。
第2次大戦で米軍の主力歩兵銃として使われていたものだ。
朝鮮戦争帰りのウォルトが、今でも愛用しているという設定である。
戦後、まさにフォードで組立工として働いていたウォルトは、まさに栄光のアメリカを今でも背負って生きているのである。

そんな誇り高いウォルトもその気難しさから家族から毛嫌いされている存在。
亡妻との約束だと言って神父が尋ねてきてもまともに相手をしようとしない。
さらにいつのまにやら近所にはアジアのモン族の者たちが住み着くようになり、かつて殺し合いをした「米を食う民族」であるだけにいまいましくて仕方がない。
しかし、ある事件を気に隣家の少年タオとの交流が始る。

そのまま平穏な日々が続いていたら
少しは穏やかに暮らしていたのかもしれないが、同じモン族のチンピラたちがそんなウォルトとタオの友情に影を差す・・・

「荒野の用心棒」で名を馳せたクリント・イーストウッド。
「ダーティー・ハリー」では時にはルールを逸脱しようとも徹底して悪を退治した。
そのスタイルは老ガンマンとなった「許されざる者」でも変わらなかった。
だが、ここでは一味違う対応を見せる。
自らの過去を清算し、若者に未来を残すウォルトは、まさに今もなお誇り高いガンマンであり、誇り高いアメリカである・・・


評価:★★★★☆


   
従兄弟であるにも関わらず、タオを仲間に引き入れようとするモン族ギャングのメンバー。
そして意のままにならないとわかると、姉のスーをレイプし家を銃撃する。
穏やかなタオも復讐を誓う。

「荒野の用心棒」のジョーであれば、あるいはダーティー・ハリー、あるいは「許されざる者」のウィリアム・マニーでさえもここは復讐に立ち上がるところである。
例え自分が不利な立場にあろうとも、正義のために銃を取って闘うところだ。
だが、はやるタオをなだめ、ゆっくりと準備を進めるウォルトはこれまでとは趣が異なる。
そして病魔に蝕まれた自分の体をギャングの銃口の前にさらす・・・

予期せぬ結末であったが、そこに貫かれた精神はクリント・イーストウッドが一貫して体現して来たガンマンの精神そのものだと気がつく。
アメリカの魂・グラントリノを譲り受けたタオがどんなアメリカ人になるのか、ちょっと想像してみたくなった・・・

posted by HH at 23:44 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(9) | ドラマ
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