2025年04月04日

【ブラックライト】My Cinema File 2989

ブラックライト.jpg

原題: Blacklight
2022年 オーストラリア
監督: マーク・ウィリアムズ
出演: 
リーアム・ニーソン:トラビス・ブロック
エイダン・クイン:ガブリエル・ロビンソン
テイラー・ジョン・スミス:ダスティ・クレン
エミー・レイバー=ランプマン:ミラ
クレア・ヴァン・ダー・ブーム:アマンダ・ブロック

<シネマトゥデイ>
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『マークスマン』などのリーアム・ニーソン主演のクライムアクション。身の危険が迫ったFBIの潜入捜査官を救出する任務を命じられた男が、国家を揺るがす極秘計画をめぐってFBIと戦う。監督は『ファイナル・プラン』でもリーアムと組んだ、マーク・ウィリアムズ。ドラマシリーズ「エレメンタリー」などのエイダン・クイン、ドラマシリーズ「アンブレラ・アカデミー」などのエミー・レイヴァー=ランプマンのほか、テイラー・ジョン・スミスらが出演する。
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主人公のトラヴィス・ブロックは、通称「フィクサー」と呼ばれるFBIの潜入捜査官に危機が迫った際、救出するという“影の任務”を担っている。その日も村人に包囲されて助けを求めてきた潜入捜査官を救いに向かう。殺気だった村人たちを抑えるのはたった2人の保安官のみ。たくみに村人たちの目をそらし、そのすきに捜査官を救い出して脱出する。冒頭はだいたい顔見世的な活躍を紹介するものであるが、いまやアクションスターと言っても過言ではないリーアム・ニーソンゆえに期待感が漂う。

一方、ホワイトハウス前で大勢の大衆を集めて演説するのは新人議員ソフィア・フロレス。真の革命を起こそうとの演説に大衆は大歓声で応える。帰宅したソフィア議員は車を降りるが、直後、背後から来た車にはねられる。運転手と共謀した明らかなひき逃げ事故であり、背後に陰謀の影が漂う。早々に単なる事故として扱われた事に疑問を呈し、事故に関する記事を書いたのはワシントンニュースサイクル(NC)の記者ミラ・ジョーンズ。裏に何かがあるのではと嗅ぎつけるが、上司は慎重派でありミラには自制を促す。

ある日トラヴィスは、新たな指令を受けFBIの潜入捜査官ダスティ・クレインを救出する。と言っても救出先は留置場。精神的に不安定になっていた事もあり、トラヴィスは警官から職務質問を受けた際、逃げようとして4人の警官相手に乱闘して捕まったのである。逮捕記録も抹消するように指示してダスティを連れ出す。ところがトラヴィスは途中で孫娘のナタリーを迎えに行く約束をしていたことを思い出す。長年、仕事優先で家庭を顧みなかった結果、家庭崩壊したトラヴィスは、今は孫との関係構築を目指しており、今回は家庭を優先する。

トラヴィスはダスティを手錠で車の中に拘束し、孫娘のナタリーが通う学校へ。しかし、迎えに行くのが遅れたため教師がナタリーの母である娘のアマンダに電話してしまい、アマンダが来るまでナタリーと待つことになる。その間、ダスティもおとなしく待っているわけもなく、下校途中の男の子のバッジを借りて手錠を外し逃げ出してしまう。気が付いたトラヴィスが慌てて追いかけるが、ダスティはゴミ収集車を盗んで逃走する。街中での派手なカーチェイス。結局、トラヴィスはダスティに逃げられてしまう。

ダスティはワシントンNCのミラに接触しようとするが、トラヴィスが追いついてきたため、話すこともできず再び逃走する。ダスティを取り逃してしまったトラヴィスは、 FBI長官ガブリエル・ロビンソンに叱責される。ロビンソンはトラヴィスとはベトナム戦争での戦友である。それに対し、トラヴィスは引退を申し出る。いつどこに派遣されるか分からない仕事であり、そろそろ家族優先の生活を送りたいとトラヴィスは思う。それに対し、ロビンソンはダスティを連れ戻せたらもっと孫と一緒に入れるようにしてやると答える。

