2017年07月14日

【セッション】My Cinema File 1762

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原題: Whiplash
2014年 アメリカ
監督: デミアン・チャゼル
出演: 
マイルズ・テラー:アンドリュー・ニーマン
J・K・シモンズ:フレッチャー
メリッサ・ブノワ:ニコル
ポール・ライザー:ジム・ニーマン
オースティン・ストウェル:ライアン
ネイト・ラング:カール

<シネマトゥデイ>
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サンダンス映画祭でのグランプリと観客賞受賞を筆頭に、さまざまな映画賞で旋風を巻き起こした音楽ドラマ。ジャズドラムを学ぼうと名門音楽学校に入った青年と、彼にすさまじいスパルタ的指導を行う教師の姿を追い掛けていく。メガホンを取るのは、『グランドピアノ 狙われた黒鍵』などの脚本を手掛けてきた俊英デイミアン・チャゼル。主演は『ダイバージェント』などのマイルズ・テラーと『JUNO/ジュノ』などのJ・K・シモンズ。熱いドラマはもちろん、マイルズが繰り出すパワフルなドラミングにも圧倒される。
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主人公は、偉大なジャズ・ドラマーになるという野心を抱いて、全米屈指の名門校シェイファー音楽院に入学した19歳のアンドリュー・ニーマン。ある晩、1人でドラムの練習をしていると、そこに名高いフレッチャー教授がふらりとやってくる。緊張感ある会話は、あっけなく終わる。しかもせっかくのチャンスなのに、フレッチャーはニーマンの演奏をほんの数秒聴いただけで出て行ってしまう。

数日後、ニーマンは指導教官の下でレッスンを受けている。そこに突然現れたフレッチャー。その場にいたメンバー全員の音をチェックすると、主奏者のライアンを差し置いて、ニーマンに自分のバンドに移籍するよう命じる。喜びを噛みしめる一方で、友達のいないニーマンは、時折父と行く映画館の売店でバイトをしているニコルに恋心を抱き、フレッチャーにスカウトされた日、思い切ってデートに誘いOKをもらう。ニーマンにはその先にはバラ色の学生生活が見えていたと思う。

 意気揚々とフレッチャーの教室に行くが、そこは異様なまでの緊張感に包まれた空間。時間ピッタリに現れたフレッチャーは、早速指導を始めるが、僅かな音程のズレを責められた生徒が退場させられる。ニーマンもすぐにフレッチャーの恐怖の指導の洗礼を受ける。指摘されたテンポのズレはごくわずかなもので、観ているこちらもニーマンもわからない。鬼の形相で何度もダメ出しをされ、ビンタでテンポを矯正される。両親の悪口や人格攻撃までされ、あっという間にニーマンは涙ぐむ。これこそがフレッチャーの教室が異様な緊張感に包まれていた理由である。今の日本でやったら大問題になるかもしれない。

しかしニーマンは根性がある。翌日からひたすらドラムを叩き続ける。叩きすぎて手の皮がむけ血が滲み出すが、絆創膏を何枚も貼って練習を続ける。その努力は実るのであるが、1つ壁を越せばフレッチャーはまた次の壁を築く。以前は目もかけなかったライアンを新たな候補として連れてきて、徹底して競わせる。追い詰められたニーマンは、事故で大怪我を負いながらも演奏しようとする。その様は狂気のごとくである・・・

フレッチャーの信念は、一言で言えば「厳しさが人を育てる」というもの。かつて「バード」と異名をとったチャーリー・パーカーが、若い頃ミスをしてシンバルを投げつけられたというエピソードを語る。この時の屈辱感をバネに、チャーリー・パーカーが奮起したというもの。褒めて伸ばすという考え方をフレッチャーは否定し、「Good job!」という言葉が才能を滅ぼすと語る。

そのやり方は、しかし危険なもの。事実、フレッチャーの教え子はそれで精神を病み自殺している。ニーマンもギリギリのところまで追い込まれ、ついには暴発してしまう。フレッチャーの厳しさの裏には愛情があったのかどうか、それは正直言ってよく分からない。そしてニーマンは叩かれても叩かれてもなおへこたれない精神力があり、それがラストの大爆発へと繋がる。ラストのニーマンとフレッチャーの、師弟でありながら本気で真剣で殺し合うかのような演奏は圧巻である。それはまるで、「師匠を殺して勝てば卒業、負ければ殺されておしまい」という卒業試験であるかのようである。

そんな迫力満点の演奏で映画は終わる。その後どうなったかは想像するしかない。しかし、思うにニーマンは実力派ドラマーとなって行くであろう。そしてそれをフレッチャーのおかげであることを彼を憎みながらも思うような気がする。才能を育てるということには何が必要なのだろうか。フレッチャーは果たして名コーチなのだろうか。深く考えさせられる映画である・・・


評価:★★☆☆☆





posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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