物語は、新人議員を暗殺し、何かを握っているらしいダスティの様子から背後に何らかの陰謀が動く中、ダスティを追うトラヴィスを縦糸とし、長年の仕事優先の生活から引退して家族と過ごしたいと願うトラヴィスの物語を横糸として進む。過度に身辺を点検し、夜中に起きて家の戸締りを確認したり、娘の友達の親の素性を調べたりという「職業病」のトラヴィスをアマンダは心配する。そこに絡んでくる記者のミラ。陰謀の背後には巨悪が潜んでいる。それはにわかには信じ難い事。

今やすっかりアクションスターとなっているリーアム・ニーソンであるが、年齢のせいもあるのか(ドラマの設定でもベトナム戦争従軍経験者である)アクションは控え目。それでも「現役」のFBI捜査官と対等に渡り合うのは、長年培った経験のなせる技。タイトルの『ブラックライト』であるが、目に見えない蛍光塗料に反応して可視化するもの。表には表れない陰謀に光を当てるという暗示なのだろうか、なかなか味のあるタイトルである。

巨悪を向こうに回し、敢然と立ち向かうトラヴィス。老兵は死なず。ミラと協力し、迫りくる暗殺者と対峙する。主演はリーアム・ニーソンであり、「観て外れはない俳優」である通りこの映画も物語の世界を堪能できる。『96時間』(My Cinema File 719)では17歳の娘を助けるために奮闘したリーアム・ニーソンも早や孫娘と遊ぶようになった。時代の変化を感じさせてくれる一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年12月10日

【スピード】My Cinema File 2940

スピード.jpg

原題: Speed
1994年 アメリカ
監督: ヤン・デ・ボン
出演: 
キアヌ・リーヴス:ジャック・トラヴェン
デニス・ホッパー:ハワード・ペイン
サンドラ・ブロック:アニー・ポーター
ジョー・モートン:ハーブ・マクマホン
ジェフ・ダニエルズ:ハロルド・テンプル

<映画.com>
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減速すると爆発するバスの乗客を救うべく戦うSWAT隊員の活躍を描いたノンストップアクション。『ダイ・ハード』「ブラック・レイン」「氷の微笑」などの撮影を手がけてきたヤン・デ・ボンがメガホンをとり、世界的大ヒットを記録。主演のキアヌ・リーブスやサンドラ・ブロックにとっても出世作となった。ロサンゼルスの高層ビルでエレベーターが爆発し、複数の乗客が閉じ込められる。SWAT隊員のジャックは相棒ハリーとともに全員の救出に成功するが、犯人ハワードをあと一歩のところで取り逃がしてしまう。数日後、ジャックのもとにハワードから脅迫電話が入る。ハワードは先日の報復として、スピードを時速80キロ以下に落とすと爆発する爆弾をバスに仕掛けたと話し、多額の身代金を要求する。ジャックは15人の乗客を乗せて走行中のバスに飛び乗るが、勘違いした乗客の発砲により運転手が負傷。代わりにスピード違反で免停中の女性アニーがハンドルを握ることになり……。
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キアヌ・リーヴスとサンドラ・ブロックを一躍有名にしたこの映画、観たのはもう30年も前なのかと思うも、内容については結構鮮明に記憶に残っている。それだけインパクトがあった映画であるという証でもある。考えてみれば30年ぶりの鑑賞という事になる。

冒頭、とある高層ビルで事件は起こる。何者かがエレベーターに爆弾を仕掛け、身代金を要求してくる。エレベーターの中には十数人が閉じ込められている。解決に乗り出した警察はSWATチームを派遣する。その中のジャックとハリーが現場の偵察を志願し、さっそくエレベーターが止められている階に駆け上がり仕掛けられた爆弾を確認する。爆弾は、エレベーターを落下させるように仕掛けられており、ジャックは機転を利かせて屋上に上がると作業用クレーンでエレベーターを吊るす事にする。

エレベーターにワイヤーを掛けている音がエレベーターシャフト内に響き渡る。そしてその音を聞いているのが他のエレベーターに潜んでいた爆弾魔。救出作戦が始まった事に気付き、爆弾を起爆する。エレベーターは落下するが、うまい具合にクレーンに支えられる。しかし、そもそもエレベーターのような重量物を引き上げる物ではなく、基部から外れて支えきれなくなる。その間、ジャック達は今にも落ちそうなエレベーターから全員無事救出する。そしてそこからがジャックの真骨頂。

期限前に爆弾が起爆した事から、ジャックは爆弾魔がビル内に潜んでいる事を見抜く。そしてまだ未確認だった貨物用エレベーターをハリーと調べる。しかし、爆弾魔もさるもの。いち早く貨物用エレベーターの天井を撃ち抜き、エレベーター内に落ちたハリーを人質に取る。この映画の前半のハイライトは、ハリーを人質に取られたジャックの行動。なんとハリーの脚を撃ち抜き、爆弾魔が怯んだ隙にハリーは逃げる。形勢逆転であるが、爆弾魔は自分に爆弾を巻きつけており、迂闊に手を出せないジャックを尻目に扉を開けて逃げて行く。その瞬間、大爆発が起きる・・・

この冒頭のイントロだけでも十分引き込まれるが、これで終わりではない。人質を無事救出した功績でジャックとハリーが叙勲される様子をテレビで見ていたのが、爆発で死んだと思われていた爆弾魔。ジャックを逆恨みし、今度は路線バスに爆弾を仕掛ける。まずジャックの目の前でバスを爆破してみせてからジャックに爆破予告をする。バスは時速80キロを超えると起爆装置が起動し、80キロを下回ると爆発する。ジャックはあわてて車に乗り、予告されたバスを止めに走る。

このバスに乗っているのが、もう1人の主人公アニー。顔なじみの運転手のバスに飛び乗り、いつもと同じように言葉を交わす。バスはそのままフリーウェイに入り、スピードが上がる。そこにジャックが追いつき、何とか80キロに達する前に止めようとするが、運転手はうさん臭いと思ったのか相手にせず、バスはスピードを上げる。ジャックの努力も空しく、バスは遂に起爆速度に達し、爆弾が起動してしまう。ジャックは何とかバスに乗り込む事に成功する・・・

スリリングな展開に内容を知っていても引き込まれていく。そして次から次へと困難が襲い掛かる。警察が乗り込んできた事に焦った1人の乗客が自分を捕まえに来たと勘違いして銃を取り出す。アクシデントで発砲した際、運転手が撃たれてしまい、あわててアニーがハンドルを取る。スピードは落とせないのに高速道路は渋滞する。一般道を80キロを維持しながら疾走するバス。

追いついた警察本部と連絡を取りながら対策を練るが、何とか逃げ込んだ工事中の高速道路は、手抜き工事なのか途中で未完成の道路は途切れてしまっている。犯人はその状況を楽しむが、ジャックは犯人の言動からある手掛かりをつかむ。この時のキアヌ・リーブスは短髪。それもまた新鮮感がある。犯人の手掛かりから身元を調べ、爆弾魔を追い詰めるが、爆弾魔もそれを見越した手を打っている。

息詰まる爆弾魔とのやり取りと、バスのスピードを落とさぬようにしていかに乗客全員を避難させるか。スリリングな展開は息をするのも忘れそう。30年前の映画とは思えず、最新作と言っても不思議はない。キアヌ・リーヴスとサンドラ・ブロックの2人の出世作になったのも頷ける。何度観ても面白さが色褪せない名画である・・・


評価:★★★★☆








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2024年08月10日

【ロスト・フライト】My Cinema File 2892

ロスト・フライト.jpg

原題: Plane
2022年 アメリカ
監督: ジャン=フランソワ・リシェ
出演: 
ジェラルド・バトラー:ブロディ・トランス
マイク・コルター:ルイス・ガスパール
ヨソン・アン:サミュエル・デレ
ダニエラ・ピネダ:ボニー・レイン
トニー・ゴールドウィン:スカースデイル
レミ・アデレケ:シェルバック巡査

<シネマトゥデイ>
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『エンド・オブ』シリーズなどのジェラルド・バトラーが主演を務めたサバイバルアクション。悪天候によるトラブルで、反政府ゲリラの支配地域に不時着した飛行機の機長が、乗客らを守るために移送中の犯罪者と協力して敵に立ち向かう。小説家のチャールズ・カミングが脚本、『アサルト13 要塞警察』などのジャン=フランソワ・リシェが監督を担当。バトラーふんする機長と手を組む犯罪者をドラマシリーズ「Marvel ルーク・ケイジ」などのマイク・コルターが演じる。
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主人公はトレイルブレイザー航空のパイロット、ブロディ・トランス機長。シンガポール発ホノルル行きの119便に乗り込もうとしている。ホノルルに住む娘のダニエラに電話で出発を伝え、一緒に新年を祝おうと言って電話を切る。副操縦士はサミュエル・デレ。途中、悪天候が予想される事を機長に伝える。トランスはルート変更を打診するが、会社から拒否される。「上を飛べばいい」と。会社としてはルート変更による燃料消費を避けたいとの判断である。

離陸直前、チーフ客室乗務員のボニーがトランスにシェルバック巡査を紹介する。トランスは、シェルバックから殺人犯のルイス・ガスパールを移送するために搭乗させることを告げられる。機長に拒否権はなく、渋々認めるトランス。ガスパールは殺人犯であるとともに、 元フランス外人部隊所属という強面。機長の気持ちはよくわかる。乗客はわずか14人。それに巡査とガスパールを乗せて119便は飛び立つ。

フライトは順調だったが、フィリピン沖上空で悪天候に見舞われる。激しい嵐の中で、乱気流に巻き込まれた機体は大きく揺れる。乗客にも動揺が走るが、そんな中、シェルバック巡査はスマホを床に落とし、それを拾おうとシートベルトを外して通路に出る。すると、客室乗務員の1人がそれを止めようと席を立つが、その時機体が大きく揺れて2人とも天井と座席とに激しく叩きつけられ命を落としてしまう。

さらには落雷で119便の電気系統が停止してしまう。通信も途絶えた上に飛行も困難になり、トランスは着水も覚悟するが、幸いなことに近くに孤島を発見し、なんとか道路の上に119便を不時着させる。奇跡的な着陸に安堵したトランスだが、そこがどこかわからない。周辺の地図を調べたところ、どうやらそこはホロ島らしいとわかる。最悪な事に、ホロ島は、反政府ゲリラが支配する無法地帯であり、フィリピン政府の力も及ばない場所であった・・・

「フライト」というタイトルから、何となく『フライトプラン』(My Cinema File 30)『パニックフライト』(My Cinema File 109)『フライト・ゲーム』(My Cinema File 1406)など、飛行機内でのパニックモノという印象を抱いていたが、さにあらず。悪天候で反政府ゲリラの拠点に不時着してしまった飛行機の脱出劇であった。主人公は普通のパイロットで、「元特殊部隊」といった経歴があるわけではない。しかし、とは言えそこはジェラルド・バトラーなわけであり、きちんと見せ場はあるのである。

頼みの巡査が死亡してしまい、凶悪犯を抱えたまま乗客を安全に救助しないといけない。デレに機体の修理と乗客対応を任せると、トランスは犯罪者のガスパールと共に島の探索に出かける。すると、まもなく廃倉庫を見つけるが、そこには反乱軍が被害者を並ばせて身代金を要求させるビデオが残されているのを見つける。いよいよ緊張感が増す中、トランスは電話機を発見し、何とか配線をしてダニエラに電話をかけ、自らの生存と救助を要請することに成功する。

一難去ってまた一難という状況。墜落の危機は回避したが、ゲリラに見つかれば全員人質に取られてしまうし、下手をすれば見せしめに殺される。トランスにとって幸運だったのは、凶悪犯だと警戒していたガスパールが、捜索に来たゲリラを倒して銃を手に入れ、強力な味方になったこと。犯罪者であろうと、反政府ゲリラの前では同じ立場であり、互いに協力しあうのがベストである。しかし、一方で、ゲリラ側も航空機が不時着した事実を把握し、飛んで火にいるとばかりに人質確保に走る。

見どころはやっぱりジェラルド・バトラーの活躍であり、反政府ゲリラ相手に奮闘する。しかし、所詮は「普通のパイロット」なわけで、それを凶悪犯ガスパールと、トレイルブレイザー航空が緊急事態用に契約していた傭兵チームが派遣されてきた事でカバーする。最初から最後までハラハラドキドキ楽しませてくれる。ジェラルド・バトラーに加え、ガスパールを演じるのは、ドラマシリーズ「Marvel ルーク・ケイジ」などのマイク・コルターというのも良かったところである。

「ジェラルド・バトラー」印の観て損はない一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2024年07月05日

【リボルバー・リリー】My Cinema File 2873

リボルバーリリー.jpg
 
2023年 日本
監督: 行定勲
出演: 
綾瀬はるか:小曾根百合
長谷川博己:岩見良明
羽村仁成:細見慎太
シシド・カフカ:奈加
古川琴音:琴子
佐藤二朗:平岡
内田朝陽:三島中尉
板尾創路:小沢大佐
橋爪功:升永達吉
石橋蓮司:筒井国松
阿部サダヲ:山本五十六
野村萬斎:滝田
豊川悦司:細見欣也
鈴木亮平:眼帯の男

<シネマトゥデイ>
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『リバーズ・エッジ』などの行定勲監督が『今夜、ロマンス劇場で』などの綾瀬はるかを主演に迎え、長浦京の大藪春彦賞受賞小説を映画化したアクション。大正時代の東京を舞台に、主人公の女性スパイが躍動する。共演は『はい、泳げません』で綾瀬と共演した長谷川博己やアイドルグループ「Go!Go!kids」の羽村仁成、『のぼうの城』などの野村萬斎、『仕掛人・藤枝梅安』シリーズなどの豊川悦司など。
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冒頭、小曾根百合というスパイについて、16歳からスパイとして暗躍し、わずか3年で57人の殺害に関与したとテロップが流れる。それから時を経た1924年(大正13年)、東京は関東大震災から1年が過ぎようとしている。小曾根百合は、東京の墨田区にある歓楽街・玉の井の一角にあるカフェ「ランブル」のオーナーに収まっている。ある日、新聞に細見一家殺人事件が起こり、旧知の筒井国松が犯人と報じられるのを目にし、現場である秩父に向かう。

事件は突然陸軍の軍人たちが細見家に乱入し、主である細見欣也を捜索する。不在とわかると家人たちに行方を聞くが、聞き終えると女中を含めて惨殺する。細見欣也の長男細見慎太は、かろうじて難を逃れて逃げ出していた。そして東京へ向かう列車の中で、追いかけてきた軍人たちに捕まる。そこに居合わせたのは、事件について得るものもなく、腑に落ちないものを感じつつ帰路についていた百合。百合はあざやかに軍人たちを翻弄して慎太とともに逃げ延びる。

慎太は、「玉の井の小曽根百合を訪ねろ」と父に言われていたという。奇跡的な偶然でその百合と列車で会ったのもドラマならではであるが、冷酷な陸軍はどこまでも追ってくる。百合は迫りくる陸軍の軍人を次々に返り討ちにする。射撃の腕前も格闘術も並外れたものがあり、それはかつて台湾で特殊な戦闘能力を持ったスパイを養成する「幣原機関」で訓練を受けたからとされる。その中でも「幣原機関の最高傑作」とまで称されたという。並みの軍人が束になってもかなわないわけである。

しかし、陸軍の中にも幣原機関の南始がいて、百合も苦戦する。そして慎太が持っていた手帳を奪われてしまう。実は慎太の父・欣也は、莫大な軍資金を外国の銀行へ預けており、それは特殊な契約となっていて、1年おきに更新の手続きを取らないと預金は銀行のものになるというもの。更新期限まで10日を残すのみとなっている状況で、今後の軍事行動に資金を必要とする陸軍が血眼になって追いかけているという事情が次第に明らかになる。慎太が父から預かった手帳は奪われたものの、預金をおろすには、慎太の指紋と暗証番号が必要だとわかる。

陸軍は息つく間もなく襲いくる。「ランブル」もいつの間にか陸軍部隊に包囲されるが、百合は怯むことなく銃を取る。そして「ランブル」で働く奈加も銃を手にして加勢する。圧倒的な数的不利にもかかわらず、百合と奈加は陸軍部隊を圧倒する。しかも急所を外してというおまけつき。このあたりは細かい指摘をせずに純粋にそういうものとして楽しみたい。そして慎太が身につけていた布にあった暗号文を解くと、それはある寺の住所を指し示しており、そこに暗証番号が隠されていると睨んだ百合と慎太はその寺へ行く・・・

物語は銀行の契約更新日まであと10日と迫る中、莫大な資金を巡る争いとなる。なぜ、慎太の父欣也は息子に「小曽根百合を頼れ」と言ったのか、そして隠された暗証番号を求めて小曾根百合は慎太と行動する。そんな百合を「ランブル」に出入りする弁護士岩見や奈加が手伝う。陸軍相手に身を守るため、百合は岩見のアドバイスで陸軍と仲の悪い海軍に助けを求めることにする。そこで出てきたのは、まだ大佐である山本五十六というのも面白い。

女性アクションは珍しくないが、時代を大正末期から昭和初期の激動前夜の日本においたところが面白いところかもしれない。まぁ、現代の日本よりも物語の設定として不自然ではないというところなのかもしれない。主演は綾瀬はるか。アクションものは過去にも『ICHI』(My Cinema File 502)『劇場版「奥様は、取り扱い注意」』(My Cinema File 2485)などがあり、それ以外にはコメディものが多いが、個人的にはアクションよりも『今夜、ロマンス劇場で』(My Cinema File 2205)のようなロマンスものが好きである。

この手の物語はどうしても誇張や都合の良い展開などが目につきがちであるが、それを気にしなければ綾瀬はるか主演で安心して観ていられる。ただ、アクションにしろストーリー展開にしろ、もう少し迫力あるものにしないと、世界に通じるものにはならないと思ってみたりする。そういうレベルになる事を願いたくなる一作である・・・


評価:★★☆☆☆











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2024年03月13日

【ガンパウダー・ミルクシェイク】My Cinema File 2828

ガンパウダー・ミルクシェイク.jpeg

原題: Gunpowder Milkshake
2021年 フランス・ドイツ・アメリカ
監督: ナボット・パプシャド
出演: 
カレン・ギラン:サム
フレイヤ・アーラン:若い頃のサム
レナ・ヘディ:スカーレット
アンジェラ・バセット:アンナ・メイ
ポール・ジアマッティ:ネイサン
ミシェール・ヨー:フローレンス
カーラ・グギノ:マデレーン
クロエ・コールマン:エミリー
イヴァン・ケイ:ヤンキー
アダム・ナガイティス:ヴァージル
ラルフ・アイネソン:ジム・マカレスター
デヴィッド・バーネルIV世:ショッカー

<シネマトゥデイ>
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すご腕の女殺し屋と、彼女を追う組織との攻防を描くハードボイルドアクション。組織から命を狙われる主人公が、図書館に隠された武器を手に刺客たちと死闘を繰り広げる。監督・脚本は『オオカミは嘘をつく』などのナヴォット・パプシャド。『オキュラス/怨霊鏡』などのカレン・ギランが主演を務め、ドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」などのレナ・ヘディ、『マイ・スパイ』などのクロエ・コールマンらのほか、カーラ・グギーノ、ミシェル・ヨー、アンジェラ・バセット、ポール・ジアマッティらが共演する。
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主人公は殺し屋の女サム。その日も組織「会社(ザ・ファーム)」の連絡係ネイサンから連絡を受け、いつものダイナーにやってくる。入口で銃を預けるように要求される。どうやら組織御用達のダイナーであるようである。そこはサムがかつて母スカーレットと一緒に来て、そし母と別れた場所である。母スカーレットもまた殺し屋であったが、トラブルが生じて娘の前から姿を消したのである。

そんな思い出があるダイナーで、サムはネイサンから指令を受ける。それは「会社」の金を持って逃げた男の殺害と金の奪還。一方その頃、犯罪組織のドン、ジム・マカリスターは、息子を殺され、怒りのまま部下に犯人探しを指示する。そしてその犯人とは、実はサム。 そこに火種が残る。指令を受けたサムはとある図書館へ赴く。表向きは図書館であるが、実は「会社」の武器庫である。司書のフローレンス、アンナ、マデレーンはいずれもかつてスカーレットと仕事をした仲間。彼女たちはサムを歓迎し、新たな武器を提供する。

武器を仕入れたサムは、ターゲットの潜伏先に向かう。銃を向けられてもなお金の提出を拒むターゲットの男。そして電話がかかってくると、なぜか執拗に電話に出たがる。事の成り行きでサムはターゲットを撃つが、そこで実は娘のエミリーを誘拐され、渋々その指示に従っていただけであるとわかる。瀕死の重傷を負ったターゲットに頼まれたサムは、ターゲットを闇医者に診せると彼を託して金を持って人質交換に向かう。場所はとあるボウリング場。そこでは3人の男たちが今や遅しと金の到着を待っている。

女ながらも母の代からの殺し屋稼業のサム。『ガンパウダー・ミルクシェイク』というタイトルは「火薬」を意味する「ガンパウダー」と、ダイナーで提供されるミルクシェイクを意味するのだろう。冒頭で母とともにダイナーを訪れたサムはそこでミルクシェイクを飲んでいる。ネイサンから仕事の指示を受けたサムは、やはりミルクシェイクを頼む。そんなタイトルが映画の内容を象徴している。

主人公のサムはかなりの腕前。冒頭では犯罪組織のボスの息子をあっさり射殺し、ボウリング場では3人の男たちを手玉に取る。エミリーを保護した後は、子連れの不利を感じさせない。ユニークなのは、闇医者の病院での格闘。闇医者の裏切りにより、両腕を麻痺させられたサムは、その状態で3人の刺客を迎え撃つ。刺客もボウリング場で痛めつけられており、万全の体調ではないが、ハンディを負った双方が殺し合いを展開する。

組織と殺し屋との関係は、『ジョン・ウィック』を観ているようで既視感がある。まぁ、どこの殺し屋組織でも似たようなものになるのだろう。結局、サムは復讐に燃える犯罪組織と犯罪組織との対立を避けたい「会社」の両方から狙われる事になる。ボウリング場で、闇医者の病院で、そして「会社」の武器庫の図書館でサムはエミリーを守りつつ、敵と戦う。素人の娘エミリーを巧みに操いつつ、危機を切り抜けるサム。展開されるバトルアクションはストップモーションも交えながら観る者を飽きさせない。

ストーリーは単純で、アクションも見応えがある。ありきたりのバトルアクションではなく、両腕が使えなかったり、それゆえに少女にハンドルを握らせてのカーアクションだったり、目新しいアクションが映画の世界に引き込んでくれる。これまでにないテイストのアクション映画として楽しめる一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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